今議会におきましては、当初予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、諸般の報告と提出議案の説明に先立ち、能登半島地震及び昨年末の中国甘粛省で発生した地震でお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された方々に衷心よりお見舞いを申し上げます。
 元日に発生した能登半島地震では、阪神・淡路大震災に匹敵する大きな揺れにより、震源地に近い各県で、多くの死傷者が出ていることに加え、建物や公共インフラが損壊するなど、甚大な被害が生じております。
 県としましては、多くの方が避難されている石川県に災害派遣医療チームDMATや保健師等を派遣し、被災された方々の健康や衛生管理のための活動等に取り組むとともに、県トラック協会の協力を得て非常食等の支援物資をお送りしたほか、家屋被害認定調査に当たるため、職員を新潟県に派遣したところであり、今後とも、被災地の1日も早い復旧・復興に向けて、最大限の支援を行ってまいります。
 また、昨年12月に友好交流訪問団をお迎えするなど、40年にわたる友好提携関係にある甘粛省に対しては、先日、見舞金をお送りしたところであり、現地の一刻も早い復旧を願っております。
 次に、所信の一端を申し述べます。
 国立社会保障・人口問題研究所が先頃公表した「地域別将来推計人
口」によると、県人口は、2050年には約56万人と今後30年間で約4割の減となり、全国で最も早いペースで減少するほか、高齢化も急速に進行するとの、厳しい推計が示されております。
 一方、近年は、これまでの取組により、高校生の県内就職率が高水準で推移しているほか、社会減が4年連続で2,000人台と5年前と比較して半数程度となっていることなどから、2045年の県人口は前回推計を約2万人上回っており、一定の改善が見られるところであります。
 本県は、高齢化等に伴う指標において全国下位となっている項目が見受けられますが、社会経済環境の大きな変化により、本県が持つエネルギーや食料の供給力等の優位性を最大限生かせる状況になってきていると同時に、情報技術の急激な進歩や産業のグリーン化に加え、大量生産・大量消費の見直し、量より質の充実を求めるライフスタイルの広がり等を背景にした新たな思考によるチャレンジが求められる時代となっていることから、努力次第では改善が可能であります。
 こうした考えのもと、本県の有する有形・無形の資源、資産を効率よく活用し、新たな視点で挑戦することで、日本の発展に貢献し、国を支える基盤として自立する秋田を実現することを目指し、県政の推進に取り組んできたところであります。
 来年度は私の任期の締めくくりの1年でありますが、限りある財源を有効に活用し、秋田の前進につなげるため、緊急を要する施策に重点的に取り組むとともに、3年目を迎え、折り返しとなる「新秋田元気創造プラン」について、これまでの取組の検証を行いながら、「賃金水準の向上」や「カーボンニュートラルへの挑戦」「デジタル化の推進」の3つの選択・集中プロジェクトをはじめ、6つの重点戦略による各般の施策を着実に推進し、主要課題に道筋を付け、次に引き継いでまいりたいと考えております。
 重点施策の1つ目は、未来の秋田を支える人への投資であります。
 人口減少において大きな要素である少子化については、根源的な対策として婚姻数を増やすことが肝要であり、その前提として女性・若者の県内定着・回帰を図る必要がありますが、コロナ禍からの正常化が進むにつれて東京一極集中が再び加速していることから、女性の就業サポートの充実や、首都圏等の若者が秋田で働き、暮らすきっかけづくり等の取組を一層強力に進めてまいります。
 特に、高校卒業者の約7割を占める進学者の定着・回帰については、結婚機会の創出につながることに加え、新たな時代における本県産業の更なる発展と成長に不可欠な人材を確保する上で重要であることから、企業と連携して、県内に就職する大学卒業者等の経済的負担の軽減を図る新たな奨学金返還助成制度を創設するとともに、企業の技術力・経営力の強化や優良企業の誘致に取り組みながら、技術革新や海外展開、成長分野への進出等の経営の中核を担う大学卒業者等の確保と定着、育成に向けた企業の取組をソフト・ハードの両面から支援するほか、若者の意欲的な挑戦や起業、スタートアップを次々に生み出す環境づくりを促進してまいります。
 これに加え、リスキリングなどの学び直しへの支援の充実により、求職者等のキャリアアップ、人手不足分野への人材誘導を促進するなど、人材投資・確保に向けた取組を積極的に進めてまいります。
 また、「こどもまんなか社会」の実現に向け、私自身が応援サポーターに就任したところであり、こども施策を総合的に推進する「こども計画」を策定するほか、子どもの医療費助成を拡充し経済的な負担軽減を図るなど、市町村と協働で子育て支援の更なる充実に取り組んでまいります。
 重点施策の2つ目は、気候変動等に対応した防災力の強化についてであります。
 昨年の夏に県内での大雨被害を経験したことに加え、このたびの能登半島における大地震という自然の脅威を目の当たりにし、突発的に発生する自然災害に対する備えの重要性を改めて強く意識したところであり、県民の防災意識の向上と自主防災組織の育成を図るとともに、孤立集落の発生が懸念される半島地域等の被害想定や防災・減災対策の検討を進めるなど、地域防災力の強化に努めてまいります。
 とりわけ、水害については、気候変動に伴い今後も大雨が想定されることから、県民の生命や財産を守るため、昨年被災した公共土木施設の早期復旧に取り組むとともに、現状復旧にとどまらない抜本的な治水対策として、被害が甚大であった秋田市の太平川や五城目町の内川川・富津内川等の整備を推進するほか、ハザードマップの基となる浸水想定区域図の作成を加速化するなど、引き続き関係機関と連携しながら、ハード・ソフト一体となった流域治水対策を進めてまいります。
 また、農業分野において、高温等に対応した栽培技術の普及・拡大に努めるとともに、霜害回避のための情報システムの開発など、気象災害に強い産地づくりを進めてまいります。
 次に、諸般の報告を申し上げます。
 はじめに、全国育樹祭の招致についてであります。
 この行事は、森を守り育てることの大切さを国民に伝えることを目的に、毎年秋に開催されている全国行事であり、豊かな水と緑に恵まれた美しい秋田の魅力や森づくりの取組を全国に発信する絶好の機会となることから、令和9年に予定されている第50回全国育樹祭を招致することにいたしました。
 昭和53年以来、県内では2回目となる全国育樹祭の開催を実現させ、社会全体で「伐って・使って・植える」という循環利用の拡大に向けた機運の醸成を図ってまいります。
 次に、台湾チャーター便の運航継続について申し上げます。
 昨年12月の就航以来、台湾から多くの観光客に利用いただき、4月以降の運航が継続されることになりました。
 台湾は、インバウンド誘客における最重点市場と位置づけており、将来の定期便化も見据えて、引き続き本県を強くPRし、更なる誘客の拡大を図ってまいります。
 次に、新県立体育館の整備について申し上げます。
 現在、PFI事業者の選定等に向け、作業を進めているところでありますが、昨年12月、男子プロバスケットボールのBリーグから、令和8年に開幕するBプレミアのアリーナ整備に向けた手続きに関する要件等の見直しについて発表があったことから、この内容を踏まえながら、事業の進捗を図ってまいります。
 次に、洋上風力発電の導入促進について申し上げます。
 昨年12月、「男鹿市、潟上市、秋田市沖」の事業者が選定され、来月には「八峰町、能代市沖」の事業者も選定される見通しとなっており、本県海域での洋上風力発電の導入が着実に進んできております。
 今後も、発電設備建設のための基地港湾である秋田港や能代港の整備等を行いながら、漁業者や地域住民との共存共栄の理念のもと、浮体式を含め、導入拡大を図り、国が目指す再生可能エネルギーの主力電源化に貢献してまいります。
 また、関連産業への県内企業の参入や県外企業の立地を促進し、経済効果の最大化を図るとともに、県産品の販路拡大や観光誘客など、多様な分野における発電事業者と連携した取組を全県的に展開し、地域課題の解決につなげてまいります。
 次に、令和6年度当初予算案について説明申し上げます。
 新年度予算案については、人口減少問題の克服に向けた「未来の秋田を支える人への投資」や、県民の生命や財産を守るための「気候変動等に対応した防災力の強化」を強力に進めるとともに、「新秋田元気創造プラン」については、選択・集中プロジェクトに予算を重点的に配分するほか、6つの重点戦略に基づく施策・事業を着実に推進してまいります。
 歳入面では、県税が減少したほか、臨時財政対策債を合わせた実質的な地方交付税についても将来的に減少が見込まれることに加え、歳出面では、防災力の強化のため、相当程度の一般財源の支出と県債の発行が必要になることなどから、厳しい財政状況が続くものと考えておりますが、財政健全化判断比率の推移に留意しながらも、県民の安全・安心の土台をしっかりと固めつつ、将来の秋田を支える女性や若者の挑戦を応援するとともに新時代における県内企業の変革を促し、未来の秋田への架け橋を築く予算としております。
 以下、当初予算案の主なものについて申し上げます。
 「産業・雇用戦略」については、大卒者等の県内就職を促進するため、研究開発や海外展開などに向けた組織再編等を進める企業を支援するとともに、魅力的な職場の確保に向け、再エネ工業団地の整備や成長産業等を主なターゲットとした企業誘致活動を推進するほか、急成長が見込める新たなビジネスモデルを持つ起業家を集中支援するなど、スタートアップの創出を図り、若者等の定着に向けた取組を強力に推進してまいります。
 また、企業の中核となる人材を育成するため、研修等に要する経費を助成するとともに、中小企業における業務のデジタル化等に向けた講習を実施するなど、在職者等のリスキリングの促進を図るほか、県内企業における外国人材の受入に向けた取組を後押しするため、新たに外国人材受入サポートセンターを設置し、相談等の受入体制を強化いたします。
 「農林水産戦略」については、今般の食料・農業・農村基本法改正案に示された「食料安全保障の抜本的な強化」という観点を踏まえ、我が国の食料供給基地としての役割を果たしていくため、農業基盤をしっかりと維持しながら、「サキホコレ」の全国トップブランド確立に向けた生産、流通、販売対策の取組を着実に推進するとともに、「あきたこまちR」の導入について生産者や消費者等への理解促進を図るほか、果樹生産について気候変動に対応した情報発信を行うシステムの開発等により、災害に強い産地づくりを促進してまいります。
 また、デビュー10周年を迎える「秋田牛」の更なる認知度向上に向けたプロモーションを実施するとともに、再造林の拡大に向けて、林業経営体への造林地集積や木材生産のスマート化を支援するなど、カーボンニュートラルの実現に向けた取組を推進してまいります。
 「観光・交流戦略」については、新型コロナウイルス感染症収束後のインバウンド需要の回復に向けて、台湾からのチャーター便の安定的な運航と本県への誘客促進に取り組むとともに、タイや欧州等の市場の特性に応じた情報発信を行うほか、閑散期の冬季誘客について、JR東日本と連携した冬季大型観光キャンペーンの実施等により重点的に推進してまいります。
 また、新県立体育館について、事業者選定に係る手続を行うほか、大館能代空港羽田線の3往復運航の定着を図るため、ターゲットを絞った広告宣伝や新たな体験型旅行商品の造成等により、更なる利用促進を図ってまいります。
 「未来創造・地域社会戦略」については、秋田の将来を担う若者等の定着・回帰に向けた取組を推進するため、県内企業に就職する大学生等を対象に、企業と連携した新たな奨学金返還助成制度を創設するとともに、アキタコアベースを核とした相談対応や支援を充実するほか、地域おこし協力隊の募集や定着に取り組む市町村を支援するなど、移住者の県内定着を進めてまいります。
 とりわけ、若年女性の県内定着・回帰に向けては、首都圏在住の若年女性との意見交換によりニーズの把握やネットワークの強化を図るとともに、子育てスペースや更衣室等の整備に要する経費を助成し、企業・職場の環境整備を促進するなど、きめ細かな取組を進めてまいります。
 また、子育てにかかる経済的負担の軽減を図るため、子どもの医療費助成について、助成対象を高校生まで拡大し所得制限を撤廃するとともに、男性も利用できるおむつ交換所等を整備する商業施設等を支援するなど、国の子ども未来戦略とも足並みをそろえた少子化対策を展開してまいります。
 「健康・医療・福祉戦略」については、在宅医療体制の確保・構築を進めるため、医療・介護等の連携を担う拠点を設けるとともに、訪問看護における相談・支援体制を整備するほか、総合診療医の育成に向けた医療MaaS導入を支援するなど、県民が安心して医療を受けられる体制づくりを推進してまいります。
 また、福祉人材の確保に向け、介護・福祉の職場の魅力発信を実施するとともに、介護ロボット・ICT導入に係る相談業務や専門家による伴走支援を実施する総合相談窓口を設置し、介護事業所等における職場環境の改善を図ってまいります。
 さらに、災害発生時における医療・福祉の機動的な対応ができるよう、災害派遣チームの体制整備や人材育成等を強化するとともに、災害ボランティア活動が円滑に行われるよう、人材の養成を進めてまいります。
 「教育・人づくり戦略」については、高校入試出願システムの導入や教員を補助する学校サポーターの拡大等により教職員の負担軽減を進めるとともに、教室に入りづらい児童生徒に対応するスタッフを配置し、多様な学びを保障するほか、中学校の部活動地域移行に向けた市町村の取組を支援してまいります。
 また、大学、短大、専門学校等の県内高等教育機関が一堂に会した進学相談会を開催するなど、高校生の県内定着に向けた取組を実施いたします。
 これら重点戦略に加え、気候変動等に対応した防災力の強化に向けて、次期総合防災情報システムの整備に係る実施設計を進めるとともに、視覚障害者等がスマートフォンからの音声により災害関連情報を取得できるアプリを導入するなど、災害時の情報収集・発信機能を充実・強化してまいります。
 また、防災アドバイザーの派遣等により、県民の防災意識の向上を図るとともに、男鹿半島地域等を対象とした防災・減災対策の検討を進めるほか、災害時に活用できる大型トイレカーを導入するなど、地域防災力の強化を図ってまいります。
 さらに、ツキノワグマによる人や農作物の被害防止に向けて、専門職員の増員やカメラトラップ法による生息数の調査、新たなマップシステムの構築による出没情報等の迅速な発信など、総合的な対策に市町村等と連携しながら取り組み、県民の安全・安心を確保してまいります。
 公共事業については、昨年の大雨被害からの速やかな復旧を進めるとともに、抜本的な治水対策として、河川改修事業を重点的に進めるなどの防災・減災対策のほか、農業生産基盤の整備等に着実に取り組んでまいります。
 一般会計予算案の総額は、5,842億3,400万円であり、前年度当初予算と比較いたしますと、16億9,100万円の増となります。
 次に、令和5年度2月補正予算案について申し上げます。
 このたびの補正予算案は、国の補正予算に対応する事業等について計上しております。
 国の補正予算に対応する事業については、新興感染症対応の強化に向けて、医療機関が行う施設整備等を支援するとともに、物流事業者や私立大学等に対し、光熱費や燃料費の高騰に伴う掛かり増し経費の一部を助成するほか、農業生産基盤の強化や、昨年7月の大雨災害を受けた河川改修等の防災・減災、国土強靱化対策に係る公共事業等を計上しております。
 また、公の施設の指定管理者に光熱費等を助成するほか、大館能代空港羽田線の3往復運航に伴う航空会社への運航支援を行ってまいります。
 このほか、決算見込み等に伴う補正を行うとともに、前年度決算剰余金の2分の1相当額を財政調整基金に積み立てることにしております。
 一般会計補正額は180億6,422万円の増額であり、これにより令和5年度予算の補正後の総額は6,434億2,656万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県県税条例の一部を改正する条例案」は、震災や風水害等により被災した者の負担軽減を図るため、災害により滅失、又は損壊した自動車に代わる自動車の取得に対する減免措置について、その要件を改めようとするものであります。
 「秋田県信用保証協会に対する損失補償に係る回収納付金を受け取る権利の放棄に関する条例案」は、中小企業者等の円滑な事業再生や新たな事業の創出に資するため、秋田県信用保証協会に対して有する回収納付金を受け取る権利を県が放棄する場合について、必要な事項を定めようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。