このたび提案いたしました議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
 はじめに、ツキノワグマによる被害防止についてであります。
 今年の秋は、自宅の敷地内や農地、道路、公園など、都市部・農村部を問わず、人の生活圏におけるクマの目撃や被害が大半を占め、県民の生命・財産、日々の暮らしや経済活動が脅かされる異常事態が続いております。
 このため、県では、放任果樹の伐採はもとより、児童生徒の登下校時の安全を確保するため、警察や警備会社、PTA等との連携のもと、通学路や学校周辺における巡回・見守り体制を強化したほか、市町村に対し、箱わなやセンサーカメラを貸与するとともに、緊急銃猟の適正な実施に向けた支援を行うなど、被害の未然防止に向けた緊急的な対応に最大限努めてまいりました。
 他方で、過去に例を見ない大量出没により、クマの被害対策を担う市町村や現場で対応に当たる狩猟者等の負担が限界に達していることから、先般、防衛省に対し、自衛隊の派遣について緊急要望を行い、今月五日から箱わなや駆除後のクマの運搬等の活動支援が開始されたところであります。
 また、クマの捕獲に係る財政措置や、いわゆる「ガバメントハンター」の確保に向けた環境整備、クマの個体数等を把握するためのモニタリング調査の実施など、実効性の高い対策を講ずるために必要な支援について、関係省庁に要望を行ってきております。
 こうした中、政府は、全国各地で深刻化する被害に対処するため、「クマ被害対策パッケージ」を取りまとめ、自治体への財政支援を拡充するほか、捕獲の強化や人とクマの棲み分けの実現に向けた施策を着実に実行する方針を示しました。
 県としましては、パッケージの内容を踏まえながら、国や市町村、猟友会等と連携し、取組を充実・強化するとともに、来春以降の市街地への出没防止に向けてゾーニング作業を継続してまいります。
 さらに、クマの生態等に関する知見の集積を図るほか、監視・捕獲の強化に資する技術の調査・実証等を進めることで、クマ対策のパイオニアとして全国をリードしながら、県民の安全・安心を確実に取り戻してまいります。
 次に、国政を巡る情勢について申し上げます。
 自民党と日本維新の会による連立政権として先月21日に発足した高市内閣は、「強い経済」を構築するため、食料・エネルギーなどの安全保障の確保や国土強靱化等に向けた戦略的な「危機管理投資」を進めるとともに、地方が持つ伸び代を生かし、住民の暮らしを守るための政策を講じながら、強く豊かな日本を創り上げていく方針を掲げております。
 その実現に向けて、まずは、先日閣議決定された総合経済対策の裏付けとなる補正予算の編成と早期成立を図り、現下の物価高に迅速に対応するとともに、来年度予算と一体として切れ目のない経済財政運営を行いながら、国民一人ひとりが希望を持てる強い日本経済を取り戻すための政策を着実に推進していただきたいと考えております。
 県としましても、今般の経済対策と補正予算の動向を注視しながら、県民生活の安全・安心の確保や中小企業の賃上げ環境の整備等に向けた取組について検討を進めるなど、国の動きと歩調を合わせ、必要な施策を講じてまいります。
 また、先般、地方創生の司令塔として、地域未来戦略本部の設置が閣議決定されたところであり、本部長である高市総理におかれましては、強力なリーダーシップのもと、前政権が掲げた地方重視の姿勢をしっかりと継承しながら、東京一極集中の是正や地域経済の発展、地方税財源の充実等を図るための取組を推し進めていただくことを期待しております。
 次に、洋上風力発電について申し上げます。
 先月15日から3日間にわたり、洋上風力発電に関する産業交流や人材育成等をテーマとして、県内では3年ぶりとなる「世界洋上風力サミット」が秋田市で開催され、オンラインを含め、国内外から約800名の関係者が参加しました。
 燃料価格や資材費等の世界的な高騰に伴い、国内外の洋上風力発電事業が採算性を確保するための困難な課題に直面する中、今回のサミットでは、その解決と更なる導入拡大に向け、発電事業者や風車のサプライヤーのみならず、自治体や漁業関係者、金融機関など、多様な主体による意欲的な意見交換が行われました。
 また、再エネ海域利用法に基づき、新たに「秋田市沖」が有望区域として整理されたことに加え、風車部品の組立・運搬等を行う県外企業や、浮体式洋上風車の係留ロープを製造する海外企業が県内への進出を表明するなど、先月以降、本県沖における洋上風力発電の導入拡大と、県内への関連産業の集積に向けた動きが活発化しております。
 発電事業者が撤退を表明した2海域については、国に対し、速やかな再公募の実施と、発電事業の確実な実施に向けた環境整備を要望したところであり、撤退に伴う県内経済への影響を最小限に抑えるよう関連企業への支援に努めながら、再生可能エネルギー先進地としての歩みを力強く進めてまいります。
 次に、農作物の生育状況について申し上げます。
 今年は、7月の高温・少雨や、8月から9月にかけて相次いだ大雨など、農作物にとって非常に厳しい生育条件となり、ネギや枝豆など園芸品目の出荷量の減少や品質の低下が見られました。
 一方で、水稲は、一部の水田で渇水、冠水等による被害が生じたものの、今年から作付けを開始した「あきたこまちR」の生育も順調に推移し、10月25日時点における県全体の作況単収指数は103で、平年を上回る作柄となっており、作付面積の増加と相まって、主食用米の収穫量も、前年を約14パーセント上回る見込みとなっております。
 高市内閣は、「需要に応じた米の生産」を強く打ち出しており、県としましても、「サキホコレ」をフラッグシップとして、秋田米の販売力の強化と生産性の向上を図りながら、日本の食を支える食料供給基地としての役割を果たしてまいります。
 なお、今般の大雨被害については、今月11日、激甚災害の指定が閣議決定されたところであり、引き続き、国や市町村等と連携しながら、被災した農地等の早期復旧を図ってまいります。
 次に、高速道路ネットワークの整備について申し上げます。
 東北中央自動車道「下院内・雄勝こまち」間として国が整備を進めてきた「横堀道路」が、今月22日に開通いたしました。
 これにより、物流の定時性や速達性が向上するほか、「道の駅おがち」が高速道路と直結し、県南地域における観光の玄関口としての機能強化が図られるなど、地域経済の発展に大きく寄与するものと考えており、引き続き、県内における事業中区間の早期完成に向け、国に対して、あらゆる機会を捉え、強く働きかけてまいります。
 次にブラジルへの訪問について申し上げます。
 先月16日から8日間の日程で、県議会議長をはじめとする関係者と共にブラジルを訪問し、県人会の創立65周年記念式典に出席するとともに、かつて県費留学生として本県で生活された方々との意見交換等を行ってまいりました。
 私にとって初めての南米訪問であり、移住一世・二世の高齢化が進む中、自分のルーツである遠く離れた「ふるさと秋田」に馳せる強い思いが、心のよりどころとして、次の世代に確実に引き継がれていることを感じ、胸を熱くいたしました。
 今後とも、本県とブラジルをつなぐ架け橋として、県人会からの研修員を受け入れるなど、移住三世・四世の若者を中心とした交流を深めながら、これまで培ってきた絆を一層強固なものとしてまいります。
 次に、タイへのトップセールスについて申し上げます。
 今月12日から15日にかけて、市町村や観光・経済団体等の関係者と共にタイを訪問し、県内観光や県産品のプロモーションを行ってまいりました。
 タイからの誘客については、来月1日に仙台・バンコク便が就航することを好機と捉え、旅行事業者等に対し、本県への旅行商品の造成を強く働きかけてまいりました。
 また、タイでは、食材として、和牛の引き合いが強まっており、レストランシェフを対象とした講習会の開催等を通じて、多様な部位を含む「一頭買い」により秋田牛の需要が拡大する大きな可能性を感じたところであります。
 今回の訪問を通じて把握した現地のニーズを踏まえながら、きめ細かな情報発信と関係事業者との連携強化に努め、本県への誘客促進と県産品の輸出拡大につなげてまいります。
 次に、次期総合計画について申し上げます。
 国際情勢の変化や気候変動に伴い、エネルギーや食料等の安全保障の重要性が増大する中、本県は、多様な再生可能エネルギー源や広大な農地、豊かな森林資源などを存分に活用することで、持続可能な地域社会を構築するための新たな価値を生み出し、時代を力強くリードしながら、県民の豊かさを実現できる大きな可能性に満ちております。
 私は、これまで進めてきた人口減少対策のターゲットや手法を大胆に見直すとともに、本県のポテンシャルを最大限に引き出しながら、年少人口の下げ止まりに道筋をつけることで、県民一人ひとりが、それぞれの地域の将来に明るい展望を抱くことのできる秋田を創り上げたいと考えております。
 このため、次期総合計画においては、人口の社会減少数をはじめとする各種の指標において野心的かつ実現可能な数値目標を掲げることとしており、その達成に向けて解像度と精度の高い施策を展開することで、秋田の再興と県民満足度の向上を図ってまいります。
 今議会におきましては、計画の素案についてご議論いただきたいと考えており、今後も、県議会や県民の意見を踏まえながら、今年度中の成案に向けて策定作業を進めてまいります。
 次に、提出議案の主なものについて説明申し上げます。
 はじめに補正予算案についてであります。
 今回の補正予算案は、ツキノワグマによる被害防止対策などの重点的に取り組む事業のほか、公共事業の発注を前倒しするための債務負担行為等について計上しております。
 重点的な取組については、人の生活圏におけるツキノワグマの大量出没により、現場対応に当たる猟友会員の負担が増加していることから、捕獲奨励金及び慰労金の支給により活動を支援してまいります。
 また、洋上風力発電事業者の撤退による影響を軽減するため、事業者の進出を見込んで先行して設備投資を行った県内企業に対し、借入金利子の一部を助成してまいります。
 債務負担行為の設定については、移住相談体制の強化に向けて、アキタコアベースの県内拠点を4月から新たに設置し、東京の拠点と一体となって就職先の開拓や企業、市町村との調整など、移住希望者の多様なニーズに対し専門的かつ一貫して支援する体制を構築してまいります。
 また、県政情報の効果的な発信に向けて、アンケート調査等により広報の内容や媒体に関する県民のニーズなどを把握し、今後の広報のあり方について検討してまいります。
 さらに、公共事業の発注前倒しにより、年間工事量の平準化と整備効果の早期発現を図ってまいります。
 一般会計補正額は、35億8,189万円であり、補正後の総額は、6,179億4,650万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県人事委員会の委員の選任について」、「秋田県教育委員会の委員の任命について」及び「秋田県公安委員会の委員の任命について」は、一部委員の任期満了に伴う後任の選任等について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「一般職の職員の給与に関する条例等の一部を改正する条例案」は、人事委員会の勧告に鑑み、職員の給料月額、期末手当及び勤勉手当の額の改定等を行おうとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。