2008秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会開催報告
コンテンツ番号:3307
更新日:
平成20年9月6日(土)、大仙市と美郷町をコースに「2008秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会」を開催しました。
このイベントは県民、特に都市部に居住する住民の方を対象に、秋田県の中山間地や農山村が持つ多面的機能とその現状についてより関心を持ってもらうことを目的に開催しており、今年で5年目を迎えました。
現地見学会には秋田市の参加者を中心に80名が参加し、仙北地域の農山村の魅力を体験してきました。
1. 六郷湧水群(美郷町旧六郷町)
最初に訪れた場所、そこは「名水百選」でもその名を全国にも知られる六郷湧水群。20以上の湧水が町内に点在していますが、その中で今回訪れたのは「御台所清水」、「キャペコ清水」、「藤清水」、そして「御伊勢堂川」。地域の案内人の方々に、湧水の歴史・四季の変化やおすすめスポットを説明してもらい、「御台所清水」では実際に湧き上がる湧水を味わいました。
また、きれいな湧水や湧水性の水路に棲むイバラトミヨ(ハリザッコ・トンギョ)が六郷にも生息しており、当日は案内人の方が捕獲してくれたイバラトミヨを見ることが出来ました。
2. 関田円筒分水工(美郷町旧六郷町)
農業用水の安定供給・合理的配分を目的に昭和13年に完成した「関田円形分水工」。水土里ネット七滝(秋田県七滝土地改良区)の藤岡事務長から分水工の歴史と役割を説明していただきました。
円の中心に湧き上がる独特の水音の迫力と、180のオリフィス(孔)から流れ落ちる水の美しさの調和に参加者のみなさんは見入っていました。
3. 七滝涵養林と棚田(美郷町旧六郷町)
奥羽山系七滝山に251haの広さを有する七滝涵養保安林。土地改良区が所有するという全国でも珍しい涵養林のふもとで、七滝土地改良区の藤岡事務長に涵養林の歴史や形成している樹種の説明を受けました。人工林である杉が約半数、残り半数が天然の広葉樹(主にブナ・ミズナラ・トチ・ケヤキ)の構成となっている涵養林。上流部ではほとんどがブナ林だそうです。熊やイヌワシも生息しており、藤岡事務長は何度も熊を見かけているそうです。
七滝涵養林を見学後、参加者はふもとに広がる棚田にて七滝山をバックに記念撮影となりました。写真でも分かるように、畦畔の草刈りを行っている管理の行き届いたすばらしい棚田を目にすることが出来ました。当日の炎天下の中も草刈りに汗を流す農家のみなさんの姿を目にしました。 黄金色に変わりつつあるたわわに実った稲穂。
4. 坂本東嶽邸(美郷町旧千畑町)
旧千屋村の発展に尽くした衆議院・貴族院議員であった坂本理一郎(東嶽)。現在でもその名残が千屋地区には残っており、松・杉並木、また一丈木公園もその一つです。
今回訪れた坂本家の旧邸宅。現在の建物は明治29年の陸羽地震で倒壊後に再建した建物で、当時の規模よりは縮小されていますが、それでも敷地内の母屋や土蔵に展示される調度品や生活雑貨、また庭園の様子から当時暮らしぶりをうかがい知ることができました。
菖蒲太鼓鑑賞
邸内を見学後、母屋前にて菖蒲太鼓の演奏となりました。約20分間の一糸乱れぬ和太鼓の演奏に参加者からは大きな拍手が送られました。鼓動が胸にも脳にも直に響き伝わるすばらしい演奏でした。
また、地域の子供たちや年配の方々も集まり、なかなか見ることの出来ない和太鼓の演奏に聴き入っていました。
昼食は坂本邸の母屋と離れにて、地産地消弁当をいただきました。落ち着いた佇まいの坂本邸、そのありのままの雰囲気を堪能してほしいという気持ちから、今回あえてテーブルや座布団は準備せず、和室や縁側で景色を眺めながら食事をしていただきました。
ブラボー中谷マジックショー
参加者にとってのサプライズゲストとして今回出演してもらった海外でも活躍するブラボー中谷さん。出身が地元千畑という繋がり、また出演交渉の際にはブラボーさんも以前ここに訪れ、「このような地元の歴史と風情のある場所でマジックショーが出来たら・・・」という思いが合致し今回の出演となりました。
宙に浮くテーブルや手錠マジックなど本格的なマジックをこんなにも間近で見ることが出来た喜びはもちろん、魔術ならぬ秋田弁の超話術に会場となった坂本邸の母屋は大歓声と大爆笑の渦に包まれました。
5. 史跡 払田柵跡(大仙市旧仙北町)
平安時代の役所跡といわれる払田柵を訪れた一行。そこで参加者を迎えてくれたのは地元仙北農産加工部会のみなさんによる餅つき披露でした。途中からは参加者も餅つきに加わり餅つき体験を楽しみました。地元仙北産の餅米を使った餅はおみやげとして参加者に振る舞われました。
堀見内ささら鑑賞
餅つきを楽しんだ後は、払田柵正門にて地元仙北に伝わる芸能「堀見内ささら」の鑑賞となりました。 「ささら」は角館や中仙地区にも伝えられていますが、「堀見内ささら」は慶長7年(1602年)の佐竹氏入部以前よりこの地区に伝わるとされ、田畑の病害虫払いや五穀豊穣・家内安全を願うための舞いで8月19日に行われる行事です。後継者不足は他人事ではないとのことでしたが、40代中盤の方も一員となっているということで、末永くこの伝統が守られてほしいものです。
6. 池田氏庭園(大仙市旧仙北町)
今回、この場所の見学を楽しみにしていたという参加者も多かった国名勝「池田氏庭園」。庭園としては県内初の国指定名勝となったこの庭園は、秋田市千秋公園の設計を手がけた長岡安平の設計によるもので、敷地を上空から見ると池田氏の家紋に合わせた六角形になっています。通常は年2回の公開ですが、池田家と大仙市のご厚意により今回特別に見学することができました。
池田氏家紋が彫られた重厚な造りの薬医門、また現在補修工事中の県内初の鉄筋コンクリート造りの私設図書館や日本最大級の雪見灯籠などを大仙市文化財保護課の職員のみなさんや案内ボランティアの方に説明してもらいながら見学しました。
参加者からは、「何度も見に来ているけれど、来る度に違う景色なのが驚き」、「紅葉の時期に来てみたい」との声も。
7. 酒蔵見学〜鈴木酒造店〜(大仙市旧中仙町)
今回の現地見学会最後の見学箇所となった、鈴木酒造店。「秀よし」の銘柄で有名なこの酒造店のご協力で酒蔵見学をさせていただきました。元禄2年創業、佐竹藩御用酒に優るとして「秀でて良し→秀よし」となった等の由来を持つそうです。
歴史ある家屋や酒米を蒸す「和釜」や麹室、蔵の中を案内してもらい、特に蔵の中のひんやりとした空気と芳醇な香りには酒飲みではない人も心地よさを感じたのではないでしょうか?
ドンパン踊り鑑賞
「ドンドンパンパン~・・・」のフレーズで有名なドンパン節。全国的にも有名なこの民謡は円満蔵さんと呼ばれた高橋市蔵氏作の甚句が基になっており、その名をとり「円満蔵甚句」と呼ばれています。今回7名の踊り手のみなさんが「ドンパン節」・「円満蔵甚句」の2曲で踊ってくださいました。
終わりに
今回参加いただいたみなさんに、アンケートとともに見学会の感想やご意見の声をいただきましたので以下にその声の一部を掲載します。
- 「参加は3回目ですが、秋田県には色々の農山村があり、都市よりがんばっている様子
が直に見られて勉強になります。秋田県も捨てたものではないですよね。」 - 「この見学会で地元秋田にもまだまだ見きれていない、いえ、見なければいけない場所が多々あったのだと再認識しました。」
- 「中山間地に住む身として、もう一度周りを見渡し、考えさせてもらおうと思いました。」
- 「1日で湧水や中山間地、それに秋田の史跡等が見学出来て大変良かった。」
- 「都市住民に農業のおもしろさや大変さを理解してもらうために、農家の方々と直接意見交換できる場を持ってもらうことも計画してもらいたい。」
- 「農山村が失われていくことは人間生活においてとても悲痛なことであることを実感しました。なんとしてもこの大切な状況を守っていかなければならないと思います。」
今回で5回目を数えた現地見学会、見学箇所も多くまた30℃を超える暑さもあって、参加者にとってはとてもハードなイベントだったかもしれません。それでも農山村や中山間地の自然、そこに暮らす人々の営みや文化に触れることによって、少しでも心に響くものを見つけ、関心を持ってくださればこの現地見学会は開催した意味があったといえます。
最後に、今回の現地見学会には準備段階から見学会当日まで、美郷町・大仙市を始め多くの方々にご協力賜りました。準備にあたっては表には出ない苦労も随分多かったかと思います。ご協力頂いたすべてのみなさんのお陰で無事現地見学会を終えることが出来ました。みなさん本当にご苦労様でした。そして、ありがとうございました。
県では来年度も「秋田県中山間ふるさと水と土現地見学会」の開催を予定し、秋田県内の中山間地が持つ魅力を県民のみなさんに紹介していきますので、多数ご参加いただきたいと思います。
現地見学会〜昨年までの取り組み〜(平成16年〜平成19年)
- 平成16年9月10日~開催場所:北秋田市旧阿仁町
- 平成17年9月11日~開催場所:湯沢市・羽後町
- 平成18年9月9日~開催場所:能代市・藤里町・三種町
- 平成19年9月9日~開催場所:由利本荘市・にかほ市