1 グレーディングとは

 皆さんは「山のグレーディング」という言葉を聞いたことはありますか?

 山のグレーディングとは、登山道別に必要な体力度難易度を評価したものです。
 『市販されているガイドブックに、初級者向け・中級者向け・上級者向けとランク分けがされているではないか』とのご意見もあるかもしれませんが、実は、このランク分けは著者の主観によるところが大きく、同じ山でもガイドブックによっては評価が異なっていることがあります。

 この問題を解決したのが、2014年に長野県が始めた「山のグレーディング」です。長野県は登山に求められる体力と技術を、これまでの研究成果や山の形状などから定義・数値化して、言わば、山を比較する全国基準となる『ものさし』を作ったのです。

 秋田県は2018年に全国で9番目にグレーディングを実施し、2019年3月にはハンドブックとしてまとめ、発行しました。

 2021年1月現在、山のグレーディングは、全国10県(長野・山梨・静岡・新潟・岐阜・群馬・栃木・山形・秋田・富山県)に広がっているほか、愛媛県と高知県の県境に連なる石鎚山系でも行われています。 

2 内 容

〇 秋田県の山ほどある山のなかから、秋田駒ヶ岳、鳥海山、森吉山など、とっておきの31山(33ルート)を、その固有の地形的な特徴に基づき、体力度と技術的難易度の2つの指標で評価しました。

〇 評価は、体力度を10段階技術的難易度を5段階で判定しており、これを縦軸と横軸からなる「マトリクス表」「一覧表」にまとめています。

〇 山の魅力紹介など、詳細情報についてはハンドブック「~そこに秋田の山が山ほどあるから~」(日本語版・英語版)をご覧ください。
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3 ダウンロード

 

 *グレーディングハンドブックは現在在庫がなく、配布をしておりません。ダウンロードしてご利用ください。

  使い方

〇 使用にあたっては、自分の調べたい山を「マトリクス表」「一覧表」から見つけ、体力度と技術的難易度を確認してください。
  登山道別に評価した体力度と技術的難易度は、その山を安全に登るための目安ですので、自分の力量に合った山選びをしてください。
〇 過去に登ったことのある山のグレーディングが参考になりますが、過去の体力・技術はあくまでも過去のものであることを十分に認識し、現在の体力・技術に応じた山選びをしてください。
〇 登山初心者の方は、体力度・技術的難易度の低い「マトリクス表」の左下のルートから、徐々に右上のルートの方に経験を積み重ねていくことをお勧めします。
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5 体力度

 〇 体力度の判定基準については、鹿屋体育大学山本正嘉教授の研究成果をもとに以下のとおりとしています。

 ❶ コースタイム(歩行時間)、ルート全長、累積登り標高差、下り標高差の4つの数値から、次の式により「ルート定数」を算出します。
ルート定数=コースタイム(時間)×1.8+ルート全長(km)×0.3+累積登り標高差(km)×10.0+累積下り標高差(km)×0.6

 ❷ ①で算出した「ルート定数」をわかりやすくするため、次のとおり体力度として10段階に分類しています。

体力度表
体力度 10
ルート定数 10以下

10を超え20以下

20を超え30以下 30を超え40以下 40を超え50以下 50を超え60以下 60を超え70以下  70を超え80以下  80を超え90以下  90を超える

6 技術的難易度

 〇 技術的難易度の判定基準については、登山道の状況や、登山者に求められる技術・能力を定義し、以下のとおりとしています。

技術的難易度表
技術的難易度 登山道の状況 登山者に求められる技術・能力
・概ね整備済
・転んだ場合でも転落・滑落の可能性は低い
・道迷いの心配は少ない
・登山の装備が必要
・沢、崖、場所により雪渓などを通過する箇所がある
・急な登下降がある
・道が分かりにくい所がある
・転んだ場合、転落・滑落事故につながる場所がある
・登山経験が必要
・地図読み能力があることが望ましい

・ハシゴ・くさり場、また、場所により雪渓や渡渉箇所がある
・ミスをすると転落・滑落などの事故になる場所がある
・案内標識が不十分な箇所も含まれる

・地図読み能力、ハシゴ・くさり場などを通過できる身体能力が必要
・厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ・くさり場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある
・手を使う急な登下降がある
・ハシゴ・くさり場や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落・滑落の危険箇所が多い
・地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
・ルートファインディングの技術が必要
・緊張を強いられる厳しい岩稜の登下降が続き、転落・滑落の危険箇所が連続する
・深い藪漕ぎを必要とする箇所が連続する場合がある
・地図読み能力、岩場、雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
・ルートファインディングの技術、高度な判断力が必要
・登山者によってはロープを使わないと危険な場所もある

 7 注意事項

〇 秋田県は積雪が多く、山々では春遅くまで残雪があります。また、造林事業の終了に伴い、登山口までのアクセス道となる林道の荒廃が進んでいるところもあります。
 登山道の整備も十分ではなく、刈払作業が数年に1回しかできず、やぶ化が進んでいるところもあります。近年はクマの目撃も増えています。
〇 実際の登山では、様々なリスクがありますので、登る山を選んだら地形図などでルートをよく調べたり、地元自治体などに登山道の状況を確認するほか、装備や日程に余裕のある計画を立てることが必要です。
〇 グレーディングしたルートは、登山道の通行や山頂への到達、通行上の安全を保証するものではありません。
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  他県のグレーディング

〇 現在、秋田県のほかに、9県・1山域で山のグレーディングが行われています。(2021年1月時点)
〇 各県のグレーディングデータは、下の「リンク集」からそれぞれのウェブサイトをご覧ください。
長野県のページでは、「日本百名山のグレーディング」として、百名山のうち67山、200ルートのグレーディングを公表しています。

前述のとおりグレーディングは全国基準の『ものさし』ですので、秋田県内の山の難易度を比較できるだけでなく、富士山(体力度7・技術度B)、槍ヶ岳(体力度8・技術度C)、飯豊山(体力度7・技術度C)などとも比べることができます。

9 リンク集