今議会におきましては、当初予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、はじめに、本県関係スポーツ選手の活躍について申し上げます。
 大相撲初場所において、「昭和の大横綱」大鵬の孫にあたる王鵬関は、優勝まであと一歩に迫る好成績により初の技能賞を獲得し、来場所での新三役昇進が有力になるとともに、その弟の夢道鵬は幕下全勝優勝を果たしたほか、大仙市出身の鈴木優花選手は、大阪国際女子マラソンで自己ベストを2分以上更新し、9月の世界選手権の参加標準記録を突破する結果を収めたところであります。
 3人の素晴らしい活躍に心から拍手を送るとともに、更なる高みを目指して飛躍されることを期待しております。
 続いて、所信の一端を申し述べます。
 既に皆様ご承知のとおり、私は、今年4月に行われる秋田県知事選挙には立候補せず、今任期を全うした上で、退任することにしております。
 就任後の平成21年5月、県政の舵取り役としての責務の重さを感じながらこの場に立ち、本県を取り巻く環境が厳しさを増し、複雑多様化する中にあって、何事にも積極果敢に立ち向かい、県民の皆様の信頼と期待に応え、ふるさと秋田の未来を切り拓くため全力を尽くす覚悟を述べたことが、昨日のことのように鮮やかに思い起こされます。
 知事としてのこれまでの歩みを顧みれば、国内外における社会経済環境の急激な変化に加え、激甚化・頻発化する自然災害、そして、世界的パンデミックを引き起こした新型コロナウイルス感染症といった数多くの課題や難局を県議会議員、県民の皆様と共に幾度も乗り越えながら、常に、県全体としての元気創造に挑み続けてきたと自負しております。
 こうした4期16年間の取組について、思いのまま申しますと、産業分野では、洋上風力発電において国内初となる本格的な港湾内での商業運転の開始や技術者養成等の先駆的な取組により、脱炭素社会に貢献する再生可能エネルギー導入のトップランナーとしての評価を高めるとともに、大手輸送機関連企業や情報関連企業等の誘致を進め、若者や女性にとって魅力ある雇用の場の確保に努めてまいりました。
 また、農業分野では、新規就農者の確保・育成や経営体の生産基盤の強化に加え、本県独自の発想による園芸メガ団地の整備など複合型生産構造への転換に重点的に取り組んだことにより、しいたけや枝豆、ネギについて国内有数の産地が形成され、コメ以外の農業産出額は過去30年間で最大になるとともに、県産米のフラッグシップとなる「サキホコレ」が市場デビューを果たし、高い評価をいただいているほか、林業・水産業分野では、再造林の拡大や蓄養殖の推進を図ってまいりました。
 さらに、県民の文化・暮らしにおいては、秋田市との連携のもと「あきた芸術劇場ミルハス」を整備し、文化芸術活動の推進と地域の賑わい創出に貢献できたほか、医療人材の確保に努めるとともに、各地域の中核的病院の運営を支援するなど持続的な地域医療の提供体制の構築を進めてまいりました。
 加えて、少子化対策の一環として保育料や子どもの医療費に対する助成を拡充するなど子育て支援の充実を図ったほか、小中学校における全学年での少人数学級化等を通じ、初等・中等教育の充実に努め、全国トップクラスの学力水準の確保・維持を下支えしてまいりました。
 このほか、県内における高速道路の供用率が9割を超えるなど地域経済や県民生活を支える基盤整備を推進するとともに、近年多発化する豪雨災害への対応として、あらゆる関係者の協働による流域治水対策を強力に展開し、防災・減災、県土強靱化に積極的に取り組んできたほか、ツキノワグマによる被害防止については、専門職員による助言・現地指導や出没情報の迅速な提供、緩衝帯の整備などの総合的な対策を通じて、安全・安心な生活環境の確保に努めてまいりました。
 時に、私自身の至らぬ言動により、関係する皆様にご迷惑をおかけしたこともございましたが、4期16年にわたり職務を遂行し、些少ながらも成果を振り返ることができますのも、県議会議員各位のご理解とご協力、県民の皆様からの応援に加え、国との良好な関係を維持し、市町村や県内産業界との連携のもとオール秋田で施策の推進に取り組むことができたおかげであり、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
 こうした中、本県の最重要課題である人口減少問題については、産業経済基盤の強化や安全・安心な地域づくりなどの県勢の発展につながる基本的な取組に加え、大卒者等の奨学金返還助成制度の創設や東京での移住・交流拠点の設置等により、若者の県内定着・回帰や移住定住、社会減の改善を図るとともに、担当理事を中心に職域・地域における男女共同参画や女性活躍を推進し、経営層の意識改革や女性のキャリアアップ意識の醸成に一定の進展が見られましたが、必ずしも満足できる成果を得るには至らなかったところであります。
 もとより、人口減少問題は、我が国の行く末に関わる重要な課題であり、このような国家的課題の克服には、地方の取組だけでは自ずと限界があることから、国においては、日本の将来をどう形作っていくのか、都市と地方のあり方について明確なビジョンを示し、その実現に必要な環境を整備する責務を負うべきものと考えております。
 その上で、経済活力と人口動態との間には基本的に相関関係が認められることから、地方は積極的に投資を呼び込み、産業を骨太にし、経済力を蓄え、その効果を地元企業や住民が享受するという好循環を構築することが重要であり、そうした産業振興や経済力を背景にして初めて若者の賃金水準の向上や結婚・出産に対する前向きな意識の醸成、子育てしやすい環境づくり等の推進につながるものと捉えております。
 私自身、新たな投資を呼び込むためには、県内にある多種多様な資産がもたらす優位性を一層伸ばし、秋田のプレゼンスを高めていくことが必要不可欠であるとの信念に基づき、本県の強みを生かしながら、時代の潮流を捉え、常に新しい発想を取り入れるという姿勢で県政を推進してまいりました。
 私の任期は、残り2か月余りとなりますが、就任以来、私が目指してきた本県の将来ビジョンは、今、その姿が少しずつ形を成しつつあります。
 知事としての任期を全うする最後の最後まで、県政運営に全力を尽くしてまいりますので、引き続き、お力添えを賜りますようお願い申し上げます。
 次に、諸般の報告を申し上げます。
 はじめに、新県立体育館の整備についてであります。
 昨年、12月議会で関連予算案が議決されたのち、PFI事業者の選定等に向けた再度の入札公告を行ったところであり、当初の予定どおり令和10年秋の開館を目指し、着実に事業の進捗を図ってまいります。
 また、秋田ノーザンハピネッツのBリーグプレミアへの参入については、昨年末にライセンスが交付されたところであり、ハピネッツには、国内リーグ最高峰の舞台で熱狂的なブースターの声援を糧に大いに活躍され、県民に多くの感動を与えてくれることを強く期待しております。
 次に、台湾チャーター便の運航継続について申し上げます。 
 令和5年12月の就航以来、台湾からの観光客や県民の皆様に多数ご利用いただき好調な搭乗率を維持していることから、4月以降も運航が継続される見通しとなりました。
 台湾は、インバウンド誘客における最重点市場と位置づけており、私自身、退任後においても台湾財界との幅広い人脈を活かし、本県とのつながりを確保・強化するべく取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、大館能代空港の羽田線3往復運航の期間延長について申し上げます。
 今年3月までを期限に配分されていた羽田発着枠につきましては、関係市町村等と連携した利用促進に関する取組が一定の効果をあげていると評価されたことにより、運航期間が令和11年3月まで延長されることが決定したところであります。
 3往復運航の定着は、県民生活の利便性向上や観光・産業など様々な分野の活性化につながることから、一層の需要拡大に努めてまいります。
 次に、「あきたとも家事宣言」について申し上げます。
 昨年末、ワーク・ライフ・バランスの実現や、誰もが自分の時間を持ち、社会や地域で活躍できるよう、家族やパートナーと家事や育児を分担し、それぞれが主体的に取り組む「とも家事」を推進する宣言を行ったところであります。
 本県女性の有業率は全国13位に位置し、多くの女性が社会で活躍する一方で、家事や育児については依然として女性に負担が集中している現状にあることから、今後、官民一体で男性の育児休業取得率の向上や偏った家事分担の解消に一層取り組んでまいります。
 次に、「あきた鹿角国スポ2025」について申し上げます。
 いよいよ開会まで残り10日に迫り、地元の鹿角市や関係団体と共に、万全の準備を整えてきており、アルペン・クロスカントリー・ジャンプの3競技の全てを実施できる花輪スキー場の利点を活かしながら、大会終了まで気を緩めることなく、円滑な大会運営に努めるとともに、全国から集まる選手や関係者の皆様に対して雪国ならではの食や文化など様々な秋田の魅力を発信してまいります。
 次に、「全国高等学校総合体育大会スキー大会」について申し上げます。
 このたび、令和9年2月に行われる第76回大会の開催地が鹿角市に決定したところであり、平成31年の第68回大会以来、8年ぶりの開催となります。
 本大会は、高校スキーの集大成となる機会であり、開催地における賑わいの創出も期待されることから、開催に向けて地元鹿角市や関係団体等と連携し準備を進めてまいります。
 次に、大雪への対応について申し上げます。
 先月22日、国土交通大臣に対し、特に、県北部において平年を上回る降雪量により県民生活に影響が生じている状況を直接お伝えし、道路除雪への財政支援を要望したところであり、今後の気象状況を注視しつつ、適切な除排雪作業の実施や事故・被害の防止に努めてまいります。
 次に、提出議案についてご説明申し上げます。
 はじめに、令和7年度当初予算案についてであります。
 新年度予算案においては、4月が知事改選期に当たることから、義務的経費を中心とした骨格予算にすることを基本としながら、県民の安全・安心に関する事業のほか、「新秋田元気創造プラン」に基づく継続事業、年度当初からの着手が必要な事業を組み込み編成し、国の新年度予算を踏まえて対応すべきものや、新たに政策的対応が必要なものについては、肉付けとなる6月補正予算に計上することにしております。
 歳入面では、県税の増が見込まれるなど一般財源が増加し、財源不足も縮小する見通しとなっており、財政二基金の残高を一定程度確保しながら次の代に引き継ぐことができますが、今後も、人件費や社会保障関係経費の増加、物価や金利の上昇等による歳出増が見込まれることなどから、厳しい財政状況が続くものと考えております。
 なお、国の新年度予算については、衆議院で少数与党という状況のもと、その成立までには審議の難航が予想され、県予算への影響についても考慮する必要があることから、国会の動向を注視してまいります。
 以下、当初予算案の主なものについて申し上げます。
 まず、県民の安全・安心に関する事業として、気候変動等に対応した防災力の強化に向けて、避難所の環境改善のため、水循環式シャワー等の生活必需品の備蓄と物資の配備・供給体制の構築を進めるとともに、在宅・車中泊避難者等への炊き出しにも対応できるキッチン資機材の整備を支援するなど、様々な避難者に配慮した体制を構築してまいります。
 また、災害ボランティア活動等が円滑に行われるよう、秋田県社会福祉協議会が新たに設置する「秋田県災害福祉支援センター」の活動を支援するとともに、保健医療福祉活動チームの体制整備や人材育成等を強化してまいります。
 さらに、ツキノワグマによる人や農作物の被害防止に向けて、市街地とクマ生息域との間の緩衝帯整備や放任果樹の伐採などを推進するとともに、県民に対する多様な媒体を活用した周知や注意喚起を図るほか、狩猟免許取得や銃器購入に対する支援を拡充し狩猟者の確保・育成を図るなど、総合的な対策を強化してまいります。
 そのほか、特殊詐欺等の被害防止のため、ウェブ及び新聞広告により効果的な広報を実施するなど、県民の安全・安心の確保に向けた取組を推進してまいります。
 公共事業については、抜本的な治水対策として、河川改修事業などの防災・減災対策を重点的に進めるほか、インフラの老朽化対策や農業生産基盤の整備等に着実に取り組んでまいります。
 次に、新プランの重点戦略の取組として、「産業・雇用戦略」については、賃金水準の向上に向け、地域産業を牽引するリーディングカンパニーの創出を支援するとともに、再エネ工業団地の整備や成長産業等を主なターゲットとした企業誘致活動を推進するほか、若年層の起業等への意欲醸成やスタートアップの創出に向けた環境整備や支援を進めてまいります。
 また、企業の中核となる人材を確保・育成するため、大卒人材等の確保と経営の高度化に向けた環境整備や高度な研修等に要する経費に対し助成するとともに、県内企業における外国人材の受入れに向けた取組を後押しするため、外国人材受入サポートセンターにおいて、相談対応や市町村との連携による受入環境の整備を推進してまいります。
 「農林水産戦略」については、高齢化や担い手不足に対応し、幅広い年齢層からの新規就農者の確保と定着を図る取組を着実に推進するとともに、高温条件下においても野菜や果樹などの収量や品質を安定的に確保できる栽培技術の実証・普及等を進めるなど、環境の変化に対応できる産地づくりを促進してまいります。
 また、令和9年度に開催される「第50回全国育樹祭」に向けた準備等を進めるとともに、再造林の拡大に向けて、林業経営体への造林地集積や人材の育成を支援してまいります。
 「観光・交流戦略」については、拡大するインバウンド需要の取り込みに向けて、台湾チャーター便の安定的な運航と本県への誘客促進に取り組むとともに、年間を通じ安定した観光需要を創出するため、観光事業者と連携した秋田の冬の魅力発信などを重点的に推進してまいります。
 また、令和10年秋の供用開始に向けた新県立体育館の整備を進めるほか、秋田空港と大館能代空港の利用促進や地域公共交通の維持・確保など、交流の拡大等を支える基盤づくりを進めてまいります。
 「未来創造・地域社会戦略」については、若者等に選ばれる秋田づくりのため、アキタコアベースにおける相談対応と本県の魅力発信を進めるとともに、企業と連携した奨学金返還助成制度の本格展開を図るほか、女性活躍に向けた環境整備や若者の地域活性化に向けたチャレンジへの支援等を進めてまいります。
 また、「秋田県こども計画」に基づき、こどもの権利や意見が尊重される社会づくりを進め、全てのこどもが幸せな生活を送ることができる「こどもまんなか社会」の実現を図ってまいります。
 「健康・医療・福祉戦略」については、看護職員修学資金に係る返還免除対象となる医療機関の拡大や、勤務医の労働時間短縮など医療従事者の勤務環境改善に向けた取組に対する支援に加え、介護分野での職場環境改善や従事者の処遇改善等を進め、医療・介護人材の確保を図ってまいります。
 また、新たに里親支援センターを設置し、要保護児童の里親委託を推進するとともに、ヤングケアラー等が相談しやすい環境づくりに向けた普及・啓発や、認知症の早期発見・早期介入に向けた体制づくりを進めてまいります。
 「教育・人づくり戦略」については、教員を補助する学校サポーターの拡大や部活動の地域移行に取り組む市町村への支援等により、教職員の負担軽減を進めるとともに、学校だけでは解決が難しい問題に対応するため、スクールソーシャルワーカーの配置を拡大し、教育相談体制を強化してまいります。
 また、最新のICT教材等を活用したデジタル教育やグローバル化に対応した英語教育を推進するなど、複雑化する社会で活躍できる人材の育成に取り組んでまいります。
 一般会計予算案の総額は、5,773億4,500万円であり、前年度当初予算と比較いたしますと、68億8,900万円の減となります。
 次に、令和6年度2月補正予算案について申し上げます。
 このたびの補正予算案は、国の補正予算に対応する事業等について計上しております。
 国の補正予算に対応する事業については、物価高騰対策として、低所得世帯に対し灯油購入助成を行う市町村への支援や、LPガス利用者に対する料金の一部や県立学校における給食の食材料費に対する助成等による生活者支援のほか、医療施設や子ども食堂等に対し、光熱費や食材料費の負担増分に係る支援を実施してまいります。
 また、燃料や飼料等の価格高騰の影響を受けている畜産経営体や物流事業者等の経営維持に向けた支援、省エネルギー化や生産性向上に資する設備整備等を実施する事業者への支援も進めてまいります。
 さらに、介護・障害福祉サービス事業所が実施する職場環境改善の取組等に対し助成するとともに、農業生産基盤の強化や防災・減災、国土強靱化対策に係る公共事業等を計上しております。
 このほか、今冬の除雪費の見込みにより道路除雪費等を増額するほか、決算見込み等に伴う補正を行うとともに、前年度決算剰余金の2分の1相当額を財政調整基金に積み立てることにしております。
 一般会計補正額は465億5,465万円の増額であり、これにより令和6年度予算の補正後の総額は、6,542億1,098万円となります。
 次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
 「秋田県こども施策審議会条例案」は、こども基本法に規定するこども施策の推進に関する重要事項を調査審議するため、秋田県こども施策審議会を設置しようとするものであります。
 「秋田県看護職員修学資金貸与条例の一部を改正する条例案」は、看護職員の県内の医療機関への就業定着を促進するため、県内で業務に従事した場合に修学資金の返還が免除される施設に、病床数200床以上の病院を加える等の改正を行おうとするものであります。
 以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。