令和7年第1回定例会 6月議会 知事説明要旨(令和7年5月26日)
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今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、知事就任1か月を迎えた私の思いを申し上げます。
先月20日の知事就任以降、職員の不祥事や県民の安全・安心を脅かす事故に対応しつつ、様々な行事への出席等を通じて、これまでとは異なる立場で、県民の皆様の秋田に対する誇りや熱い思いに触れ、県政のトップとしての責任を日増しに強く感じております。
こうした県民の皆様の期待に応えるべく、既存事業の実施や新規事業の企画立案に当たっては、ターゲットやニーズの把握、最適なツールの選択など、効果を高めるための具体的な手法について、幹部職員はもとより、実務を担当する若手職員とも積極的な議論を重ねているところであります。
今後も、こうした取組を深化させながら、県民満足度の向上に向けて、一つひとつの施策の成果を追求してまいります。
次に、諸般の報告を申し上げます。
はじめに、人口減少対策と今後の県政運営についてであります。
直近10年の本県の人口動態を見ると、高齢化の進行に伴う死亡者数の増加と、出生数の減少により、自然減少数は一貫して拡大しており、全国最大の人口減少率が続く大きな要因となっております。
一方、社会減少数については、移住や新規学卒者の県内定着等の促進に向けた取組により、一定程度改善しているものの、コロナ禍からの正常化が進むにつれて、拡大傾向に転じることが懸念されるところであります。
こうしたことから、まずは若者や子育て世帯を主要なターゲットに据えた実効性の高い社会減対策を展開し、年少人口の下げ止まりを図ることで、将来の自然減の抑制と人口減少率の改善につなげていくことが極めて重要であると考えております。
私は、先に表明した所信において、令和10年度までに社会減少数を1,000人台まで縮減させることを目標として掲げており、その達成に向けて、一刻の猶予もないものと認識しております。
このため、若年層の転出超過の改善に向けて速やかに着手できる取組については、成果を積み上げるための工夫を重ねながら、着実に推進してまいります。
また、こうした取組を足がかりとし、より解像度と精度の高い施策を展開するため、事業の企画立案や実施に当たり、外部人材の知見を活用しながら、ターゲットに関するきめ細かな分析と効果的なプロモーションなど、マーケティング手法の導入を強力に推進する専門組織を企画振興部に設置いたします。
なお、今月14日、県とソフトバンク株式会社及びグーグル・クラウド・ジャパン合同会社の3者で、「DX推進と地域活性化に関する連携協定」を締結したところであり、今後、両社が有するマーケティングに関するノウハウや技術の活用についても協議してまいります。
マーケティング手法は、幅広い政策分野において高い効果をもたらすことが期待されることから、社会減の抑制を直接の目的とする事業のほか、県産品の販路拡大や観光誘客はもとより、県民の健康づくりや脱炭素型ライフスタイルの推進など、様々な施策への導入を順次進めていくとともに、職員を対象とした研修等を通じて、庁内全体にマーケティング思考を浸透させ、県政全般にわたる施策効果の底上げを図ってまいります。
こうした考えのもと、本県が抱える様々な課題の克服と、本県の持続的な発展に向けた県政運営の指針として、新たな総合計画の策定を進めてまいります。
次に、ツキノワグマによる被害防止に向けた注意喚起について申し上げます。
「ツキノワグマ出没警報」を発令し、「ツキノワグマ事故防止キャンペーン」を展開している中、今月18日に、八幡平で登山中の男性が襲われる今年初の人身被害が発生しました。
県では、SNS等を通じて、入山する際には、必ず鈴やラジオで音を出すなど人の存在を強くアピールし、可能な限り複数で行動することを心掛けるなど、十分注意していただくよう改めて呼びかけるとともに、岩手県や関係機関に対しても協力を依頼したところであります。
春先以降、集落や市街地での目撃情報が増えているほか、人を見ても逃げずに、数日にわたり居座り続けるなど、これまでにはなかった傾向も見られており、「いつでも、どこでも、誰でも」クマと遭遇する可能性があることから、県としましては、引き続き、注意喚起の徹底に努めるとともに、市町村等と連携しながら、総合的な被害防止対策を着実に推進してまいります。
次に、県内の経済情勢について申し上げます。
県内景気は、個人消費が緩やかに持ち直しつつあるほか、所得環境に改善が見られるなど、回復傾向が続いているものの、米をはじめとする食料やエネルギー等の価格上昇は、県民の負担感を増大させております。
また、県内企業は、人口減少に伴う市場の縮小や人手不足に加え、米国の関税措置の影響による業績の下振れリスクが懸念されるなど、先行きが不透明な状況に置かれております。
県としましては、先に予算措置を講じた物価高騰対策の着実な執行に努めるとともに、国の施策とも連携しながら、必要に応じて、更なる対策について検討を進めるほか、生産性の向上や人材の確保など、経営力の強化に取り組む県内企業への支援を充実させてまいります。
次に、農業分野の取組について申し上げます。
国では、先般、「食料・農業・農村基本計画」を閣議決定し、食料自給力の向上など、農業の構造転換を図るために集中的に取り組む施策の方向性を明らかにしたところであります。
県としましては、県産米の全国トップブランドの地位の確立を目指し、「サキホコレ」の認知度の向上等に引き続き取り組むとともに、今春から作付けを開始した「あきたこまちR」の安定生産に向けたきめ細かな栽培技術指導を行うなど、戦略的な生産・販売を推進しながら、我が国の食料の安定供給に貢献してまいります。
なお、今般の米不足により、家計や外食産業等に大きな影響が生じている現状は、食料安全保障の重要性を改めて認識する機会になるとともに、農家にとっては、生産拡大を図る契機にもなり得るものと考えており、国に対し、主食用米の需給見通しの見直しや、備蓄制度を含めた機動的な供給体制の確保を求めてまいります。
次に、「秋田県災害福祉支援センター」について申し上げます。
県内では、令和4年から3年連続で大雨による被害に見舞われるなど、自然災害が激甚化・頻発化しており、河川改修等のハード対策に加え、集落の孤立対策や備蓄物資の分散配備、避難所の環境改善など、ソフト対策の重要性が一段と増してきております。
こうした中、今月22日、被災者等に対する福祉支援の充実に取り組む「秋田県災害福祉支援センター」が秋田県社会福祉協議会に開設されました。
センターでは、高齢者や障害者など、特に配慮が必要な避難者に適切に対応するとともに、被災者一人ひとりに寄り添いながら継続的に支援する「災害ケースマネジメント」等を効果的に実施できるよう、平時から、多様な関係団体とのネットワークの構築や人材育成等に取り組むほか、災害発生時は、DWATの派遣やボランティアの活動等に関する総合的な調整を行うことにしております。
県としましては、センターとの連携・協働を進めながら、災害発生時における広域的な福祉支援体制を一層強化してまいります。
次に、提出議案の主なものについて説明申し上げます。
はじめに補正予算案についてでありますが、今回の補正予算案は、私が本県の将来像として思い描く「日本一持続可能な県」の実現に向け、その第一歩として、人口減少対策をはじめとした各種施策の効果を最大化していくための下地となる体制整備や調査・実証事業を中心に編成しており、今後、これらを基に大胆かつ実効性のある施策の打ち出しにつなげてまいります。
私は、幅広い分野における施策の精度を高めていくためには、マーケティング手法を導入し、施策の一連のプロセスの中に組み込んでいくことが極めて重要であると考えております。
このため、速やかに専門の組織を設置し、外部人材の活用や職員研修の実施等により、マーケティングに関する知見やノウハウを共有しながら、庁内全体のスキルを向上させてまいります。
また、マーケティングに基づく施策の展開に向けて、首都圏における本県出身の子育て世帯を主な対象とした交流イベントを開催し、私自身も参加して率直なご意見を伺う機会を設けることで、まずは本県への移住に向けた潜在的なニーズの把握を進め、新たなアプローチによる人口減少対策の足がかりとしてまいります。
さらに、県内外からの新規就農を促進するため、農業法人における後継者等に関する実態調査や就農相談会参加者の意向調査等を行うほか、日本酒などの県産品の海外展開に向けて、香港やシンガポールでのイベント出展や試飲試食会を通じた市場調査を実施してまいります。
加えて、人口減少下においても地域の足を守るため、地域公共交通の再編に取り組む市町村に対して代替手法に関する情報共有などの伴走支援を行うとともに、再編に向けたニーズ調査や計画策定、ライドシェアの実証等に要する経費を助成してまいります。
次に、重点的に取り組む施策のうち、「実効性のある人口減少対策の推進」については、県内の大学1、2年生等を対象に本県での就職や暮らしの魅力を伝える交流会を新たに開催するとともに、家族やパートナーと家事や育児を分担する「とも家事」を官民一体で推進するため、企業や県民を対象にSNS等を活用した情報発信を行ってまいります。
「持続可能性を基盤とした稼ぐ力の向上」については、環境・エネルギー型、資源素材型の事業を行う企業の工場等の新増設に伴う設備投資に対して支援するとともに、新たに洋上風力発電設備の建設及びメンテナンスサービスを行う事業を対象に追加し、洋上風力関連産業の集積を促進してまいります。
また、林業の担い手を確保するため、多様な働き方の導入等に向けた研修を行うほか、就労環境の改善やスマート林業の推進等に関する取組を支援してまいります。
「県民に寄り添った医療・福祉サービスの充実」については、医療機関相互の機能分化と連携強化を促進するため、地域医療連携推進法人の設立や運営を支援するとともに、患者の減少や物価高騰による経営状況の急変に対応するため、生産性の向上や病床数の適正化等に取り組む医療機関等を支援してまいります。
また、全ての子どもたちが健やかに成長できる地域社会を形成するため、子ども食堂等の居場所づくりや生活支援事業の立ち上げに対する助成件数を拡充し、子どもの貧困対策を一層推進してまいります。
「日本の食を支える県づくり」については、本県の食料供給力向上のため、輸入品からの切替えや国内産地の縮小により需要が高まっている夏秋いちご、アスパラガス、さつまいもについて、生産拡大に必要な機械等の整備を支援するとともに、八郎湖でのシジミ増殖の可能性を検討するため、生息実態調査や繁殖飼育試験を実施してまいります。
また、農畜産物の輸出を促進するため、県内の生産者や関係機関により構成される協議会を立ち上げ、輸送方法等の課題解決に向けた実証に取り組んでまいります。
「本県経済を支える中小企業等への支援」については、DX活用事例に関する動画等を制作し、小規模事業者におけるデジタル技術の活用を促すとともに、県内企業とスタートアップ企業との協業に向けたニーズの把握やマッチング支援等により、県内企業の新たな事業展開等を支援してまいります。
また、外国人材の雇用と定着を後押しするため、インドネシア等での現地調査や、幅広い業種における受入モデル事例の創出のほか、日本語教育や居住環境の整備等を行う事業者に対する支援に取り組んでまいります。
公共事業については、今回約139億円を計上しており、令和6年度の国の補正予算を含めた実質事業費を、前年度に比して32億円、2パーセント増としております。
このほか、県政運営の新たな指針となる次期総合計画については、大学生等によるワークショップの実施や策定段階におけるSNSでの発信等により、若者の意見を幅広く取り込みながら策定してまいります。
また、県が実施する事業の内容や成果が、県内外にしっかりと伝わるよう、情報取得手段の多様化やデジタル化の進展に対応した実践的な研修を行い、県庁全体の発信力の強化を図ってまいります。
一般会計補正額は、212億5,996万円であり、補正後の総額は、5,986億496万円となります。
次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
「秋田県監査委員の選任について」は、一部委員の任期満了に伴う後任の選任について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
「秋田県県税条例の一部を改正する条例案」は、社会福祉施設の整備及び医療の充実の財源に充てるため、法人の県民税に係る税率の特例措置の適用期間を延長するとともに、地方税法の一部改正に伴い、令和8年度以後の各年度分の個人の県民税に係る特定親族特別控除等を行おうとするものであります。
以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。