令和7年第2回定例会 9月議会 知事説明要旨(令和7年9月8日)
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今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
はじめに、大雨による被害状況等についてであります。
県内では、先月上旬から今月にかけて、前線の影響などにより記録的な大雨が相次ぎ、住家の浸水や農地の冠水、鉄道の運休などが発生しました。
県では、河川が氾濫し、被害が拡大するおそれのあった仙北市、五城目町、上小阿仁村に対し、災害救助法を直ちに適用するなど、被災者の支援を最優先に迅速な対応に努めたところであります。
被害に遭われた皆様に対しまして、心よりお見舞いを申し上げます。
現在、県内各地の被害額について調査を進めているところであり、早急に関連予算を編成の上、国や市町村と連携しながら、被災された方々の生活や事業の再建を支援するとともに、被害のあった道路、河川、農地等の早期復旧に向け、全力で取り組んでまいります。
次に、国政を巡る情勢について申し上げます。
7月20日に行われた参議院議員選挙の結果、衆参両院において、自民、公明両党の議席数が過半数を割り込むこととなりました。物価高への対応など与党の政権運営に対する厳しい民意の表れと受け止めております。
今回の選挙では、既成政党離れがこれまで以上に鮮明となり、いわゆる「自民一強」から「多党化」への流れがより顕著となりました。国民一人ひとりの多様な価値観や意見が反映された一方で、重要政策の円滑な立案と遂行に向けて、与野党間の調整が大きな課題になるものと認識しております。
こうした中、昨日、石破総理が自民党総裁を辞任する意向を表明しました。今後、党内の手続を経て次期総裁が選出されることとなりますが、国政の重要課題への対応が停滞することのないよう万全を尽くすとともに、我が国の発展を下支えしてきた地方を大切にする姿勢を引き続き重視していただきたいと考えております。
特に、いわゆる「ガソリンの暫定税率」の廃止等については、地方の減収を補填する代替の恒久財源を措置するなど、物価高騰に伴う国民負担の軽減と、地方における安定的な行政サービスの確保を両立させるための丁寧な議論が不可欠であります。
国会においては、地方の活性化が、我が国全体の持続的な発展に向けて、地方のみならず、国にも課せられた重大な使命であることを十分に踏まえながら、政党の垣根を越え、地方の目線に立った実効性のある議論を尽くしていただくことを期待するものであります。
次に、全国知事会議について申し上げます。
7月23日から2日間にわたり開催された全国知事会議では、今年6月に基本構想が閣議決定された「地方創生2.0」に関する取組の充実・強化に向け、熱のこもった討議が重ねられました。
私は、この会議に初めて出席し、カーボンクレジット制度の拡充など、我が国全体の脱炭素化に大きく貢献する取組を進める地方に対し、十分な利益が還元される仕組みを国として構築するよう意見を述べたほか、持続可能なインフラマネジメントのあり方等について議論を交わしてまいりました。
全国知事会は、近年、新型コロナウイルス感染症への対応に係る国との協議等を通じて、「結果を残す知事会」として、存在感を高めております。今後も、地方創生の実現と、本県が抱える課題の解決に向けて、積極的な発言に努めながら、他県の知事との連携を一層深めてまいります。
次に、最低賃金の引上げについて申し上げます。
先月25日、国の秋田地方最低賃金審議会は、本県の最低賃金について、国が示した目安を超える80円の引上げを行うよう答申しました。
答申どおりに引上げが決定された場合、来年3月31日から適用される本県の最低賃金は、全国最下位を脱することとなります。
一方で、今回の引上げは、使用者側の大きな負担を伴うものであることから、大幅な賃金の引上げを行う県内中小企業等に対し、緊急的な支援を実施することとしており、制度の詳細について、速やかに検討してまいります。
なお、最低賃金の動向は、若者の社会動態に影響を与える可能性があることから、近年、地域間の上積み競争が過熱するなど、制度の本質とはかけ離れた実態が見られるところであります。
こうしたことから、経済実態に応じた地域区分ごとに同一の最低賃金を適用するなど抜本的な制度改正を早急に講じるとともに、生産性の向上や競争力の強化など、賃金の引上げに向けた環境づくりに取り組む中小企業等への支援の強化について、引き続き、国に働きかけてまいります。
次に、洋上風力発電事業者の撤退について申し上げます。
先月29日に、「能代市、三種町、男鹿市沖」と「由利本荘市沖」の2海域の発電事業者から、実行可能な事業計画を策定することが困難であることを理由に、洋上風力発電の開発を取り止める旨の説明がありました。
洋上風力発電の導入を契機として、本県の発展に向けた様々な取組を官民挙げて進めてきた中、このたびの撤退は極めて遺憾であり、発電事業者に対し、関連産業への参入に挑戦してきた県内企業等への社会的責任を十分に果たすとともに、現在実施中の地域共生策の継続はもとより、本県が抱える課題の解決に向けて、共に取り組んでいくよう強く要請したところであります。
今後は、アンケート調査等を通じて、撤退に伴う県内企業等への影響を早期に把握するとともに、発電事業者の速やかな再公募に向けて、漁業者や地域住民の意向を踏まえながら、国との調整を進めてまいります。
次に、ツキノワグマによる被害防止対策について申し上げます。
5月以降、市街地や集落におけるクマの目撃件数が例年を大幅に上回るペースで増加しており、今年の秋は令和5年度並みの大量出没が危惧されております。
農作物の食害が多発しているほか、人身被害も相次いでおり、7月には、北秋田市内の福祉施設付近において女性が襲われ、その後死亡するという大変痛ましい事故が発生しております。亡くなられた方のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被害に遭われた皆様に対しまして、心よりお見舞いを申し上げます。
県では、今月1日からの2か月間を「秋のクマ事故防止強化期間」と定めたところであり、屋外では鈴やラジオで音を出すなど人の存在を強くアピールすること、車庫や物置の扉を閉めておくこと、クマが食べるものを屋外に放置しないことなどを徹底するよう、県民への注意喚起に努めてまいります。
また、鳥獣保護管理法の一部改正により、今月1日から緊急銃猟制度の運用が開始されたことから、国と連携して現地研修会を開催するなど、緊急銃猟の適正な実施に向けた市町村の体制整備を支援してまいります。
次に、台湾へのトップセールスについて申し上げます。
先月17日から21日にかけて、市町村、観光・経済団体、企業の関係者と共に台湾を訪問し、県内観光や県産品のPRを行ってまいりました。
先般、来年3月までの運航が決定された台湾チャーター便については、4月以降も運航を継続するよう現地航空会社に要望したところであり、搭乗率の維持・向上と県内への経済効果の拡大に向けて、更なる誘客を図ってまいります。
県産品の販路拡大については、台湾各地に店舗を展開する小売店グループがりんごの取扱いを決定したほか、現地の大手輸入業者との間で、新たに日本酒の取引が成立するなど、一定の成果を得たところであります。
このたびのトップセールスは、私にとって、知事就任後、初めての海外訪問であり、インバウンドと輸出の拡大に向けた施策の最終ターゲットである、一般ユーザーの感覚を肌で感じる絶好の機会となりました。
今後も、現地のニーズの的確な把握に努めながら、海外市場の取り込みに向けた戦略的な施策の展開を図ってまいります。
次に、次期総合計画について申し上げます。
人口減少対策の実効性を高めるためには、社会減の抑制に直接寄与する地域経済の活性化のみならず、健康で安全・安心に暮らせる基盤の構築や、県民一人ひとりが夢に向かって存分に活躍できる環境づくりにつながる政策について、連携を密にしながら相乗効果を発揮させることで、その成果を人口減少問題の克服に収れんさせていく必要があると考えております。
こうした考えのもと、目指すべき本県の将来像を県民と共有しながら、県民満足度の向上に焦点を当てた施策の展開を図るため、新たな県政運営の指針となる次期総合計画の策定に当たっては、これまで以上に県民の意見を幅広く伺うよう努めております。
6月から8月にかけて、県内8地域において開催した県民との意見交換会においては、休日の開催を基本とするとともに、SNS等を活用し、積極的なPRに努めるなど、従前の方式を大きく改めることで、一般傍聴者を含め、300人を超える県民に参加いただき、多様な視点から数多くの意見を伺ってまいりました。
また、計画策定に関する県民アンケートの実施や公式インスタグラムの開設、大学生等によるワークショップの開催など、若者を中心に、幅広い世代の意見を把握するための新たな取組も進めているところであります。
今議会におきましては、計画の骨子案についてご議論いただきたいと考えており、今後も、県議会や県民の意見を踏まえながら、今年度中の成案に向けて策定作業に取り組んでまいります。
次に、提出議案の主なものについて説明申し上げます。
はじめに補正予算案についてであります。
今回の補正予算案は、マーケティングによる施策の推進のほか、人口減少対策等の重点的に取り組む施策、渇水に対する応急対策などについて計上しております。
マーケティングによる施策の推進については、7月に専門部署を設置して以降、アドバイザーからは、新たな施策の立案はもとより、既存施策についても、ニーズの把握やターゲットの設定、事業手法等について様々な視点からご助言をいただいております。
今後は、こうしたマーケティング手法の更なる活用と組織全体への着実な浸透を図ることで、一層効果的な施策の立案等につなげていくことが重要であると考えております。
このような考えのもと、マーケティングの推進体制を更に強化するため、ターゲットに訴求する効果的な情報発信に向けて、新たにSNSマーケティングを専門とするアドバイザーを招聘するとともに、人流データや検索情報に基づく詳細な調査・分析が可能となるツールを導入し、施策・事業の解像度と精度を高めてまいります。
また、各種施策を推進していく上で鍵となる情報を、多様な媒体を通じて幅広く発信する機会を獲得し、本県の認知度向上と新たなターゲットの掘り起こしにつなげてまいります。
次に、重点的に取り組む施策であります。
人口減少対策については、大学生等の県内就職促進に向け、帰省時期に合わせて秋田新幹線の一部の車両を貸し切った就活イベントを開催するほか、交通費相当額の一部をキャッシュレスポイントの付与により支援し、県内で開催される企業説明会やインターンシップ等への学生の参加拡大につなげてまいります。
また、本県への移住について関心のある潜在層の意識を把握するため、本県出身で首都圏に在住する子育て世帯等を対象としたウェブアンケート調査を実施し、7月から開始している首都圏交流会を通じたニーズの把握と合わせて実効性の高い移住施策の企画立案を進めてまいります。
観光誘客の促進については、インバウンドの拡大に向けて、今後増加が期待できる台湾や香港、中国などからの個人旅行者の動向やニーズ等について詳細な調査・分析を行うことにより、効果的なプロモーションにつなげるなど、施策効果の最大化を図ってまいります。
また、インバウンドの取り込みにおいて重要な役割を果たす外国語版観光情報サイトについて、現状を踏まえた課題を専門的な見地から分析し、改修に向けた設計を行うことにより、使いやすく充実した内容にリニューアルしてまいります。
渇水に伴う応急対策については、今年6月から7月にかけての記録的な少雨により、河川の流量やダム・農業用ため池の貯水量が低下したことから、農作物への影響を回避するために土地改良区や水利組合、農業者が行った農業用水の確保に要した経費を助成してまいります。
一般会計補正額は、9億5,686万円であり、補正後の総額は、6,002億5,334万円となります。
次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
「秋田県土地利用審査会の委員の任命について」は、委員の任期満了に伴う後任の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
「秋田県男女共同参画センター条例の一部を改正する条例案」は、秋田県南部男女共同参画センターの移転に伴い、同センターの位置に関する規定を改めようとするものであります。
以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。