秋田県中山間地域土地改良施設等保全対策事業【調査・研究事業】グラウンドカバ-プランツの試行(結果とりまとめ)
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グラウンドカバ-プランツの試行
- 植栽手法:地域住民が主体となって植栽するワ-クショップ形式
- 目的
- 農地等の多面的機能の発揮及び維持保全
- 地域に適したグラウンドカバ-プランツ品種の模索
- ワ-クショップをきっかけとした地域活性化の促進
- 実施期間:平成17~20年度
- 事業名:秋田県中山間地域土地改良施設等保全対策事業
はじめに・・・グラウンドカバ-プランツについて
1.グラウンドカバープランツとは
芝等の低い草本で、字のごとく「地を覆う植物」。ほふく性の根などで広がり、地表面を覆うことで他の植物を抑制し、草刈り作業などの維持管理の省力化が期待できる。欧米などでは昔から広く普及し、公園・道路・宅地等の景観作物としても使われている。
2.中山間地域とグラウンドカバープランツ
中山間地では、地形勾配があるため、畦畔・溝畔の法面が大きく、高齢化・過疎化と重なり「草刈り」が重労働となっている。このため、田んぼ等における管理作業の軽減や安全性の面から、平場に増して中山間地ではグラウンドカバープランツへの期待が高くなっている。
過年度実施地区概要
平成17・18年度
本事業の「推進事業の一環」で、地域内住民と地域外住民の協働作業による交流から地域活性化を図るためのワークショップとして開催。
(グラウンドカバ-プランツはWSを開催するための材料。カバ-プランツの植栽は高齢化・過疎化による農地の維持管理作業の労力軽減において、中山間地域で期待されている工法という点に注目し選択。)
1.平成17年度
地域振興局提案型により、平鹿管内の横手市大森町塚須沢と北秋田市阿仁戸鳥内において実施。《戸鳥内は種を購入し、ハウスで育苗(JAの協力有り)。そして、平成18年度に苗を使ってワークショップを開催。》
2.平成18年度
北秋田市阿仁戸鳥内と横手市雄物川町下川原・横手市大森町塚須沢においてワークショップを開催。
- 戸鳥内 17年度に育苗した苗を使用してワークショップを開催。
- 下川原
雄物川筋土地改良区の国営造成施設管理体制整備促進事業の一環で行われるカバ-プランツ施工と同時に開催。(両者でエリア分けして施工。) - 塚須沢
町と地元から、17年度の施工後に地域外からの視察等が増え集落が活気づいてきている。そのため、継続して開催してほしい、との強い要望がり継続開催。
平成19年度
過年度に推進事業の一環でワークショップを開催した地区において、『新たな品種の適性(リュウノヒゲ)』と『過年度実施の品種と同一の品種(ヒメイワダレソウ)における新工法(防草シート)の施工性』についての検証のため実施。
調査研究事業
農地保全に資する工法の調査研究
実施地区について
戸鳥内は、実施希望がなかったため、実施しなかった。そのため、実施希望のあった、下川原・塚須沢の2地区をフィールドとして「調査研究事業」として実施。(地域外住民と地域内住民の協働による交流から活性化を図る要素も含め、ワークショップ形式で開催。)※下川原はH18と同様に国営造成施設管理体制整備促進事業と同時開催した。
平成20年度
カバ-プランツは平成20年度が最終年度。(農地・水等での実施が始まったため。)また、他事業で行う際のモデル地区となるよう、ふるさと水と土事業でモデル地区(中山間直接支払いとの連携事例)として育成。
中山間直接支払いを実施している横手市大森町塚須沢を実施地区とし、過年度にカバ-プランツを実施した箇所の生育状況を調査→生育状況の悪い箇所を抽出→地元から抽出箇所の過去の管理状況を聞き取り・整理→アフターケアとして抽出箇所限定でカバ-プランツを実施→過去の管理状況を反映させた管理を依頼(これを今年度実施する条件とした。)→経過観察をする。→ふるさと水と土事業でカバ-プランツ実施地区のモデル地区として育成。
モデル地区
横手市大森町八沢木 塚須沢集落
- 主に兼業農家12戸からなる中山間地域の集落
- 集落の背後には棚田が広がっており、畦畔等の草刈り作業において不利な点が多い
植栽方法
- ポット式(苗)・・・全品種実施
- 防草シ-ト併用ポット式・・・ヒメイワダレソウのみ
- シ-ト式(種子)・・・ティフブレアのみ
施工位置図
※各施工箇所における生育状況については、『ダウンロ-ド』から参照できます。
観察結果のまとめ
生育状況
- ヒメイワダレ草、アジュカ、ペニーロイヤルミント→生育が比較的良好
- 生長、繁茂が早いため雑草の影響を受けにくい。
- ティフブレア、クリーピングタイム、ヒメツルニチソウ→生育が悪い
- 生長、繁茂が遅いため雑草の影響を受けやすい。
- リュウノヒゲ→生育を維持
- 生長、繁茂は比較的遅いが雑草に強い。
- 繁茂が遅い品種→初期段階と繁茂するまでは、マメな除草管理が必要
- 本地区では、全品種年2回手刈りにより除草を行っている。
雑草に対する抑制力
・ペニ-ロイヤルミント、アップルミントは雑草の繁茂を抑制しているが、アジュガは、抑制できていない。しかし、アジュガの生育は良好であり、密な植栽をすれば雑草の抑制は可能と考えられる。
・ヒメツルニチニチソウにおいては、雑草が先に繁茂し、その後の生育に支障をきたしているように考えられるので、ヒメツルニチニチソウがある程度生育するまで雑草の除去を入念に行えば、抑制効果が期待できるのではないかと考える。
グラウンドカバ-プランツ実施後の塚須沢集落の状況
- 農地・水・環境保全向上対策事業でのカバ-プランツ実践の地区が増加してきているため、視察が増え、さらに県外からも訪れるようになっている。
- 集落では、ハ-ブ系のカバ-プランツを農産物への付加価値の一つとしたり、ハ-ブの加工品販売を検討するなど、地域資源の育成と活用の模索をしている。