あきた伝統野菜について
2015年09月28日 | コンテンツ番号 9964
秋田県には地名や人名、形状や栽培方法を冠した独自の伝統野菜があります。
それぞれ、長い歴史を持ち、地域の食文化を形作ってきました。
これらは、品種の特徴だけではなく、気象や土地条件、栽培技術などによってその土地固有の味として伝えられてきたものです。しかし、その多くは味のよい優れた食べ物でありながら、手間のかかる栽培や加工技術、収穫や収量の多い改良種に押されて徐々に栽培者も少なくなってきました。
秋田の食を彩る伝統野菜の魅力をもう一度見直し、豊かな秋田の食材として栽培して保存し、食して伝えていきましょう。
「秋田の伝統野菜とは」
次の三つの事項を満たす品目としています。
- 昭和30年代以前から県内で栽培されていたもの。
- 地名、人名がついているなど、秋田県に由来しているもの。
- 現在でも種子や苗があり、生産物が手に入るもの。
夏 じゅんさい 阿仁ふき 五葉豆 八木にんにく 関口なす 仙北丸なす 新処なす 小様きゅうり 田沢地うり
秋 湯沢ぎく 雫田カブ てんこ小豆 とんぶり カナカブ 平良カブ 横沢曲がりねぎ 石橋ごぼう 大館地大根
秋・冬 松館しぼり大根 仁井田大根 三関せり 山内にんじん からとり芋 ちょろぎ 田沢ながいも
各伝統野菜の特徴を紹介します。
「食べ方」のアンダーライン付きの料理名をクリックするとレシピに移動します。
ひろっこ
- 収穫時期
12月~4月 - 栽培地
湯沢市・県内全域 - 栽培方法
8月下旬~9月上旬に植え付けし、12月に入り、積雪後まもなく収穫を開始する。
収穫は雪融け直前まで行われる。 - 特徴
アサツキの若芽。雪の下で萌芽した白い芽を、深い雪を掘り収穫する。雪の下で糖度が増す、早春の味の代表格。
雪消え後の青い若芽も青ひろっことして食する。大正時代に旧須川村から栽培がはじまったとされる。
秋田さしびろ(あきたさしびろ)
- 収穫時期
2月~5月 - 栽培地
秋田市、由利本荘市 - 栽培方法
8月下旬~9月上旬に株分けし、植え付ける。雪融け後、トンネルを設置し、生育を促す。 - 特徴
越冬性の高い九条ネギ系の柔らかい葉ネギ。3月頃から地際から刈り取り収穫する。
甘みとつるりとした食感を楽しむ。鍋もの、汁もの、卵とじ、酢みそ和えなどに利用する。
- 食べ方
鍋もの、汁もの、酢みそ和え
仁井田菜(にいだな)
- 収穫時期
2月~4月 - 栽培地
秋田市 - 栽培方法
9月初旬に播種。越冬させ、再度、生長してくる4月以降に収穫。
春一番に収穫できる野菜として栽培されている。 - 特徴
越冬性の高いツケナの一種。雪の下で蓄えた養分で雪融けと同時に一気に生長する。
わずかに苦みを持つ味の濃い青菜。お浸しや炒め物などに向く。
- 食べ方
お浸し、炒め物他
亀の助ねぎ(かめのすけねぎ)
- 収穫時期
3月~5月 - 栽培地
大仙市 - 栽培方法
4月上旬に播種、6月下旬に定植。秋どりも可能であるが、越冬させ、春に収穫する。 - 特徴
柔らかで甘さと香りが格別の春ネギ。
昭和初期に地元篤農家の石橋氏が砂村系のネギから育成したもの。
耐寒性が強く、越冬率が高いため雪深い秋田の地に適応し、4~5月のネギとして利用されている。
秋田ふき(あきたふき)
- 収穫時期
6月 - 栽培地
鹿角市、秋田市 - 特徴
江戸時代から栽培される葉の直径1~1.5m、草丈2mにもなる日本一大きなフキ。
漬物、砂糖漬け、煮物に活用し観光資源としても知られる。
秋田市では仁井田地区に数戸、鹿角市では転作田や家の庭先などに数多く植えられている。
じゅんさい
- 収穫時期
6月~7月 - 栽培地
三種町 - 栽培方法
自然池沼や古い灌漑用ため池、転作田において、水深50~80cm程度の水域に生育している。
4月~5月にかけて水底の地下茎から新芽が伸び、夏にはハスの葉のように水面いっぱいに浮葉を広げる。
地下茎から伸びたヌメリと呼ばれる透明な粘質物のある幼葉や葉柄の部分を食用としている。 - 特徴
スイレン科ジュンサイ属の多年草で独特の食感が珍重される。
森岳地区の天然沼から、転作田で栽培されるようになり日本一の産地となった。
都道府県によっては絶滅危惧種となっている。
阿仁ふき(あにふき)
- 収穫時期
6月~7月 - 栽培地
北秋田市 - 特徴
葉柄が青々として美しく、繊維や苦みが少ないため食味と食感に優れる京フキ系のフキ。
県農業試験場がこのフキにより養成した、葉柄が長く太い品種「こまち笠」が栽培されている。
- 食べ方
炒めもの、鍋もの、煮付ほか
五葉豆(ごようまめ)
- 収穫時期
8月~9月 - 栽培地
県南部 - 栽培方法
通常のえだまめと同様 - 特徴
古くから伝わる在来種のエダマメで自家用として栽培されている。
五枚葉が特徴で香りと甘みが強く、青、黒、茶があり味のよい品種。あきた香り五葉の育種に活用された。
八木にんにく(やぎにんにく)
- 収穫時期
6月~10月 - 栽培地
横手市 - 栽培方法
通常のニンニクと同様。 - 特徴
横手市増田町の八木集落に伝わるにんにく。
とうだちがなく、植付け適期の幅が広く貯蔵中も出芽しにくい。皮に赤身があるのも特徴。
青にんにく(6月のみ)として生食や漬け物に、十分に肥大したものは風味付けとして利用にされる。
- 食べ方
青にんにくで生食、すりおろして薬味
関口なす(せきぐちなす)
- 収穫時期
7月~10月 - 栽培地
湯沢市 - 栽培方法
通常のなすと同様に栽培。 - 特徴
江戸時代から湯沢市関口地区を中心に栽培される丸ナス。
たくさんの実をつけ、色、形、食感が抜群で漬け物に適する。
皮はやや堅め、果肉は締まっていて、わずかに苦みがあり、ヘタの下が真っ白なのが特徴。
仙北丸なす(せんぼくまるなす)
- 収穫時期
7月~10月 - 栽培地
大仙市 - 栽培方法
通常のなすと同様に栽培。 - 特徴
秋田のなすを代表する鮮やかな紺色をした丸ナス。
ナスのふかし漬けといわれる玄米と麹で漬ける漬物に使われる。
果肉、果皮とも身もしっかりしており、塩蔵しても果肉が水分を含みにくく、長期保存用の漬物に利用される。
新処なす(あらところなす)
- 収穫時期
7月~10月 - 栽培地
横手市 - 栽培方法
通常のなすと同様に栽培。 - 特徴
横手市十文字町新処集落に伝わる巾着型のナス。肉質も密で張りがある。
中程度の大きさで上下を切り落として塩蔵し、キクが出る晩秋に「なすの花すし」に漬け直しをする。
小様きゅうり(こざまきゅうり)
- 収穫時期
7月~9月 - 栽培地
北秋田市 - 特徴
北秋田市阿仁小様地域に伝わる地ウリで、切り口が三角形になる。瑞々しく、張りがありやや苦みを持つ。
阿仁鉱山の労働者の水分補給に利用され市日などで販売されてきた歴史を持つ。
一度途絶えたが、平成23年から復活している。
- 食べ方
冷やし汁
田沢地うり(たざわじうり)
- 収穫時期
7月~9月 - 栽培地
仙北市 - 特徴
古くから仙北市田沢地域や桧木内地区で自家採種で栽培されてきた地ウリ。
生や漬物、キュウリもみ、冷やし汁などに利用されてきた。
田沢地区では秋田杉の山林作業の携行にされ、その元山守によって栽培され続け守られてきた。
- 食べ方
冷やし汁
湯沢ぎく(ゆざわぎく)
- 収穫時期
7月~10月 - 栽培地
湯沢市 - 栽培方法
5月初旬に植え付け。7月20日頃から収穫開始。 - 特徴
昭和20年代に在来キクの中から食味の良い物を選抜し、食用キクとして定着した。
早生で夏キクの特性を持ちながらも霜が降りるまで出荷できる花付きのよい長期出荷のキク。
鮮やかな色味と香りの良さが特徴。
- 食べ方
菊の花の味噌漬け
雫田カブ(しずくだかぶ)
- 収穫時期
4月・9月~10月 - 栽培地
仙北市 - 栽培方法
8月末~9月初旬に播種し、越冬させ、雪融け後の4月末に収穫。 - 特徴
仙北市角館の野田集落と雫田集落周辺で栽培されるカブ。こぼれ種で自生するほど生命力が強い。
ゴツゴツとした表面は野生的でわさびにも似た風味の刺激がある。漬物として利用する。
越冬させることで風味、辛みがでる。
- 食べ方
漬物
てんこ小豆(黒ささげ)(てんこあずき)
- 収穫時期
8月~10月 - 栽培地
県内全域 - 特徴
てんこ小豆(天向、天甲など)、県南ではならじゃ豆とも言われ、赤飯には欠かせないササゲ。
色は赤紫でお祝いの赤飯の他、仏事の黒飯に用いられる。
小豆は崩れ易く胴割れすることから、縁起のため黒ささげを使ったと言われている。
- 食べ方
赤飯
とんぶり
- 収穫時期
9月~11月 - 栽培地
大館市 - 栽培方法
4月20日以降に播種され、育苗後、定植される。土寄せや芯止め等の作業を行い、9月から収穫が始まる。 - 特徴
アカザ科のホウキグサの実が食用部分となる。
大館市が生産量日本一を誇る「畑のキャビア」と呼ばれる独特の野菜。
収穫後干す、煮る、水分を含ませる等の地域に伝わる独特の加工技術により、はじめて食用となる。
加工品は通年で流通している。
- 食べ方
とんぶりかんたんレシピ
カナカブ
- 収穫時期
10月~12月 - 栽培地
にかほ市、由利本荘市 - 栽培方法
8月に山焼きされた畑に播種。10月から収穫が始まる。 - 特徴
古くは焼き畑で栽培された在来種で、洋種系の白長カブ。
焼畑のものと普通畑栽培のものが、短太から長形まで様々な形があり、主に酢漬けで食べられる。
サクサクと歯触りと食感が良く、辛みなどの風味がある。
- 食べ方
カナカブ漬
平良カブ(たいらかぶ)
- 収穫時期
11月~12月 - 栽培地
東成瀬村 - 特徴
古くから平良地区でのみ栽培されてきた在来種の青首の長カブ。播種後60日程度で根長15センチに。
緻密な肉質でパリパリとした歯触りがあり風味が強い。麹漬けにする。
- 食べ方
漬物
横沢曲がりねぎ(よこさわまがりねぎ)
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
大仙市 - 栽培方法
6月頃苗床に播種し、生育させ、そのまま越冬。翌年5月に本畑に1回目の植替え。
8月に2回目の植替えを行う。その際に根部を曲げて土を寄せる。10月中旬頃から収穫が行われる。 - 特徴
大仙市太田の横沢地区に伝わる在来種で、2年かけて栽培される。植え替えの時に寝かせて曲げ風味を出す。
柔らかく香り成分のアリシンが多く、青ネギ、白ネギもともに食べられる。
江戸時代に久保田城主佐竹氏から伝授されたと言い伝えがある。
- 食べ方
薬味、鍋物等
石橋ごぼう(いしばしごぼう)
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
大仙市 - 栽培方法
通常のごぼうと同様。4月下旬頃播種し、10月頃から収穫。 - 特徴
昭和30年に大仙市の篤農家石橋氏が育成した品種。茎が赤くやや小葉、長根で肉付きが良い。
白肌、白肉で香りが高く太さがあり、風味の良さが定評ある早生ゴボウ。
- 食べ方
きんぴらがおすすめ。柔らかいので長く煮込む料理は不向き。
大館地大根(おおだてじだいこん)
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
大館市、北秋田市 - 栽培方法
播種は8月下旬頃。10月中旬頃に収穫期をむかえる。栽培管理は通常の青首大根と同様。 - 特徴
大館、北秋田地域に伝わるダイコンで地元では「かたでご」と呼ばれる。
硬い肉質で歯触りのよく、保存性の高いたくあんになる。辛みダイコンとしても活用。
赤首、白、など系統によって形も色も異なる。
- 食べ方
たくあん漬け、薬味
松館しぼり大根(まつだてしぼりだいこん)
- 収穫時期
11月~3月 - 栽培地
鹿角市 - 栽培方法
9月初旬に播種し、10月中旬から収穫。 - 特徴
鹿角市松館集落で百年以上前から栽培されてきた地ダイコン。
水分が少なく肉質が密でおろし汁の辛み成分(イソチアシアネート)が多く、日本一辛いダイコンと言われている。
おろして絞った白濁の汁を、そばや刺身の薬味に用いる。
- 食べ方
湯豆腐や肉料理の薬味として。一夜漬けで食べることもあります。
仁井田大根(にいだだいこん)
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
秋田市 - 特徴
秋田市の台所とも呼ばれた古くからの野菜産地である仁井田地区で栽培されてきたダイコン。
緻密な肉質、独自の歯切れと強い風味でたくあん用に作付けされてきた。
生産者の高齢化などによって栽培が激減している。
- 食べ方
漬物
三関せり(みつせきせり)
- 収穫時期
9月~3月 - 栽培地
湯沢市 - 栽培方法
露地栽培と雪よけのためビニールハウスでも栽培されている。
ビニールハウスの場合は、9月上旬に植え付けし、冬期間に収穫する。 - 特徴
年間を通じて清流水に恵まれている湯沢市三関地区で江戸時代から栽培されている。
三関地区の在来種から選抜淘汰され、品種名は改良三関。葉や茎が太く、根が白く長いのが特徴。
秋田の鍋には欠かせないものとなっている。
山内にんじん(さんないにんじん)
- 収穫時期
10月~12月 - 栽培地
横手市 - 特徴
昭和20年代に横手市山内地区で選抜された品種。
長さが30センチ以上と太くて長く、鮮やかな赤色で肉質がしっかりしたニンジン。
パリッとした食感と強い甘みが特長で、漬け物、サラダ、煮物に向く。一時栽培者が激減したが、復活している。
- 食べ方
揚げ物、きんぴらがおすすめ。肉質がしまっているため煮崩れしにくいので、煮物にも向く。
からとり芋(からとりいも)
- 収穫時期
9月~11月 - 栽培地
由利本荘市、にかほ市 - 特徴
サトイモの一種で葉柄(ずいき)と親芋を食する。葉柄はいがらさが少なく食味がよい。
芋は独特のとろりとした食感と甘さがある。
畑栽培と水を張った苗代栽培のもの、青茎と赤茎がある。
- 食べ方
親芋、小芋は煮物。ズイキは酢のもの等
ちょろぎ
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
湯沢市 - 特徴
シソ科の宿根草で、長老喜、千代呂木などの字があてられる縁起物食材。地下茎の先端部が渦巻き状の形になる。
サクサクとした歯触りを活かして梅しそ漬けなどの漬け物にされ、正月の黒豆に添えられる。
- 食べ方
ちょろぎの漬物
田沢ながいも(たざわながいも)
- 収穫時期
10月~11月 - 栽培地
仙北市 - 特徴
仙北市田沢地区に伝わる田沢ながいもを県内の育種家が系統選抜した田沢一号が栽培されている。
地域の土壌条件ともよく合うため、芋は白くコクがあり、ねばりがほどよい品質のよい長いもになる。
とろろ芋に最適。
- 食べ方
とろろ芋など