3.県有特許の実施許諾等と譲渡(実施許諾等編)

2016年08月26日 | コンテンツ番号 973

 ここでは、県有特許の実施許諾等について、その手続きや注意点などを説明します。
 前編では、将来、適法適正な実施許諾等ができるよう、研究開発段階や特許出願段階で注意しておくべき事項を説明しましたが、ここでは、実施許諾等の事務のあり方について具体的に説明します。

県有特許の実施許諾等

実施許諾等ができる場合

 秋田県では、県有特許を積極的に民間企業に実施許諾等し、地域社会のために役立てることとしています。
 また、公金を原資として産み出された県有特許は、すなわち県民の財産ですから、第1に本県の産業振興や県民生活の向上などを目的とした実施許諾等とする必要があります。
 したがって、県有特許権等実施許諾等要領第2条第1項に定めるとおり、「県内産業の振興等」のためである場合は、県有特許を実施許諾等することができます。

 一方で、県有特許の中には、現時点では県内に受け手のない新技術や、県外企業と共同研究して産み出された新技術などもあります。
 このような場合、県内企業に対して実施許諾等をすることができないからといってその経済的効用価値を眠らせてしまうことは、県民の財産である県有特許を有効に活用せず「死蔵」させてしまうことにもなりかねません。
 したがって、秋田県では、必要があると認められる場合は、県内産業の振興等以外の目的でも実施許諾等することができることとしています(同要領第2条第1項ただし書き)。
 つまり、

  1. 県有特許に関する情報を県内企業に対して積極的に情報提供し、
  2. まずは県内企業に対する実施許諾等の可能性を優先的に検討し、
  3. それでも県内に受け手のない場合には、

幅広く県外の企業に対しても実施許諾等していく、という考え方により、県有特許の実施許諾等を積極的に推進していきましょう。

実施許諾等事務の流れ

 県有特許の実施許諾等事務の流れをまとめると、図7のとおりです。

 実施許諾等事務は、大きく4つの段階に分けられます。
 第1段階は、実施許諾等を希望する民間企業が実施許諾等申請書を提出するまでの段階、第2段階は、実施許諾等申請書を受理した公設試験研究機関等が所管課に副申(進達)し、それを受けて所管課があきた未来戦略課に職務発明審査会の開催を依頼する段階、第3段階は、あきた未来戦略課において職務発明審査会を開催し、審査結果を所管課に通知する段階、第4段階は、職務発明審査会の審査結果を受けて、所管課において実際に民間企業に実施許諾等する段階です。
 図7にある事務の流れを含め、実施許諾等申請書など必要書類の様式は「県有特許権等実施許諾等要領」で定められていますので、詳しくは当該要領をご覧ください。
 なお、第1段階にある事前協議は、特に上記要領で定められているものではありませんが、実施許諾等事務を円滑に進めるためには不可欠の作業となります。
 民間企業から正式な実施許諾等申請書を提出していただく前に、実施許諾等の内容について民間企業と十分協議をしてください。特に協議が必要な事項は、「実施権の種類」と「実施料(又は実施料相当額)」についてです。
 秋田県では、県有特許の社会還元、つまり、民間企業への実施許諾等や譲渡を積極的に推進する方針を打ち出していますが、民間企業の希望にすべて応えることはできないのが実状です。例えば、「当社だけが独占できる形で実施許諾してほしい」、あるいは、「実施料を無料にしてほしい」という希望には、県の制度上応えられない場合があります。
 したがって、民間企業から正式な実施許諾等申請書を提出していただく前に、お互い納得がいくまで十分協議するようお願いします。

図:実施許諾等事務の流れ

実施権の種類

 県有特許の実施許諾とは、簡単にいえば、県が保有している特許の内容(権利)を、民間企業など第3者に貸し出すことであり、通常「ライセンス」と呼ばれています。
 図7にあるとおり、県有特許の実施許諾は、県と相手方とで締結する「実施契約」に基づいて行われるわけですが、相手方にどのような権利(実施権)を認めるかにより、大きく3つに分類されます。

図:実施権の種類

 専用実施権は、業として特許発明の内容を「独占排他的」に実施できる権利であり、同じ内容で複数人に設定することはできません。専用実施権の設定を受けた者は、自分だけが特許発明の内容を独占できるという極めて強固な権利です(特許法第77条)。

 通常実施権は、業として特許発明の内容を実施できる権利であり、同じ内容で複数人に許諾することができます。専用実施権のように特許発明の内容を独占することはできません(特許法第78条)が、使いやすさなどから実施許諾の中で最も多くみられる実施権です。

 独占的通常実施権(優先実施権ともいう)は、特許法上規定はありませんが、実務上広く認められている実施権です。専用実施権同様、業として特許発明の内容を「独占排他的」に実施できる権利ですが、法律上の専用実施権ではなく、実施契約の中で「独占的権利」である旨を定めた「通常実施権」の一種と考えられています。
 なお、法律上は、「専用実施権」の場合は「設定」と、「通常実施権」の場合は「許諾」と呼んでいますが、実務上はどちらも「実施許諾」と呼んでいます。
 県有特許を民間企業に実施許諾する場合は、上記いずれの実施権を設定又は許諾するか、十分に検討する必要があります。特に、相手方に独占排他的な権利を認める「専用実施権」を設定したり、「独占的通常実施権」を許諾する場合は注意が必要です。なぜなら、広く県民に対して公平であるべき県が特定企業だけに独占排他的な実施権を認めてよいかどうかは、議論が分かれる場合もあるからです。
 したがって、秋田県では、原則として、次のとおり実施権を使い分けて、適法適正な実施許諾に努めています。なお、同様の解釈により実施権を使い分けている都道府県や大学なども多く見受けられます。

 表:出願形態別の実施権の取り扱い

 前編で述べたとおり、県単独出願特許とは、公設試験研究機関が単独で研究開発を行った場合の成果です。すなわち、研究開発の段階では特定の民間企業を想定しているわけではなく、本県産業全体の振興を図るための研究開発として取り組んでいるものですから、その成果たる県単独出願特許もまた、広く県内企業全般を視野に入れたものとなります。
 したがって、県単独出願特許の実施許諾は、原則として、通常実施権の許諾とするべきであり、専用実施権の設定や独占的通常実施権の許諾は、例外として解釈されるべきです。
 他方、共同出願特許とは、公設試験研究機関と特定の民間企業とが共同で研究開発を行った場合の成果です。すなわち、研究開発の段階から特定企業をターゲットとし、その企業の競争力を強化するための研究開発として取り組んでいるものですから、その成果たる共同出願特許もまた、特定企業のために活用されてしかるべきものとなります。
 したがって、共同出願特許の場合は、共有者である民間企業の希望その他の事情を考慮のうえ、独占的通常実施権を許諾することが可能であり、必要があると認められる場合には、専用実施権を設定することも可能です。なお、当然のことですが、独占排他的権利ではなく通常実施権の許諾としても構いません。
 むろん、上記説明はあくまで一般論であり、個別具体的にみれば異なる運用とせざるを得ない場合があるのも確かですが、特段の事情がない限り、上表にしたがって実施権を使い分けるようお願いします。

実施料

 県有特許を実施許諾する場合に県が徴収する実施料は、「県有特許権等実施許諾等要領」で定める「特許権等実施料算定基準」に基づいて算定します。 
 なお、共有者が共有特許を自ら実施する場合に徴収する実施料相当額は、同基準に基づいて算出した額に準じ、かつ持分に応じた額とします。

実施料=基本額×実施料率(基準率×利用率×増減率×開拓率)×1.08

基本額

 基本額は、県有特許がどのような利用のされ方をするのかを考慮して、次の3つの中から最も相応しいものを選択します。

  1. 販売価格に生産数量又は販売数量を乗じて得た額
  2. 価値の増加又は費用の低減を金額に見積もって、これに利用件数、生産数量又は販売数量を乗じて得た額
  3. 利益金額

 例えば、実施許諾する県有特許が、従来品より安価で高品質な新製品の開発を可能とする内容である場合は、その県有特許を利用して生産した製品の販売額を基本額とします。
 つまり、1.を基本額とするわけですが、この方法は、「販売価格はその計算と確認が容易であること」「製造原価など企業内部情報を開示しなくてもよいこと」などから、実務上最も広く利用されています。
 実施許諾の相手方が納得できるのであれば、通常は1.を用いるとすることでほぼ問題はないでしょう。

基準率

 基準率は、実施料率を算定する際の基本となる部分です。秋田県では、いずれの「基本額」を選択したか、また、実施の価値が高いかどうかによって基準率が変わる仕組みとなっています。

基準率
区分  基本額について1.を適用 基本額について2.又は3.を適用
 実地価値「上」  4パーセント  30パーセント
 実地価値「中」  3パーセント  20パーセント
 実地価値「下」  2パーセント  10lパーセント

利用率

 利用率は、原則として、100%とします。したがって、通常は、実施料率全体に対して影響を与えないパラメーターになりますが、次のような場合は、0~100%の範囲で設定することになります。
 例えば、実施許諾する県有特許が「モーターのギア部分」である一方、製品販売額として把握できるのが「モーター」である場合は、「ギア部分」の「モーター」全体に及ぼす効果の割合が利用率となります。
 そして、実務上は、(ギアの原価/モーター全体の原価)や(ギアの工程/モーター全体の工程)などの方法で算出することになるでしょう。

増減率

 増減率は、原則として、100%とします。したがって、利用率同様、通常は、実施料率全体に対して影響を与えないパラメーターになりますが、県内産業の振興等以外の目的で実施許諾する場合や、専用実施権の設定による実施許諾の場合は、最大150%まで増加させることができます。くわしくは、県有特許権等実施許諾等要領をご覧ください。

開拓率

 利用率や増減率と同様、利用率は、原則として、100%とします。
 しかし、実施許諾先の民間企業において、特許の内容を実施するためにさらなる研究が必要である場合や、多額の宣伝広告費などを要する場合は、50%まで減少させることができます。

有償・無償

 前述したように、公有財産である県有特許を実施許諾等する際には、実施料(又は実施料相当額)を徴収しています。また、特許を受ける権利も、特許権に準じて取り扱いますので、同様に実施料(又は実施料相当額)を徴収しています。
 ですが、県有特許ひとつひとつをみてみると、実に様々な権利関係、利害関係があり、時として無償による実施許諾等が適切な場合があるのも事実です。

 表:実施許可等における取り扱い 

 前編で述べたとおり、秋田県では、平成16年度から、民間企業と共同で特許出願する場合は、原則として持分に応じて出願料等を負担することとしています。
 しかし、平成15年度以前に共同出願した特許の中には、共同出願人(共有者)である民間企業が出願料等を全額負担しているものもあります。
 出願料等を民間企業が全額負担している場合、その負担額は数十万円程度(出願の内容により異なる)となりますが、このような事実関係を有する特許を受ける権利において当該企業が実施をする場合も、他のケースと同様に計算された実施料相当額を徴収するのでは著しく不公平が生じます。
 したがって、秋田県では、共有にかかる特許を受ける権利の共有者による実施に同意する場合で「特別の事情」がある場合は、実施料相当額を減免できることとし(県有特許権等実施許諾等要領第7条第5項)、上記のように共有者が出願料等を全額負担している場合は「特別の事情」に該当するとして、実施料相当額を無償にすることを認めています。

県有特許業務マニュアル 県有特許の適法適正な管理を目指して

  1. 特許制度と本県職務発明制度の概要
  2. 本県職務発明制度と県有特許の取り扱い
  3. 県有特許の実施許諾等と譲渡
  4. 県有特許権の消滅
  5. 関係法令