水稲新品種「あきたこまちR」を紹介します!
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国内における米のカドミウム基準値が0.4ppmであるのに対し、海外では、より厳しい基準(※)が設定されており、それに合わせて国内基準が見直されても対応できるようにする必要があります。
米産県である秋田県としては、どこよりも早くカドミウム低吸収性品種を導入し、従来の「あきたこまち」から「あきたこまちR」に切替えることで、国内外の消費者に、これまで以上に安全な米を安定的に供給し、食料供給基地としての使命をしっかりと果たしてまいります。
生産者や実需者、消費者の方々に対しては、丁寧な説明と科学的知見に基づく正しい情報の発信により、周知と理解醸成に努めてまいります。
※海外における米のカドミウム基準値は、香港、シンガポールで0.2ppm、EUで0.15ppmとなっています。
【更新情報】 2024年9月26日 「あきたこまちR」って何??(一問一答集)とリンクを更新しました!
【 秋田県からのお願い 】 現在、SNS等で、カドミウム低吸収品種「あきたこまちR」に関して不安を煽る情報や、県内農業者など個人に対して誹謗中傷と受け取れる発信が目立っております。
特に、個人に対するインターネット上の誹謗中傷は、軽い気持ちであっても許されるものではなく、内容によっては名誉毀損罪や侮辱罪等の刑事事件に問われる場合があります。
なお、県としましては、引き続き、県ウェブサイト等で科学的知見に基づく正しい情報発信を行うとともに、関係機関と一体となって、生産者や消費者の方々の理解促進に努めてまいります。
「あきたこまちR」に関心の高い皆様方におかれましては、冷静な判断と行動を何卒よろしくお願いします。
※警察庁「インターネット上の誹謗中傷等への対応」を参考にしてください。
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1 「あきたこまちR」について
「あきたこまち」に、国が育成したカドミウム低吸収性品種「コシヒカリ環1号」を交配し、得られた個体に「あきたこまち」を7回戻し交配(※)することで育成した品種です。
※戻し交配は、特定の形質をほかの品種から取り入れつつ、片親の品種特性に限りなく近づける場合に利用されます。「あきたこまちR」の育成では、「あきたこまち」と同等の品種特性とするため7回交配しております。
【 各種リーフレット 】
〇生産者の皆様へ
〇消費者の皆様へ
2 奨励品種への採用について
出穂期、成熟期、収量、玄米品質、食味等が「あきたこまち」と同等で、カドミウム吸収性は極めて低い特性が認められたことから奨励品種に採用しました。
3 今後の進め方
(1)導入スケジュール
・令和5年度 原種生産開始
・令和6年度 一般種子生産開始
・令和7年度 一般作付開始(切替え)
(2)流通段階の表示
「あきたこまちR」は、「あきたこまち」と形質や品質に差がないため、産地品種銘柄を品種群として設定し、「あきたこまち」として表示できるように手続きを進めております。
(3)「あきたこまちR」への切替えの背景についてはこちら
4 放射線育種により育成された「コシヒカリ環1号」の安全性について
放射線育種された品種のお米は、生育中の水稲や収穫後のお米に直接放射線を照射しているものではなく、育種の最初の段階で、一度だけ放射線を照射して突然変異を起こさせたものです。その後、農業上有用な性質を持った個体を何世代も選抜しているので、新しい品種として登録されるまでには、何年も経過しております。したがって、お米に放射線が残っていることはなく、もちろん自ら放射線を出すものでもありません。
自然界でも宇宙線や大気、大地などからの自然放射線で突然変異が発生しています。放射線育種は、このような自然放射線による影響と同じ種類の効果を放射線の照射によって短期間で得る手法で、お米だけでなく野菜や果樹など様々な品目の育種でも使われています。
コシヒカリ環1号も、この技術で育種された品種であり、従来の手法で開発されたお米と同様に安全なものです。
5 「あきたこまちR」って何??(一問一答集)
「あきたこまちR」がよく分からない?放射線育種なの?安全性は?などについて、分かり易く解説するよ。
【小町さん】 【秋田さん】
(1)「あきたこまちR」について
「あきたこまち」は、全国の消費者から長年親しまれてきた米だけど、今度、「あきたこまちR」という品種に替わるって本当なの? |
そうなんだ。令和7年から「あきたこまちR」に切り替わる予定だよ。 |
「あきたこまちR」ってどんな米なの? |
秋田県はもともと鉱山が多かった地域で、そこから流れ出た重金属のカドミウムが田んぼに蓄積されたところがあるんだ。そこで米を栽培すると、特に田んぼが乾いたときにカドミウムが吸われて米粒に少し入ってしまうことがあるんだけど、「あきたこまちR」はほとんどカドミウムを吸わない品種なんだ。
今までは、稲の穂が出てくる時期に長期間田んぼに水を入れたままにすることで、カドミウムを吸わないようにしてたんだけど、そうした管理が不要になるんだ。
カドミウムを吸わない以外は、今までの「あきたこまち」と味や特徴はほとんど同じなんだよ。
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(2)「放射線育種」について(コシヒカリ環1号)
実は、友達から聞いたんだけど、「あきたこまちR」の先祖の品種「コシヒカリ環1号」は放射線を照射して品種改良したんだって?安全性に問題はないのかな? |
「コシヒカリ環1号」は、「コシヒカリ」の種子に1度だけ放射線を照射して突然変異を誘発し、カドミウムをほとんど吸わない株を、6世代以上栽培し、選抜を繰り返し育成された品種だよ。 放射線育種は、50年以上も前から多くの農作物の品種改良に使われてきた一般的な品種改良の方法で、自然界でも起きる突然変異を効果的に利用できる手法なんだ。「コシヒカリ環1号」は、人体に有害な放射線を発することはなく、安全なものなんだよ。 「あきたこまちR」は、その「コシヒカリ環1号」と「あきたこまち」を交配した株に、さらに7回も「あきたこまち」を交配してできた500株の中から、「あきたこまち」と味や特徴が同等で、カドミウム吸収性が極めて低い株を選抜した、「交配育種」による品種なんだよ。 もちろん、遺伝子操作した米ではないから有機栽培としても認められるし、例えばEUなどにも有機農産物として輸出できるんだ。 |
「放射線育種は50年以上も前から使われてきた一般的な品種改良の方法」なの? これまで作られたものにはどんな農作物があるの? 普通に食べられているの? |
放射線育種により品種改良された主なものとしては、米では冷害に強い「レイメイ」や倒れにくい「北陸100号」、大豆では病気や害虫に強い「ライデン」があるよ。 それらを先祖にもつ品種がたくさん誕生し、長年にわたって各地域で作付けされていて、今も普通に食べられているよ。多くの人が、何十年も前から食べているけど、問題なんて報告されていないよ。 ほかにも、小麦、タマネギ、ナシ、モモ等で様々な品種が誕生し、一般的に流通しているよ。 |
【水稲育種の有識者(育種専門家)の御意見】 また、「コシヒカリ」のガンマ線照射による突然変異である「北陸100号」の後代品種「キヌヒカリ」も長年、良食味品種として栽培されている。 放射線突然変異品種の食経験は十分蓄積されており、過去にそれで問題は生じていない。 |
でも、「コシヒカリ環1号」の品種改良に使用した重イオンビームは、従来のガンマ線よりはるかに強いエネルギーがあり、人に照射すると危険と聞いたけど本当に大丈夫なの? |
それぞれの放射線による影響の度合いが異なるから、人に照射して危険なレベルと植物への照射線量を単純に比較することは科学的に意味がないんだよ。 さらに言うと、がん治療では、全身に浴びると危険とされるレベルを超える放射線量を患部に照射し、人々の病気を治している事実もあるんだ。 |
【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)による御意見】 |
そうなんだ。でも、自然界でも起きる突然変異と同じ効果と言うけど、自然界で起こるDNAの損傷は1本鎖だけで、重イオンビームはDNAの2本鎖とも傷つけて切断してしまうって聞いたよ。未知の毒性の強いタンパク質ができたりすることはないのかな? |
自然界でもDNA2本鎖が切断されることはあるんだ。多くは元通り修復されるけど、修復ミスが起こると突然変異となるんだ。でも、これまでと異なる新たなタンパク質が作られることはほとんどないし、さらに毒性が生まれることもほとんどないんだ。仮にあったとしても、品種選抜の過程で廃棄されるしね。突然変異遺伝子を持つ米を心配するより、カドミウム濃度が高い米を減らすことの方が重要だよ。 |
【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)による御意見】 また、自然界には放射性の核種が多くあり、特にカリウム40は、カリウム肥料など天然のカリウムに0.01%以上含まれる。これはβ線を出すが、一部(約1割)ガンマ線も放射する。地中のあるいは植物体内のカリウム40により植物体は放射線を受けており、DNAに当たれば2本鎖切断も起こる。修復ミスが頻繁に起きて、突然変異が起こるが、突然変異が起こった植物体、あるいは突然変異遺伝子を含む品種が危険というわけではない。 |
【国立大学名誉教授(専門:植物遺伝育種学)の御意見】 |
(3)「あきたこまちRへの切替え」について
「切替え」ってことは、強制的に従来の「あきたこまち」は作るなってこと?作る自由はないの?なんか抵抗感があるよね。 |
「切替え」とは、県内の種場から供給される種子が「あきたこまちR」に切り替わるってことなんだ。 だから、自家採種したり他県から種子を買って、従来の「あきたこまち」を作付けすることはできるし、従来の「あきたこまち」であることを表示して販売することも可能だよ。 |
「あきたこまちR」は自家採種できないの? |
うーん、それはね、できないんだ。「あきたこまちR」は自家採種をすると、品種の特性であるカドミウム低吸収性が失われる可能性があるからなんだよ。 そもそも、「あきたこまち」だって自家採種せず、毎年種子購入して栽培している農家がほとんどだよ。 |
カドミウムが吸収されやすい地域だけで「あきたこまちR」を作ればいいんじゃない?やっぱり切替えしなきゃダメなのかな? |
これまでも、安全な米しか流通していないんだけど、今のままでは、県内の多くの地域で、稲の穂が出てくる時期に長期間田んぼに水を入れ続ける必要があるんだ。 また、海外の一部の国や地域でさらに厳しいカドミウムの基準を設定している国もあるから、今後、そのような基準に合わせて国内基準がより厳しくなったとしても対応できるように「あきたこまちR」への切替えが必要なんだよ。 さらに、米産県として海外にも販路を拡大することを考えれば必要なことなんだ。 それにね、海外の国ではヒ素の基準が決まっている場合もあるんだ。ヒ素の吸収を抑えるには、カドミウムと全く逆で、田んぼを乾かす水管理が求められるんだよ。 だから、米産県として将来を見据え、海外のより厳しい基準にも対応した米を国内外の消費者にお届けするためにも、県全域で「あきたこまちR」に切替えするんだ。 |
「あきたこまちR」への切替えについて、米の流通や販売に関わっている人たちはどう思っているの? |
従来の「あきたこまち」よりカドミウムを吸収しないし、味も品質も変わらないから、「あきたこまちR」になっても問題ないといった声が多いよ。 それに、同じような品種が2つ流通することは混乱を招くとも言っているよ。 |
(4)「マンガン」について
近所の農家さんが気にしていたけど、「あきたこまちR」は、これまでの「あきたこまち」の栽培方法と同じでいいの? |
稲の穂が出る時期や米粒が成熟する時期、収量や品質は「あきたこまち」と同等なんだ。基本的に、県内のほとんどの地域でこれまでと同じ栽培管理でいいんだよ。 ただし、「あきたこまちR」は、カドミウムと共にマンガンの吸収も少ないから、地力が低く「秋落ち」が認められる一部の水田では、「ごま葉枯病」が発生する場合があるので注意が必要だよ。 |
そのための対策はあるの? |
植物は生長に必要な微量要素がなければ生育できないから、お米ができるということは、必要な量のマンガンは十分吸収できている証拠だよ。だから、全部のほ場にマンガンを入れないといけない訳ではないんだ。 一般的に、田植え時に「いもち病」対策などでも使われている農薬の種類を工夫すれば問題にならないよ。 そもそも、稲づくりの基本は「土づくり」だから、品質が高くて安定的に収量がとれるように、地力の向上に努めることが大切なんだ。 |
近所のお母さんが心配していたけど、マンガンの吸収が少ないということは、その米を食べるとマンガン欠乏にならないの?子供の発育に心配はないの? |
マンガンは人間にとって必須の栄養素で、食べ物から摂取しているんだ。でも、米だけでなく野菜やお茶など、植物性の様々な食べ物から摂取しているから、バランス良く食事をしていればマンガン欠乏になることはないよ。 |
そうなんだ。ありがとう。また、解らないことがあれば教えてね! |
※これらの回答は、科学的知見及び農林水産省や学識経験者の意見を参考に作成しています。
〇「あきたこまちR」って何??(一問一答集)のPDFファイルはこちら
・「あきたこまちR」って何??(一問一答集) [1706KB]
〇「あきたこまちR」って何??(一問一答集)追記のPDFファイルはこちら(NEW)
・「あきたこまちR」って何??(一問一答集)追記 [110KB]
6 「あきたこまちR」に関する有識者の見解
水稲育種等の有識者から「あきたこまちR」に関する見解をいただきましたので掲載します。
〇「あきたこまちR」に関する有識者の見解のPDFファイルはこちら
〇「放射線育種」と「戻し交配育種」に関する説明のPDFファイルはこちら
・「放射線育種」と「戻し交配育種」に関する説明 [75KB]
7 リンク
〇一般社団法人 日本育種学会が「突然変異を利用した作物育種の安全性と重要性に関する声明」を発表しました。
〇国の農林水産技術会議が「放射線育種」について説明しています。
〇秋田県農業試験場参観デーにおける農業技術セミナーで説明があった「あきたこまちR」の栽培技術情報について紹介します。(NEW)