令和4年10月26日(水)、田沢二期地区における国営造成水利施設ストックマネジメント推進事業及び国営田沢二期農業水利事業の現場研修が開催され、仙北地域振興局の農村整備課職員が参加しました。

 田沢二期地区は雄物川水系玉川を水源とする受益面積4,697㏊の農業地帯です。事業工期は平成23年度から令和6年度を予定しています。昭和12年度から37年度に実施された国営田沢疏水開墾事業や昭和38年度から45年度に実施された国営第二田沢開拓建設事業より造成、改修されましたが、基幹水利施設の漏水や老朽化が著しいことから平成23年度より国営田沢二期農業水利事業として開始されました。

 今回の研修では、第二田沢幹線用水路における杉沢トンネル及び抱返頭首工整備工事を対象に各現場を調査しました。

 杉沢トンネルで実施した調査では、トンネル内部における表面のひび割れや湧水を目視で確認し、モルタル調査ハンマーやニンニク玉打診棒と呼ばれる器具を使って表面化からでは確認ができない部分の調査を実際に体験しました。昭和40年度に施工された古いトンネルであるため、アーチ部分のブロックに所々維持管理に影響のない亀裂や剥離がありましたが、側面は亀裂や欠損もなく全体的にきれいな印象でした。ニンニク玉打診棒は、棒の先に凹凸のあるボールのついたもので、壁をなぞると先端のボールが回転して「ガガガ」と音が出るものでした。トンネル背面に空洞や異常があると音が少し変わるようです。大きな機材が必要ないため、不安定で長いトンネル内でも効率的に調査ができる画期的な方法だと感じました。

                      

       取水・放流設備全景と令和4年度整備概要 

 抱返頭首工整備工事見学では取水口へつながる水路トンネルを通って、遊歩道の下から頭首工を見上げるように現場を確認してきました。現在の抱返頭首工は2代目のものであり、昭和54年度から平成元年度にかけて実施された国営田沢疏水農業水利事業によって昭和63年度に完成したものです。現在、進められている改修計画では令和3年度に固定堰の補修及びスクリーンの交換が完了し、令和4年度は取水設備及び放流設備の大規模整備が行われる予定です。

タワークレーン(中央)とポールがついたバックホウ(左) 

水路トンネル内部

水路トンネル内部

 令和4年度の工事では、ほぼ全ての重機や資材を水路トンネルから分解して搬入しており、タワークレーンはパーツごとに分解したものを約30往復して現場に搬入したとのことでした。令和4年度は雪解けで水位が大きく上昇する3月の第一週ころまで施工するそうです。作業員の方には安全に注意して作業して頂きたいと思いました。狭い現場であるため、人と重機の距離が近く感じましたが声かけや合図の徹底、バックホウの旋回範囲に人が入らないようポールを立てるなど事故を未然に防ぐ工夫が随所に見られました。クレーンや重機が稼働していたため頭首工を間近で見学することはできませんでしたが、遠目からの見学でも腐食や塗装の剥がれが確認できました。
 今回の田沢二期地区現場見学では、普段は見られないような調査や工事を見学させていただけたためとても印象に残りました。安全対策はどの工事にも応用できるので取り入れていきたいと思います。特にバックホウは様々な工事で使用するため取り入れやすいと思いました。農業農村整備事業は自然を相手にする事業が多いので、周りの環境や気候にも目を向けて計画や工事を行っていきたいと感じました。