産業経済政策課 平成17年12月5日

概況

 県内経済は、総じて横ばいの中で推移しているが、一部業種で明るい兆しが見受けられる。

  • 製造業:電気機械を中心に生産増加が続く
  • 建設業:一時的に前年同月比でプラスに転じる
  • 小売業:全体としては低調な推移である
  • サービス業:燃料価格の高騰が利益を圧迫している

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲3.0から8.2、現在の資金繰りは▲9.4から▲7.3、3か月先の業況見通しは▲10.1から▲22.1となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比16.1%増、同15.8%増。3か月先の業況見通しDIは▲10.8から▲18.6となった。製造業全体では前年同月比の生産額が4カ月連続してプラスであるが、主力の電気機械が前年比同月比で大きな伸びを示していることが理由である。また、鉄鋼金属や一般機械では引き続き好調に推移している。一方、木材・木製品では、市場価格が下げ止まりのを見せないことから再度生産調整を行っているほか、食料品でも厳しい状況が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比3.8%増、同15.8%増。3か月先の業況見通しDIは▲44.8から▲53.3となっている。今月は特定の企業が、規模の比較的大きな規模の案件を受注したことから前年同月比でプラスに転じているが、総体としては、厳しい経営環境が続いている。

小売業では、前年同月比の売上高で1.2%の減となっている。前月に続き、飲食料品では農産物の価格低下などにより生鮮食料品の売上が落ち込んでいる。3か月先の業況見通しDIは7.7から▲7.7となっている。

サービス業では、売上高は前年同月比5.1%の減。3カ月先の業況見通しDIは、▲3.7から▲33.3となった。

旅館・ホテルでは、行楽シーズンにも関わらず利益に結びついていないほか、宴会部門でも低調に推移している。輸送部門では、米の収穫期に係る保管料や運送料により一定の利益があるものの、燃料費の高騰が利益を圧迫している。

製造業の動向

1 食料品「酒造が低迷」

生産額は前年同月比6.6%の減。3か月先の業況見通しDIは▲10.0から▲30.0となった。

一部企業では、大手全国チェーンへの納品やお歳暮等の贈答用品の増産が始まっているものの、全体的には伸び悩んでいる。

酒造では、首都圏の女性をターゲットとしたワンカップの売り込みに力を入れているが、近年の日本酒離れの傾向が続いており、顕著な生産量の増加には繋がっていない。

複数の企業で、原油価格高騰による包装資材の値上がりによる影響が見受けられる。

2 繊維・衣服「厳しい状況が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.1%の減、同0.4%の増。3か月先の業況見通しDIは▲33.3から▲26.7となっている。

秋・冬物の生産は単価の安いものが主となっているほか、各企業では全体的に受注が少ない傾向である。

一部では、原油価格高騰により、糸・ハンガー・カバー等の原材料や資材、運送費の値上げがあり、収益を圧迫している。

3 木材・木製品「市場価格が再び下がる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.1%の減、同1.4%の増となり、8ヶ月連続で生産額の減少となった。3か月先の業況見通しDIは▲29.4▲17.6となっている。

 合板関係では、製品単価の市場価格が下げ止まりの兆しを見せないことから、一部企業で再び生産調整をしている。

 また、ようやく動きを見せ始めた県内の新規住宅着工は、依然動きは鈍いものの、各企業では秋の需要に期待を寄せている。

 なお、木材・木製品製造業では、乾燥材生産や運搬(フォークリフトなど)に様々な機械を使用するが、いずれも燃料価格高騰の影響を受けており、生産額が伸び悩むなかで、その影響は大きい。

4 鉄鋼・金属製品 「首都圏向け建設鋼材に動きが見られる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.6%の増、同8.6%の増。3か月先の業況見通しDIは先月同様0.0となった。

首都圏の再開発等の関係からか、ビルやマンションの建設用鋼材製品が大きく伸び始めているほか、一部企業では設備投資を行ってもなお受注を消化出来ない状況が続いている。

鋼材や希少金属をはじめとする金属価格の高止まりや燃料価格が依然として高騰を続けていることから、価格への転嫁が出来ない企業は、利益を圧迫されている。

5 一般機械

「安定感が見受けられる」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比8.3%の増、同12.9%の増。3か月先の業況見通しDIは先月同様0.0となった。

 産業用機械を中心として好調に推移しており、安定感が見受けられる。

 一部では、今後の受注増加に対応するため、新たな新規雇用を図るなど好調さを維持している。

6 電気機械「生産額が大幅な伸びを示す」

 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比27.8%の増、同27.8%の増。3か月先の業況見通しDIは▲3.4から▲24.1となった。

 生産額は、前年同月比で4カ月連続プラスに転じている。

 受注状況を見ると、コンデンサの受注が増加しているほか、アメリカのハリケーン復旧活動やインドにおける長距離光ケーブル埋設などの理由により、光ファーバー・半導体が急激に伸びており、一部企業では、生産能力を上回る受注を受けている。

単純比較は出来ないものの、生産額は平成12年

末程度まで回復しており、県内の電子機械分野は活況を取り戻していると言える。

7 輸送機械「原油高でトラック更新の抑制」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.6%の減、同11.0%の減。3か月先の業況見通しDIは14.3から0.0となっている。

 全体としては、生産額がマイナスとなっているが、受注見通しもあり比較的堅調に推移しているものの、自動車メーカーの系列によって受注状況に変化が生じている。

 特に、昨今の原油高の影響により、トラック業界では設備投資(トラックの買い換え)を控える動きが見受けられ、この影響から一部企業では、トラック関連部品の受注が落ち込んでいる。

8 精密機械「医療機器関連が堅調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.8%の増、同7.1%の減。3か月先の業況見通しDIは▲12.5から▲25.0となった。

 医療機器関連は依然として堅調に推移しているものの、度重なる原材料のプラスチック製品の値上要請等により、利益が圧迫されている。

 計量器関係や光学レンズなどは、需要の伸び悩みによる生産調整、石油製品の値上がりや納品単価引き下げ要求のほか、工場の海外シフトなどの理由により厳しい状況が続いている。

建設業の動向

「前年同月比で一時的にプラスに転じる」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比3.8%の増、同54.2%の増。3か月先の業況見通しDIは▲44.8から▲53.3となった。

公共事業の減少により各企業とも厳しい経営環境が続いているが、今月は特定の企業が大規模な工事を完工したことから前年同月比でプラスに転じている。

燃料価格の高騰により、受注時よりもコストが大幅に掛かり増しとなっていることから、利益が圧迫されている。

小売業の動向

1 衣料「冬物に動きが見られず」

売上高は前年同月比1.9%の増。3か月先の業況見通しDIは7.7から0.0となっている。

今月は一部企業の売上が伸びたことから前年同月比でプラスに転じているものの、依然として厳しい状況に変わりはない。各企業では、新たに東京進出の販売計画を立案したり、商品仕入れの際の品揃えやサービス充実に力を入れるなど、営業戦略を工夫し、売上に結びつけている。

2 身回品「季節商品の動きが見られず」

売上高は前年同月比4.5%の減。3か月先の業況見通しDIは▲7.7から▲15.4となった。

ホームセンターでは、冬に向けた暖房器具等の販売を始めているが、10月は温暖な気候が続いたことから、冬に向けた需要が今ひとつ伸び悩んでいる。

一方、家具関係では、ブライダル関係の売上が大きく落ち込んで厳しい状況となっているほか、購入者層が高価格帯と低価格帯に二極化が進んでいる。

3 飲食料品「売上が落ち込む」

 売上高は前年同月比0.7%の減。3か月先の業況見通しDIは17.6から▲5.9となっている。

 野菜などの青果物の価格が落ちていることや顧客の分散化などの複合的な理由から、売上が伸び悩んでいる。

 また、一部企業では、原油価格高騰により、レジ袋や発砲スチロールの価格が上昇しているほか、配送コストの掛かり増しなど、様々な形で利益を圧迫し始めている。

4 家電品「薄型テレビが堅調に推移」

売上高は前年同月比8.4%の減。3か月先の業況見通しDIは▲11.1となっている。

年末商戦を控え、各メーカーから新製品が出始めたことや地上波デジタル放送導入により、「薄型テレビ」が堅調に推移している。

一方、携帯電話は新商品発売を見越した買え控えからか売上を下げている。

これから、年末に向かい新製品が出そろう時期であるが、今後のデジタル家電の値下価格や新製品の動向が注目される。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル「行楽シーズンにも関わらず低調に推移」

売上高は前年同月比4.9%の減。3か月先の業況見通しDIは、0.0から▲35.7となった。

行楽シーズンとなり県内外の観光客増加が見込まれるが、 業績が好調な一部企業では、設備投資(ホテル増築計画)等が進んでいるものの、その他は総じて低調に推移している。また、行楽シーズンにも関わらず、宿泊客の減少や宴会部門が低調に推移するなど、売上は伸び悩みを見せている。

原油高騰の影響で、各企業共に、冷暖房等の光熱費が増大し利益を圧迫しているが、価格転嫁は難しい模様である。

2 その他サービス「燃料費が利益を圧迫」

売上高は前年同月比5.3%の減。3か月先の業況見通しDIは▲3.7から▲30.8となった。

運送部門では、米の収穫期に伴う保管料や運送料により一定の売上を上げているものの、燃料価格の高騰により、利益が圧迫されている。

コンピュータ関連では、HPの模様替えやパッケージソフトなどの販売が堅調であったが、その受注状況は安定していない。

ダウンロード