平成19年12月11日
産業経済政策課

概況

県内経済は、電気機械や木材・木製品において一服感が広がっていることや原油・原材料価格高騰による利益の圧迫などから、横ばい的な状況となっている。

  • 製造業:輸送機械、精密機械で高操業が続く
  • 建設業:業界全体として厳しい状況が続いている
  • 小売業:家電が一進一退
  • サービス業:旅館・ホテルや運送で国体効果

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲7.7から7.1となり、現在の資金繰りは▲12.9から▲9.1、3か月先の業況見通しは▲13.5から▲25.0となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.9%増、同1.0%減。3か月先の業況見通しDIは▲6.9から▲24.4となっている。主力の電気機械は、コンデンサを中心に高操業が続いている一方、携帯電話向け部品の一部や通信機器関連で依然として厳しい状況が続くなど、生産品目による業況の差が拡大している。また、木材・木製品は、改正建築基準法の施行の影響などによる全国的な新設住宅着工戸数の減少のため、2か月連続で生産額が前年同月比減となった。輸送機械や精密機械では、多くの企業がフル稼働となるなど力強い生産活動が続いている。原油・原材料価格高騰の影響も顕在化してきており、総じて価格転嫁が進まず利益を圧迫する状況が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比19.1%減、同34.0%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲56.3と変わらない。公共工事の減少や入札要件の厳格化による競争の激化、燃料費の高騰によるコスト増など、業界全体として厳しい状況が続いている。

小売業では、売上高は前年同月比で9.5%増、3カ月先の業況見通しDIは0.0から▲3.3となった。身回品では、朝夕の冷え込みに伴い暖房機器が売り上げを伸ばしたほか、燃料価格高騰から防寒・断熱対策商品などの販売も好調だった。家電品では、薄型テレビや白物家電が好調だったものの、パソコンが低調に推移していることから一進一退の状況となっている。

サービス業では、売上高は前年同月比4.9%減、3カ月先の業況見通しDIは▲25.0から▲33.3となった。旅館・ホテルにおいては、宿泊部門で行楽客やイベント客の増加、国体効果により複数の企業で高稼動率となったものの、国体効果については割引料金適用などから客単価が低かったことや、他部門の不調が響いたため、全体としては売上高が前年同月比減となった。一方、保険、DTPは引き続き堅調に推移しているほか、運送では貨物部門や旅客部門で国体効果があった。

製造業の動向

1 食料品

「国体効果などから生産額が12か月ぶりにプラス」
生産額は前年同月比4.0%増。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から▲50.0となった。
一部企業で新規取引先の開拓やスープ類などの鍋物関連商品が好調だったことに加え、国体効果があったことから12か月ぶりに生産額が前年同月比増となった。しかし、原油・原材料価格高騰分の価格転嫁が進まないなど、依然として厳しい状況が続いている。
比内地鶏の表示偽装問題について、大手スーパーからの受注がなくなった企業もあるものの、その他の企業では問い合わせがあった程度で全体としては大きな影響はなかった。

2 繊維・衣服

「秋冬物の販売不振からやや伸び悩み」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.3%増、同3.8%増。3か月先の業況見通しDIは▲42.9から0.0となった。
首都圏での秋冬物販売の不振の影響を受けてやや伸び悩んでいるものの、単価の高い製品の受注が多かったことなどから全体としては前年同月比増となった。依然として業界全体が厳しい状況に置かれている。

3 木材・木製品

「市況が大幅に鈍化し、このところ弱含み」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.0%減、同9.9%減。3か月先の業況見通しDIは8.3から▲41.7となった。
一部企業では首都圏向けの出荷が好調なものの、改正建築基準法の施行の影響などから全国的に新設住宅着工戸数の減少が続いているため、生産額が大きく落ち込んでいる。原油・原材料価格高騰が続いていることも相まって、今後も弱含みで推移することが予想される。

4 鉄鋼・金属製品

「引き続き好調な生産活動が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比30.3%増、同11.0%増。3か月先の業況見通しDIは0.0と変わらない。
新設住宅着工戸数の減少から建具関係が低迷しているものの、電気機械関連、輸送機械部品、産業機械関連が引き続き好調なことから、全体としては好調な生産活動が続いている。しかし、非鉄金属を始めとする原材料価格の高騰が続き、価格転嫁は一部にとどまっていることから利益の圧迫も続いている。

5 一般機械

「一般産業向けや輸送機械関連が好調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.7%減、同16.1%増。3か月先の業況見通しDIは▲42.9から▲57.1となった。
公共工事関連では依然として低迷が続いているものの、一般産業向けや輸送機械関連で高操業が続くなど、総じて好調に推移している。
一般産業向けでは、大型案件終了後、生産額の減少が予想されるものの、全体としては今後も安定した生産活動が見込まれる。

6 電気機械

「生産品目による業況の差が拡大」
生産額、受注額は、それぞれ前年同月比4.6%減、同5.5%減。3か月先の業況見通しDIは5.0から▲30.0となった。
主力のコンデンサでは、一部企業で大型コンデンサの急激な落ち込みがあったものの、全体としては好調を維持している。プリント配線板、光学部品、プリンタ部品、半導体関連で引き続き高操業が続いている。携帯電話向け部品では一部やや持ち直しているものの、通信機器関連とともに低調に推移しているなど、生産品目による業況の差が拡大している。

7 輸送機械

「新型車の受注が好調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比11.6%増、同6.2%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から33.3となった。
引き続き新型車や海外向け製品の引き合いが多く、複数の企業でフル稼働が続いている。原材料価格高騰による利益の圧迫が続くものの、受注が旺盛なことから今後も堅調な推移が見込まれる。

8 精密機械

「光学部品、医療機器関連で高操業が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比15.9%増、同16.1%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲12.5となった。
光学部品では、デジタルカメラ関連で好調が続き、過去最高の生産額を記録する企業もあった。また、医療機器関連でもフル稼動が続いているほか、光ファイバー関連についても海外需要によりやや持ち直している。
今後生産額の減少が見込まれる企業もあるが、全体としては光学部品や医療機器関連の好調を受けて、着実な増加が予想される。

建設業の動向

「業界全体で厳しい状況が続いている」
受注額、完工高はそれぞれ前年同月比19.1%減、同34.0%減。3か月先の業況見通しDIは▲56.3と変わらない。
公共工事の減少や入札要件の厳格化、低価格入札の常態化により業界全体で厳しい状況が続いている。受注確保のための競争が益々激化するなか、原油・原材料価格高騰が続くことから、各社とも利益確保が困難となっている。
今後降雪期を迎え、発注工事が減少することからより一層の厳しさが予想される。

小売業の動向

1 衣料品

「国体開催期間中は客足が遠のく」
売上高は前年同月比7.1%減。3か月先の業況見通しDIは▲14.3と変わらない。
先月秋冬物販売が低調だった反動増やウォームビズの浸透によるインナー類の売上増があったものの、国体開催期間中の客足が遠のくなど全体としては低調に推移した。
各社とも利幅の大きい重衣料の販売に今後の期待を寄せているが、石油製品や飲食料品などの値上げによる消費の冷え込みを懸念している。

2 身回品

「暖房器具やリフォーム用品に動き」
売上高は前年同月比1.1%増。3か月先の業況見通しDIは▲42.9から▲28.6となった。
ホームセンターでは、朝夕の冷え込みに伴い、暖房器具原油に動きが出始めたほか、燃料価格高騰から防寒・断熱対策製品の売れ行きが良かった。また、9月の豪雨災害の影響からか、県北の一部ではリフォーム用品が伸びた。
各社とも競合店の増加による客足の分散や原材料価格高騰による仕入れ値の上昇など、厳しい経営環境に置かれている。

3 飲食料品

「メーカー卸値の値上げから利益確保に苦心」
売上高は前年同月比18.4%増。3か月先の業況見通しDIは25.0から8.3となった。
前年同月、店舗改装に伴い閉店していた反動や一部企業の好調さにより売上高は前年同月比で大幅増となっているものの、依然として厳しい状況に置かれている企業が多い。また、酒類販売では業務用の注文の減少が続いている。
メーカー卸値の値上げが相次ぐなか、消費者の買い控えを懸念して価格転嫁を控えるなど、各社とも利益確保に苦心している。

4 家電品

「一進一退の状況となる」
売上高は前年同月比25.8%減。3か月先の業況見通しDIは33.3から25.0となった。
薄型テレビを始めとするデジタル家電や冷蔵庫、洗濯機などの白物家電の販売が好調だった。一方、ウィンドウズビスタ対応のパソコンが伸び悩んでおり、全体としては一進一退の状況となっている。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル

「宿泊部門で国体効果があるも、総じて低調に推移」
売上高は前年同月比8.1%減。3か月先の業況見通しDIは、▲35.7から▲57.1となった。
宿泊部門では、行楽客やイベント客の利用、国体効果があったことから複数の企業で前年同月を上回る稼働率となった。国体効果については、割引料金の適用や宴会が伴わない宿泊が多かったため、利益率は低かった。
宴会部門や利幅の大きい婚礼部門などで依然として不調が続いていることから、全体としてもマイナスで推移している。競争の激化に加え、冬季間は季節要因から集客減が見込まれるため、各社とも厳しい経営環境に置かれている。

2 その他サービス

「保険、DTPが堅調」
売上高は前年同月比1.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲10.0から0.0となった。
保険、DTPは引き続き堅調に推移している。ソフトウェアにおいては、案件の増加から売上高は伸びている反面、厳しい価格競争により利益は減少している。
運送では、依然として弱めの動きが続くものの、旅客部門と貨物部門で一部企業に国体効果があったほか、貨物部門では輸送機械関連の取り扱い増などから横ばい圏内で推移している。しかし、燃料価格高騰が続いていることから利益が圧迫されている。