写真:「あきた滝300」表紙

 「美しき水の郷あきた」を象徴する写真集を紹介する。
 「あきた滝300」(佐藤俊正著、秋田魁新報社、2,300円+税)である
 元来、日本人は、山水を好む。
 沢を登り滝詣でをする登山形態は、日本だけのものである。
 日本人が好む山水画は、屹立する岩壁と美しい渓谷、滝の幽玄な美を表現している。

 清冽な水と緑したたる深山幽谷は、「美しき水の郷あきた」を支える原風景でもある。

 水は命の源であり、とりわけ「米の国・秋田」の人々にとっては、深い信仰の対象とされてきた。その清冽な水の最たるものは、やはり滝である。

 みこしの滝浴びや仙人修行・滝打たれ、雨乞いの滝、滝の傍らに水神様を祭る祠など、滝そのものを神として崇め、五穀豊穣、無病息災を祈る祭りや石仏も多く見られる。

写真:写真集「あきた滝」

左)みこしの滝浴び(八森):みこしが滝に入るのは、全国でもここだけ。8月1日、五穀豊穣、家内安全などを祈願し、男衆が滝壷に飛び込さまは、夏の暑さを吹き飛ばす勇壮な夏祭りだ。
右)仙人修行・滝打たれ(東成瀬村)。最近は、外国人の参加も珍しくないという。

 秋田の森と渓谷に分け入ると、美しく透き通った水が無尽蔵に流れていることに驚く。
 著者である佐藤俊正さんは、重い機材を背負い、清冽な水をけって、渡渉を繰り返す。突然、行方を阻む神々しいまでの滝が出現する。

 危険が伴う淵や絶壁の廊下、激流、草付けの滝を高巻き、ひたすら未知の滝を求めて十数年。その滝は四季折々、千変万化し、鬱蒼とした森をバックに新鮮な感動を与えてくれる。その滝の魅力を余すところなくカメラに記録してきた。

 特に目を引くのは、誰もが簡単に見ることができない深山幽谷の滝も多く掲載されている点だ。 それだけに、写真集の滝一枚一枚に佐藤さんの苦労と感激が滲んでいるのがわかる。

 この写真集の副題には「フォトガイド名瀑紀行」とある。掲載された清冽な森と滝は、写真を見ているだけで心が洗われる思いがする。 滝の名称やコース案内、さらには難易度マークが3段階に分けて記されている。
 一人でも多くの方々が、このガイドブックを片手に、実際に自分の手と足で歩き、秋田の貴重な財産・滝の魅力を再発見していただければ幸いである。

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外部リンク

写真:佐藤俊正

ご協力をいただいた佐藤俊正さんのプロフィール

略歴

  • 1948年 秋田県北秋田郡比内町生まれ
  • 1971年 日本大学経済学部卒業
  • 1974年 秋田県庁に入庁。県庁各課所に勤務
  • 1987年 勤務のかたわら、秋田県内をフィールドに滝の写真や朝日・夕日の写真を撮り始める。
  • 2005年  現在、秋田県産業経済政策課 活き活き物産応援チーム勤務。
  • その他の趣味 書道、釣り、スキー、山登り

「あきた滝300」ご覧になる方は下記の各コンテンツよりどうぞ。

外部リンク深谷

幽谷の滝