平福百穂筆 春山(ひらふくひゃくすいひつ はるのやま)
画:平福百穂筆 春山(ひらふくひゃくすいひつ はるのやま)

「春山」は、本県角館町に生まれ近代日本画家を代表する一人である平福百穂の最晩年の作品である。百穂は、明治10年(1877)に平福穂庵の第四子として生まれ、16歳で上京し、昭和8年(1933)56歳で病死した。代表作には、「アイヌ」、「七面鳥」、「豫譲」、「荒磯」などがある。

本作品は、ほぼ正方形の画面に、春を迎えた里山の風景が描かれている。萌え出る芽の淡い緑や山桜の褐色からは春の柔らかい雰囲気が伝わり、百穂独特ともいえる軽妙に走る墨線からは木々の生命力が感じられる。

アララギ派の歌人でもあった百穂は、大正15年(1926)、仙岩峠を越え角館に帰った折りに「ひとときに芽吹き立ち匂うみちのくの明るき春に会いにけるかも」と詠んでおり、本作品はこの時の実感と百穂の感慨に通じるものがある。

自由闊達な線描が存分に発揮された「春山」は、雪国生まれの百穂ならではの作品であり、秋田の人々の春の喜びを伝える作品としても価値がある。

紙本着色・軸装 縦91.cm、横104.0cm 昭和8年(1933)制作

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