画像 :交流会の様子

平成28年1月28日(木)、横手市平鹿生涯学習センターで『2015語り部交流会inあきた~農業農村の「水のつながり」は「人のつながり」~』を開催しました。
この催しは、地域の農業や農地、並びに水路・頭首工などの農業水利施設等について、歴史や先人の労苦を語ってもらい、次世代に継承するとともに、地域の活性化につなげてもらうことを目的に行われております。
秋田県では平成23年から開催しており、5回目となる今回は、横手平鹿地域を会場に秋田県土地改良事業団体連合会平鹿支部と秋田県平鹿地域振興局農林部が主催し、横手市、秋田県土地改良事業団体連合会、あきた食料・環境・ふるさとを考える地球人会議の後援により行われました。

 

画像 :会場の様子

当日は県内一円から350人が参加し、講師の方々の「語り」に熱心に耳を傾けていました。

 

画像 :柴田支部長による挨拶

はじめに、主催者を代表して秋田県土地改良事業団体連合会平鹿支部長の柴田康二郎氏(現 秋田県雄物川筋土地改良区理事長)より開会の挨拶がありました。

 

画像 :菅原所長による基調講演

続いて、あきた森づくり活動サポートセンター所長で、秋田県ふるさと水と土指導員の菅原徳蔵氏より、「水で結ばれた水系社会~山城堰に学ぶ~」と題して基調講演をしていただきました。

 

画像 :菅原所長の講演の様子

菅原氏は県庁在籍時から、毎回、「語り部交流会inあきた」で基調講演をしていただいています。
今回は、藩政時代に佐竹東家によって作られた山城堰と、人々が雄物川の水を制御するために絞った知恵や工夫について講演していただきました。
山城堰は正式名称を五ヶ村堰といいますが、佐竹東家の受領名が「山城守」だったことから、地域の人々は佐竹東家を尊んで山城堰と呼んだのだそうです。

 

画像 :太田氏による実践報告

次に3人の方から実践報告がありました。
山城水系土地改良区職員で、Akitaふるさと活力人の太田剛史氏からは、「山城堰と堰根祭り」と題して報告をしていただきました。

 

画像 :太田氏による報告

300mもある雄物川全幅をせき止める「草止め」は、洪水のたびに流され、製作と維持は農家にとって大きな負担でした。
コンクリートの頭首工になってからは破損・流失の心配は減りましたが、通水の無事を祈り、先人たちの苦労と水の大切さを後世に伝えるため、今も堰根祭りを続けているそうです。
(関連ページ)「山城堰の歴史」(太田氏が、全国農村振興技術連盟会誌「農村振興(H27年1月)」に寄稿した文章を編集したものです。)

 

画像 :酒井校長による実践報告

横手市立黒川小学校校長で森林インストラクターの酒井浩氏からは、「森と水と子ども」と題して報告をしていただきました。

 

画像 :酒井校長による実践報告

報告では、子供が森や水などの自然と親しむことの重要性について話をしていただきました。
自然体験を重ねた子どもは「道徳観・正義感」が強く、また「集中力」が高い傾向にあり、自然体験は「生きる力」につながるのだそうです。

 

画像 :森谷理事による実践報告

平鹿町土地改良区理事で株式会社浅舞酒造杜氏の森谷康市氏から、「地域の水の保全・酒造り」と題して報告をしていただきました。

 

画像 :森谷杜氏による実践報告

浅舞地域は湧水地帯で、200年前の絵図に描かれた琵琶沼は現在も残っています。
ある干ばつの年、森谷氏は子どもと水源探して、自分の平鹿町の田んぼから水路を遡って、皆瀬頭首工まで行ったそうです。十文字を過ぎると水量は半減し、水源はカラカラの状態だったそうです。しかし、酒蔵の湧水は変わらずコンコンと湧いていました。この時、初めて川には2つあり、田んぼに入る川(用水路)と、地下を流れる川(湧水)があることを実感したそうです。
川の水で稲が育って、地下水が仕込み水になる、と知った森谷氏は、「この横手盆地を丸ごと酒瓶に詰め込みたい」との思いから、酒蔵から目に見える範囲の半径5kmの田んぼからとれる米と水だけで酒を造ることにこだわり、さらに20年かかって蔵で造る酒をすべて純米酒に切り替えたそうです。

 

画像 :コーディネーターの平元氏

実践報告に続いておこなわれた「語りフォーラム」では、「まちづくりファシリテーター」として活動されている平元美沙緒氏にコーディネーターをしていただきました。
平元氏は国土交通省秋田河川国道事務所主催の「秋田地区かわまちづくり」にファシリテーターとして参加されていたほか、大森地域グリーン・ツーリズム推進協議会が主催する「棚田オーナー」にも、かつて参画されておりました。

 

画像 :フォーラムの様子

語りフォーラムでは、『農業農村の「水のつながり」は「人のつながり」』をテーマに、実践報告をしていただいた3氏から「取り組みをして良かった点」、「苦労した点」、「今後の展望」についてお話していただきました。

 

画像 :瀧川参事の報告

オブザーバーとして、秋田県農林水産部農地整備課瀧川拓哉参事(兼)課長から感想をいただきました。

 

画像 :瀧川参事による発表

また、瀧川参事からは、地元の方々が行ってきた農業水利施設の保全・継承に対して国や県が行っている支援と、小学5年生の娘さんが、使っている小学校社会科の副読本で、石川理紀之助や渡辺斧松の業績を学んでいること、また、本日の山城堰も副読本の地図に記載されていることが紹介されました。

 

画像 :長沢部長による閉会の挨拶

最後に、秋田県平鹿地域振興局農林部長沢淳良部長が「今日の講演内容を地域の方々や子供たちに、みなさんが『語り部』になって伝えていただけると幸い」との閉会の挨拶をしました。

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