本荘電気工業 株式会社(秋田市/総合電気工事)

step01 第1回専門家派遣

2023年11月、本講座の担当専門家である平松しのぶ氏(株式会社モザイクワーク)が本荘電気工業株式会社を訪問し、採用力拡大にかかる課題の整理と採用戦略の策定を行いました。
 
【課題】
創業以来70年以上、秋田県に根付いて建設業(電気設備工事)を展開する同社では、募集と選抜後フォローのフェーズで課題を感じていました。特に、内定者へのフォローの実施ができていないないほか、理系学生へ情報を届けるための効果的なSNSの運用についても興味関心を持っていました。
 
【支援・取組内容】
  1. 大卒採用において、就活サイト等を活用した採用活動を実施しているが、応募者が少なく、特に技術職の応募が少ないことが課題となっている。ターゲットとなる工学科の電気・電子等学生へのアプローチのため、ダイレクトリクルーティングの運用を検討することとした。
  2. 学生に向けて自社をPRするために、施工実績など、学生自身のキャリアパスをイメージできる内容が重要であることを伝達。若手社員へ入社理由や他社との違いをヒアリングし、発信材料とするという方向性とした。
  3. 内定後のコンタクトが現状少ないため、大卒者の内定後フォローにも活用することを目的に、使用するSNSを検討する。
  4. 大学訪問時のポイントを伝達し、訪問回数等について、見直すこととした。
【今後の取り組み】
  • 採用方法を見直し、待ちの採用ではなく、ターゲットとなる学生を自社から取りに行くよう、募集に関し見直しを行う(ダイレクトリクルーティング等)。
  • 若手社員へのヒアリング内容を踏まえた自社のPRポイント等を整理し、得られた情報を求人票や今後運用するSNS等へ反映させ特に、スポーツや趣味などのプライベート部分をSNSで公開し、自社のワークライフバランスを知っていただく一環とする。
 

step02 第2回専門家派遣

2023年12月、本講座の担当専門家である平松しのぶ氏(株式会社モザイクワーク)が本荘電気工業株式会社の採用力拡大にかかる課題の整理と採用戦略の策定支援(2回目・オンライン)を行いました。
 
【支援・取組内容】
  1. 採用ターゲットのすり合わせを実施。対象となる電気・電子制御を専攻する学生が少ないため、「自社の中で教育していく」ことも視野に入れる、「Uターン者を狙う」など方向性の案出し及び、それに伴い必要となる事項について共有を行った。また、メッセージを打ち出すにあたりSNS(X、Instagram)を活用する方向性となった。
  2. 社員ヒアリングを実施し、求人票でチェックしていたポイントや、記載したほうが良い内容などの聞き取りを行い、ヒアリングした内容を求人票に反映することとなった。
  3. 内定者向けのイベントについてアドバイスを実施。内定者にはこれから同僚となる社員との良いスタートを切る場としてとらえていただくなど、実施における目的の共有の他、内定者同士の交流を促進するためのプログラムについて、案出しを行った。
  4. 内定者フォローとして、内定者に情報共有に向けたSNSの活用においてのアドバイスを実施。他社事例を交えながら自社ならではの魅力を伝えることの重要さをお伝えした。日常のエピソードや業務の裏側など、リアルさをアピールすることをアドバイスした。
【今後の取り組み】
  • SNS運用メンバーの確定
  • 内定者フォローの実施(内定者イベントの実施)

step03 第3回専門家派遣

2024年2月、本講座の担当専門家である平松しのぶ氏(株式会社モザイクワーク)が本荘電気工業株式会社を訪問し、採用力拡大にかかる課題の整理と採用戦略策定支援を行いました(3回目)。
 
【支援・取組内容】
  1. 情報発信におけるSNSの効果的な運用
  2. 内定者フォローの実施
【成果】
  • 新たにX(旧Twitter)とInstagramを運用することとし、社内で9人の担当チームを発足。本格稼働を予定し、社内で検討を進めている。
  • 内定者フォローのため、内定式を実施。座談会を初めてプログラムに取り入れた。社内からの意見も取り入れながら進めたことで、社内理解も順調に進めることができた。
  • 中途採用のため、ダイレクトリクルーティングを実施していくこととした。求職者が動く1月~3月上旬、また賞与が決まるGW開け頃などがねらい目となる。スカウトに向け、スケジュールの立て方や文面の見直しなど、具体的なアドバイスを実施した。
【課題・今後の取り組み】
  • SNS投稿スケジュールや内容を検討し、本格的に運用していきたい。
  • 中途採用に向け、スケジュールや文面等を見直しながら、ダイレクトリクルーティングを活用していきたい。
  • 新卒採用(電気・電子制御を専攻する学生など)に向け、効果的な採用手法を検討していきたい。

step04 インタビュー記事

ITを専門とする社員を中心にSNSを活用。女性が活躍できる新たな部署も発足

受講して改めて気づいたSNSの必要性
Q.採用力拡大支援事業「実践講座」に参加されたきっかけを教えて下さい。
 
A.
これまで会社全体として採用活用に対する体制が十分でなかったことや、大学新卒者の技術職への応募が少ないことが課題になっていました。社内だけで解決策を見出すことが難しかったため、3年ほど前からコンサルタントなどの専門家を交えて取り組みを実施。仕事のやり方や人事評価の見直し、WEBサイトにおける採用ページの作成などを進めていました。その流れの中で今回の実践講座を知り、参加を申し込みました。
 
Q.実践講座を通して気がついたことや、新たな発見はありましたか?
 
A.
当社は公共工事が主体なので、一般の皆様に向けた宣伝活動は行っておりませんでした。これは、会社としての歴史が長く、県内における電気工事のシェア率が非常に高いことから、「あえて宣伝をしなくてもいいのでは」という考えもあったためです。しかし、講座を通してSNSの発信が必要なのだと改めて認識しました。実は社内でも、以前からSNSが必要だという声が上がっていたのですが、「なぜ必要なのか」という理由を上手く伝えることができず断念していました。受講したことで理解が深まりましたし、今の時代は積極的に発信を続けることで、ようやく理解してもらえるのだという認識が社内に広まってきたと感じています。
 
Q.講座で得た学びを社内にフィードバックする際、大変だったことはありますか?
 
A.
実践するにあたって、上司が「まずはやってみて、駄目だったらやめればいいよ」と言ってくれたことが大きかったです。また、当社には2年ほど前からIT専門の社員が在籍しています。これまではITに詳しい人が本来の業務を行いながらトラブルや質問に対応していましたが、兼務となると集中して管理することができません。専門の社員がいることでSNSへの発信も問題なくできますし、ホームページの更新やオンライン会議などで発生する接続の不具合なども外部の業者に頼らず解決できます。こうした環境が整っていたため、フィードバックは比較的スムーズに進めることができました。ITに積極的な会社であるということも、採用活動には重要なアピールポイントだと思っています。
採用担当者だけでなく全社的な取り組みへ
Q.受講して感じた採用活動のポイントはありますか?
 
A.
これまでも高校の就職担当の先生を訪問する際は、必ず各拠点の社員と一緒に行っていました。その前は「採用活動は担当者だけがやればいい」という考えが当たり前でしたが、その地域で働く社員も連れてインターンシップのお願いをすると、お互いに顔がわかり親近感を抱きやすくなります。そのおかげで応募前の職場見学会には、これまで参加していなかった学校からも参加希望をいただけるようになりました。
採用活動は、新たに人を雇えばいいというものではありません。特に新卒者は継続して勤めてもらい、戦力になるまでしっかり教育していくことが大切です。以前は仕事を受注することが最優先でしたが、人口減少や少子化が問題となっている今は、何よりも人が大切です。技術者はもちろん、営業職やIT担当、事務職など全てのポジションにおいて人材を確保することで、会社の未来は大きく変わります。これからも事業を継続していくために、社員みんなで採用活動を行う雰囲気づくりに努めていきたいです。
 
Q.採用力拡大に関する今後の目標を教えて下さい。
 
A.
当社では2年ほど前に、業務改善プロジェクトの一環として教育ガイドブックや現場代理人ガイドブックを作成しました。教育ガイドブックには入社後のキャリアアップを、現場代理人ガイドブックには具体的な仕事内容を記載。ほかには新入社員の教育体制や福利厚生、ワークライフバランスを保ちながらスキルアップしていける環境づくりにも取り組んでいます。さらに将来的には、採用や人材育成、人事評価に特化した専門の部署を作りたいと考えています。少しずつでも働きやすい環境を整えていき、それが若い世代に伝われば理想とする人材の獲得や定着につながるのではないかと思います。
 
 

step05 インタビュー記事(女性活躍推進に向けた取組みについて)

県では、企業の経営者や管理職を対象に、女性活躍推進に取り組む効果やメリット、誰もが働きやすい職場環境の整備等について学び考える「女性が輝く職場づくり研修会」を開催しています。研修受講後には、自社の取組を進め、地域のロールモデルとなって活動していくことが期待される企業「ダイバーシティマイスター企業」として県が認定しています。本荘電気工業 株式会社は「ダイバーシティマイスター認定企業」として、女性活躍の視点からも人材確保に取り組んでいます。

 男性も女性も、みんなが働きやすい環境を目指す

Q.研修会に参加されたきっかけを教えて下さい
 
A.
一般的に建設業は、女性が活躍できる場が少なく男性中心となる傾向にあります。しかし、当社では5名いる営業のうち2名が女性で、入札や積算など専門的な業務を担ってもらっています。比較的、集中して行う業務に向いている女性が多く、さらに活躍の場を増やすことができればと思い研修会に参加しました。
 
Q.参加後、実際に取り組んでいることはありますか?
 
A.
以前から当社では、現場事務所の担当者は残業や休日出勤が多いという課題がありました。原因は、日中は現場に出て職人に指示を出したりお客様と打ち合わせをしたりして、それらが全て終わってからでないと図面や書類の作成ができないためです。
当社では業務改善プロジェクトに取り組む中で、分業制にしたらどうかという意見があり、書類や図面作成を別の社員が担当することにしました。そこで活躍するのが女性社員です。現在は現場支援室という部署を立ち上げ、3名の女性CADオペレーターを採用して図面の作成をしてもらっています。
こうした当社の取り組みをテレビで放送していただく機会があったのですが、その後の反響は予想以上に大きなものでした。関係各社から「見たよ」と言ってもらえましたし、なかにはインターンシップに参加した学生が家族と一緒に番組を見て、「こういう会社っていいよね」と話していたとも聞きました。採用活動にも影響があるとは考えていなかったので、思わぬ成果に驚いています。
 
Q.研修会を通して、女性活躍に対する印象は変化しましたか?
 
A.
正直なところ、以前は女性活躍という言葉に少なからず違和感を抱いていました。あえて女性に限定する必要があるのかと思っていたのですが、研修会で「女性だけでなくみんなが働きやすい環境を考えること」というお話を聞き、納得しました。
最近では学生の状況も変化していて、以前は電気科の生徒といえば男子ばかりでしたが、今は女子も多く、インターンシップにも参加してくれています。入社後の人材育成として、女性が技術者や施工管理者になることも視野に取り組んでいきたいと思っています。
 
Q.今後の目標について教えて下さい。
 
A.
CADオペレーターなど、女性が活躍できる環境を充実させていくとともに、将来的には子育て中の在宅勤務も検討したいです。育児休暇についても、「私は両親と同居しているから、子育てを一人で頑張らなくてもいい。完全に休むのではなく、短い時間でもいいから仕事を続けて復帰後のハードルを下げたい」という人もいます。一人一人のライフスタイルや要望に合わせて、柔軟な働き方ができるようにしていけたらと考えています。
また、今年の4月には2名の女性社員が管理職に昇進しました。能力のある方々なので、より一層活躍してほしいです。
 
Q.最後に、これから女性活躍に向けて取り組む企業へメッセージをお願いします。
 
A.
やはり経営者の理解を得ることが一番ではないでしょうか。それが難しい場合は、今回のような研修会へ積極的に参加して、少しずつでも取り組みを進めていくこと。大変な面もありますが、さまざまな取り組みで得た学びや気付きを社内に発信していくことで、だんだんと理解が広がっていくと思います。