今議会におきましては、当初予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、所信の一端を申し述べます。
 はじめに、新型コロナウイルス感染症への対応についてであります。
 本県においてもオミクロン株による感染が拡大したことから、感染力の強さ等の特性を踏まえた感染防止対策を徹底するとともに、冬期間における高齢者の負傷や脳血管疾患の増加を念頭に置き、関係機関と連携しながら一般医療との両立を図りつつ、入院病床や宿泊療養居室の確保などの医療提供体制に万全を期すことはもとより、自宅療養者に対しては、健康観察や診療等の体制の構築に加えて、給付金を支給するなど安心して療養できる環境の整備に努めるほか、県としましても、ワクチンの接種会場を設置するなど3回目の接種を促進してまいります。
 引き続き、国の方針や最新の知見に基づき、対応に最善を尽くすほか、県経済を下支えする対策を講じてまいりますので、県民の皆様には、基本的な感染防止対策を徹底していただくようお願いします。
 次に、今後の県政の運営指針となる「新秋田元気創造プラン」についてであります。
 これまでに県議会や県民の皆様からいただいた様々なご意見を反映させながら取りまとめてきた新プランについて、改めて基本的な考え方を述べさせていただきます。
 第1に「賃金水準の向上に着目した社会減の抑制」であります。
 本県においては、地元に残りたいと願う若者が高い賃金や希望する職業を求めて秋田を離れるなど、全国のすう勢を上回るペースで社会減が続いていることが少子高齢化を招いており、社会減の大きな要因の1つである大都市圏との賃金格差の是正により、多くの人材を定着・回帰させていくことが必要であります。
 このため、人材・資本への投資やイノベーションの促進により成長産業を育成するなど労働生産性を引き上げるとともに、潜在的労働者の就業の促進や若者・女性にとっても魅力ある雇用の場の創出により、県内就業率を高めることに加えて、誘致企業にも本社並みの賃金を要請し、地元企業への波及を促すなど、賃金水準の向上を目指してまいります。
 第2に「本県の優位性の発揮」であります。
 地球温暖化の影響による天候不順や自然災害の発生が、私たちの生活環境を危うくしているほか、他国の主権を脅かす覇権主義的な動きの顕在化など、国際情勢の緊張感は高まっております。
 こうした情勢を鑑みると、本県の優位性を発揮できる食料・国土保全・エネルギーに加え、防衛を併せた4つの分野における安全保障が我が国にとって重要であると考えており、日本の発展に貢献しながら、本県の存在感を示していくことが真の地方創生につながるものと捉えております。
 まず、食料については、地球温暖化の進行が世界の食料生産にも影響を与え、穀物価格の上昇を招いているほか、海外市場からの食料調達が厳しさを増していることから、日本の食料供給を担う本県としては、農業の振興を図り、国の食料自給率の向上に貢献していくことが必要になるものと考えております。
 国土保全については、強さとしなやかさを兼ね備えた安全・安心な国土の形成が求められており、災害に対する安全度がトップレベルである本県の更なる強靱化を図り、移住定住や企業誘致のポテンシャルを高めていくという発想も重要になります。
 エネルギーについては、電力需給のひっ迫や原油等の価格高騰も踏まえ、燃料の多くを海外に依存する我が国においては再生可能エネルギーの導入拡大に一層注力すべきであり、県としましても、洋上風力発電の事業化を促進するとともに、豊富な森林資源なども活用し、カーボンニュートラルに貢献するほか、グリーンイノベーションを経済の成長に取り込み、脱炭素社会に対応した産業を構築してまいります。
 第3に、「あらゆる分野におけるデジタル化の推進」であります。
 世界の変革を牽引するデジタル技術の更なる発展は、今後、メタバース等の仮想空間を活用したビジネスを本格的に実用化させ、産業構造の抜本的な転換を促していくものと推測しており、他国に比べて遅れているデジタル化を加速し、時代を先取りした取組を進めることが我が国の成長には不可欠であります。
 県としましても、IoTやAI等のデジタル技術を活用したビジネスモデルの構築やスマート農業の普及拡大などに向けた投資を促進し、新たな価値を創出していくほか、国際的にも活躍できるデジタル人材を輩出していくことが本県への企業集積にもつながるものと考えており、高いレベルでの教育環境を整備し、デジタル化を担う人材の育成を図ってまいります。
 第4に、「地域社会の変革」であります。
 本県の寛容性は全国最低レベルとの調査結果もあり、若い世代や女性の県外流出の背景の1つには、周囲からの過度の干渉や性別による役割の固定化などによる閉鎖的な雰囲気があるものと推察しております。
  若者、とりわけ女性の活躍推進が産業人材の確保にもつながるほか、各々が個性を十分に発揮し、地域社会が多様な人材を受け入れることで、社会の裾野が広がり、新たな文化や価値が創造され、成長の原動力になるものと考えており、自己表現できる場の創出を図るとともに、若者のチャレンジへの力強い後押しや、女性が能力を発揮できる機会の拡大と働きやすい環境づくりを進めることが重要であります。
 また、今般のパンデミックがインターネット社会の発展と相まって、個人の価値観や社会経済構造の変化を加速させ、格差と差別をより顕在化させていることから、あらゆる差別等の解消に向けて気運の醸成や寛容性の向上を図るとともに、性的少数者のカップルを婚姻に相当する関係として認める「パートナーシップ証明制度」の新年度からの導入を目指すなど、多様性に満ちた社会づくりを進めてまいります。
  こうした考え方のもと、分野横断的な選択・集中プロジェクトを掲げつつ、6つの重点戦略を定めることにしております。
 「産業・雇用戦略」では、賃金水準の向上を実現するため、競争力のある産業を構築し、「稼ぐ」企業を増やしていくことが必要であり、新エネルギー関連など成長分野への県内企業の新規参入と県内でのサプライチェーン形成を推進するとともに、地域経済を牽引するリーディングカンパニーを中心に、域内取引を活性化させ、県外への高付加価値製品の出荷を増やすなどの取組を強化してまいります。
 また、デジタル技術を活用した新たな付加価値の創出や生産性の向上のほか、産業構造の変化に対応した業態の転換や労働移動、経営資源の融合を促進することにより、企業の収益力を高めてまいります。
 「農林水産戦略」では、食料安全保障の重要性が再認識される中、本県においては、食料供給基地として水田をフル活用しながら、複合型生産構造への転換を進めていくことが重要であります。
 このため、園芸や畜産に取り組む農業者の拡大と大規模団地整備の両輪で進めてきたこれまでの成果を更に発展させることができるよう、地域が主体となって品目や目標を定め、大規模生産拠点の整備やスマート農業を推進するなど、収益力の向上に向けた取組を積極的に支援してまいります。
 また、脱炭素社会に貢献する林業・木材産業の成長産業化に加え、資源変動が著しい水産業の持続的発展に向け、蓄養殖への挑戦を支援するなど、安定的な漁業生産体制を確立してまいります。
 「観光・交流戦略」では、コロナ禍による価値観の変化と地方への関心の高まりを好機と捉え、多様な分野と観光との連携による交流人口の更なる拡大を図るとともに、地域が一体となった観光地経営の取組を促進し、観光関連産業の「稼ぐ力」の向上による産業としての持続性を高めていくことが重要であり、豊かな自然や本県独自の食文化、世界遺産等を生かしたツーリズムの推進とデジタル技術を活用したプロモーションを展開し、「何度でも訪れたくなるあきた」の創出を図ってまいります。
 また、「あきた芸術劇場ミルハス」を核とした文化芸術の発信と魅力ある地域の創造のほか、高速道路や航空路線などの整備・拡充を進めながら、地域公共交通の維持・活性化にも取り組んでまいります。
 「未来創造・地域社会戦略」については、戦後から続く社会減が現在の自然減にも影響を与えていることを踏まえ、まずは県内定着や回帰により新たな人の流れを創出し、結婚や出産・子育てを希望する県民の願いがかなう未来志向の社会の構築を民間との協働により強力に進めていくことが必要であります。
 このため、社会減と自然減の抑制に向けて、若者、特に若年女性の県内就職を積極的に促進するとともに、首都圏等からの移住や人材誘致・関係人口の拡大を図るための受入態勢の整備と支援を行うほか、出会いの機会の提供や結婚・出産に前向きな意識の醸成、安心な子育て環境の一層の充実を図ってまいります。
 「健康・医療・福祉戦略」については、県民の健康と生命を守るため、健康寿命日本一に向けて食生活の改善や特定健診・がん検診の受診率向上を重点的に進めるとともに、高齢者のフレイル予防に取り組んでまいります。
 また、広大な県土に医療資源が偏在する本県においては、医療人材の育成・確保や医療機関の施設整備等に加えて、デジタル化により必要な医療に容易にアクセスできる環境の整備を進めていくことが重要であり、医師不足地域でも安心して在宅医療を受けられる仕組みや、若手医師が経験豊かな医師に指導・助言を求めることができるネットワークシステムの構築を図ってまいります。
 「教育・人づくり戦略」については、情報通信技術の急速な発展や脱炭素化に向けた国際的な取組などにより社会が大きく変化する中で、秋田の子どもたちが国内外を問わず活躍できる能力と技術を身に付け、夢を実現していくことが未来を創る礎になることから、実践的な英語コミュニケーション能力を育成するほか、県立高校にデジタル探究コースを新設するとともに、外部人材を活用したプログラミング教育を実施するなど、デジタル教育の先進県を目指してまいります。
 県政の最重要課題である人口減少問題の克服に向けて、県民一人ひとりの力を結集しながら、新プランに掲げる施策・事業を効果的に展開することで、誰もが希望を持ち、住み続けていくことができる秋田を実現してまいりたいと考えておりますので、皆様のご理解とご協力をお願いします。
 次に、諸般の報告についてであります。
 はじめに、「北京オリンピック」について申し上げます。
 スキー・アルペン競技には横手市出身の向川桜子選手が本県出身者としては初めて、また、バイアスロン競技には北秋田市出身の立崎芙由子選手が4大会連続での出場を果たし、競技を終えた向川選手には、県民に元気と感動を与えていただいたことに感謝申し上げるとともに、立崎選手については、これからの種目でも持てる力を存分に発揮されることを期待しております。
 次に、「美の国あきた鹿角国体2022」について申し上げます。
 全国的に新型コロナウイルスの感染者が増加している中での開催について、医療関係者からも懸念が示されるなど様々な声があることは承知しており、関係者と協議を重ねてまいりましたが、コロナ禍においても社会経済活動を維持していくという基本認識のもと、冬季スポーツに関しては、まん延防止等重点措置の対象地域においても全国規模の大会が開催されていること等を踏まえ、可能な限りの対策を講じた上で開催することを決断したところであります。
 開催に当たっては、地域の皆様の不安の解消に努め、医療機関の負担に留意するとともに、関係機関と十分に連携を図りながら、感染予防対策を徹底し、参加される選手の努力が報われるよう、安全・安心な大会運営に万全を期してまいります。
 次に、大雪への対応については、先週、リモートではありますが、直接、国土交通大臣に対し、平年を大幅に上回る降積雪による県民生活への深刻な影響をお伝えして道路除雪への財政支援を要望したところであり、今後の気象状況の変化を十分注視しつつ、除排雪体制の強化や事故・被害の防止に努めてまいります。
 次に、令和4年度当初予算案について説明申し上げます。
 新年度予算案については、「新秋田元気創造プラン」の初年度として、プランに掲げる6つの重点戦略に基づく施策・事業を中心に推進するほか、新型コロナウイルス感染症への対応として、感染拡大防止と医療提供体制の整備、県内経済の下支えと回復に向けた取組を引き続き実施してまいります。
 歳入面では、県税や地方譲与税が増加する一方で、臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税はそれを上回る減少が見込まれる厳しい財政状況でありますが、新プランに基づく事業の確実な実施を図るため、国の地方創生臨時交付金や今年度歳入の上振れ等を活用しながら、時代の大転換期における秋田の飛躍に向けた積極的な予算としたところであります。
 以下、当初予算案の主なものについて申し上げます。
 「産業・雇用戦略」については、産業構造の変化への対応や県内企業の生産性の向上を図るため、県内中小企業のM&Aを促進するとともに、地域経済を牽引する企業の創出に取り組んでまいります。
 また、洋上風力発電の導入拡大等を本県産業の振興と雇用創出につなげるため、関連産業への県内企業の参入を支援するとともに、風力発電機メーカー等とのサプライチェーンの形成や新エネルギーの地産地消に向けた取組を推進してまいります。
 さらに、産業人材の確保、ひいては若者の定着・回帰に向けて、賃金水準の向上に取り組む中小企業等への融資制度を創設するとともに、企業の賃上げ意欲を喚起する補助制度や入札制度を新たに導入いたします。
 このほか、県内の商店街・飲食店街等が実施する消費喚起の取組への支援や、経営安定資金における新型コロナウイルス感染症対策枠の確保など、県内経済を下支えする対策を切れ目なく講じてまいります。
 「農林水産戦略」については、複合型生産構造への転換を加速するため、園芸・畜産の生産基盤の強化を図るとともに、6次産業化による県産農林水産物の付加価値向上に取り組むほか、「サキホコレ」の全国トップブランド確立に向けて、生産から流通・販売までの総合的な対策を展開してまいります。
 また、森林資源の循環利用とカーボンニュートラルの実現に向けて、林業経営体への造林地集積や低コスト造林技術の普及・定着などを進め、新プラン期間中に再造林面積を現状の2倍以上とすることを目標に、再造林の拡大に向けた取組を総合的に推進してまいります。
 「観光・交流戦略」については、アフターコロナを見据え、県内宿泊事業者の生産性の向上や新たな観光コンテンツづくりに向けた取組を支援するとともに、デジタル技術を活用して収集したデータに基づく効率的・戦略的な誘客プロモーションの実施に向け、実証事業に取り組んでまいります。
 また、県産品の輸出拡大を図るため、台湾や欧州等におけるプロモーションを実施するほか、大館能代空港の3往復運航の定着に向け、新規の航空需要の開拓に取り組んでまいります。
 「未来創造・地域社会戦略」については、県内外の大学生等に対する県内就職への働きかけを強化するとともに、県内企業からのアプローチの強化やマッチング機会の早期確保など、若者の県内定着・回帰に取り組んでまいります。
 また、女性や若者が活躍できる社会の実現に向け、女性の活躍推進に積極的に取り組む企業への支援金や優遇制度等を創設するとともに、チャレンジ精神あふれる若者の戦略的な取組を後押ししてまいります。
 さらに、差別等の解消に向けた条例を制定するとともに、県民意識の醸成と理解の促進、相談に対応する体制の整備に取り組むなど、優しさと多様性に満ちた社会づくりを進めてまいります。
 「健康・医療・福祉戦略」については、医療・介護のデジタル化を推進するほか、本県の感染症医療体制の強化に向けて、秋田大学における秋田感染症コアセンターの設置に対し支援してまいります。
 また、介護人材の確保・育成と職場定着に向けて、事業所認証・評価制度の普及や県民周知を図るとともに、介護従事者の負担軽減のためのロボット導入等を支援するほか、小規模な社会福祉法人の経営基盤の強化に取り組んでまいります。
 「教育・人づくり戦略」については、全ての県立高校において最先端のプログラミング教育を実施するとともに、普通高校へのデジタル探究コースの設置や専門高校での実践的な学習の推進、世界有数のIT企業と連携した授業支援など、デジタル教育先進県を目指した取組を強力に推進してまいります。
 また、比内支援学校をはじめ、能代科学技術高校、横手高校、大曲高校及び鹿角小坂地区統合校の整備を進めるほか、金足農業高校及び湯沢高校、栗田支援学校について、基本設計等を進めてまいります。
 さらに、世界文化遺産に登録された大湯環状列石と伊勢堂岱遺跡について、関係市や地元団体とも連携しながら環境整備と魅力向上に取り組み、世界的価値の増進と周知を図ってまいります。
 これら重点戦略に加え、基本政策において、空き家の発生を抑制するとともに利活用を図るため、市町村、関係団体との連携により、空き家に関する相談にワンストップで対応する体制を整備してまいります。
 また、公共事業については、防災・減災、交通基盤の整備、老朽化対策等に着実に取り組んでまいります。
 以上、令和4年度当初予算案の主なものについて説明いたしました。
 一般会計予算案の総額は、5,886億4,000万円であります。
 なお、新型コロナウイルス感染症対策については、国との調整を要した医療提供体制の整備や経済対策について追加の予算を提案したいと考えております。
 次に、令和3年度2月補正予算案について申し上げます。
 このたびの補正予算案は、新型コロナウイルス感染症への対応や国の補正予算に係る事業のほか、県税収入の上振れ等を活用した地域活性化対策基金の積み増し等について計上しております。
 感染症への対応については、円滑なワクチン接種に向け、個別接種を行う医療機関に対し助成するとともに、自宅療養者の経済的負担を軽減するため、給付金を支給するほか、県内在住者を対象とした宿泊代金に対する割引助成等により、県内流動の促進による観光関連産業の下支えを図ってまいります。
 国の補正予算に係る事業については、農業生産基盤の強化や、防災・減災、国土強靱化対策に係る公共事業等を計上しております。
 このほか、今冬の除雪費の見込みにより道路除雪費等を増額するほか、決算見込み等に伴う補正を行うとともに、前年度決算剰余金の2分の1相当額を財政調整基金に積み立てることにしております。
 一般会計補正額は605億5,922万円の増額であり、これにより令和3年度予算の補正後の総額は6,797億2,390万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県教育委員会教育長の任命について」は、任期満了に伴う教育長の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「秋田県多様性に満ちた社会づくり基本条例案」は、多様性に満ちた社会づくりについて、基本理念及び施策の基本的な事項を定めることにより、多様性に満ちた社会づくりに関する施策を総合的に推進しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。