平成18年11月13日産業経済政策課

概況 

県内経済は、一部に依然として厳しさが残り、電気機械においては一服感があるものの、全体としては引き続き回復の基調が続いている。

  • 製造業:電気機械が若干マイナスに転じたが、他業種が概ね好調を維持
  • 建設業:工事量が減少し受注競争が激化
  • 小売業:10ヶ月ぶりに前年同月比売上高増加も総じて低調な推移
  • サービス業:ビジネス利用の宿泊部門やソフトウェアが好調

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は5.1から▲1.3となり、現在の資金繰りは▲3.8から▲7.6、3か月先の業況見通しは▲12.7から▲10.9となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.2%減、同1.4%増。3か月先の業況見通しDIは▲11.5から▲9.3となっている。主力の電気機械において、生産額の前年同月比が若干マイナスに転じたため、製造業全体としても15カ月ぶりに同比マイナスとなったが、木材・木製品、鉄鋼・金属製品、一般機械、輸送機械など、多くの業種においては引き続き前年同月を上回る生産活動が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比14.5%減、同12.5%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲62.5となっている。公共工事の減少は依然として続いており、受注確保のための競争は益々激化している。また、企業間格差はさらに拡大しており、特に公共工事を主体とする企業の中には、資金繰りが厳しく、先の見通しが立たないとする企業もあるほか、民間工事も1件当たりの金額が減少傾向にあるなど、業界全体として厳しい状況が続いている。

小売業では、前年同月比の売上高で1.4%の増、3カ月先の業況見通しDIは、▲9.7から9.7となっている。小売業全体としては、10ヶ月ぶりに前年同月比で売上高がプラスとなった。家電品については堅調に推移しているものの、衣料品や身回品、食料品においては、一部を除いて低調な推移が続いている。総じて、相次ぐ競合店舗の進出による客足の分散化や客単価の低下などに加え、燃料や包装資材の高騰のため厳しい経営環境が続いている。

サービス業では、売上高は前年同月比6.4%の減、3カ月先の業況見通しDIは0.0から▲8.7となった。旅館・ホテルでは、ビジネス利用の宿泊が好調で、インターネット経由の宿泊も堅調であったが、主力の婚礼部門は件数の減少に加え、単価の下落傾向が止まらず、引き続き低調であった。コンピュータ関連は、ハードウェアに大きな動きが見られなかったものの、ソフトウェアが好調に推移した。輸送では、貨物部門は引き続き堅調であるものの、高騰する燃料価格を転嫁できずに厳しい経営が続いている。保険は住宅関連商品が引き続き好調であった。

製造業の動向

1 食料品

「生産額前年同月比減が続く」

生産額は前年同月比4.8%の減。3か月先の業況見通しDIは7.1から0.0となった。

一部、取引先の増加や新商品の開発により生産額を増やしている企業もあるものの、多くの企業では前年同月比で生産額が減少しているほか、燃料価格高騰の影響による包装資材等の値上げのため利益が圧迫されており、厳しい状況が続いている。

酒造では、県内需要が依然として低調なほか、9月に入っても暑い日が続いたため、首都圏を含めて全体的に売上が伸び悩むなど、厳しい状況が続いている一方で、首都圏向けの新たな販路開拓の取組などにより、生産額が増加している企業も見受けられた。各社とも、今後の需要期に期待を寄せている。

2 繊維・衣服

「秋物の最盛期も、生産が伸び悩み」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.3%の増、同9.5%の減。3か月先の業況見通しDIは▲62.5から▲25.0となった。

9月は秋物の生産の最盛期であるが、残暑の影響による受注減や、複雑なデザインの製品製造による生産効率の低下などにより、前年同月と比べて生産額が減少した企業が多かった。

一方、首都圏の景気回復により生産額や受注額が増加している企業もあるなど、取引先や生産品目の違いにより業況が分かれる結果となった。

3 木材・木製品

「合板が引き続き好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.3%の増、同22.0%の増となった。3か月先の業況見通しDIは▲58.3から▲33.3となった。

 首都圏を中心として住宅需要が依然として伸び続けており、合板については、輸入量減少に伴い国内産のニーズが増加しており、フル生産状態が続いている。

 一般製材等についても、県外向けの出荷が概ね好調であるものの、受注の小口化が進み売上確保に苦心している企業や、合板の供給不足により資材の単価が高騰し、利益率が悪化している企業も見受けられる。

4 鉄鋼・金属製品 

 「好調な生産が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.9%の増、同21.4%の増。3か月先の業況見通しDIは16.7から8.3となった。

生産品目によっては一部に伸び悩みが見られるものの、家電や携帯電話、半導体関連については各市場の好調を受けて引き続き順調な生産を続けているほか、建具関係も首都圏等の建築需要に支えられ好調を維持しているなど、全体としては好調な生産が続いている。

今後も順調に推移すると見る企業も多い中で、鋼材など原材料価格は依然として高騰を続けており、コスト増の要因となっている。

5 一般機械

「原材料価格高騰が利益を圧迫」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.6%の増、同3.5%の増。3か月先の業況見通しDIは、0.0から12.5となった。

 首都圏における景気回復に伴い、工場設備関係企業では受注残も多くフル生産が続いているほか、航空機関系、自動車関係においても好調な状態を維持している。

 全体としては概ね順調に推移している一方で、非鉄金属や鋼材など原材料価格は依然として高騰しており、各社とも利益が圧迫される厳しい状況が続いている。

6 電気機械

 「生産品目の違いにより業況が分かれる」

 生産額、受注額は、それぞれ前年同月比2.9%の減、同3.5%の減。3か月先の業況見通しDIは▲25.0から▲30.0となった。

 生産額は、前年同月比で15カ月ぶりにマイナスとなった。

 主力のコンデンサを中心に、携帯電話、産業用機械、半導体関連、車載用の部品などが依然として好調に推移しているものの、液晶関係では今後の売値低下や取引先の在庫超過等により生産額の減少が見込まれているほか、光ファイバー関係においても、海外との激しい価格競争により厳しい状況にあるなど、生産品目の違いにより業況が分かれる結果となっている。

7 輸送機械

「順調な生産が続く」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比6.1%の増、同10.6%の増となり、3か月先の業況見通しDIは50.0から▲16.7となった。

 新規取引先を開始し順調に推移している企業や、フル生産が続いている企業など、全体として順調な生産活動が続いており、生産額も前年同月比でプラスとなっている。しかし、中にはメーカー側の生産調整により生産額が減少している企業や、利益の確保のため生産規模を縮小する企業もあるなど、今後の推移については不透明とする企業も見受けられる。

8 精密機械

「光学部品が依然好調」

 生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.3%の減、同3.4%の増。3か月先の業況見通しDIは14.3から42.9となった。

 光学ガラスについては、引き続き国内外からの引き合いが多く、高操業が続いており、今後も順調な推移が見込まれる。また、新商品発売に向けフル生産を続けている企業、自動車関連部品の受注増加により生産を増加させている企業もあるなど、総じて好調な生産活動が続いている。

 各社とも、燃料価格、原材料価格の高騰や販売価格の低下などにより利益確保に苦心しているなど、厳しい状況が続いているが、ここに来て原材料価格の上昇傾向が沈静化し、利益が回復してきている企業も見受けられる。

建設業の動向

「厳しい状況が続く」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比14.5%の減、同12.5%の減。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲62.5となった。

受注額、完工高とも、前年同月比で大幅増となった先月から再び減少に転じた。公共工事の減少は依然として続いており、受注確保のための競争は益々激化し、困難な状況におかれている企業も多い。

企業間格差はさらに拡大しており、特に公共工事を主体とする企業の中には、資金繰りが厳しく、先の見通しが立たないとする企業もあるほか、民間工事も1件当たりの金額が減少傾向にあるなど、業界全体として厳しい状況が続いている。

小売業の動向

1 衣料品

「残暑が長引き秋物は鈍い動き」

売上高は前年同月比3.0%の減。3か月先の業況見通しDIは37.5から12.5となった。

好天が続き残暑が長引いたため、夏物から秋物への移行が遅れ、売上単価が伸びなかった企業が見受けられた。

また、低価格な量販店に客足が向いており、売上が低下しているとする企業もある一方で、高級品の売上が伸びている企業もあるなど、消費性向に二極化の傾向が見られた。

各社とも依然として売上減少に歯止めが掛からず、厳しい状況が続いている。

2 身回品

 「競合店増加により客足の分散化が続く」

売上高は前年同月比7.0%の減。3か月先の業況見通しDIは▲57.1から▲14.3となった。

天候の良い日が続いたため、この時期主力のストーブの売れ行きはやや低調だったが、除雪用品は比較的売れ行きが良かった。

また、農作業用品は平年並みの売れ行きであったが、競合店の増加などにより、総じて日用品の売上が伸び悩んでおり、各社とも、客足の分散化が続く中で、燃料高騰による仕入れ価格の上昇や光熱費の増加により厳しい状況が続いている。

3 飲食料品

 「競合店が多く、激しい競争が続く」

 売上高は前年同月比2.5%の増。3か月先の業況見通しDIは▲41.7から8.3となっている。

 客足、客単価、売上の減少が続いている中で、競合店増加により価格競争が激化するなど、厳しい状況におかれている企業が多い。

 また、ギフト商品も低価格のものが売れる傾向にあるほか、酒類も単価の高い清酒の売上が減少しているなど、総じて低調に推移している。

4 家電品

「パソコンや携帯電話に買い控えの傾向」

売上高は前年同月比2.4%の増。3か月先の業況見通しDIは75.0から50.0となった。

デジタルテレビについては、やや動きが見られたものの、ほぼ横ばい圏内で推移したほか、パソコンや携帯電話等は新OSやナンバーポータービリティ制度による買い控えのためか、総じて動きが鈍かった。暖房機器についても、今月は温暖だったため動きが鈍かった。

新OSや新型ゲーム機、携帯電話のナンバーポータビリティ制など、今後の目玉商品に伴う動きに期待している企業も多い。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル

「ビジネス関係の宿泊や宴会が概ね好調」

売上高は前年同月比5.7%の増。3か月先の業況見通しDIは、▲7.1から▲21.4となった。

婚礼部門においては、依然として婚礼組数が減少している。また、婚礼組数を確保できても、客単価が低下傾向にあるため、厳しい状況に変わりはない。

宿泊部門では、都市部においてビジネス利用が好調だったほか、インターネット経由の宿泊も堅調であったが、観光客を主要なターゲットとする企業においては、平日の稼働率向上が課題となっている。

宴会部門では、大型イベントも多く、全体的に好調であった。

各社とも、総じて主力の婚礼部門において苦戦しており、厳しい状況が続いている。

2 その他サービス

「ソフトウェアや保険等が好調」

売上高は前年同月比15.6%の減。3か月先の業況見通しDIは0.0から11.1となった。

コンピューター関連では、ハードウェアに関しては大きな動きが見られず低調であったが、ソフトウェアにおいては引き合いが途切れずフル稼働が続いている企業もあるなど、概ね順調に推移している。

運送では、旅客部門が依然として低調に推移している。貨物部門は堅調に推移しているものの、燃料高騰による経費増の価格転嫁が進まず、利益が圧迫されている。

保険は堅調な推移で、住宅関連商品が引き続き好調であった。また、飲食関係では、レストラン等は伸び悩んだが、好天に恵まれ、屋台など屋外での売上が引き続き好調であった。

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