グラウンドカバープランツを使った草刈りの省力化を実践するワークショップ

写真:集合写真

秋田県中山間地域土地改良施設等保全対策事業(ふるさと水と土基金・棚田基金)

 平成18年6月4日(日)、秋田県横手市大森町八沢木の塚須沢集落で、「グラウンドカバープランツを使った草刈りの省力化を実践するワークショップ」を秋田県中山間地域土地改良施設等保全対策事業により開催しました。昨年度に引き続いて2回目の実施です。
 当日は、地元塚須沢集落の方をはじめ、横手市大森地域局、秋田県平鹿地域振興局の協力もあり、HPやチラシ等をみて来たという横手市内、仙北管内や秋田市などからの参加者で、最終的には見学者も含め約70名の参加がありました。

 田んぼが整理されたり、水路が整備されたりして、農作業の省力化は少しずつ図られていますが、どうしても手作業にならざるを得ないのが畦畔や水路溝畔の草刈りです。
 特に中山間地域のように、勾配がきつく法面の長いところでの作業は、重労働であり危険も伴います。
 最近では、一般にグラウンドカバープランツと呼ばれる低草丈の植物で地面を覆い、背丈の高い雑草を抑制するという方法が各地で試されています。
 このワークショップでは、草刈り作業の省力化につながる可能性を持ち、合わせて景観保全にもつながるグラウンドカバープランツの導入を、農家を中心とする地域住民と、地域以外の住民による協力・協働作業として実施しました。

写真:下地処理1 写真:下地処理2

 今回は、植栽場所として地元で選定した畦畔と水路溝畔(約150m2)を対象に実施しました。田植え前に一度除草剤で在来雑草を処理してます。また昨年度の経験と反省を踏まえて、今年度は専門家の指導を受けながら下地処理を当日行っています。
 下地処理は法面に残った根株をできるだけ残さないよう、表面の土毎薄く削り取るようにして土を露出させる作業です。これを丹念に行うことで、グラウンドカバープランツが成長する前に他の雑草が優勢になるのを少しは抑えることができるそうです。

参加された方々

マーク1

  • 塚須沢集落の住民グループ
  • 秋田県ふるさと水と土指導員(2名)・Akitaふるさと活力人(3名)
  • 導入を検討している住民組織・改良区など
  • グラウンドカバープランツに興味のある県民の皆さん

 この日集まったのは地域住民の方々だけではなく、ホームページやチラシなどをみて興味を持った住民組織の代表の方々、管理する水路などの草刈りに頭を悩まされている土地改良区の方々などがいらっしゃいました。
 またこの秋田県中山間地域土地改良施設保全対策事業で委嘱している「秋田県ふるさと水と土指導員」が2名(横手市・湯沢市より)、また人材育成として取り組んでいる「Akitaふるさと活力人養成セミナー」の受講生3名(秋田市、仙北市、湯沢市より)も参加し、合計約70名が一緒に汗を流しました。

写真:作業説明1
まずは簡単な説明から
写真:作業説明2
主催の県・担当者から説明
写真:説明
みなさんいでたち完璧です
写真:説明2
塚須沢会長の佐藤さん

作業内容

マーク2

 平成17年度の取組では、グラウンドカバープランツとして5種類の苗(ティフブレア・ヒメイワダレ草・アジュガ・クリーピングタイム・ペニーロイヤルミント)を直接植え付けるという方法で実施しました。 今年度、平成18年度は、その中でわりと生育の良かった3種類の苗(ヒメイワダレ草・アジュガ・ペニーロイヤルミント)を植え付けました。また、新たな方法として、種子と肥料を分解性の糊で貼り付けた2種類のシート(生分解性の間伐材利用ネット・再生紙利用シート)にも取り組んでみました。

  • ティブブレア(耐寒性センチピードグラス)
    • 科名:イネ科
    • 年生:宿根草
    • 草丈:10-25cm

 種子入りのシートで作業しました。
下地処理を除けば作業はとても簡単です。ただし苗と違いまず丈夫に発芽させる必要があります。
 間伐材のネットや再生紙のシートは、法面の長さに合わせてはさみで切りながら貼付け、紙のピンで留めていきます。ネットもシートも分解されて自然に還ります。

写真:間伐材利用ネット
専門家より性質や作業方法を習う
写真:ハリウッド
間伐材利用ネット
写真:ペパール
再生紙利用シート

写真提供:日本植生株式会社

  • ヒメイワダレ草
    • 科名:クマツヅラ科
    • 年生:多年草
    • 草丈:5~7cm

 9cmのポッド苗を植栽しました。だいたい25cm間隔で植えています。太い鉄パイプである程度土を掘った後、移植ゴテを使って手で植えました。
 白い小さな花がたくさん咲きます。

写真:ヒメイワダレ草 写真:ヒメイワダレ草2

  • アジュガ
    • 科名:シソ科
    • 年生:多年草
    • 草丈:10~30cm

 9cmのポッド苗を植栽しました。だいたい25cm間隔で植えています。太い鉄パイプである程度土を掘った後、移植ゴテを使って手で植えました。
 ランナーが伸びて次々と広がっていき、紫色の花を咲かせます。

写真:アジュガ 写真:アジュガ2

  • ペニーロイヤルミント
    • 科名:シソ科
    • 年生:多年草
    • 草丈:5~20cm

 12cmのポッド苗を植栽しました。だいたい25cm間隔で植えています。太い鉄パイプである程度土を掘った後、移植ゴテを使って手で植えました。
 数あるミントの中で最もほふく性の強いタイプのひとつです。もちろん葉を摘んで熱湯を注げばミントティーにもなります。

写真:ペニーロイヤルミント 写真:ペニーロイヤルミント2

作業の様子

マーク3

 作業は以下のように参加者みんなで協働で行いました。塚須沢集落は昨年度のワークショップでもそうでしたが、とにかく自然に役割分担がどんどんできて、活動がとにかく早くてスムーズです。
 地域に必要なのはマルチな人ではなく、それぞれの人がもっている能力を上手に分担しながら出し合うことが大切なんだと、つくづく思います。

写真:苗分け
苗を水路に浸して水を与えてます。
写真:苗植え1
等間隔に掘った穴へアジュガを植えます。
写真:苗植え2
みなさんの格好も慣れたモノです。
写真:苗植え3
子供も大人も。一生懸命汗かいて。
写真:道炉端苗植え1
こちらはヒメイワダレ草エリア。
写真:道炉端苗植え2
上手にできるかな??
写真:道炉端苗植え3
ここはペニーロイヤルミント。
写真:道炉端苗植え4
強烈な日差しの中がんばりました。
写真:ティフブレア説明1
ティフブレアのシートの説明です
写真:ティフブレア説明2
初めての取組に興味津々。
写真:ティフブレアシート1
法面に合わせてシートを貼付
写真:ティフブレアシート張り2
長さを揃えてピンで固定します。
写真:シート完成1
こちらは再生紙シートです。
写真:シート完成2
こちらは間伐材ネットです。
写真:苗完成
苗植え完成です。
写真:完成
最後の仕上げをし終わったところ。

 秋田県南部に広がる平鹿平野の西、雄物川の左岸支流上溝川沿いに開けた横手市大森町八沢木地区から南に分ける塚須沢地区。12戸からなる集落(13haの水田保有は地区外も含めて18戸)は、平場とは違う中山間地域ならではの悩みのひとつとして、ながーい法面の草刈りをあげています。
 自力施工で整備してきた地形勾配に沿った水田と、集落でとりくんでいる中山間直接支払制度による水路の整備により、残る苦労は、なによりも草刈り。「年に3回も4回も草刈りしているけれど、まるで競うようにみんな綺麗に草刈りをするのが昔からこの地域の特徴だ」とのこと。近辺から訪れる人も一様に塚須沢の草刈りのマメさに感心するといいます。

 しかし現実問題として、みんな兼業農家であり、どうしても農作業は土日に集中してしまいます。「実際のところ、田植えと稲刈り以外は春から秋までずっと草刈りの週末だ」と話す会長さん。「だからこそ平場とは違う、中山間地域集落としてみんなで協力してできる新しいこと、それを見つけて集落で取り組んでいくことこそが塚須沢の生き方だ」と、平成17年度に初めてこのワークショップを受け入れたときにおっしゃっていました。
 さて、2年目になったこのワークショップですが、この1年間で地域でなにかかわったことがあったか伺ってみたところ、「とにかく、外から人が来るようになった。HPを見たと行って、取材を受けたり、県内外から参考にさせて欲しいと現地見学に訪れる方がかなりいた。遠くは函館からわざわざ秋田空港まで来てそこからレンタカーで来たという人もいた。今まで親戚か近所の人しか来なかったこの地域に外から人が来て塚須沢を『いいところですね、すてきなところですね』とほめてくれることで、集落の住民は新たに自分たちの集落に自信を持った」とおっしゃっていました。このことは、こういったワークショップを地域住民と地域外住民の方々との協働でやることの効果の一つではないかと思います。
写真:塚須沢集落 写真:塚須沢集落2 写真:塚須沢集落3 写真:塚須沢集落4
まもなくホタルが舞い始める塚須沢集落。美しい水田とそれを守る美しい人達の住む塚須沢。
グラウンドカバープランツへの取組により、またひとつ魅力が増えたかも知れません。

 

地図:塚須沢集落までの道のり
横手市街から県道29号線を約17キロ西進する(雄物川大上橋を渡って約5キロ)。県道から集落への入口には「塚須沢」という看板あります。2006ペットボトルを利用した手作りランタンで田んぼを彩るワークショップin塚須沢
写真:ペットボトルを用いたランタン
 グラウンドカバープランツのワークショップの終了後に、ペットボトルを用いたランタンで田んぼを彩るワークショップを開催しました。

平成17年度のワークショップは農業共済新聞秋田版9月1週号にも掲載されました