今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
 先月28日、ご自身の体調が優れないことを理由に、安倍総理が辞任する意向を表明されました。
 約7年8か月にわたり、経済や外交、新型コロナウイルス感染症への対応など国政の諸課題に取り組んでこられましたが、任期途中での辞任表明となったことは無念の思いであろうと受け止めております。
 経済政策「アベノミクス」については、様々な評価はあるものの、総体的に見て株価や有効求人倍率の上昇など経済の回復に一定の成果を上げたものと捉えており、また、産業振興のほか、農業基盤や高速交通体系の整備など、本県にとって必要不可欠な施策についても支援いただきましたことに深く感謝申し上げます。国内外の激動の時期に政権を担われてきたことに対しまして、改めて敬意を表しますとともに体調のご回復を心よりお祈り申し上げます。
 次期政権には、新型コロナウイルス感染症対策と経済対策の両立に万全を期すとともに、東京一極集中を是正し、真に地方に目を向けた取組を推進していただくよう強く期待するものであります。
 次に、新型コロナウイルス感染症への対応について申し上げます。
 本県においては、警戒していたお盆の帰省に関連した感染例は確認されなかったものの、先月には県内初のクラスター感染が発生したほか、これまで感染例の少なかった高齢者の感染も複数確認されたところであります。
 クラスター感染となった事例については、その後の感染の拡大は抑え込まれているほか、その他の感染事例についても散発的な発生にとどまっており、市中感染はないものと推察しておりますが、全国的な感染状況や高齢者の重症化リスクなどを踏まえ、本県においては今後も警戒を継続していく必要があるとの考えのもと、県民に対し、引き続き首都圏など感染が拡大している地域との往来に関しては、真にやむを得ない場合を除き控えていただくとともに、感染者や濃厚接触者、そのご家族はもとより、医療関係者などに対する嫌がらせやSNSでの誹謗中傷は絶対に行わないよう、改めてお願いしたところであります。
 また、先月、市町村長会議を開催し、感染の不安による受診者の減少などから経営面での影響が生じている医療機関への支援などについて議論を行ったほか、季節性インフルエンザとの同時流行への備えを含め、県内における感染拡大の防止に向け、市町村と連携を図りながら対応していくことを確認したところであります。
 先般、国から、今後のインフルエンザの流行期を見据え、重症者への医療資源の重点化や、地域の診療所を含めた検査体制の拡充等を盛り込んだ新たな取組方針が示されたところであり、本県でも、軽症者等の宿泊療養体制の拡充に向け、県青少年交流センターを新たな受入施設として活用するとともに、医師会や市町村等との連携による発熱患者の受診・検査体制の構築や、高齢者などインフルエンザワクチンの優先接種が必要な方々への周知に向けた取組を推進し、新型コロナウイルス感染症との同時流行に備えた対応に万全を期してまいります。
 次に、国内外の経済情勢について申し上げます。
 先に発表された4月から6月期の実質GDPの速報値は、外出自粛や施設の休業等による旅行、外食など個人消費の落ち込みや自動車産業等の輸出の減少などが強く影響し、年率換算で28.1パーセント減と戦後最大の下落となり、海外においても都市封鎖を実施した欧米の国々を中心にマイナス成長を記録するなど、新型コロナウイルス感染症の拡大が国内外の経済に与えた影響の深刻さを改めて浮き彫りにしております。
 県内の経済情勢については、個人消費で持ち直しの動きが見られるものの、旅館・ホテル業を中心にサービス業は引き続き厳しい状況にあり、製造業は木材・木製品などで落ち込みが見られ、全体として弱めの動きとなっているなど、感染拡大の影響が続いております。
 このため、県では、実質無利子・無保証料の制度融資枠の拡大による中小企業等に対する資金繰り支援の強化を図るとともに、冬季観光における消費喚起に向けたプレミアム宿泊券の追加発行や、今月末までとしていたプレミアム飲食券の使用期限の延長、さらには雇用環境の維持に努めている中小企業に対する支援金の支給など、県内経済の回復に向け追加の経済対策を講じることにしております。
  次に、「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」について申し上げます。
   第3期プランは、計画の開始から2年余りが経過したところでありますが、社会減・自然減の抑制や人口減少下における経済力の維持など本県の最重要課題である人口減少問題の克服に向け、時流の変化を捉えながら、秋田の元気創造に必要な施策を展開してきております。
 人口減少対策については、市町村と連携した相談・受入体制の構築やAターン就職希望者とのマッチング支援の強化などにより、移住者数が着実に増加してきているほか、中学生や高校生が県内企業の魅力に触れる機会の充実などを通じ、高校生の県内就職率も上昇傾向にあり、昨年9月までの直近1年間の社会減が7年ぶりに4,000人を下回り、今年に入り更に改善傾向が続くなど、各種施策の効果も出始めてきているものと考えております。
 また、産業振興については、秋田発の高効率モーターコイルを起点にした産学官連携による研究開発を推進するとともに、航空機をはじめとした電動化システム関連産業の拠点創生に向けた取組を強化しているほか、成長分野である自動車産業の一次サプライヤー等に加え、アニメーション制作企業など幅広い業種の企業誘致が好調に進んでおります。
 さらに、農林水産業の競争力強化に向けては、園芸品目の生産を飛躍的に拡大する園芸メガ団地の整備を着実に実施したほか、京浜中央市場において、「しいたけ」が出荷量・販売額・販売単価の三冠王を、「えだまめ」については年間出荷量日本一を達成するなど、収益性の高い複合型生産構造への転換に向けた取組が成果を上げており、基幹作目の米については、秋田米新品種「秋系821」の令和4年の市場デビューに向け、農業団体等と一体となった準備を進めているところであります。
   第3期プランについては、各重点戦略においてこうした取組の成果を生み出しつつ、折り返しである3年目を迎えているところでありますが、令和2年度県民意識調査においては、若者にとって魅力的な働く場の確保についての満足度が低くなっているほか、結婚、出産、子育てのしやすい環境の整備について取組の重点化を求める声も寄せられていることから、こうした意見を踏まえつつ、各般の施策を検証しながらプランの着実な推進に努めてまいります。
 また、新型コロナウイルス感染症の拡大により、インバウンド需要の消失や外出自粛などによる国内消費の急速な落ち込みへの対応が求められるとともに、リモートワーク等の新しい働き方の普及や若い世代を中心とした地方への関心の高まりなど、感染症の拡大を契機に生じている様々な変化を的確に施策へ反映させていく必要があります。
 このような中で、最近の本県の有効求人倍率は全国平均を上回るとともに、東北で最も高い水準となっており、人口減少に伴う労働力の減少という側面や業種による差異はあるものの、経済の持ち直しへの期待などから、県内企業の事業意欲は引き続き維持されているものと考えております。
 また、大規模災害の発生や世界的な食料不足が懸念される中にあって、本県は自然災害が比較的少なく、広大な空間容量と様々な資源に恵まれ、食料の確保や再生可能エネルギーの導入という面で優位性を有しており、こうした本県の強みを生かした産業施策等の展開を図るため、その方向性を示すビジョンの策定に当たっているところであり、新型コロナウイルス感染症への対策に万全を期すとともに、社会経済情勢の変化をチャンスとも捉え、本県の持続的な発展に向け施策を推進してまいります。
 次に、県政を巡る最近の状況について申し上げます。
   はじめに、「秋田県立総合射撃場・狩猟技術訓練施設」について申し上げます。
 近年、ツキノワグマによる人身被害やニホンジカ・イノシシなどを加えた鳥獣による農作物被害が増加し、県民生活に深刻な影響を及ぼしている状況の中で、野生鳥獣の適正管理に重要な役割を担う狩猟者の減少と高齢化への対応が喫緊の課題となっております。
 こうしたことから、鉛弾による環境問題等を受けて休場しておりました「秋田県立総合射撃場・クレー射撃場」を、鉛害防止対策を講じた狩猟技術訓練施設として、先月29日に開場したところであり、今後は新規狩猟者の確保・育成や狩猟技術の向上を図る拠点として活用してまいります。
 次に、「北海道・北東北の縄文遺跡群」について申し上げます。
 本県をはじめ、北海道、青森県、岩手県及び関係市町が共同で世界遺産登録を目指す「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、ユネスコの諮問機関であるイコモス(国際記念物遺跡会議)による現地調査が現在実施されております。
 現地調査は、イコモスが世界遺産登録が適当かどうかを判断するに当たって、極めて重要なものとされており、世界遺産登録にふさわしい文化遺産であるとの評価が得られるよう文化庁、四道県及び関係市町が総力を結集して取り組んでいるところであります。
 2021年の世界遺産登録の実現に向け、引き続き関係自治体と連携を図りながら全力で取り組んでまいりますので、今後とも議員連盟の皆様や関係の方々のご支援とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 次に、提出議案の主なものについて説明申し上げます。
 今回の補正予算案は、新型コロナウイルス感染症への対応として、感染拡大防止策と医療提供体制の整備、雇用の維持と事業の継続、県内経済の下支えなどに係る事業のほか、「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」に基づく事業、公共事業等について計上しております。
 感染拡大防止策と医療提供体制の整備については、感染の拡大に備え、PCR等検査体制の拡充を図るとともに、医療機関における帰国者・接触者外来の運営に必要な設備等の整備に対し助成するほか、介護・障害者施設等における感染症発生時の円滑な相互応援を後押しする応援金等の支給を行ってまいります。
 また、公共交通における利用者の安全・安心を確保するため、空港施設のほか、バスや第3セクター鉄道の車両等の感染拡大防止対策を支援してまいります。
 雇用の維持と事業の継続、県内経済の下支えについては、冬季の観光需要を喚起するため、県民向けのプレミアム宿泊券を追加で発行するほか、誘客キャンペーン事業を実施し、県内の観光流動の促進に取り組んでまいります。
 また、中小企業等に対する資金繰り支援として、経営安定資金の実質無利子・無保証料の融資枠を1,000億円から2,000億円に拡大するとともに、感染症の長期化による厳しい経済情勢のもとで雇用環境の維持を図る中小企業に対し、支援金を支給してまいります。
 経済活動の回復・地方創生に向けた新たな取組については、事業の再編・統合による企業規模の拡大や経営の多角化を促進するため、M&Aに要する経費に対し助成するほか、デジタル技術を活用した非対面型のイベントの開催を支援してまいります。
 また、農林水産業の経営力強化を図るため、園芸・畜産の低コスト・省力化生産に必要な機械・設備の導入や県産材の需要拡大に向けた取組を支援するほか、比内地鶏の販売ルートの多角化を推進してまいります。
 さらに、自然公園や自然ふれあい施設において、WiーFi環境の構築などによるワーケーション環境の整備を進め、本県における交流人口の拡大に取り組んでまいります。
 第3期プランに基づく事業については、森林経営・管理の効率化・省力化に向けた森林情報のデジタル化を推進するとともに、地域における医療提供体制の充実を図るため、救急医療や周産期医療に要する設備の整備に対し助成してまいります。
 公共事業については、7月豪雨等により被害を受けた道路や河川の公共土木施設について、災害査定申請に必要な調査を実施するとともに、早急に対応が必要な復旧工事等を行ってまいります。
 一般会計補正額は、247億7,540万円であり、補正後の総額は、6,782億1,302万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県教育委員会の委員の任命について」は、任期満了に伴う一部委員の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「秋田県漁業権免許等手数料徴収条例の一部を改正する条例案」は、漁業法の一部改正により、知事許可漁業の許可を受けようとする者等から手数料の徴収等をしようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。