「公害」とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康または生活環境に係る被害が生ずることをいいます(環境基本法第2条より)。
 例としては、
「深夜営業をしているスナックから、毎晩のようにカラオケの音が響き、眠れない」
「近くの工場からの煙で、のどが痛くなり、また、洗濯物が黒くなった」
「家の前で道路工事が行われていて、その振動や建設機械の音がうるさい」などです。
 公害を解決するには、主に2つの制度があります。

1 公害に関する苦情・相談は → 「苦情相談」

 まずは、お住まいの市町村の環境担当窓口、又は、最寄りの地域振興局福祉環境部へご相談願います。
 市町村又は振興局の担当部署がご相談の内容について被害の実情などを調べます。被害の原因や実態が明確になりましたら、関係者に対し改善のための指導や助言を行い、公害苦情の解決に努めます。

名称 所在地 電話番号
地域振興局福祉環境部一覧
北秋田地域振興局大館福祉環境部
(管轄:大館市、鹿角市、小坂町)
大館市十二所字平内新田237-1 0186-52-3954
北秋田地域振興局鷹巣阿仁福祉環境部
(管轄:北秋田市、上小阿仁村)
北秋田市鷹巣字東中岱76-1 0186-62-1167
山本地域振興局福祉環境部
(管轄:能代市、藤里町、三種町、八峰町)
能代市御指南町1-10 0185-52-4331
秋田地域振興局福祉環境部
(管轄:男鹿市、潟上市、五城目町、八郎潟町、井川町、大潟村)
潟上市昭和乱橋字古開172-1 018-855-5173
由利地域振興局福祉環境部
(管轄:由利本荘市、にかほ市)
由利本荘市水林408 0184-22-4121
仙北地域振興局福祉環境部
(管轄:大仙市、仙北市、美郷町)
大仙市大曲上栄町13-62 0187-63-3694
平鹿地域振興局福祉環境部
(管轄:横手市)
横手市旭川一丁目3-46 0182-45-6139
雄勝地域振興局福祉環境部
(管轄:湯沢市、羽後町、東成瀬村)
湯沢市千石町二丁目1-10 0183-73-6157
【秋田市内の公害に関する苦情・相談】    
秋田市環境保全課 秋田市山王一丁目1-1 018-888-5711

2 公害に関する紛争があるときは → 「公害紛争処理制度」

 公害紛争の迅速・適正な解決を図るため、司法的な解決とは別に、公害紛争処理法(昭和45年6月制定)に基づき公害紛争処理制度が設けられています。苦情相談窓口で処理することが困難な場合、公害紛争処理制度を利用することにより有効な解決が図られる場合があります。
 公害紛争を処理する機関として、国に「公害等調整委員会」が、県に「公害審査会」が、それぞれ設置されています。

1.公害紛争処理手続の種類

  1. あっせん
    公害紛争処理機関が当事者間に入り、交渉が円滑に行われるよう仲介することにより、当事者間の自主的解決を援助、促進する手続。
  2. 調停
    公害紛争処理機関が当事者を仲介し、双方の互譲の合意に基づき紛争解決を図る手続。あっせんと似ているが、公害紛争処理機関が積極的に当事者間に介入し、手続をリードする点で異なる。
  3. 仲裁
    当事者双方が裁判所において裁判を受ける権利を放棄して紛争解決を公害紛争処理機関に委ね、その判断に従うことを約束(仲裁契約)することにより紛争解決を図る手続。
  4. 裁定
    当事者間の紛争について公害紛争処理機関が法律判断を行うことにより、紛争解決を図る手続。原因裁定と責任裁定の2種類がある。
    ・原因裁定
     申請人が主張する加害行為と被害発生との間の因果関係の存否について法律判断を行う手続
    ・責任裁定
     損害賠償責任の有無及び賠償額についての法律判断を行う手続

2.公害等調整委員会・公害審査会で扱われる事件

公害等調整委員会

 あっせん、調停及び仲裁について

  1. 重大事件
    大気汚染、水質汚濁により著しい被害が生じ、かつ被害が相当多数の者に及び、又は及ぶおそれのある次の事件
    (1)生命、身体に重大な被害が生じる事件
    (2)被害の総額が5億円以上の事件
  2. 広域処理事件
    航空機や新幹線に係る騒音事件
  3. 県際事件
    複数の都道府県にまたがる事件

 裁定について

  1. 原因裁定
    公害に係る被害が発生した場合の因果関係の解明に係る事件
  2. 責任裁定
    公害に係る被害についての損害賠償責任の有無及び賠償額に係る事件

公害審査会

 あっせん、調停及び仲裁については、公害等調整委員会が扱う事件以外の民事上の紛争を扱います。なお、裁定は公害等調整委員会のみが所管している制度です。

3.調停の進行例

 公害紛争処理制度の中で最も利用されている調停は、次のような流れで進みます。

1.調停の申請~調停委員会の設置

  1. 調停を行いたい場合は、公害審査会事務局(環境管理課)へ申請書を提出してください。(申請についての詳細は「紛争処理の申請をするには」を参照ください)
  2. 事務局において書面を確認し、不備がなければ申請書が受理されます。
  3. 公害審査会委員から3名の調停委員が選出され、調停委員会が組織されます。ここからは同委員会が手続を進めます。
  4. 申請人及び被申請人へ調停申請書を受理した旨の通知が送付されます。

2.調停期日<非公開>

  1. 当事者双方が出席し、調停期日が開催されます。期日では、まず、調停委員会が当事者双方へ申請内容や提出資料、これまでの紛争経過などについて確認を行います。
    なお、当事者が出席できない場合、代理人を立てることが可能です。また、当事者が多数存在する場合は、代表者を選定することが可能です。
  2. また、期日では、当事者双方が紛争の解決方法について意見や主張などを述べ合います。さらに、調停委員会は現地調査等を行うことがあります。
  3. 1回の期日で解決が見込まれないなどの場合は、期日が複数回開催されます。期日の間隔は、当事者間や委員の都合にもよりますが、おおむね1ヶ月~2ヶ月です。

3.合意の成立/調停の打切り<非公開>

合意の成立

 何回かの調停期日を経て、当事者間に合意が成立した場合は、調停委員会はその内容を記した調停調書を作成します。そして、調停期日を開催し、当事者双方及び調停委員全員が調停調書へ署名押印し、調停が成立することとなります。
 調停調書は民法上の和解契約と同一の効力を有し、調停成立後は当事者が自主的に義務を履行することになります。仮に、正当な理由がないのに義務の履行を怠っている事実が確認されたなどの場合は、公害審査会へ義務履行の勧告を求めることができますが、合意事項を強制的に実現することはできません。強制執行を行うためには、改めて裁判所に訴えを起こして判決を得る必要があります。

調停の打切り

 何回かの調停期日を経ても、合意が成立する見込みがないと調停委員会が判断したときは調停は打ち切られます。
 この他、調停案の受諾勧告に対して、受諾しない旨の申出があった場合も調停が打ち切られたものと見なされます。

3 他の主な紛争解決手段について

1.公の機関によって強制的に解決したい場合

  1. 地方裁判所又は簡易裁判所に「民事訴訟」を提起する。
  2. 地方裁判所に「仮処分」を申請する。

2.公の機関によって円満に解決したい場合

  1. 簡易裁判所に「調停(民事調停)」を申し立てる。
    (メリット:債権名義が得られます。債権名義とは、特定の給付請求権が存在することを交渉する文書で法律によって執行力を認められたものです)
  2. 簡易裁判所において、「起訴前の和解」(即決和解ともいいます)により裁判官の面前で相手方との話し合いで解決する。
    (メリット:当事者に和解する意思があればすぐに終わります)