今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明に先立ち、諸般の報告を申し上げます。
 はじめに、広島サミットについてであります。 
 先月、7年ぶりに我が国で開催されたサミットでは、ウクライナ情勢や核兵器の廃絶、経済安全保障の確保等、国際社会が直面している課題について、首脳間で率直な意見交換が行われたほか、「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国との連携強化が図られたところであり、今後、サミットの成果を生かし、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向け、各国が協調して取り組んでいくことを期待しております。
 また、サミットでは、生成AIを巡る国際的なルールづくりに取り組む方向性が合意されたところであり、政府も日本語に対応したソフトウェアの開発を促す方針を示すなど、生成AIについては更なる技術革新が見込まれており、今後、真に必要な分野において活用を図ることは当然の流れでありますが、現状では機密情報の漏洩やプライバシーの侵害などの様々な課題があることから、当面は活用方法について慎重に検討してまいります。
 次に、経済情勢について申し上げます。
 我が国の経済は、コロナ禍からの社会経済活動の正常化による内需の回復に支えられ、1月から3月期の実質GDP速報値が年率換算で2.7パーセント増と2期連続のプラス成長となるなど、景気の緩やかな持ち直しが続いております。
 県内においても堅調な個人消費等により景気の持ち直しが続いており、特に設備投資に関しては、輸送機関連の誘致企業の工場建設や県内企業の秋田湾産業新拠点への本社工場新設などが進められているほか、先般、日本銀行秋田支店が公表した企業短期経済観測調査でも、今年度の設備投資計画は前年度比で全国平均の3.9パーセントを大きく上回る43.8パーセントの伸びが見込まれているなど、製造業を中心に旺盛な投資意欲がうかがわれることから、活力ある県内産業の実現に向け、引き続き成長分野への参入支援や誘致活動に取り組み、更なる投資の拡大を図ってまいります。
 次に、少子化対策について申し上げます。
 昨年の国内の出生数が平成29年に公表された将来推計人口の想定よりも10年ほど早く80万人台を割り込むなど、少子化が加速しており、このままでは、今後10年程度で我が国の若年人口は急激に減少し、人口減少に歯止めがかからない状況になることも懸念されております。
 こうした状況を踏まえ、国では、2030年までを少子化の流れを反転させるラストチャンスと位置づけ、必要な財源を確保しながら、子育てに係る経済的支援の強化や共働き・共育ての推進等に取り組むことを「こども未来戦略方針・素案」として取りまとめたところであり、真に実効性のある施策として実現することを強く期待しております。
 一方、子育て支援策の拡充と同時に、その前提となる根源的な少子化対策も不可欠であり、結婚や出産を選択しないことの背景にある地方における若年男女の人口構成のアンバランスや所得水準の低さなどの様々な課題の解消を図ることが重要であることから、本県としては、多様な価値観・考え方を尊重しつつ、女性や若者への支援を強化し、若い世代における結婚や出産への希望をかなえられる環境づくりを推進していく必要があると考えております。
 このため、引き続き、若年女性の県内定着・回帰に向け、希望に即した働く場の確保や魅力ある職場づくり、キャリアアップ支援等を重点的に実施するとともに、暮らしやすく、能力を生かして活躍できる環境の確保などに取り組むほか、労働生産性と県内就業率の向上に取り組み、首都圏等との所得格差の縮小を図ってまいります。
 また、これまでの取組により高校生の県内定着は着実に進んできておりますが、高等教育機関への進学者の割合が相当程度高くなっている中で、優良な誘致企業の進出や県内企業の技術力・経営力向上に対応した人材を更に確保するため、GX・DXやスタートアップの推進を通じて県内の産業構造の転換を図りながら、大学等卒業者の県内定着・回帰に強力に取り組んでまいります。
 次に、人口減少社会への対応について申し上げます。 
 人口減少問題の克服を目指して、「新秋田元気創造プラン」に沿って施策・事業に全力で取り組んでいるところでありますが、当面の人口減少は避けられないことを踏まえ、持続的に県民の暮らしを支える環境づくりも着実に進めてまいります。
 産業振興においては、労働力人口の減少が見込まれる中で、DXの進展やカーボンニュートラルの潮流等の時代の変化に対応することが急務であることから、産業構造の今後のあり方も踏まえ、M&Aによる経営規模の拡大などにより一定の企業規模の確保を図るとともに、企業の人材確保や賃金水準の引き上げ、成長分野等への労働移動につながるリスキリング機会の提供、キャリアアップ支援など、人材投資の拡大に取り組んでまいります。
 また、医療提供体制については、人口減少と高齢化の進行等に伴う医療ニーズの変化に対応し、質の高い医療サービスの提供を将来にわたって維持していくため、医療機能を地域全体で分担する効率的な体制の構築が不可欠となっております。
 このため、現在策定中の新たな医療保健福祉計画において二次医療圏の見直しを検討しているところであり、より広域的な枠組みでの医療機関の役割分担と連携を促進し、県民がどこに住んでいても安心して医療を受けられる体制の維持を図ってまいります。
 さらに、行政運営については、施策の効果や効率性を重視しながら各般の取組を推進しておりますが、今後、財政状況が一層厳しくなることが見込まれる中、公共施設の老朽化等の課題が顕在化してきており、ライフスタイルや価値観の多様化、デジタル技術の急速な進展など社会を取り巻く環境の変化も踏まえ、学識経験者をはじめ農業、福祉など幅広い分野からの意見を取り入れながら、中長期的な視点に立って行政サービスの提供のあり方を検討してまいります。
 次に、洋上風力発電について申し上げます。
 能代港及び秋田港の港湾区域内において、全国初の大規模な発電所が稼働するなど、洋上風力発電の導入が本格化する中、先般、県内企業及び漁業協同組合の出資により、発電設備のメンテナンス会社が新設されました。
 風車の安定稼働を支える技術や知見を有する県内事業者が連携し、オール秋田による質の高い保守・点検サービスが供給されるほか、洋上風力発電と漁業の共存共栄を実現する新たなモデルとなることが期待されるところであります。
 今後もこうした意欲的な取組を促進するとともに、発電以外の分野においても、豊富なリソースやネットワークを有する大手資本との連携・共創の基盤づくりに取り組むことにより、洋上風力発電を契機とした様々な地域課題の解決や、全県への経済効果の最大化を図ってまいります。
 次に農業分野の取組について申し上げます。
 本格デビューから2年目を迎える「サキホコレ」について、全国トップブランドの地位を確立するため、優れた食味と品質の高い米の安定生産に努めるとともに、ネーミングの明るく前向きなイメージを生かした贈答商品の開発や情報発信等を展開し、これをフラッグシップとして秋田米の販路拡大を図ってまいります。
 また、全国に名を馳せる園芸産地づくりについては、京浜地区の中央卸売市場において、「しいたけ」が出荷量、販売額、販売単価でトップとなる三冠王を4年連続で達成したほか、「ねぎ」の販売額も順調に伸びてきており、今後、園芸作物の単収向上を図るなど、収益性の高い複合型生産構造への転換を加速させてまいります。
 次に、誘客促進の取組について申し上げます。
 昨年10月に国の水際対策が緩和されて以降、全国的に訪日外国人旅行者数は回復基調であるほか、大型連休期間中には、本県の観光地にも旅行客が訪れ、大きなにぎわいを見せております。
 これまで実施していた全国旅行支援は終了する予定でありますが、新型コロナウイルス感染症の五類感染症への移行を踏まえ、引き続き、食・文化・スポーツなど、本県の持つあらゆるリソースを最大限に活用した誘客を進めるとともに、インバウンドの更なる拡大に向け、台湾からの定期チャーター便の早期実現に全力で取り組んでまいります。
 次に、新県立体育館の整備について申し上げます。
 1月以降、外部委員で構成する基本計画検討委員会の意見を伺いながら、建設場所や規模等の検討を進めているところでありますが、現体育館に隣接する丘の周辺に6,000人以上を収容できるメインアリーナを核とする施設を建設するとともに、公園内において一定数の駐車場を整備することなどを基本に検討を進め、議会での議論や県民からのご意見を踏まえ、9月までに基本計画案を取りまとめの上、令和10年の開館に向け取り組んでまいります。
 次に、提出議案についてご説明申し上げます。
 今回の補正予算案は、物価高騰対策のほか、「新秋田元気創造プラン」に基づく事業、公共事業等について計上しております。
 物価高騰対策については、国の支援の対象外であるLPガス利用者や特別高圧電力契約企業に対し料金の一部を助成するとともに、社会福祉施設や医療施設等の光熱費のほか、県立学校における給食の食材費の高騰分に対し支援してまいります。
 また、燃料や飼料等の価格高騰の影響を受けている畜産経営体等の経営維持や、交通事業者の安定的な運行確保に向けた支援等を実施するほか、省エネルギー化や生産性向上に資する施設整備、機械の導入等を行う事業者などに対し支援してまいります。
 新プランに基づく事業については、台湾から本県への誘客拡大と県産品の輸出拡大を図るため、食と観光フェアを開催するなど現地でのPRを強化するほか、10月に東京都内に開設する「あきた暮らし・交流拠点センター」において、情報発信やイベント等によるプロモーションを実施してまいります。
 このほか、県内における自殺者数が増加傾向にあることから自殺予防街頭キャンペーンや広報活動を緊急的に実施するほか、4月下旬に霜による被害を受けた果樹農家に対して、再生産に向けた支援等を行ってまいります。
 公共事業については、国の内示による国庫補助事業等を計上しており、インフラの老朽化対策をはじめ、社会基盤の整備を着実に進めてまいります。
 このほか、今年度末で指定管理の協定期間が満了する公の施設について、令和6年度以降の管理運営に係る債務負担行為を設定しております。
 一般会計補正額は、172億7,202万円であり、補正後の総額は、5,998億7,186万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県公安委員会の委員の任命について」は、一部委員の任期満了に伴う後任の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
 「秋田県県税条例の一部を改正する条例案」は、地方税法の一部改正に伴い、自動車税の賦課徴収の特例について、加算割合を引き上げる見直し等を行おうとするものであります。
 「秋田県立高等学校設置条例の一部を改正する条例案」は、秋田県立花輪高等学校、秋田県立小坂高等学校及び秋田県立十和田高等学校の統合により、新たに秋田県立鹿角高等学校を設置しようとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。