制度の特徴

行政不服審査制度は、裁判(行政訴訟)とは異なり、処分の違法性だけでなく、処分の不当性についても行政自らが審理するものです。また、手数料は不要で、審理の方法も書面審査を基本とする簡易迅速な手続が採用されています。

行政不服審査制度と行政訴訟の比較
  行政不服審査制度 行政訴訟
判断機関 行政機関 裁判所
審理の対象 処分の違法性・不当性 処分の違法性
審理方式 原則として書面審理 原則として口頭による陳述
手数料 不要 必要

行政不服審査法の主な改正点

行政不服審査制度の使いやすさの向上、審理の公正性の向上等を図る観点から行政不服審査法が改正され平成28年4月1日から施行されています。その主な改正点は次のとおりです。

(注)改正法による手続は、平成28年4月1日以降の行政庁の処分・不作為が対象となります。それ以前の行政庁の処分・不作為についての不服申立ては、改正前の手続が適用されます。

不服申立ての種類を「審査請求」に一元化

従来の手続では、原則となる不服申立ての種類について、処分をした行政庁に上級行政庁があるか否かによって「異議申立て」と「審査請求」に分けていましたが、改正法では原則となる不服申立ての種類を「審査請求」に一元化しています。

審理員制度の導入

審理手続の公正性・透明性を高めるため、審査請求に係る処分に関与した職員以外の職員の中から審査庁が指名した審理員が審査請求の審理を行います。

第三者機関(行政不服審査会)への諮問手続の導入

審理員が行った審理手続の適正性・判断の妥当性をチェックし、裁決の客観性・公正性を確保するため、裁決にあたっては原則として有識者からなる第三者機関に諮問しなければならないとされています。

審査請求期間の延長(60日以内→3月以内)

従来の手続では、審査請求ができる期間(審査請求期間)を60日以内としていましたが、これを3月に延長しています。

標準審理期間の導入による審理の迅速化

審理の遅延を防ぎ、迅速に権利利益の救済を図る観点から、審査請求が到達してから裁決をするまでに通常必要となる標準的な期間(標準審理期間)を定めるよう努めるとともに、これを定めたときは公にしておかなければならないとしています。

不服申立て(審査請求)の対象

行政不服審査制度が不服申立ての対象としているのは「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」(行政不服審査法1条2項)です。特に除外されない限り「行政庁の処分」と法令に基づく申請に対する「行政庁の不作為」について審査請求をすることができます(同法2条・3条)。

処分とは、行政庁が、国民に対する優越的な地位に基づき、人の権利義務に直接具体的な効果を及ぼす行為をいうと解されています。

例)許認可、是正命令、給付の減額など

不作為とは、法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいいます。

不服申立て(審査請求)をすることができる資格

処分についての審査請求

「行政庁の処分に不服のある者」(行政不服審査法2条)が審査請求することができます。この「不服のある者」とは、その処分について不服申立てをする法律上の利益を有する者、すなわち、行政庁の違法又は不当な処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある者をいうと解されています。

不作為についての審査請求

その不作為に係る申請をした者のみが審査請求することができます。申請から相当の期間(社会通念上その申請を処理するのに必要とされる期間)が経過したにもかかわらず、何らの処分もない場合に審査請求をすることができます。

不服申立てをすることができる期間(審査請求期間)

処分についての審査請求

原則として「処分があったことを知った日」の翌日から起算して3月を経過したときは審査請求をすることができなくなります。また、原則として「処分があった日」の翌日から起算して1年を経過したときには審査請求をすることができなくなります。

ただし、これらの期間を経過した場合でも「正当な理由」があると認められる場合には、審査請求をすることができます。

不作為についての審査請求

申請から相当の期間が経過しても不作為がある場合には、その不作為状態が継続している間は、いつでも審査請求をすることができます。