令和6年第1回定例会 6月議会 知事説明要旨(令和6年6月12日)
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今議会におきましては、補正予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、提出議案の説明を申し上げます前に、去る5日にご逝去された、名誉県民である遠藤章博士に対しまして、謹んで哀悼の意を表したいと存じます。
遠藤博士は、永年にわたり菌類の研究に邁進され、血中のコレステロール値を低下させる物質、「スタチン」を発見し、心臓病などの予防や治療薬の開発において大きな成果をもたらすとともに、国内外で数多くの表彰を受けるなど、県民に大きな夢と希望を与えてくださいました。
ここに、遠藤博士のこれまでのご功績に対し、改めて敬意を表しますとともに、心からご冥福をお祈り申し上げます。
次に、知事として残りの任期を務めるに当たり、県政に対する私の思いを申し上げます。
これまで、県職員として25年、秋田市長として8年弱、県知事として15年、合わせてほぼ半世紀にわたり地方自治の最前線に身を置き、力の限りを尽くし、ふるさと秋田の発展に向けて取り組んでまいりました。
私にとっては、最後の1年となりますが、多くの課題を抱える本県においては、一時の停滞も許されず、先送りのできない状況にあることから、人口減少問題への対応を最優先に、「人への投資」や「防災力の強化」に重点的に取り組むことにより、県政の諸課題に道筋をつけ、未来に向け変わりゆく秋田のため、次の代にしっかりと引き継いでいきたいと考えておりますので、引き続き、お力添えを賜りますようよろしくお願いいたします。
次に、諸般の報告を申し上げます。
はじめに、国内外の情勢についてであります。
ウクライナへの軍事的侵略の一刻も早い終結を願う中にあって、ガザ情勢が悪化し続けており、現地の危機的な人道状況が更に深刻さを増していることを深く憂慮するとともに、人道支援活動の確保や、人質の解放・即時停戦が早期に実現され、持続可能な和平につながることを心から願っているところであります。
また、為替市場においては、4月に、バブル期以来となる1ドル160円台を記録しましたが、今後もインフレ圧力を背景とした米国の金融政策の継続が見込まれることから、輸入物価の押し上げなど、国内の経済活動への影響も懸念されております。
一方、国内情勢としましては、名目賃金は2年以上にわたり上昇し続けているものの、原油や原材料価格の高騰に加え、円安基調に伴う物価高を受け、実質賃金は過去最長となる25か月連続で前年同期を下回っているほか、中東情勢の緊張継続などの地政学的リスクや、政府による電気・ガス料金の負担軽減策の終了などにより、更なる物価の上昇も予測されるところであります。
また、先月発表された今年1月から3月期の実質GDPは、一部自動車メーカーの生産・出荷停止や能登半島地震の影響などにより、マイナス成長となりましたが、先行きについては、雇用・所得環境の改善に伴って持ち直しに向かうことが期待されております。
こうした中、県内経済については、個人消費の一部に弱めの動きが見られるものの、緩やかな回復が続き、設備投資も高水準で推移しているほか、先般、日本銀行秋田支店が公表した金融経済概況によると、雇用者所得が10か月連続で前年同期を上回り、今後複数年にわたり賃上げを行う企業も見られるなど、昨年に続き賃上げの動きが広がっていることから、県としましても、県内企業の稼ぐ力を高めるため、成長分野への参入やICTを活用した生産活動の効率化、リスキリング機会の提供など、設備・人材投資への取組に対する支援を強化してまいります。
また、労働人口の減少が見込まれる中、県内企業の事業継続においては、多様な人材、とりわけ外国人材の受入れは避けては通れない重要な課題となっております。
このため、新たに「外国人材受入サポートセンター」を今月4日に開設し、企業の相談等にワンストップで対応する体制をスタートさせたところであり、出前講座やセミナー等の開催を通じて県内企業の意識改革を図るとともに、市町村と連携し、地域との共生に向けた受入環境の整備にも取り組んでまいります。
次に、人口減少対策について申し上げます。
地方創生が打ち出されてから10年が経過しようとする中、4月に、民間有識者により構成される「人口戦略会議」が発表したレポートは、あくまでも人口動態の傾向を踏まえた分析ではあるものの、県内24市町村が「消滅可能性自治体」と分類されたところであります。
一方、国立社会保障・人口問題研究所の分析では、県内21市町村における2045年の将来人口は、5年前の推計よりも上振れする見込みが示されているほか、近年、本県の若年層をはじめとする社会減少数が縮小傾向にあり、社会減少率の改善度合いは東北の中でも上位に位置するなど、明るい兆しも見受けられます。
また、昨年度の県内事業所の女性管理職の割合及び男性の育児休業取得率は、共に過去最高を更新するなど、女性の活躍推進やワーク・ライフ・バランスの意識には確実な変化が生じております。
こうした流れをより確かなものとするため、洋上風力発電等の大型投資事業や、成長産業分野の企業誘致に加え、地元中小企業の近代化といった産業構造の変革を進めるなど、所得向上につながる基本的施策を重視するとともに、結婚・出産・子育て支援策も合わせて展開しながら、女性・若者の更なる定着・回帰に全力で取り組んでまいります。
次に、ツキノワグマによる被害防止対策について申し上げます。
今年1月以降のクマの目撃件数が例年を大幅に上回り、県内全域に「ツキノワグマ出没警報」を発令するなど、注意喚起を行っている最中、先月4日に、鹿角市で渓流釣りの男性が襲われる今年最初の人身事故が発生し、その後も県内各地で被害が相次ぐ事態となっております。
県としましては、「ツキノワグマ被害緊急対策会議」を開催し、人身被害の発生状況を確認するとともに、救助活動における安全の確保や、県民等への一層の注意喚起、入山禁止エリアに立ち入らないことを徹底することにしたほか、近隣の県に対しても入山禁止の呼びかけについて協力を依頼したところであります。
また、人の生活圏での出没が多数発生していることから、今月上旬、県立学校や公の施設などに「クマよけスプレー」を配置したところですが、県民の皆様におかれましても、家屋や農地周辺のやぶの刈り払いによる見通しの確保に加え、餌となるものを屋外に置かないこと、車庫や物置の扉を普段から施錠しておくこと、山菜採り等に出かける際には、鈴やラジオで音を出すなど人の存在を強くアピールし、可能な限り複数で行動することを心掛けるなど、十分注意していただくようお願いいたします。
さらに、来月から、クマの出没情報等を市町村や関係機関と共有し、県民に迅速に伝達する「ツキノワグマ等情報マップシステム」の運用を開始するほか、新たにクマ類が指定管理鳥獣に指定されたことに伴い国の支援が拡充され、人とクマ類とのあつれきの低減に向けた取組を一層強化できるものと考えており、引き続き、市町村等と十分に連携しながら、適正頭数の管理を始めとする被害防止対策の充実・強化を図ってまいります。
次に、パリオリンピック競技大会への本県関係選手の出場について申し上げます。
開幕が来月に迫るオリンピックには、陸上競技マラソンに大仙市出身の鈴木優花さん、バドミントンに八郎潟町出身の志田千陽さん、北都銀行所属の永原和可那さん、松本麻佑さんが内定しており、選手の皆様には、心よりお祝いを申し上げますとともに、世界のひのき舞台で力を存分に発揮し、大いに活躍されるよう期待しております。
また、現在も代表入りをかけた厳しい争いが続く競技もあることから、1人でも多くの本県関係選手が出場の栄誉を勝ち取ることを願っております。
次に、台湾チャーター便の運航状況と今後の見通しについて申し上げます。
昨年12月の就航以降、台湾から多くの観光客に利用いただき、4月までの搭乗率が92.8パーセントとなったほか、ゴールデンウィーク期間においても8割を超える状況になるなど、好調さを維持したところであります。
今後は、東北地方への観光需要が低下する夏季を迎えることから、鳥海山麓の元滝伏流水や秋田内陸線沿線の田んぼアートなど、本県特有の観光資源のPRを強化するほか、アウトバウンドの確保にも努めながら、11月以降の運航継続に向けて、官民一体となり取り組んでまいります。
次に、洋上風力発電について申し上げます。
本県では、商業運転を開始している能代港・秋田港の港湾内洋上風力に加え、一般海域における4つの促進区域全てにおいて発電事業者が決定し、事業化に着手する中、メンテナンスに係る技術者を育成する、我が国最高レベルの訓練センター、「風と海の学校あきた」が男鹿海洋高等学校内に開所したほか、大型船舶等の修繕が可能となる、船川港船揚場の大規模改修工事が完了するなど、発電事業に関わる県内の環境整備が着実に進んでおります。
また、浮体式洋上風力発電については、昨日、国のグリーンイノベーション基金を活用した本格的な実証事業として、由利本荘市・にかほ市沖合における民間プロジェクトが採択されたところであり、県としましては、事業実施を最大限支援していくとともに、将来の商業運転段階における経済効果の最大化を目指し、県内企業が実証段階から参画できるよう積極的に取り組んでまいります。
次に、全国高等学校総合文化祭についてであります。
このたび、令和8年度に行われる「第50回全国高等学校総合文化祭」の開催地が本県に決定したところであり、昭和56年度の第5回大会以来、45年ぶり2回目の開催となります。
本大会は、高校生の芸術文化活動を全国に発信する絶好の機会であるとともに、県内の芸術・文化を核とした賑わいが創出され、県民に活力を与えるイベントであることから、「輝く稲穂に廻らす想い おがれ若人 美の国秋田に今集え」の大会テーマのもと、令和8年7月の開催に向けて、万全の態勢で準備を進めてまいります。
次に、農業分野の取組について申し上げます。
本格デビューから3年目を迎える「サキホコレ」については、JA全農の通販サイト・米部門において、第1位を獲得したところであり、県としましては、全国トップブランドの地位を確立するため、来年度からの特別栽培の標準化に向けた技術指導を徹底するとともに、テレビCMを軸としたプロモーションや、首都圏スーパー等での試食販売を行うなど、引き続き売り込みを強化してまいります。
次に、高速道路ネットワークの整備について申し上げます。
高速道路の整備については、このたびの「横手北スマートインターチェンジ」から「大曲インターチェンジ」間における4車線化の事業許可により、重要な物流ルートの安全性や定時性が向上し、県内の経済活動に大きく貢献するものと期待しているところであり、今後も、ミッシングリンクの解消や暫定2車線区間の4車線化に向けた官民一体での要望活動を行うなど、県土の骨格を形成し、県民生活や本県経済を支える高速道路ネットワークの整備促進に努めてまいります。
次に、流域治水対策について申し上げます。
昨年7月の大雨による被害を受け、国や関係市町村と連携しながら「水災害対策プロジェクト」に基づき、ハード・ソフト一体となった対策を進めているところであり、特に甚大な被害を受けた太平川流域については、全国で初めての登録となった「内水被害等軽減対策計画」を踏まえ、抜本的な治水対策を推進するなど、引き続き、気候変動の影響による水災害リスクの低減に向けて、県土の強靱化に取り組んでまいります。
次に、提出議案についてご説明申し上げます。
今回の補正予算案は、「新秋田元気創造プラン」に基づく事業のほか、公共事業等について計上しております。
新プランに基づく事業については、都市機能の充実や最先端産業などこれまでと違ったテーマによる本県の魅力を映像化し、秋田の新たなイメージを県内外に向けて発信するほか、性差による社会的・文化的な偏見等の払拭に向けたワークショップの開催や広報・啓発を実施し、地域におけるジェンダーギャップの解消に取り組んでまいります。
また、ツキノワグマの目撃や人身被害が相次いでいることから、被害防止の担い手となる狩猟者の確保を図るため、銃器等の購入に対する助成を拡充するとともに、人の生活圏へのクマの出没を抑制するため、特に緊急を要する区域において緩衝帯の整備や放任果樹の伐採を実施するほか、新聞やテレビ等により県民に対し強く注意を喚起してまいります。
さらに、急増しているSNS型の投資詐欺及びロマンス詐欺による被害を防止するため、ウェブ広告等を活用した緊急広報を実施いたします。
公共事業につきましては、国の内示による国庫補助事業等を計上しており、インフラの老朽化対策をはじめ、社会基盤の整備を着実に進めてまいります。
このほか、新県立体育館の整備・運営を行う民間事業者の選定に向け、施設整備及び維持管理・運営に係る債務負担行為を設定しております。
一般会計補正額は、34億5,127万円であり、補正後の総額は、5,876億8,527万円となります。
次に、単行議案の主なものについて申し上げます。
「秋田県収用委員会の委員及び予備委員の任命について」は、一部委員の任期満了等に伴う後任の任命について、議会の同意をお願いしようとするものであります。
「秋田県県税条例等の一部を改正する条例案」は、地方税法の一部改正に伴い、法人事業税の外形標準課税に係る適用対象法人の見直し等を行おうとするものであります。
以上、提出議案の概要について申し上げました。よろしくご審議の上、ご可決賜りますようお願い申し上げます。