県では、建築物一般への木材利用を促す「公共建築物等木材利用促進法」の改正のほか、性能規定化などの「建築基準法」の改正などを背景に、商業施設などの戸建て住宅以外の建築物において、木材利用への関心が高まっていることから、これら施設への木材の利用拡大につなげるため、建築を学ぶ大学生等を対象とした「木材利用提案コンクール」を開催しました。

 県内の建築系大学等から26作品の応募があり、審査の結果、最優秀賞1作品、優秀賞2作品、特別賞1作品、佳作4作品が選ばれました。

最優秀賞

 最優秀賞 作品番号21 秋田県立大学 佐藤海翔さん 

作品番号21
共存する拠
秋田県立大学  佐藤海翔さん

【審査委員会での主な意見等】

 通常鉄骨やRC等で表現するような曲面をうまく木の柔らかさと呼応させた作品である。
 平面図も細かく記載されており、木が作り出す気持ちよい空間がしっかりと表現されている。
 構造物として本当に建つのか考えた際に、模型で具体的な空間の表現があったことが評価された。
 木材を利用することを考える時、構造物だけでなく、デザインや広がりなども大事になるが、よく捉えられており、話を読み込んでいくと面白かった。

優秀賞

 優秀賞 作品番号2 秋田県立大学 小田川塁さん

作品番号2
製材の森
秋田県立大学  小田川塁さん

【審査委員会での主な意見等】

 CGが非常に美しく表現されており、このような環境ができたら気持ちよいだろうなという意見が多かった。
 具体的な配置図や、構造物として本当に建つのかなど、表現が具体化を増していけば、評価はもっと高くなると思う。

 

優秀賞 作品番号23 秋田県立大学 久保木康生さん

作品番号23
囲炉の山並みは生きる
秋田県立大学  久保木康生さん

【審査委員会での主な意見等】

 平面図、屋根組等うまく表現されており、建築としても評価が高かった。
 作品がイラストチックになっており、魅力がうまく現れていなかったため、右下の平面図がもう少し押し出されて表現されていれば、もう少し評価が上がったと思う。

特別賞

特別賞 作品番号5 秋田県立大学 河原大樹さん

作品番号5
伝播する待合所
秋田県立大学  河原大樹さん

【審査委員会での主な意見等】

 そのまま建つのではないかといった具体性があり、審査員からの評価が高かった。完成度も他の作品に比べて高いが、コンクールのテーマである「夢」の観点で、もう少し違うアイデアがあると良かった。
 例えば、実際に造られ、伝播した表現があれば、より面白さが伝わった可能性がある。

佳作

 佳作 作品番号6 秋田県立大学 齋藤光紀さん

作品番号6
まちの中の森小屋
秋田県立大学  齋藤光紀さん

【審査委員会での主な意見等】

 木材を使う、現実的に造れそうという点で良いと思う。

 

佳作 作品番号11 秋田県立大学 田口径さん

作品番号11
里山の駅-森の居場所作りから林業までー
秋田県立大学  田口径さん

【審査委員会での主な意見等】

 中山間地域には、なかなか人が来ない。住宅が集合しないところにこのような建物があれば、面白いと思う。

 

佳作 作品番号14 秋田県立大学 布谷理乃さん

作品番号14
MOKUIKUぱーく-木で遊び、木に学び、木で育つ-
秋田県立大学  布谷理乃さん

【審査委員会での主な意見等】

 秋田犬や曲げわっぱ、木のおもちゃなど、現実的な取組として良いと思う。
 今、若い方が「木育」に興味を持っており、テーマ性もあって良いと思う。

 

佳作 作品番号15 秋田県立大学 畠山日南さん

作品番号15
曲げわっぱ美術館 wappa
秋田県立大学  畠山日南さん

【審査委員会での主な意見等】

 曲げわっぱをテーマにしていて面白いと思う。
 建築材料として、CLTを使用するよりは、円筒LVLなどの方が、より現実味が出たかもしれない。 

審査委員長から学生の皆さんへのメッセージ(講評)

秋田工業高等専門学校 助教 鎌田光明

 初めに、受賞された学生の皆さんにお祝い申し上げます。
 当コンクールは、県内学生に対する「木材利用提案コンクール」とし、県産材を中心とした木材の都市や建築、インテリア等への利用を学生の視点で自由に考えてもらうものでありました。
 
 応募基準については、木材を使用していることが前提で、建築タイプの規定としては、「非住宅」であることのみとしております。そのため、提案された作品は、材料の使い方や構造を含む建築物単体の提案だけではなく、内部空間の木質化や都市に寄与する公共物、ストリートファニチャー等のデザインまで幅広い内容でありました。
 木材利用という点はもちろんのこと、今後の秋田の空間を考えることや、若い建築家や技術者を育む上でも非常に意義のあるコンクールであったと言えます。

 受賞された作品についての個別の講評は、【審査委員会での主な意見等】を参照されたいが、今回、審査委員会での議論の内容を整理し示すと、大きく分けて次の3つの基準が議論の対象となっていたように思います。

  1.  副題にある「夢広がる」つまり、新規性や、創造的な部分を木でどのように表現しているか
  2.  木を空間に適切に使用しているか
  3.  林業を含めた木のサイクルなども考えて提案しているか
 これらの共通の基準に対して、プレゼンボード内で、しっかりと図面に落とし込み表現されているかどうかが、最終的な評価を分けるポイントでありました。
 つまり、コンセプトやパースは良いがそれを立証する図面等をもう少し記載して欲しかった作品と、図面はしっかりと記載されているがそれらを魅力的に見せる表現がもう少し欲しかった作品とで二極化しており、審査委員会でも評価が分かれたところでありました。
 
 「夢」が広がるということは、コンセプトが認識されることはもちろん重要ですが、建築として説明性のある表現があってこそ、次の「広がり」に繋がっていきます。今回は、その両面をしっかりと表現していた作品が最優秀賞となりましたが、他の作品についても一つの図面や、表現等で評価が大きく変わると考えられるものがあり非常に可能性を感じたところでありました。
 最後に、応募者の皆さんの努力に敬意を表すと共に、今後も県産材や、秋田の空間に対する継続した関心を期待しております。 

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