今議会におきましては、当初予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、所信の一端を申し述べます。
 はじめに、大雪への対応についてであります。
 この冬は、例年になく厳しい寒波に見舞われ、県南部を中心とした大雪により、横手市では積雪が観測史上最大を記録したほか、秋田市など沿岸部では暴風雪により住家の損壊や大規模な停電などの被害が発生しました。この間、雪下ろし作業中の転落や落雪等により、15名の方が亡くなられ、190名の方が負傷されております。亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。
 県では、先月5日に災害対策本部を設置し、翌日には私自ら、湯沢市、横手市、大仙市の状況を確認し、雪捨て場の提供や県による市道の除排雪実施などの支援を行ったことに加え、自衛隊に対し県南部の4市町村への災害派遣を要請するとともに、住家の倒壊や住民の生命・身体への危害が生じるおそれのある横手市など7市町村について、大雪では初めてとなる災害救助法を適用したほか、19日には菅総理をはじめ関係大臣に対して、雪害対策に関する緊急要望を行ったところであります。
 また、融雪期に向かい、農業生産施設に加え果樹などの被害の拡大が懸念されており、24日には葉梨農林水産副大臣とともに、現地視察を行い、施設の復旧や果樹の改植等に対する支援を要望したところであります。
 県としましては、今後の降雪による影響に警戒しつつ、引き続き、市町村や関係機関と連携しながら、除排雪作業時の注意喚起や雪崩危険箇所のパトロールを強化するなど、必要な対策を機動的に講じてまいりますので、県民の皆様におかれましても、事故防止に細心の注意を払っていただくようお願いいたします。
 次に、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言への対応等について申し上げます。
 昨年末からの大都市圏等における急速な感染拡大の状況を踏まえ、先月7日に首都圏の1都3県を対象に、翌日から2月7日までを期間とする緊急事態宣言が発出され、さらに、先月14日からは大阪府など7府県が追加されたところであり、これらの区域における飲食店の営業時間の短縮要請や協力金の支給など、国と地方が連携を図りながら、感染拡大の防止に向けた対策が講じられております。
 県内の感染状況については、年末に能代保健所管内等でクラスターが発生して以降、各地で感染例が相次ぎ、さらには先月16日に秋田市において病院クラスターが発生するなど、新規感染者が連日相当数確認されたことを受け、18日に感染警戒レベルを3に引き上げたところであります。
 県民の皆様には、緊急事態宣言が発出された11都府県との往来の自粛とともに、飲酒や会食の機会も含めたマスクの着用や手洗いなどの基本的な感染対策に加え、引き続き、3密の回避をはじめ感染防止のための適切な行動をとるなど、最大限の注意を払っていただくよう重ねてお願いいたします。
   県としましても、コールセンターからの紹介に応じて診療・検査を行う医療機関への協力金や入院患者の受入医療機関の医療従事者への慰労金の支給のほか、軽症者等の宿泊療養体制の拡充など、感染拡大防止と医療提供体制の充実・強化に万全を期すとともに、コロナ禍や今冬の寒波により大きな影響を受けている非課税世帯や子育て世帯等に対する経済的負担の軽減に向けた生活支援策を速やかに講じてまいります。
 また、ワクチン接種については、実施主体である市町村を広域的な視点から支援するため、先月25日に支援本部を立ち上げたところであり、今後、市町村や関係団体と協力し円滑な接種体制を構築してまいります。
 次に、最近示された主な指標について申し述べます。
 はじめに、自殺予防対策についてであります。
 先月公表された警察庁の自殺統計の速報値では、コロナ禍において全国で自殺者数が増加している中、本県の自殺者数は前年を大幅に下回り、統計開始以降、初めて190人台に止まったところであり、雇用維持や生活困窮者への支援、SNSを活用した悩みや不安を抱えた方からの相談対応など、各般のコロナ対策はもとより、民・学・官の連携のもと、自殺予防に地道に取り組んできた県民運動の成果が現れたものと捉えております。今後、秋田大学を核とした新たな連携体制を構築するとともに、年齢・原因別などの詳細な分析を進めながら、自殺予防対策を着実に推進してまいります。
 次に、若者の県内定着・回帰についてであります。
 本県人口の社会減は、2年連続で改善しており、特に直近一年間では3,000人を下回り、大幅な縮小となったところであり、感染症拡大の影響もあるものの、秋田への人の流れづくりに向け取り組んできた各般の施策の成果が現れてきたものと受け止めております。
 こうした中、先月教育庁で取りまとめた高校生の県内就職希望割合は、7割を超える高い水準となっているほか、県内大学生等についても、前年を上回る見込みであることから、引き続き、中学生や高校生が早い段階から県内企業の魅力に触れる機会の拡充やオンラインを効果的に取り入れた大学生等と県内企業とのマッチング支援の充実を図るなど、若者の県内定着・回帰と移住の促進に向けた取組を着実に進めてまいります。
 さて、今定例会は私の現任期の最後となりますが、現在、新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックの中で、我が国においても国民の暮らしや社会経済システムのあらゆる分野でこれまで経験したことのないような危機的状況に置かれております。
 国内でも近々ワクチンの接種が開始されますが、世界各国の状況をみれば、先進国と発展途上国との間で大きな差異が生じており、また次々と発見されるウイルスの変異株など多くの課題が存在しております。
 当然に、いまだ不確実な面が多く、一般的には社会が正常な状態の入口に到達するためには最低でも1年以上かかり、その後の経済の立て直し、地球規模での安定化に3年から4年は要するとも言われております。
 これまでの歴史を振り返ると、感染症の世界的パンデミックや超大型の天変地異、世界大戦などは、混迷と変革を生み、社会経済構造を大きく変える、すなわちパラダイムシフトをもたらすものであります。
 既に飲食業界や観光業界を中心に影響が顕在化しておりますが、生活パターンや価値観が変化する中で、正常化した時点で元に戻るものもあるにせよ、分野によっては、構造的に衰退化が余儀なくされる分野、反対に成長に弾みがつく分野、新規分野の出現など様々であろうと推察されます。
 そのような中で現状の県政運営に求められるものは、まさに「今ある危機」に全力で向き合う一方で、今後の状況を複眼的に見据えながら「コロナ後の世界」への展望を模索し、不確実性の中にも県勢の発展に資するファクターを捉え、正常化するといわれる3年から4年の間に的確に手を打っていくことであり、これは私たちが経験したことのないものであります。
 一方で、感染症のパンデミック、今冬のような集中豪雪や超大型台風などこれまで経験したことのない自然災害の主な原因として、地球温暖化、乱開発、大都市の超過密化、行き過ぎたグローバル化などがあるという説を多く目にします。
 これらを包括して今後の県政運営を展望すれば、おおよそ次のような方向を目指すべきものと考えます。
 まず「今ある危機」に対しては、当面の医療検査体制の充実に努めることであります。
 そして、いずれは将来を見通し感染症も踏まえた地域医療体制の再編構築に着手することも必要であります。
 加えて、今回のコロナ禍の中で苦しい思いをしている県民の方々へ手を差し伸べることであり、今必要なのはまさに公助の発揮であります。
 SDGsの共通理念にあるとおり、県政は県民誰一人取り残さないという視点に立つべきであります。
 そして、当面窮地にある業種分野への支援に努めるとともに、必然的な産業構造の変化を見据え、職を無くした方への就業支援、中小企業の業態転換への支援の充実に取り組むことであり、併せて製造業分野の国内回帰や加速するICT化、自動車産業のEV化などを見据えた企業誘致と地元企業の成長分野への参入支援の強化を図ることであります。
 また、コロナ禍によるDX時代の加速への取組として、行政システムのデジタル化を進めるとともに、企業経営に今後不可欠なビジネスツールとして、その支援を強化することであります。
 ここで留意しなければならないのは、行政のデジタル化はあくまで県民のためのものであり、特に高齢者や社会的弱者に配慮したシステム構築であります。
 次に将来を見据えれば、菅総理が提唱した地球温暖化への対応は、まさに本県の可能性を引き出すことにつながり、その方向性について、これまで以上に攻めのビジョンを持ち積極的に進める必要があります。
 古くからの水力、森林県としてのバイオマス、山間部の豊富な地熱に加え、今後の主流となる洋上風力発電など、まさに本県は再生可能エネルギーの宝庫でもあります。
 しかし、何事も「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」、景観や他産業との調和、将来の更に沖合への大型浮体式風車の設置なども踏まえ、メンテナンスのみならず関連産業の県内立地による最大限の経済波及など、しっかりとしたビジョンを持って臨むことが肝要であります。
 同時に、清浄な水資源を保全しつつ二酸化炭素吸収源としての本県の森林資源を生かすことが大切であり、木材産業の振興と再造林の拡大により森林の二酸化炭素吸収率を高めることも並行して行わなければなりません。
 しかし、地球温暖化対策は世紀的な期間を要する取組となり、今冬のような集中豪雪や大型の風水害は、これからも度々起きるものと覚悟しなければなりません。
 当然に、災害に強い県土づくり、いわゆる県土の強靱化対策、そして県勢発展と県民生活の利便性に不可欠な陸海空の交通体系など、公共基盤の整備の歩みを緩めることはできません。
 さらに次の世界的危機は、気候変動、中国の大量の食糧輸入などの中で、食糧資源の争奪戦になるとの説も多くなっております。
 まさに、本県は主食である米を中心とした食糧供給県であり、複合化への取組を進めるとともに、タンパク源としての多様な畜産業やつくり育てる漁業への取組強化など、農林漁業の振興に一層力を注ぐことが肝要であります。
 そして、未来を支えるのは人材であります。
 これからの時代、多様で個性を重視した教育、故郷へ愛着を持ちながらも大きな海原に漕ぎ出そうとする気概に満ちた人づくり、そして教育現場におけるICTの導入は不可欠であります。
 一方でパラダイムシフトは、光とともに影ももたらします。
 ともすれば高度情報化社会、AIやロボットの出現、さらには大きな産業構造の変化は格差社会をもたらしがちな側面があります。
 SDGsの主要目標にあるように多様性を認め合う社会は今後の地域づくりに欠かせない要素であり、性差や性的指向、職業、社会的弱者への偏見など、あらゆる差別を廃した社会づくりに先鋭的に取り組むことが秋田の魅力、すなわち「高質な田舎」につながるものであります。
 総括していえば、明治維新後の日本の近代化、太平洋戦争後の国土の復興など、歴史の大きな節目において本県は大きな役割を果たしてきました。
 まさに、今こそ我々は、我が国のみならず世界的目標である地球温暖化阻止という時代の要請を踏まえ、関連施策の的確な推進を通じ経済基盤の強化を図るとともに、誰もが自分らしい生き方ができる寛容性に満ち心豊かに暮らせる社会を創ることが、本来の人口減少対策や地域経済の活性化につながるという認識を持ち、新しい時代に果敢にチャレンジしていくべきものと確信する次第であります。
 次に、令和3年度当初予算案について説明申し上げます。
 新年度予算案については、4月が知事改選期に当たることから、骨格予算とし、継続事業や年度当初からの着手が必要な事業を組み込み編成いたしました。
 歳入面では、県税や地方譲与税が大きく落ち込む一方で、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税の大幅な増加が見込まれることから、一般財源は確保される見通しであるものの、歳出面では、高齢化の進展等に伴い社会保障費が増加するほか、今後も、感染症の長期化による厳しい経済情勢を踏まえた対応が必要となるなど、引き続き厳しい財政状況が続くものと見込まれます。
 こうした中にあっても、今ある危機を乗り越え希望ある未来へ向かうため、安全・安心な県民生活の基盤となる事業のほか、最終年度となる「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」に基づく重点施策や、県民の暮らしを支える事業については、歩みを止めることなく推進することにしております。
 なお、国は、総合経済対策のための令和2年度第3次補正予算と新年度予算を一体とした「15か月予算」としていることから、県においても国との協議が整い次第、当面必要となる新型コロナウイルス感染症への対応をはじめとした補正予算の追加提案を予定しているほか、国の新年度予算を踏まえて対応すべきものや、新たに政策的対応が必要なものについては、肉付けとなる6月補正予算に計上することにしております。
 以下、当初予算案の主なものについて申し上げます。
 「秋田の未来につながるふるさと定着回帰戦略」については、社会減を抑制し、秋田への人の流れをつくるため、オンラインと対面式を効果的に組み合わせた県内企業と大学生等とのマッチング機会の拡大を進めるほか、今年度実施した東京証券取引所の上場企業などへのアンケート調査の結果を踏まえ、リモートワーク拡大の意向を示している企業に対する働きかけを強化してまいります。
 また、自然減の抑制に向けて総合的な少子化対策に取り組むほか、不妊に悩む夫婦の精神的・経済的負担の軽減を図るため、国の制度も活用し、不妊治療への助成を大幅に拡充いたします。
 「社会の変革へ果敢に挑む産業振興戦略」については、県内企業の航空機産業や自動車産業への参入促進を図るとともに、県内輸送機産業の構造転換に向けた検討を進めるほか、コロナ禍における外出自粛等で大きな影響を受ける商業・サービス業者の業態転換を支援してまいります。
 また、洋上風力発電等の再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組のほか、国内のエネルギーを取り巻く社会環境が大きく変化している状況を踏まえ、新エネルギー産業戦略の見直しを行ってまいります。
 さらに、中小企業等に対する資金繰り支援として、経営安定資金に新型コロナウイルス感染症対策等の400億円規模の融資枠を確保いたします。
 「新時代を勝ち抜く攻めの農林水産戦略」については、労働力不足が顕在化する中、経営基盤の強化に向け、農業経営の法人化や円滑な経営継承への支援、企業的な経営を行う農業法人を育成するための取組を進めるほか、労働生産性の向上等を図るため、スマート農業技術の導入を積極的に推進してまいります。
 また、令和4年度の本格デビューを目指す秋田米の新品種「サキホコレ」のブランド構築に向け、食味と品質をしっかりと確保できる生産体制の確立など、各種対策を総合的に実施してまいります。
 さらに、国内外への販路拡大に向けて、タイや台湾を中心に秋田牛の輸出拡大と認知度向上に取り組むほか、激化する産地間競争を勝ち抜くため、県外における住宅等での県産材の利活用を促進してまいります。
 「秋田の魅力が際立つ 人・もの交流拡大戦略」については、本年4月に始まる東北デスティネーションキャンペーン期間中の誘客を図るため、国内外に向けた地域の魅力発信の取組を展開してまいります。
 スポーツ立県あきたの推進については、ジュニア世代の強化・育成に向けて、県選抜チームを常設し、質の高い練習を定期的に行うなど、選手及び指導者の更なるレベルアップを図ってまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響により、利用者が大きく減少している国内定期航空路線について、官民が連携して利用促進に取り組むほか、県内空港やフェリー航路を利用した旅行商品の造成支援等により、アフターコロナを見据えた広域交通ネットワークの充実を図ってまいります。
 「誰もが元気で活躍できる健康長寿・地域共生社会戦略」については、健康寿命日本一を目指す取組を引き続き展開するとともに、民・学・官の連携による自殺予防の取組を重点的に進めてまいります。
 また、がんゲノム医療拠点病院の指定を目指す秋田大学医学部附属病院に対し支援を行うほか、本年4月に同病院に設置を予定している高度救命救急センターの運営費に対し助成してまいります。
 さらに、幅広い領域の疾患等を総合的に診療できる医師の育成・確保に取り組むほか、複雑化・多様化する福祉ニーズへの的確な対応を図るため、子どもや女性、障害者などの様々な相談に一体的に対応する新複合化相談施設について、令和5年度の開設に向けて建設工事に着手いたします。
 「ふるさとの未来を拓く人づくり戦略」については、県立学校における1人1台端末を利用したICT教育の推進や、ICTを活用した授業改善に取り組む小中学校への支援など、本県の教育力の向上を図る取組を進めてまいります。
 また、良質な学びの場づくりについては、比内支援学校、能代科学技術高等学校、横手高等学校及び鹿角小坂地区統合校の設計や工事を進めるほか、新たに大曲高等学校の改築に着手いたします。
 これら重点戦略に加え、県民の暮らしを支える基本政策として、ツキノワグマの被害防止に向けた対策の強化を図るほか、住宅リフォーム推進事業について、在宅リモートワーク環境整備や災害復旧支援の拡充を図るとともに、新たに断熱性能向上のための改修に対し助成を行ってまいります。
 公共事業については、第3期プランに掲げる重点戦略の取組を推進するほか、道路・橋りょうの老朽化対策や防災・減災対策などについても着実に取り組んでまいります。
 以上、令和3年度当初予算案の主なものについて説明いたしました。
 一般会計予算案の総額は、5,622億円であり、前年度当初予算と比較いたしますと、172億1,400万円の減となります。
 次に、令和2年度2月補正予算案について申し上げます。
 このたびの大雪等により、果樹産地等において被害の拡大が懸念されることから、樹園地の融雪や除雪など被害軽減への取組を支援するほか、今冬の除雪費の見込みにより、道路除雪費を増額いたします。
 また、新型コロナウイルス感染症の影響により施設の利用料金収入が大きく減少している指定管理施設について、当該施設の指定管理者に対する支援を行うほか、国の内示による公共事業等を計上しております。
 このほか、決算見込み等に伴う補正を行うとともに、前年度決算剰余金の2分の1相当額を財政調整基金に積み立てることにしております。
 一般会計補正額は131億7,256万円の減額であり、これにより令和2年度予算の補正後の総額は6,669億8,580万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田海区漁業調整委員会の委員の任命について」は、任期満了に伴う委員の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「秋田県中小企業経営安定臨時対策基金条例案」は、新型コロナウイルス感染症によりその経営に影響を受けた中小企業の経営の安定に資するため、金融機関からの借入れに対する支援を実施するための臨時の事業に充てる資金として、基金を設置しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。