平成20年1月10日
産業経済政策課

概況

県内経済は、電気機械でやや持ち直しに向けた動きがみられるものの、原油・原材料価格高騰の影響などから、横ばい的な状況が続いている。

  • 製造業 :輸送機械や精密機械でフル稼働が続く
  • 建設業 :業界全体として厳しい状況が続いている
  • 小売業 :冬物商品が低調
  • サービス業 :保険・DTPに一時的な減速感

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は7.1から▲10.3となり、現在の資金繰りは▲9.1から▲9.7、3か月先の業況見通しは▲25.0から▲31.4となっている。原油・原材料価格高騰の影響により利益が圧迫されていることから、このところ先行きには不透明感が漂っている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比2.2%減、同5.4%減。3か月先の業況見通しDIは▲24.4と変わらない。主力の電気機械は、コンデンサを中心に高水準での推移が続いているほか、携帯電話向け部品では低調ながらもやや持ち直しに向けた動きがみられる。輸送機械や精密機械では、多くの企業で力強い生産活動が続いている。一方、木材・木製品や食料品は弱含みで推移していることから、全体としては横ばい圏内の動きが続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比39.7%増、同1.2%減となった。3か月先の業況見通しDIは▲56.3から▲50.0となった。公共工事の減少や入札要件の厳格化による競争の激化、燃料費の高騰によるコスト増など、業界全体として厳しい状況が続いている。

小売業では、売上高は前年同月比で15.8%増、3カ月先の業況見通しDIは▲3.3から▲26.7となった。家電品では、パソコンが低調ながら、白物家電や薄型テレビが好調なことから全体としては堅調に推移している。また、衣料品や見回品では、寒気の到来に伴い冬物商品に一時的に動きがあったものの、月全体では低調に推移した。

サービス業では、売上高は前年同月比9.9%増、3カ月先の業況見通しDIは▲33.3から▲50.0となった。旅館・ホテルにおいては、宿泊部門で行楽客やイベント客の増加、JR等のキャンペーンの効果により概ね前年並みに推移したものの、宴会部門や婚礼部門の不振から売上高は前年同月比減となった。一方、これまで堅調だったDTPは閑散期を向かえているほか、保険についても住宅保険の伸び悩みにより一時的ではあるが減速している。

製造業の動向

1 食料品

「再び前年実績を割り込み、低調」
生産額は前年同月比1.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲50.0から▲64.3となった。
首都圏を中心に贈答品で動きがあったものの、主力商品の不調などから、生産額は国体効果のあった先月から一転して再び前年同月比減となるなど、全体としては低調に推移している。
酒造では、県内・県外向けとも低迷が続いているものの、一部企業では、首都圏や関西方面を中心に特定名称酒がやや伸びている。また、海外向けについては、クリスマス商戦が始まったことから順調に売上を伸ばしている。

2 繊維・衣服

「秋冬物衣料の販売不振が続き、伸び悩み」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.9%減、同0.3%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から57.1となった。
首都圏での秋冬物衣料の販売不振が続いていることや、一部企業において春物衣料への切り替え時期を迎えたことから、生産額は前年同月比減となった。
先行きについては、春夏物衣料の生産が始まることや主力製品の安定的な受注が見込まれる企業があることから、基調としては横ばい圏内での推移が続くものと思われる。

3 木材・木製品

「市況が大幅に鈍化し、弱めの動きが続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比16.7%減、同31.3%減。3か月先の業況見通しDIは▲41.7と変わらない。
改正建築基準法の施行の影響などから全国的に新設住宅着工戸数の減少が続いていることに加え、県内需要についても閑散期を迎えていることから、生産額が大きく落ち込んでいる。先行きについても不透明感が漂っているほか、首都圏のマンション供給については、これまでの供給過多から調整時期に入ったとする見方もあるなど、弱含みで推移することが予想される。

4 鉄鋼・金属製品

「引き続き好調な生産活動が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比24.2%増、同5.3%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から8.3となった。
新設住宅着工戸数の減少から建具関係で低迷が続いているものの、電気機械関連、輸送機械部品、産業機械関連が引き続き好調なことから、全体としては好調な生産活動が続いている。一部原材料は値下がり傾向にあるものの、依然として非鉄金属の価格等が高止まりを続けており、価格転嫁は一部にとどまっていることから利益が圧迫される状況も続いている。

5 一般機械

「一般産業向けや輸送機械関連が好調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.5%増、同2.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲57.1から▲28.6となった。
公共工事関連では依然として低迷が続いているものの、一般産業向けでは大型案件の生産が続くほか、輸送機械関連でも高操業が続いており、総じて好調に推移している。
一般産業向けでは、大型案件終了後の生産額の減少が予想されるものの、長期の受注残を抱える企業もあるなど全体としては今後も安定した生産活動が見込まれる。

6 電気機械

「生産品目により業況が分かれる」
生産額、受注額は、それぞれ前年同月比7.2%減、同8.4%減。3か月先の業況見通しDIは▲30.0と変わらない。
主力のコンデンサでは、一部企業で大型コンデンサの急激な受注の落ち込みがあったものの、全体としては好調を維持している。プリント配線板、光学部品、プリンタ部品、半導体関連では引き続き高操業が続いている。携帯電話向け部品は、依然として低調に推移しているものの、やや持ち直しに向けた動きがみられる。

7 輸送機械

「旺盛な海外需要によりフル稼働が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.0%増、同8.3%増。3か月先の業況見通しDIは33.3から0.0となった。
引き続き新型車や海外向け製品の引き合いが多く、複数の企業でフル稼働が続いている。旺盛な海外需要を背景に今後も堅調な生産活動が見込まれるものの、銅などの原材料価格が大幅に値上がりしていることから利益が圧迫されている。

8 精密機械

「光学部品、医療機器関連で高操業が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比10.8%増、同18.1%増。3か月先の業況見通しDIは▲12.5から▲50.0となった。
光学部品では、設備投資を行う企業もあるなどデジタルカメラ関連を中心に好調に推移している。また、医療機器関連でもフル稼動が続いているほか、光ファイバー関連についても海外需要により緩やかながら持ち直しの動きが続いている。
今後生産額の減少が見込まれる企業もあるが、全体としては光学部品や医療機器関連の好調を受けて、高水準での推移が予想される。

建設業の動向

「業界全体で厳しい状況が続いている」
受注額、完工高はそれぞれ前年同月比39.7%増、同1.2%減。3か月先の業況見通しDIは▲56.3から▲50.0となった。
公共工事の減少などが続くことから依然として業界全体で厳しい状況が続いている。民間工事については小型案件が多いものの、一部では引き合いが多くなっている。
原油・原材料価格高騰による影響に加え、降雪期の発注工事が減少すること、中国等の好景気からか一部資材に品薄感がみられるなど、より一層の厳しさが予想される。

小売業の動向

1 衣料品

「寒気が到来するも低調に推移」
売上高は前年同月比3.8%減。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から▲42.9となった。
寒気の到来により、コートなどの重衣料を始めとする冬物衣料に一時的な動きがあったものの、月全体では低調に推移した。
ブランド志向が弱くなっており安価な商品中心に売れていることや客足が鈍いことから、相次ぐ石油製品・食料品等の値上げによる消費者の買い控え傾向が窺える。

2 身回品

「総じて冬物商品が不振」
売上高は前年同月比1.0%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲42.9となった。
ホームセンターでは、石油製品価格高騰の影響から省エネ・防寒商品が好調だったものの、暖房機器が前年同月を大きく下回ったほか、除雪用品についても伸び悩んだ。また、土木資材については企業からの注文が振るわなかった。客単価の低下が続き、買い控え傾向が窺えるなど、各社とも厳しい状況が続いている。

3 飲食料品

「消費者マインドの冷え込みなどから低調に推移」
売上高は前年同月比12.0%増。3か月先の業況見通しDIは8.3から0.0となった。
一部企業が好調なことから売上高は前年同月比増となっているものの、全体としては厳しい状況に置かれている企業が多い。商品別の動向では、野菜類や比内地鶏などの鍋物関連商品が伸びており、比内地鶏の表示偽装問題の影響はみられない。
石油製品の値上げなどから、一部企業では消費者の買い控え傾向が出始めており、今後更なる影響が懸念される。

4 家電品

「堅調に推移」
売上高は前年同月比50.6%増。3か月先の業況見通しDIは25.0から▲50.0となった。
引き続き洗濯機などの白物家電の販売が好調だったほか、薄型テレビでは価格下落が続いていることから高額商品は買い替え用、低価格商品は2、3台目用として販売を伸ばしている。パソコンについては低水準で推移しているほか、大型暖房機器でも不振が続いているものの、全体としては堅調に推移している。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル

「宿泊部門が前年並みに推移するも総じて低調に推移」
売上高は前年同月比1.2%増。3か月先の業況見通しDIは、▲57.1から▲71.4となった。
宿泊部門では、行楽客やイベント客の利用のほか、JR等のキャンペーンにより概ね前年並みに推移した。
宴会部門や利幅の大きい婚礼部門などで依然として不調が続いていることから、全体としてもマイナスで推移しているものの、一部企業では婚礼部門が堅調に推移した。
競争の激化に加え、冬期間は季節要因から集客減が見込まれるため、各社とも厳しい経営環境に置かれている。

2 その他サービス

「保険、DTPに一時的な減速感」
売上高は前年同月比19.9%増。3か月先の業況見通しDIは0.0から▲20.0となった。
これまで堅調だったDTPは、閑散期を迎えたことにより足元は横ばい圏内で推移している。また、保険についても住宅着工の落ち込みにより一時的な減速感がみられるものの、先行きについては堅調な推移が見込まれる。ソフトウェアにおいては、案件の増加から売上高は伸びている反面、厳しい価格競争により利益は減少している。
運送では、依然として低調に推移しているものの、貨物部門では輸送機械関連の取り扱い増により特別便の増発が続くなど、好調な動きもみられる。