1 森林計画制度とは

森林は、国土の保全、水源涵養、自然環境の保全、公衆の保健、地球温暖化の防止、林産物の供給などの多面的機能を持っています。これらの機能を充分に発揮させるためには、計画的で適切な森林の整備や林業生産活動が必要です。そのため、森林法により森林計画制度を設けています。森林計画制度では、国の全国森林計画・都道府県の地域森林計画・市町村の市町村森林整備計画・森林所有者の森林経営計画が、それぞれの段階で森林の整備に関する計画を立てることになっています。

現在の森林計画制度は、平成23年森林法改正に伴う制度等の改正により、国、都道府県、市町村の各段階における森林の取扱ルールをはっきりさせ、自治体がそれぞれの役割の下、自発的な取組ができるようにするとともに、県民の皆さまの新たなニーズに対応した計画内容となるよう見直されました。また、施業の集約化など効率的な施業を通じた持続的な森林経営の実現に向けた、森林所有者レベル、市町村レベルの森林計画の充実や、適切な伐採、造林を確保するための規律の充実を図っています。(平成24年4月1日から運用)

森林計画制度の主な改正点

  • 市町村森林整備計画が、地域の森林づくりの基本的な計画となるよう位置付け
  • 市町村が、森林の期待される機能に応じて森林の区分を主体的に設定できる仕組みに転換
  • 森林経営計画制度の創設
  • 無届伐採が行われた場合の行政命令の新設
  • 早急に間伐が必要な森林(要間伐森林)の施業代行制度の見直し
  • 森林施業に必要な土地使用権の設定手続の改善
  • 新たに森林の土地の所有者となった場合の届出制度の創設
  • 森林所有者等に関する情報の利用及び共有の推進

2 森林の区分

水源涵養機能

写真:水源

森林整備の方向

 良質な水の安定供給を確保する観点から、適切な保育、間伐を促進しつつ、木の根元の植物や樹木の根を発達させる施業を行います。

望ましい森林の姿 

 樹木の根元の植生とともに樹木の根が発達することにより、水を蓄えるすき間に富んだ浸透・保水能力の高い森林土壌を有する森林であって、必要に応じて浸透を促進する施設等が整備されている森林です。

山地災害防止機能 土壌保全機能

写真:山地災害

森林整備の方向

 災害に強い土地を形成する観点から、地形、地質等の条件を考慮した上で、林床の裸地化を避けることを目的とした施業を行います。

望ましい森林の姿       

 樹木の根元の植物が生育するための空間があり、光が差し込み、植物とともに木の根が深く入り込み土壌を保持する能力に優れた森林です。

快適環境形成機能

森林整備の方向

 地域の快適な生活環境を保全する観点から、風や騒音等を防ぎ、空気をきれいにするために有効な森林の構成の維持とし、樹種の多様性を増進する施業、適切保育な保育・間伐等を行います。

望ましい森林の姿

 樹高が高く枝葉が多く茂っているなど、風や騒音を遮る能力に優れ、空気中の汚染物質を吸着する能力が高く、諸被害に対する抵抗性が高い森林です。

保健・レクリエーション機能

写真:快適

森林整備の方向

 観光的に魅力のある高原、渓谷等の自然景観植物群落を有する森林、キャンプ場や森林公園等の施設のある森林は保健・レクリエーション機能の維持増進を図る森林として整備及び保全を推進することします。

望ましい森林の姿

 身近な自然や自然とのふれあいの場として適切に管理され、豊富な種類な樹種からなり、憩いの場と学びの場を提供している森林です。

文化機能

森林整備の方向

 史跡・名勝等の所在する森林や、これら一体となり優れた自然景観等を形成する森林は、潤いのある自然景観や歴史的風致を構成する観点から、保健・文化機能の維持増進を図る森林として整備及び保全を推進することとします。

望ましい森林の姿

 史跡・名勝等と一体となって自然景観や歴史的な風景を構成している森林であって、必要に応じて文化・教育的活動に適した施設が整備されている森林です。

生物多様性保全機能

森林整備の方向

 原生的な森林生態系、希少な生物が生育・生息する森林、陸域・水域にまたがり特有の生物が生育・生息する川沿いの林などの森林については、生物多様性保全機能維持増進を図る森林として保全することとします。また、野生生物が移動するための通路の確保にも配慮した保全も推進します。

望ましい森林の方向

 原生的な森林生態系、希少な生物が生育・生息している森林、陸域・水域にまたがり特有の生物が生育・生息している川沿いの林。

木材生産機能

写真:木材生産

森林の整備の方向

 林木の生育に適した森林で、効率的な森林施業が可能な森林は、木材等生産機能の維持増進を図る森林として整備を推進します。

望ましい森林の姿

 林木の生育に適した土壌を有し、木材として利用する上で良好な樹木で構成され、成長が良い森林であって、林道等の設備が適切に整備されている森林です。

※個々の森林がどの機能区分に分類されているかは、市町村長がたてる「市町村森林整備計画」に定められています。

3 森林計画制度の体系図

 森林は一度荒れてしまうと、その復旧には大きな努力と期間を必要とし、公益的機能の発揮に大きな影響を及ぼすことになります。
 こうしたことから、行政として森林・林業に関する長期的・総合的な施策の方向、森林整備の目標を定め、それに応じて施策を推進するとともに、森林所有者等に地域の実情に応じた森林施業の方向性を明らかにする必要があります。
 このため、国・都道府県・市町村及び森林所有者を通じた「森林計画制度」が森林法により決められています。
 国有林の施策については東北森林管理局のホームページをご覧下さい。(参考:国有林のモデル的な取組について)

図:森林計画制度の体系図

  1. 政府 森林・林業基本法第11条
    森林・林業基本計画
    • 長期的かつ総合的な施策の方向目的
  2. 農林水産大臣 森林法第4条
    全国森林計画(15年計画)
    • 国の森林関連施策の方向
    • 地域森林計画などの規範
      • (森林整備保全事業計画)
        • 森林整備事業、治山事業に関する5年間の事業計画
    • 都道府県 森林法第5条
      地域森林計画(10年計画)
      • 県の森林関係施策の方向
      • 伐採、造林、林道、保安林の整備目標
      • 市町村森林整備計画の規範
    • 森林管理局 森林法第7条2
      地域別の森林計画(10年計画)
      • 国有林の森林整備及び保全の方向
      • 伐採、造林、林道、保安林の整備の目標
    • (地域森林計画と地域別の森林計画を調整しながら対応)
  3. 市町村長 森林法第10条5
    市町村森林整備計画(10年計画)
    • 市町村が講ずる森林関連施策の方向
    • 森林所有者が行う伐採、造林の指針等
    • 森林所有者等 森林法第11条
      森林経営計画(5年計画)
      • 森林所有者等が所有する森林について自発的に作成する5年間の造林・保育・間伐・伐採の具体的な計画
    • 一般の森林所有者に対する措置
      • 伐採及び伐採後の造林の事前届け出
        施業の勧告
        伐採及び伐採後の造林計画の変更命令等