平成20年9月8日
産業経済政策課

概況

県内経済は、原油・原材料価格高騰の影響が拡大してきており、収益性が一層悪化し製造業の落ち込みも激しいことから、全体としても弱めの動きとなっている。

  • 製造業:主力の電気機械の生産の落ち込みが続き、弱めの動きである
  • 建設業:受注額で4ヵ月ぶりに前年同月比プラスとなったが、厳しい状況は続いている
  • 小売業:猛暑やオリンピックが影響し、家電品が売上を押し上げた
  • サービス業:旅館・ホテルでは売上が減少し、運送業でも利益圧迫が続いている
全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は▲16.3から2.6、現在の資金繰りは▲23.7から▲13.2、3か月先の業況見通しは▲20.3から▲19.0となっている。
製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.6%減、同3.0%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲14.1から▲16.5となった。主力の電気機械は、コンデンサ等を中心に生産に落ち込みが見られる。高周波製品、通信部品での落ち込みが激しくなってきている。木材・木製品では、住宅着工数の減少が続いており、合板、一般製材、集成材の各品目で依然として業況の悪化が続いている。輸送機械では海外市場の減速はあるものの、精密部品や内装品が好調であり、5ヵ月ぶりに前年同月比プラスとなった。精密機械は、光学部品や医療機器関連を中心に好調な生産活動が続いている。原油・原材料価格の高騰により収益性の悪化は続き、資金繰りの厳しい企業が多く、全体としては弱めの動きである。
建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比83.4%増、同6.2%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲50.0から▲43.8となった。公共工事、民間工事ともに受注件数が増加し、4ヵ月ぶりに前年同月比プラスとなったが、先行きは不透明である。原油・原材料の高騰などが企業の収益を圧迫し資金繰りを厳しくさせており、業界全体として厳しい状況は続いている。
小売業では、売上高は前年同月比で10.5%増、3カ月先の業況見通しDIは▲35.7から▲46.4となった。衣料品では、消費者の買い控え傾向が強く、引き続き低調に推移している。身回品では、プライベートブランド商品や安売り商品が売上を支えたことや、自転車や扇風機の売上が好調なことから堅調に推移している。家電品では、猛暑やオリンピックの影響により、エアコンや冷蔵庫などの白物家電や薄型テレビが好調に売上を伸ばし、前年同月比大幅増となった。小売業全体としては、好調な家電品が売上額を押し上げ前年同月比大幅増となった。
サービス業では、売上高は前年同月比3.9%減、3カ月先の業況見通しDIは▲4.2から20.8となった。ガソリン価格の高騰や地震の風評被害の影響もあり、ほとんどの旅館・ホテルで客足が減少しており、厳しい状況が続いている。運送業では、前年を上回る売上となったがサーチャージの理解を得られず厳しい資金繰りとなっている。ソフトウェア関連はやや低調な動きとなっている。

製造業の動向

食料品

「引き続き弱めの動き」

生産額は前年同月比0.6%減。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から7.1となった。
品目別の動向を見ると、惣菜類、菓子類、調味料類ので前年同月比減となった。お中元商戦の時期ではあるが、各企業とも例年を若干下回る生産額となっている。低価格商品が売れる傾向であった。「土用の丑の日」のウナギについては、国産ウナギの価格高騰や中国産の不人気などから、ウナギの確保に苦慮した企業が見受けられる。
酒造では、一部企業で前年を上回っているものの、市場全体の低迷は続き、県内向けだけでなく県外向けも減少傾向である。お中元商戦も販売が振るわなかった。全体としては、引き続き各企業ともに、資材や原材料・燃料の高騰が収益を圧迫しており、今後商品の値上げを表明している企業もある。

繊維・衣服

「やや低調な生産活動」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.8%増、同1.6%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲14.3となった。
生産額では、前年同月比増であるが、例年8月に行っている生産を7月に前倒しした企業の影響によるものであり、それを除くと前年同月比15.2%減であり、生産はやや低調である。学生服では例年並みの生産であった。婦人服で受注・生産ともに前年を上回り、順調な生産活動をしている企業があるものの、消費者の買い控え傾向は引き続き強く、ほとんどの企業で受注量は減少している。製造過程で重油を使用する企業が多く、収益を圧迫され厳しい状況が続いている。

木材・木製品

「11ヵ月連続マイナス、依然厳しい状況が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比25.1%減、同23.6%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲16.7となった。
例年は繁忙期となる時期であるが、改正建築基準法の影響がいまだにあり、県内経済の減速も相まって新設住宅着工戸数の減少は続いており、厳しい状況である。現在は、県内外から学校施設の建設や耐震補強などの受注がきている企業もある。
原油・原材料高については、木材乾燥に使う重油代、接着剤、運搬費など多方面で影響を与えている。
 

鉄鋼・金属製品

「生産品目により好不調分かれる」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比5.0%減、同12.9%増。3か月先の業況見通しDIは▲36.4から0.0となった。
企業間の好不調の差が激しいが、全体として例年並の生産額を保っている状況である。品目別に見ると、公共工事関係でやや低調な生産活動であるが、電気機械関連や産業機械部品の鋳鋼などで堅調な生産活動が続いている。
建具関係では、東北や北海道といった県外エリアから受注を得ており、上向いてきている。
原材料については、いまだに高止まりしているものもあり、これからも価格転嫁していく企業がいくつかあるとみられるが、価格転嫁までにタイムラグがあり企業の収益を苦しめている。

一般機械

「好調な生産活動に一服感」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比13.0%増、同36.5%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲57.1となった。
プラント設備や産業機械部品関連のいくつかの企業が好調な生産活動を続け、受注見通しも立っているが、その他の企業では生産活動に一服感が見られる。生産額において前年同月比増となっているが、生産時期のズレによる要因が大きく、それを除くと8.5%減である。農業機械や航空機、産業機械では、受注見通しの不透明な企業があり、今まで好調な分野だっただけに、今後の動向に注視したい。
先月に引き続き原材料の高騰は企業の資金繰りを悪化させている。今後も価格転嫁をしていく企業があり、受注への懸念がされている。

電気機械

「さらに生産の落ち込みが続く」

生産額、受注額は、それぞれ前年同月比4.5%減、同3.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲5.0から▲15.0となった。
全体としては、先月よりさらに生産が落ち込んでいる。アメリカの景気減速や、オリンピック需要が伸びなかったことを背景とした需要の減少から、主力のコンデンサや高周波製品、通信部品で落ち込みが激しくなってきている。携帯部品も先月と同様の落ち込みが見られる。半導体や基板では、一部に好調な企業があり、それらが生産額を押し上げ前年並の生産額となった。プリンタ部品では引き続き順調に生産活動が続けられており、10月まで受注の見通しが立っている。
原材料価格の高騰については、一部に価格転嫁できていない企業があり、収益性を悪化させている。

輸送機械

「5ヵ月ぶりの前年比プラスだが、先行きは不透明」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比3.9%増、同0.0%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲66.7となった。
精密部品では、先月よりさらに受注を増加させ好調な生産活動を続けている企業がある一方で、北米の景気減速による市場停滞の影響を受けて減産している企業もある。内装品では生産・受注ともに好転した。
今月生産額や受注額で前年同月比増の企業であっても、北米の景気回復が遅れていることから先行き不透明である。さらに、原材料価格の高騰が顕著であり、企業の収益性を圧迫し厳しい状況が続いている。

精密機械

「光学部品、医療機器関連を中心に好調な生産活動が続く」

生産額、受注額はそれぞれ前年同月比4.9%増、同3.9%減。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲12.5となった。
光学部品では、デジタルカメラ関連がさらに好調に推移しているほか、医療機器関連でも好調に生産活動を続けている。また、携帯電話部品や輸送機械部品でも生産ラインが好調に稼働しており力強い生産活動が続いている。計量機器関連では、原材料にかかる負担が大きく、企業努力での吸収が厳しい状況にある。総じて見ると、ほとんどの企業が前年を上回る生産活動であり好調といえる。
一方で、生産額や受注額で前年を上回っている企業でも、原材料の価格高騰を価格転嫁ができていないことが多い。収益性の確保が困難である企業が多く、資金繰りが悪化している。

建設業の動向

「受注額で4ヵ月ぶりに前年同月比プラスになる」

受注額、完工高はそれぞれ前年同月比83.4%増、同6.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲50.0から▲43.8となった。
公共工事・民間工事ともに受注件数が増加しており、多くの企業で受注額が前年同月比大幅増となり、全体としても4ヵ月ぶりに同増となった。しかし、ここ4ヵ月の合計受注額でみると例年並みである。さらに、公共工事を受注できても、資材高騰などの理由から利益確保は難しい状況であり、過当競争は続いている。公共工事を受注しても業況回復につながっていない企業が見受けられる。他方で、利益確保より受注件数確保を優先する企業もあり、経営状況は企業ごとに分かれる。
今後の発注見通しが不透明なことや、引き続き原油高・原材料高が収益性を圧迫することから、全体の見通DIは先月とほとんど変わらない。

小売業の動向

衣料品

「消費者の消費マインド低く、引き続き低調に推移」

売上高は前年同月比2.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲66.7から▲50.0となっている。
一部企業のセールは先月に引き続き行われているが、その売上を含めても全体として売上高前年同月比減となった。本来かき入れ時のバーゲン時期であるにもかかわらず、昨年を下回り低調に推移している。県内の販売が不振なことから、県外への出店を計画する企業もある。ガソリン価格高騰や食料品の値上げもあり消費者マインドの冷え込みは強く、買い控え傾向が引き続き窺える。

身回品

「先月に引き続き堅調に推移」

売上高は前年同月比9.6%増。3か月先の業況見通しDIは▲33.3から▲16.7となった。
消費者の消費マインドが低下するなか、各企業ともに今後の買い控えが強まることを懸念している。そんななか、消費者によるプライベートブランドや安売り商品の買いだめが、企業の売上を支えている。ガソリン高騰や消費者のエコ意識向上から、自転車や扇風機の売上が好調である。
仕入れ価格の高騰から、今後も製品価格の値上げをせざるを得ない企業が多く、先行きは不透明である。

飲食料品

「売上額は前年比増加しているものの、利益圧迫」

売上高は前年同月比5.3%増。3か月先の業況見通しDIは▲54.5から▲81.8となっている。
ほとんどの企業が、売上高で前年同月比微増となっており、全体としては同増となった。天候に恵まれ、酒類をはじめとする飲料系が好調に売上を伸ばしたことや、各製品の値上げが売上高増に影響を与えている。土用の丑の日やお中元の販売については、振るわなかった企業が多かった。
売上高前年比増であっても、収益性が悪化していることや、消費者の生活防衛意識が高いことから、今後の動向に注視していく必要がある。
 

家電品

「猛暑やオリンピックの影響により好調」

売上高は前年同月比38.5%増。3か月先の業況見通しDIは40.0から0.0となった。
すべての企業で売上高前年同月比大幅増となった。品目別では、先月まで好調だったエアコン、冷蔵庫、薄型TV、DVDレコーダー(BD含む)がさらに好調であり、猛暑やオリンピックの影響が顕著に見られる。その他にIH製品も売れ始めている。パソコンは引き続き不調であった。8月もオリンピック需要は見込まれているが、オリンピック終了後の反動による売上の減少を心配する企業もある。
生活必需品の高騰やガソリン価格の高騰による買い控えの傾向は今のところ見られないが、消費者のエコ意識は高く、省エネタイプの商品が売上を伸ばしている。

サービス業の動向

旅館・ホテル

「ガソリン高騰、地震風評被害などにより依然として厳しい状況が続く」

売上高は前年同月比7.1%減。3か月先の業況見通しDIは、▲7.1から14.3となった。
ビアガーデンの売上や、高校・中学の全県大会に伴う宿泊により売上高前年同月比増とした企業があるものの、他の企業では宿泊や婚礼を中心に売上が伸び悩み、全体として前年同月を下回る結果となった。ガソリン価格高騰の影響や地震の風評被害は顕著であり、旅行客の減少がさらに続く。食材・酒類の値上がり、空調に使われる重油の値上がりが収益を悪化させ、資金繰りの厳しい状況が続いている。

その他サービス

「ソフトウェア関連でやや低調、運送業は底堅い」

売上高は前年同月比1.5%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から30.0となった。
ソフトウェア関連では、生産額で前年同月比減となった企業が多く、やや低調な動きとなっている。運送業では、旅行客減少の影響を受けている企業がある。一方で、学生の全県大会の送迎や、スクールバスなどで売上を確保した企業もあり、運送業全体としては売上高前年比5.5となった。しかし燃料サーチャ-ジ制度の理解を荷主から得られないなど、資金繰りでは厳しい状況となっている。
保険では法人向け個人向けともに落ち込み気味である

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