「秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)」の公表について

県では、平成14年3月に「秋田県の絶滅のおそれのある野生生物2002(秋田県版レッドデータブック植物編・動物編)」として動物では哺乳類、鳥類、は虫類、両生類、淡水魚類、昆虫類、陸産貝類、植物では維管束植物についてまとめ、公表しています。
今回取りまとめたレッドリストは植物(維管束植物以外)の蘚苔類(33種)及び地衣類(18種)の2分類群で、これによりこれまで公表されていた8分類群とあわせ10分類群について公表したことになります。
レッドリストは、それ自体に法的強制力はありませんが、絶滅のおそれのある野生生物に関する情報を提供し、その保全の重要性への理解を深めることを目的としているものです。
今後は、既に公表されている秋田県版レッドデータブックの各分類群について、新しい知見や情報も増えていることから選定の見直しを行うこととしています。

1.秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)掲載種数

秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)掲載種数
カテゴリー 絶滅種 野生絶滅種 絶滅危惧種 準絶滅危惧種 情報不足種 合計
分類群 絶滅危惧種Ⅰ類 絶滅危惧種Ⅱ類 絶滅危惧種計
蘚苔 - - 19 - 19 1 13 33
地衣類 - - 3 2 5 5 8 18
合計 0 0 22 2 24 6 21 51

2.レッドリストカテゴリーの定義

基本的には環境省カテゴリー(2007年)を準用しています。

  • 絶滅種(EX):本県ではすでに絶滅したと考えられる種
  • 野生絶滅種(EW):飼育・栽培下でのみ存続している種
  • 絶滅危惧種:絶滅の恐れのある種
    • Ⅰ類(CR+EN):絶滅の危機に瀕している種
    • Ⅱ類(VU)絶滅の危険が増大している種
  • 準絶滅危惧種(NT):現時点では絶滅危険度は小さいが、生息条件の変化によっては「絶滅危惧種」に移行する可能性のある種
  • 情報不足種:評価するだけの情報が不足しいている種

3.選定方法

レッドリストは、県内の専門家からなる「秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)作成委員会」を設置し、各委員から提示されたデータや既存文献等を基に選定しました。

4.選定により明らかになった点

蘚苔類

蘚苔類には、蘚類と苔類、ツノゴケ類が含まれる。体が微少なため大気や水質の変化に弱い。秋田県内では、約480種が報告されている。今回の選定では、33種を絶滅危惧種等としているが、調査の進行によっては今後追加される可能性も高い。これらの種の状況をみると、ヒカリゴケのように観光客の踏みつけにより衰退しているものや、フタバネゼニゴケのように法面のコンクリート吹きつけにより生育地そのものが消失したことが確認されたものもある。また、湿原には多くの貴重な種が生育しているため、特に湿原の乾燥化を進行させるような歩道整備等には留意が必要である。

地衣類

地衣類は菌類と藻類の共生体で、両者のバランスの上に成り立っており、環境の変化に弱いものが多いと言われている。秋田県内では336種が報告されているが、今回の選定では18種を絶滅危惧種等としている。これらの種は地球温暖化や酸性雨などグローバルな環境変化に対して脆弱であり、いわば、地球規模で脅威にさらされているものが多い。地衣類の中では特に自然豊かな環境を好む種もあるが、こうした種も自然林の減少やハイカー・登山者等の踏みつけ等により衰退しているものが目立っていた。

5.今後の保護対策

秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)については、広くその普及を図り、絶滅のおそれのある野生生物の種の保護への理解を深めます。また、各関係機関や市町村等に配布し、各種事業の計画作成時及び事業実施時等において、これらの種の保護・保全への配慮を求めるとともに、環境アセスメント等の資料としての活用を働きかけることとしています。

6.秋田県版レッドリスト(蘚苔類・地衣類)作成委員

  • 井上 正鉄
    秋田大学教育文化学部教授
  • 佐々木 弘治朗
    地衣類研究会会員
  • 関山 耕太郎
    男鹿市立船川南小学校校長
  • 高橋 祥祐
    秋田県自然保護協会会長