平成19年11月8日
産業経済政策課

概況

県内経済は、電気機械や木材・木製品において一服感が広がっていることや原材料価格高騰による利益の圧迫などから、横ばい的な状況となっている。

  • 製造業:木材・木製品が20ヶ月振りに前年同月比減
  • 建設業:業界全体として厳しい状況が続いている
  • 小売業:残暑により秋物商品が不調
  • サービス業:保険、DTPが堅調

全業種のDI値を前月と比較すると、3か月前との業況比較は5.1から▲7.7となり、現在の資金繰りは▲13.5から▲12.9、3か月先の業況見通しは▲7.1から▲13.5となっている。

製造業では、生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.2%減、同4.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲3.4から▲6.9となっている。主力の電気機械は、コンデンサを中心に高操業が続いている一方、携帯電話向け部品や通信機器関連では製品単価の下落などから厳しい状況が続いており、生産品目により業況が分かれる結果となっている。また、木材・木製品は、改正建築基準法の施行の影響などによる全国的な新設住宅着工戸数の減少のため、20ヶ月振りに生産額が前年同月比減となった。精密機械では、光学部品や医療機器関連で高操業が続いている。

原油・原材料価格高騰の影響も顕在化してきており、総じて価格転嫁が進まず利益を圧迫する状況が続いている。

建設業では、受注額、完工高はそれぞれ前年同月比▲37.7%減、同21.7%増となった。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲56.3となっている。一部企業で民間の大口工事や機械設備工事の受注が好調だったものの、公共工事の減少や入札要件の厳格化による競争の激化、燃料費の高騰によるコスト増など、業界全体として厳しい状況が続いている。

小売業では、売上高は前年同月比で11.7%増、3カ月先の業況見通しDIは▲13.8から0.0となった。残暑の影響により、衣料品や飲食料品で秋物商品が不調だったほか、酒類販売についても業務用の注文の減少が続くなど、総じて低調に推移している。家電品では、一部企業でデジタル家電の販売が好調だったものの、大型量販店の新規出店などにより客足が遠のく結果となった。

サービス業では、売上高は前年同月比4.0%増、3カ月先の業況見通しDIは8.3から▲25.0となった。旅館・ホテルにおいては、宿泊部門で行楽シーズン到来による行楽客の増加や国体特需があったものの、豪雨の影響で営業停止を余儀なくされた企業もあったため、全体としては売上高が前年同月比減となった。各社ともイベントや格安プランの実施などにより集客を図っているが、依然として厳しい状況が続いている。一方、保険、DTPは引き続き堅調に推移している。

製造業の動向

1 食料品

「定番商品や主力商品が不振」
生産額は前年同月比9.1%減。3か月先の業況見通しDIは▲7.1から▲14.3となった。
一部企業では、新規取引先の開拓や季節要因によるスープ類の販売量の増加から生産額を伸ばしているが、定番商品や主力商品の販売不振などから全体としては低調に推移している。
酒造では、レギュラー酒の不振から県内需要が依然として低調なほか、残暑の影響などにより県外需要も含めて全体的に伸び悩んだ。各社とも今後の需要期に期待を寄せている。
原油価格・原材料価格高騰に加え、比内地鶏の表示問題の影響から関連商品の売上の減少が予想されるなど、各社とも厳しい経営環境に置かれている。

2 繊維・衣服

「秋冬物の生産が概ね堅調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比7.9%増、同0.1%増。3か月先の業況見通しDIは14.3から▲42.9となった。
依然として業界全体が厳しい状況にあるなか、秋冬物の受注が堅調なことや前年同月の生産額が伸び悩んだ反動増から、全体としては例年並の生産額を確保している。

3 木材・木製品

「市況が大幅に鈍化し、減産が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比▲5.4%減、同14.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲33.3から8.3となった。
一部企業では、首都圏向けの出荷が好調なものの、建築基準法の改正の影響で、全国的に新設住宅着工戸数が大きく落ち込んでいるため、各社とも減産を余儀なくされており、20ヶ月ぶりに生産額が前年同月比減となった。

4 鉄鋼・金属製品

「電気機械関連が好調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比1.8%減、同15.5%減。3か月先の業況見通しDIは16.7から0.0となった。
引き続き電気機械関連が好調なほか、輸送機械部品や産業機械関連でも安定した生産活動が続いている。依然として高騰が続く原材料価格により、多くの企業で利益率が悪化しているが、好調な企業では受注量によりその影響を飲み込んでいる。

5 一般機械

「一般産業向けや輸送機械関連が好調」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比17.8%増、同16.5%増。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲42.9となった。
公共工事関連では依然として低迷が続いているものの、一般産業向けや輸送機械関連が高操業を続けているほか、工場設備関連でも大型案件を受注するなど、総じて好調に推移している。
当面の受注を確保している企業もあり、今後も安定した生産活動が見込まれる。

6 電気機械

「生産品目による業況の差が拡大」
生産額、受注額は、それぞれ前年同月比4.2%減、同7.2%減。3か月先の業況見通しDIは0.0から5.0となった。
主力のコンデンサを中心に、プリント配線板、光学部品、プリンタ部品、半導体関連で引き続き高操業が続いているものの、携帯電話向け部品や通信機器関連では、苦戦を強いられている。
旺盛な受注により原材料価格高騰の影響を飲み込んでいる企業もある一方、製品単価の下落により薄利多売状態の企業もあるなど、生産品目による業況の差が拡大している。

7 輸送機械

「多くの企業でフル稼働となる」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比0.3%減、同0.2%増。3か月先の業況見通しDIは▲14.3から0.0となった。
新型車の受注や海外向けの生産が好調なことなどから、複数の企業でフル稼働が続いている一方、事業縮小や単価変更の影響により、生産額が落ち込む企業もあったため、8ヶ月ぶりに前年同月比減となった。一部企業では、原材料価格高騰による利益率の悪化などの懸念材料があるものの、旺盛な受注により総じて高操業が続くものと思われる。

8 精密機械

「光学部品、医療機器関連で高操業が続く」
生産額、受注額はそれぞれ前年同月比14.3%増、同13.1%増。3か月先の業況見通しDIは25.0から0.0となった。
光学部品では、引き続きデジタルカメラ関連で高操業が続くほか、大量の受注に対応するため設備投資を計画している企業もあるなど総じて好調に推移している。また、医療機器関連でもフル稼動が続いている。一方、光ファイバー関連については、横ばい圏内で推移している。
原油・原材料価格高騰の影響により多くの企業が利益確保に苦心しているものの、今後も安定した生産活動が見込まれる。

建設業の動向

「業界全体として厳しい状況が続いている」
受注額、完工高はそれぞれ前年同月比37.7%減、同21.7%減。3か月先の業況見通しDIは▲37.5から▲56.3となった。
民間の大型工事や機械設備工事の受注により、一部企業では受注額が前年同月比大幅増となったが、公共工事の減少や入札要件の厳格化、低価格入札の常態化により業界全体で厳しい状況が続いている。受注確保のための競争が益々激化するなか、燃料費の高騰によるコスト増など各社とも利益確保が困難となっている。

小売業の動向

1 衣料品

「猛暑と天候不順により夏物衣料が低調」
売上高は前年同月比12.5%減。3か月先の業況見通しDIは▲14.3と変わらない。
残暑が続いたことから秋物衣料が不振だったほか、国体開催期間中は客足が遠のくなど低調に推移した。各社とも、今後利幅の大きい住衣料の販売に期待を寄せているが、大型商業施設との競争などから売上減少に歯止めがかからず、依然として厳しい状況が懸念される。

2 身回品

「先月大幅増の反動減により伸び悩み」
売上高は前年同月比1.9%減。3か月先の業況見通しDIは▲28.6から▲42.9となった。
ホームセンターでは、一部企業では暖房機器やセール品の売れ行きが良かったものの、先月の大幅増の反動などから全体としては売上が伸び悩んだ。
各社とも競合店の増加による客足の分散や消費者の購買意欲の低下のほか、原材料価格高騰による仕入れ値の上昇も相まって、厳しい経営環境に置かれている。

3 飲食料品

「多くの企業で売上高の減少が続く」
売上高は前年同月比14.4%増。3か月先の業況見通しDIは▲27.3から25.0となった。
猛暑が続いたことで夏物商品が好調だったものの、総じてみると食料品が伸び悩んだ。酒類販売については、レギュラー酒の売上や業務用の注文の減少が続いている。
一部企業が好調なため売上高は前年同月比増となったが、多くの企業で売上高の減少が続いている。各社とも、相次ぐ食料品のメーカー卸売り値の値上げや食品表示偽装問題の影響を懸念している。

4 家電品

「大型家電量販店との競争が激化」
売上高は前年同月比3.4%減。3か月先の業況見通しDIは50.0から33.3となった。
デジタル家電の販売が好調だったものの、大型家電量販店オープンなどの影響により客足が遠のき、売上高は前年同月比減となった。
各社とも今後年末商戦に期待を寄せている。

サービス業の動向

1 旅館・ホテル

「一部に国体特需があるも、総じて厳しい状況が続く」
売上高は前年同月比3.6%減。3か月先の業況見通しDIは、21.4から▲35.7となった。
宿泊部門では、紅葉シーズンを迎えたことにより行楽客の増加があったほか、国体関連の特需があったものの、全体としては横ばい圏内で推移している。
利幅の大きい婚礼部門では、競争の激化や婚礼組数の減少により不調が続くほか、宴会部門では規模の縮小化が続いている。
各社とも、イベントや格安プランの実施により集客を図っているものの、新規ホテルの開業など依然として厳しい状況が続いている。

2 その他サービス

「保険、DTPが堅調」
売上高は前年同月比11.1%増。3か月先の業況見通しDIは▲10.0と変わらない。
保険が引き続き堅調なほか、DTPでも首都圏からの受注が好調なことから売上高を伸ばしている。ソフトウェアにおいては、案件の増加から売上高は伸びている反面、厳しい価格競争により利益は減少している。
運送関連では、旅客部門で一部企業に国体特需があった。倉庫部門では、新米が入庫増となるも、依然として厳しい状況が続いている。

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