平成20年6月9日
産業経済政策課

概況

県内経済は、原油・原材料価格高騰により収益性が悪化していることや、消費がやや弱含んでいることから、全体としてもやや弱含んでいる。

  • 製造業 :生産の落ち込み等によりやや弱含んでいる
  • 建設業 :厳しい状況が続いている
  • 小売業 :買い控えが見受けられ、やや弱含んでいる
  • サービス業 :DTPが底堅く推移
全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲21.7から▲13.1、現在の資金繰りは▲17.2から▲14.5、3か月先の業況見通しは▲16.3から▲11.1となっている。
製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.8%減、同6.6%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲3.5から▲7.1となった。主力の電気機械は、コンデンサ等を中心に生産に落ち込みが見られる。木材・木製品では、依然として業況の悪化が続いている。輸送機械は海外市場の減速から、弱めの生産活動となった。精密機械の多くの企業で力強い生産活動が続いている。全体としてはやや弱含みで推移しているが、鋼材を始めとした原材料価格の高騰、米国経済の減速、円高による影響については留意していく必要がある。
建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比16.7%減、同30.7%増となった。3か月先の業況見通しDIは▲66.7から▲37.5となった。今月は、暫定税率期限切れにより、公共工事の予算執行を凍結された影響が大きく、例年以上に公共工事の発注が少ない。さらに競争の激化、原油・原材料価格の高騰が続いていることに加え、業界全体としてより厳しい状況が続いている。
小売業では、売上高は前年同月比で2.7%増、3カ月先の業況見通しDIは▲37.9から▲7.1となった。身回品では、好天に恵まれたことから土や肥料などの園芸用品などの季節商品は好調であった。家電品では、薄型テレビや白物家電が引き続き好調に推移している。衣料品では、低調な動きが続いている。飲食料品では企業ごとに好不調が分かれる結果となった。全体として買い控え傾向が見られ、嗜好品で売上が減少している。
サービス業では、売上高は前年同月比2.8%減、3カ月先の業況見通しDIは▲4.2から▲12.5となった。ほとんどの旅館・ホテルで冠婚葬祭等の不振により売上が伸びなかった。運送の旅客部門とホテルの宿泊部門では、桜の開花が早まったことで客足が鈍り、売上が伸びなかった。DTPは引き続き堅調に推移している。

製造業の動向

食料品

「引き続き弱めの動き」
生産額は前年同月比3.1%減。3か月先の業況見通しDIは▲35.7から▲21.4となった。
ほぼ全ての企業で包装資材や燃料の値上がりが経営を圧迫おり、生産額では前年同月比増であっても利益を得られない状況が続いている。
酒造では、首都圏を中心に季節商品や特定名称酒の販売に伸びがみられる一方、県内需要は低迷を続けている。原材料価格の高騰の影響を受けて、価格転嫁した企業も見受けられる。日常用品の値上げによる消費マインドの低下が影響して、ほとんど企業で生産額が落ち込んでいる。

繊維・衣服

「例年並みの生産額」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.6%減、同6.5%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲42.9となった。
現在、夏物から秋冬物への移行期間であり、生産配分は各企業により分かれている。稼働率が高い企業や、大口の受注を得ることができた企業もある。一方で、秋冬物の作業に時間がかかり生産性が悪化している企業もあり、全体としては例年並みとなった。

木材・木製品

「依然厳しい状況が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比30.7%減、同39.7%減。3か月先の業況見通しDIは30.8から33.3となった
改正建築基準法の施行や、住宅ローンの査定が厳しくなった影響から新設住宅着工戸数の減少が続いている。さらに、揮発油税の暫定税率期限切れによる公共工事の予算凍結の影響や、国内の景気減速も追い打ちをかけ、引き続き業況は悪化している。
なかには継続的に受注を得て見通しが立っている企業もあるものの、全体としては依然厳しい状況と言える。

鉄鋼・金属製品

「生産活動は引き続き好調だが、原材料高騰が収益を圧迫」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.6%増、同1.5%増。3か月先の業況見通しDIは18.2から▲18.2となった。
建具関係では、新設住宅着工戸数の減少により引き続き悪化している。しかし、デジタル家電や携帯電話向け部品を中心とした電気機械関連のほか、産業機械部品が引き続き好調なことから、全体としては好調な生産活動が続いている。
一方で、原材料価格は鉄やレアメタルで高騰が続いている。ほとんどの企業で価格転嫁が進んでおらず、収益性は悪化している。

一般機械

「引き続き堅調に推移している」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.7%増、同2.4%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6と変わらない。
プラント設備や機械部品関連では、今後の長期受注の見通しが立っている企業がいくつか見受けられる。ほとんどの企業が堅調な生産活動を続けている一方で、原材料費高騰を価格転嫁できておらず、収益性は悪化している。

電気機械

「生産が落ち込みが続く」
生産額、受注額は、それぞれ前年同月比5.5%減、同4.9%減。3か月先の業況見通しDIは5.3から▲10.0となった。
アメリカの景気減速などから主力のコンデンサをはじめ、半導体関連製品も引き続き生産が落ち込んでいる。。携帯電話向け部品では生産品目により業況が分かれる状況となっている。
今後の北京五輪需要に期待をよせている企業も多いものの、例年に比べほとんどの企業で受注が減少している。原材料価格の高止まりにより収益性が悪化することからその影響が懸念される。

輸送機械

「弱含んでいる」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.1%減、同9.0%減。3か月先の業況見通しDIは16.7から66.7となった。
好調な業況を維持し、インドをはじめとするアジア向け製品が好調なことなどから力強い生産活動を続けている企業もある。一方で、北米の景気減速により市場の停滞による影響を受けている企業も多い。
全体としては、生産額が2か月連続でマイナスとなっていることから弱めの生産活動となっており、今後の市場の動きを注視していく必要がある。さらに、今後も原材料価格の高騰が続くことが予想され、収益性悪化の影響が懸念される。

精密機械

「光学部品、医療機器関連で好調な生産活動が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比9.1%増、同7.7%増。3か月先の業況見通しDIは▲25.0のままである。
光学部品では、デジタルカメラ関連を中心に好調に推移しているほか、医療機器関連でもフル稼動が続いている。また、携帯電話部品や輸送機械部品も好調な生産活動が続いている。また、原材料の高騰を価格転嫁できている企業もいくつか見受けられた。一方、計量機器関連では、サブプライムローン問題などによる海外市場の冷え込みや、入進学・転勤などによる需要の反動から伸び悩んでいる。
今後、生産額の減少や原材料価格の値上げが見込まれる企業もあるが、全体としては光学部品や医療機器関連の好調を受けて、高水準での推移が見込まれる。

建設業の動向

「定税率期限切れの影響も大きく、さらに厳しい状況が続いている」
受注額、完工高はそれぞれ前年同月比16.7%減、同30.7%増。3か月先の業況見通しDIは▲66.7から▲37.5となった。
今月は暫定税率期限切れにより、公共工事の予算執行を凍結された影響が大きく受注が減少した。公共工事の過当競争により、民需主導に切り替える企業も見受けられる。しかし、民間工事そのものも減少している。さらに、鋼材の値上がりや、燃料の値上がりが収益を圧迫している。でこれらを踏まえると今後のさらなる悪化が懸念される。

小売業の動向

衣料品

「引き続き低調に推移」
売上高は前年同月比10.5%減。3か月先の業況見通しDIは▲42.9から▲50.0となっている。一部で進入学に伴い学生服等の販売は概ね堅調であったが、燃料価格や飲食料品の値上げによる消費者マインドの冷え込みが客数、客単価に影響を与えており、低調な推移が続いている。

身回品

「好天により堅調に推移」
売上高は前年同月比5.8%増。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から0.0となった。
ホームセンターでは、好天に恵まれたことから、土や肥料などの園芸日用品に動きがあり各社売上が好調に推移している。一方で、物価上昇に備えた買いだめの反動を心配する声もある。
消費マインドが低下するなか、買い控え等は出ておらず、若干回復傾向が見られる。

飲食料品

「品目によって売上状況が分かれる」
売上高は前年同月比2.5%増。3か月先の業況見通しDIは▲54.5から0.0となっている。
複数の企業が好調なことから売上高は前年同月比増となっているものの、消費者の買い控え傾向により売上が伸びない企業もあり、概ね前年同月と同様の推移をしている。飲食料品や石油製品の値上げにより一部では弱めの動きもあるものの、営業努力により売上確保に成功している企業もあり全体としては底堅さがみられる。
内訳を見ると、酒類などの嗜好品は売上が伸び悩み、生活必需品では堅調な売上が見られる。さらにタスポの影響が顕著に出始めている。店頭販売では売上が伸びているが、自動販売機では売上が減少傾向であり各社対応に追われている。

家電品

「白物家電・薄型テレビを中心に堅調に推移」
売上高は前年同月比5.3%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から20.0となった。
薄型テレビが引き続き堅調なほか、就職・進入学に係る白物家電も好調さを取り戻している。石油価格高騰に伴い、エアコンも売上を伸ばしている。今後は各企業ともに、オリンピック需要に期待を寄せている。

サービス業の動向

旅館・ホテル

「桜の早期開花による客足の鈍りや、重油の値上がりにより売上が減少」
売上高は前年同月比16.5%減。3か月先の業況見通しDIは、0.0から▲12.5となった。
ほとんどの企業で宿泊、婚礼、宴会で売上が伸びず、前年同月を下回る結果となった。近隣他社との過当競争、桜前線の早期通過などにより、客足の減少が見られる。さらに食材・酒類の値上がり、空調に使われる重油の値上がりが収益を悪化させ、厳しい状況が続いている。

その他サービス

「DTPは引き続き堅調」
売上高は前年同月比10.1%増。3か月先の業況見通しDIは▲10.0から▲12.5となった。
ソフトウェア関連では、原油価格の高騰による飛行機運賃にかかる負担など、収益を圧迫してきてはいるが、売上は先月に引き続き好調に推移している。
運送では、一部の企業では前年同月比で横ばいであるが、桜の開花時期が早かったことや、競合社の増加などのにより、ほとんどの企業で厳しい状況が続いている。今後の先行きも不透明である。
DTPは繁忙期を終えたものの引き続き堅調に推移している。
一方で、保険では個人向けが例年に比べ売上減となった。しかし、一時的な要因であり、今後の売上増の見通しもあり基調としては横ばいである。

ダウンロード