今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
 はじめに、新型コロナウイルス感染症への対応について申し上げます。
 全国の感染状況は、感染力が強いとされるデルタ株への置き換わりが進み、これまで感染者が少なかった児童生徒をはじめとする若い世代の感染が深刻になっているほか、大都市では病床がひっ迫し、自宅療養を余儀なくされる方が増えるなど、医療体制は危機的な状況にあります。
 本県では、8月以降、県外との往来に関連すると見られる感染者や、複数のクラスターが確認されるなど感染が拡大し、先月の感染者は604人と過去最多になっており、医療機関への負担も大きくなってきております。
 こうしたことから、病床・宿泊療養施設確保計画のフェーズについては、最高の6に引き上げ、関係医療機関の協力のもと、病床を拡大するとともに、重症化を防止する効果がある「抗体カクテル療法」の運用を循環器・脳脊髄センターにおいても開始したことに加え、更なる病床の確保や宿泊療養施設の増設の調整を行っているところであります。
 また、県が共催するイベント等については、感染症対策の徹底と開催の可否の再検討をお願いしたほか、教育委員会においては、県立学校の部活動について、当面の間、活動自粛などの対策を講じるよう通知するとともに、各市町村教育委員会に対しても、部活動等における感染対策への更なる配慮を依頼しております。
 さらに、ワクチン接種については、市町村における一般接種が11月までの終了を目指して進められているほか、企業等による職域接種もワクチンの供給の目処が立ったことから順次開始されており、希望する方全員への早期の接種完了に向けて、引き続き、市町村等を支援するとともに、特に、若い世代に対し、ワクチンに関する正確な情報を周知し、接種を促してまいります。
 加えて、経済対策では、感染拡大により厳しい経営環境にある飲食業や宿泊業などへの支援を行うほか、必要な対策を機動的に実施できるよう、全国知事会を通じて、速やかに補正予算を編成し、地方創生臨時交付金の増額等の地方への十分な財源措置を講じることなどについて、国に対し強く要望しております。
 県としましては、今後とも、県民の生命を確実に守ることを最優先に、感染防止と医療提供体制の充実・強化を図るとともに、経済を下支えする切れ目のない対策など、感染状況に応じた効果的な施策の実施に全力で取り組んでまいります。
 県民の皆様には、ワクチン接種後も、引き続き、感染リスクの高まる行動を避け、マスクの着用や手洗いなど基本的な感染対策を徹底していただくとともに、県外との不要不急の往来を自粛してくださるようお願いします。
 次に、国内外の経済情勢についてであります。
 世界経済は、感染症の影響により国や地域でばらつきがあるものの、総じて回復傾向にあるほか、国内では、巣ごもり需要等を背景に昨年度の法人税収が上振れするとともに、今年4月から6月期の実質GDPが2四半期ぶりのプラス成長となり、海外の経済状況を受けて輸出や鉱工業生産が増加し、企業収益や業況感が改善するなど持ち直し基調にあります。
 また、県内においても、サービス消費が低迷し、飲食店や旅館・ホテル、バス・タクシー等の業績が落ち込んでいるものの、製造業では電子部品・デバイス等で堅調な動きが続いているほか、7月の有効求人倍率が前月を0.12ポイント上回り、過去最高となる1.62倍と全国で2番目の高水準になっておりますが、今後は、国内外を問わず、変異株による感染の急拡大や金融資本市場の変動、地政学的リスク等を注意深く見守っていく必要があると認識しております。
 こうした中、本県においては、秋田地方最低賃金審議会の答申を受け、最低賃金を全国で2番目の上げ幅となる30円引き上げ、来月から822円に改定することが決定されました。
 都市部との賃金格差は、地方からの若年層流出の一因であると考えられることから、今般の中央最低賃金審議会が提示した目安を上回る過去最高の引き上げについては、一歩前進であると捉えており、今後、更に格差解消が進むことを期待しております。
 一方で、今回の改定は、地域経済がコロナ禍以前の状態に回復していない中での大幅な引き上げになることから、特に第三次産業を中心に中小企業・小規模事業者における負担の増大等による影響が懸念されており、雇用を維持しながら継続的に賃金を上げやすい環境を整えていくことが重要になります。
 このため、県としましては、今後、策定が見込まれる国の追加の経済対策も効果的に取り込みながら、IoT・AI等の先進技術の導入や経営規模の拡大に向けた取組を促進するとともに、成長分野への参入、業態転換、付加価値の高いものづくりやサービスの創出を後押しし、企業の生産性向上を図るほか、イノベーションの担い手となるICT人材の確保・育成を進めるなど、引き続き県内企業をしっかりと支援してまいります。
 次に、秋田新幹線の赤渕・田沢湖間の新仙岩トンネル整備計画について申し上げます。
 本計画では、安定運行の確保や乗車時間の短縮などの効果が見込まれていることから、これまでに財政支援に係る国への要望活動や県独自の経済波及効果の分析等を実施してきたほか、7月には、JR東日本との間で「覚書」を締結したところであり、これを契機に事業化に必要な調査等を協力して実施するとともに、沿線自治体との連携による国等への働きかけを一層強化するなど、取組を加速させてまいります。
 次に、農作物の生育状況等について申し上げます。
 今年は、アスパラガス、キクやリンドウなどで高温・少雨の影響を受けているものの、比較的天候に恵まれて、8月15日現在における水稲の作柄が「平年並み」となるなど、農作物は全体的に概ね順調に生育しており、これから収穫期を迎える水稲や果樹を中心に、引き続き、適切な技術指導に努めてまいります。
 一方で、感染症の長期化に伴う米の業務用需要の落ち込みにより、全国の在庫量が増大し、他県における概算金が昨年に比べ下落している状況を踏まえると、本年産米の産地間競争の激化は避けられないことから、JAグループと連携を図りながら、一層の販売促進に努めてまいります。
 次に、北海道・北東北の縄文遺跡群について申し上げます。
 先に開催されたユネスコの世界遺産委員会において、鹿角市の大湯環状列石と北秋田市の伊勢堂岱遺跡を含む「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界文化遺産に決定されたことは、2007年から登録を目指してきた地元自治体をはじめ関係団体の熱意ある取組や要望活動などが実ったものと考えており、関係各位のご尽力に深く感謝申し上げます。
 今後は、遺跡の価値を国内外に発信し、貴重な財産の保存と地域活性化の両立に向けた取組を促進するほか、遺跡の普遍的価値をより確かなものとするため、大湯環状列石の区域内を通る「県道十二所花輪大湯線」について、対応を検討してまいります。
 次に、新秋田元気創造プランについて申し上げます。
 時代の大変革期を見据えつつ、県政の最重要課題である人口減少問題の克服を目指して、「強靱化」、「持続可能性」、「存在感」、「多様性」をキーワードとする4つの元気の創造に向け、「賃金水準の向上」、「カーボンニュートラルへの挑戦」、「デジタル化の推進」の3つを、分野を超えた横断的な「選択・集中プロジェクト」として重点化するとともに、「産業・雇用」、「農林水産業」、「観光・交流」、「未来創造・地域社会」、「健康・医療・福祉」、「教育・人づくり」に関する6つの戦略と、防災減災や交通基盤の整備等の基本政策を盛り込んだ骨子案について、今議会でご議論いただきたいと考えており、県民の皆様からのご意見・ご提言も取り入れながら、今年度中の成案を目指してまいります。
 次に、東京2020オリンピック・パラリンピックについてであります。
 オリンピック・パラリンピックに出場された本県関係選手の皆様からは、粘り強く最後まで諦めない姿勢を通じて、県民に大きな感動と勇気を与えていただきました。これまでのご努力に対し心から敬意を表するとともに、更なるご活躍を期待しております。
 また、事前合宿については、デンマークのボートチームを除き中止になりましたが、オンラインでの交流等を通して、秋田から各国選手を後押しできたものと考えており、スポーツをきっかけとした海外との友好関係や文化・経済面などでの幅広い交流が続いていくことを願っております。
 次に、提出議案の主なものについて説明申し上げます。
 今回の補正予算案は、新型コロナウイルス感染症への対応のほか、「第3期ふるさと秋田元気創造プラン」に基づく事業、公共事業等について計上しております。
 新型コロナウイルス感染症への対応については、今後の感染拡大に備え、検査体制を強化するとともに、県北と県南において新たな宿泊療養施設を確保するなど、引き続き医療提供体制の充実を図ってまいります。
 また、円滑なワクチン接種の実施に向け、休日・夜間の集団接種や、個別接種を行う医療機関に対し助成を行うほか、中小企業等における職域接種を進めてまいります。
 さらに、感染症の拡大により大きな影響を受けている飲食店や飲食店関連事業者に対し事業継続に必要な支援を行うほか、宿泊事業者が行う宿泊代金の割引に対する助成や観光関連施設で使用できる応援クーポンの発行など、冬季の観光需要の下支えを行ってまいります。
 加えて、県内企業の人材不足に対応し、首都圏でのAターン就職の働きかけを強化するとともに、生産性と賃金水準の向上を図るため、県内中小企業者等のM&Aの取組を支援してまいります。
 3期プランに基づく事業については、救急告示病院への遠隔画像連携システムの導入を支援し、急性期診療ネットワークを構築するとともに、県北地域における地域救命救急センターの設置に向け、大館市立総合病院が取り組む医療機器の整備を支援してまいります。
 また、世界文化遺産に登録された大湯環状列石と伊勢堂岱遺跡について、遺跡の保存・活用と県道移設に向けた調査を実施するほか、秋田新幹線の新仙岩トンネル整備計画の早期実現を図るため、JR東日本が実施する調査に要する経費の一部を負担する債務負担行為を設定しております。
 公共事業については、7月豪雨等により被害を受けた道路や河川の公共土木施設の復旧を行うほか、国の内示による国庫補助事業等を計上しております。
 このほか、県議会議員補欠選挙費について計上しております。
 一般会計補正額は、116億2,916万円であり、補正後の総額は、6,169億7,631万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県公害審査会の委員の任命について」及び「秋田県収用委員会の委員の任命について」は、委員の任期満了に伴う後任の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「秋田県民会館条例の一部を改正する条例の一部を改正する条例案」は、あきた芸術劇場の設備を使用する者から使用料を徴収しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。