はじめに、新たな任期を迎えるに当たり、今後の県政に向けて、私の所信を申し述べます。
 世界は今、新型コロナウイルス感染症のパンデミックという100年に一度とも言われる危機的状況に置かれており、報道によるとワクチンの有効性が懸念される変異株や、PCR検査で検出されにくい変異株が海外で発見されるなど、感染拡大の長期化が危惧されております。
 こうした中、まず最優先にすべきことは、「今ある危機」に真正面から向き合い、迅速に対応していくことであります。
 最初に、感染症対策に係る医療・検査体制の充実であります。
 現在、大都市部を中心に変異株が猛威を振るい、新規感染者数が急増するとともに、地方でも感染が再拡大するなど、感染のまん延や医療崩壊にもつながりかねないとの懸念が、全国各地で増大しております。
 本県では、県民の皆様のご協力と地方創生臨時交付金などを積極的に活用した手厚い施策により、感染の拡大を防いでまいりましたが、先月中旬以降、クラスターの発生も含め感染者が連続して確認され、入院・療養者数も増加しており、こうした県内の状況にこれまでにない強い危機感を抱いております。
 このため、基本的な感染防止策の更なる徹底を呼びかけるとともに、県内の感染の多くは県外由来のものと推察されることから、真にやむを得ない場合を除き、県境を越える往来の自粛を強くお願いするほか、最悪の事態も想定し、検査体制の強化と医療提供体制の充実を図るなど適切に対処してまいります。
 当面は、ワクチンの接種が重要になることから、医師会等と連携を取りながら、接種を担う市町村を最大限サポートするほか、専門的な相談に対応するなど、県民の不安解消に努めてまいります。
 次に、深刻な影響を受けている産業への緊急的な支援であります。
 県内企業等の事業の継続と雇用の維持を図るため、当初予算等で措置した事業に加え、感染拡大の状況に応じた追加の対策を速やかに実施するなど、経済を下支えする切れ目のない対策を講じてまいります。
 そして、何より重要なのが、困っている方々への公助の発揮であります。
 コロナ禍において負担が増加している非課税世帯等への県独自の商品券の配付や、離職者を対象とした職業訓練の拡充、就業促進に向けた奨励金の支給など、県民生活への幅広い支援を実施してまいります。
 こうした「今ある危機」への対応とともに、世界的な価値観や社会経済システムの急激な変化の中にあっては、県勢の発展に資するファクターを見極めながら、的確な手を打っていくことも重要であります。
 第1に、成長産業の拡大による所得の向上であります。
 デジタル社会の加速化や自動車のEV化などの新たな動きを捉え、将来の成長につながる分野の企業誘致を更に進めるほか、変革を余儀なくされる業種等に対し、業態転換や規模拡大等への支援を強化するなど、産業構造の変化を見据えた取組を積極的に実施し、経済の活性化を図ってまいります。
 また、DXの推進については、行政手続のオンライン化や、ビッグデータ等を活用した政策の立案などによるデジタルガバメントを構築するほか、「秋田県DXセンター」を拠点として、ICT産業との連携を強化しながら、医療や交通等の地域課題への対応のほか、官民にわたる各分野での変革を促し、利用者視点による新たな価値を創出してまいります。
 第2に、リモートワークなど新しい働き方を取り入れた地域の元気創造であります。
 働き方の見直しや地方暮らしへの関心の高まりによる人の流れの大きな変化を生かし、リモートワークによる移住やワーケーションによる関係人口の創出を通じた、首都圏等からの人材誘致を強力に推進するなど、社会減抑制の動きをより確実なものにしてまいります。
 第3に、女性や若者の活躍と健康寿命日本一の実現であります。
 健康で自由闊達な社会を目指し、県はもとより、企業・団体等における女性の管理職への登用や女性が活躍できる環境整備を推進するとともに、秋田の魅力や可能性を生かした起業、事業創出など若い世代の意欲的な取組をしっかりと後押しするほか、心と体の健康づくりについてもきめ細かく対応してまいります。
 第4に、秋田の新時代を拓く教育・人づくりであります。
 多様で個性に満ちた人材を育成するため、学びの質を高める教育のデジタル化に向けた取組を加速させるとともに、主体的・対話的で深い学びを推進し、豊かな人間性と創造性、様々な局面を打開する力を育むほか、産業構造の変革に即した高等教育の充実や秋田の未来をリードする研究機能の強化を進めてまいります。
 第5に、安全・安心な暮らしと経済を支える公共基盤の整備であります。
 大規模な災害が多発していることから、防災・減災対策を加速させるため、河川や道路等のインフラの強靱化はもとより、高齢者等要支援者の適切な避難態勢の整備など、ハード・ソフトの両面から災害に強い県土づくりを進めてまいります。
 また、高速道路ネットワークの早期完成を目指すとともに、空港や港湾の整備も含め、航空路や海上交通の更なる利便性の向上を図るなど、企業立地や観光誘客など本県の発展に大きく寄与する交通体系の整備を推進してまいります。
 第6に、SDGs基本理念にも掲げられる「誰一人取り残さない」包摂的な社会の形成であります。
 障害の有無や性差、性的指向等を理由とする差別に加え、コロナ禍での誹謗中傷などあらゆる差別の解消を図り、多様性に満ちた社会づくりを推進することが、魅力と活力のある秋田、すなわち「高質な田舎」への道筋でもあり、その実現に向け、県民と共に取組を進めていくため、条例の制定を目指してまいります。
 そして、こうした変革期の更なる先に目を向け、希望を持って果敢にチャレンジしていくことも重要であります。
 気候変動問題への対応が世界的な重要課題となる中で、菅総理が2050年カーボンニュートラルの実現を提唱し、2兆円の「グリーンイノベーション基金」により、経済と環境の好循環を生み出す取組を推進しようとしているほか、このたびの日米首脳会談では、両国が世界の脱炭素を牽引していくことを確認したところであります。
 こうした潮流は、CO2を排出しない多様な再生可能エネルギーを有し、森林資源や水資源が豊富に存在する本県にとって、まさに追い風となるものであり、この流れを捉えた取組を進めてまいります。
 1点目は、総合的再生可能エネルギー産業の振興であります。
 県では、新たなリーディング産業の創出に向け、あらゆる可能性を見据えたビジョンの策定を進めることにしており、本県の強みである洋上風力発電と地熱発電を中心に数値目標化を図ってまいります。
 また、将来の更に沖合への浮体式風車の導入可能性等も視野に入れつつ、メンテナンス、部品製造などの拠点化の推進や県内企業の参入促進のほか、今後主流となる電気自動車の部品製造等に関連する産業の集積など、経済効果の最大化や県民所得の向上を目指した取組を展開してまいります。 
 2点目は、森林資源の活用等による温暖化対策への貢献であります。
 「秋田県地球温暖化対策推進計画」の見直しを行い、脱炭素社会の実現に向けて積極的に取組を進めるとともに、資源の循環利用による林業・木材産業の成長産業化や再造林の拡大を図ってまいります。
 3点目は、食の安全保障における食糧供給県秋田の役割の増大であります。 
 秋田米新品種「サキホコレ」の市場デビューに加え、大規模園芸拠点の全県展開や日本一を目指した産地づくり、秋田牛のブランド化など、複合型生産構造への転換に向けた取組を加速し、我が国の食料自給率の向上に貢献してまいります。
 最後に、新しい時代に向けての私の思いを申し上げます。
 今般のパンデミックから経済を立て直し、本格的な安定化を図るには、3年から4年を要するとも言われており、コロナ禍終息後においても、すべて以前と同じ形に戻ることにはならないものと考えております。
 「集中から分散」、「クリーンエネルギー・グリーン化指向」、「デジタル化社会」、「多様性社会」など、時代の大変革につながる様々な方向性が顕在化しており、時代のすう勢は、まさに、我が「秋田の可能性」をいち早く開花させようとしております。
 こうした状況を踏まえ、県民の声に丁寧に耳を傾けながら、変革を恐れず新しい世界へ飛び込もうとする気概を持ち、これまでの様々な危機に対峙してきた経験と知恵を最大限に生かして、秋田の今と未来をつなぐ新時代への架け橋を築くべく、あらゆる世代が未来に夢と希望を抱くことができる「ふるさと秋田」を創り上げてまいります。
 次に、大雪等による農業被害について、ご報告申し上げます。
 今般の大雪等による農業被害については、農作物のほか、耐雪型ハウスの倒壊など、甚大な被害が発生しており、4月12日現在、40億3,800万円の被害額となっております。とりわけ、果樹については、雪解けが進むにつれて被害の状況が明らかになってきており、各地域振興局に調査チームを設置し、被害の全容把握に努めているところであります。
 先の2月議会において、果樹の改植やハウス等の復旧などを支援することにしたところであり、被災した農家が意欲を持って営農を継続し、産地の維持が図られるよう、市町村やJAと連携しながら、経営の再建に向けた対策を更に講じてまいります。
 次に、単行議案について申し上げます。
 「秋田県副知事の選任について」は、副知事に、理事の神部秀行氏、産業労働部長の猿田和三氏を選任いたしたく、議会のご同意をお願いしようとするものであります。
 「知事等の給与および旅費に関する条例の一部を改正する条例案」及び「教育長の給与及び旅費等に関する条例の一部を改正する条例案」は、現下の経済状況に鑑み、知事、副知事、常勤の監査委員及び教育長の給料月額及び期末手当について、一定の割合に相当する額を減ずる特例措置を継続しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。