ここでは、県有特許権の消滅について、その手続きや注意点などを説明します。

2.本県職務発明制度と県有特許の取り扱い」で述べたとおり、特許権を維持するためには、特許庁に特許料を納め続ける必要があります。

県有特許の場合、その特許料の原資は公金ですから、既に目的を達成した特許権や、社会経済情勢の変化により存在意義が薄れた特許権を無計画に維持することは問題と言わざるを得ません。

そもそも不要となるような特許は産み出さないようにしなければなりませんが、諸般の事情により不要となった県有特許権は計画的に消滅させ、県として維持管理コストの低減を図っていく必要があります。

県有特許権の消滅

消滅の判断

秋田県では、県有特許権の数が少ないうちは、特許権を存続期間終了(出願から20年)まで維持するか、それとも、存続期間終了を待たずに消滅させるかは、各部局の判断に委ねてきたところです。

しかし、出願件数が増加しそれに伴って特許権の数が増加してくると、個別の権利まで管理の目が行き届かなくなり、権利維持に要するコストも増加してきます。

そのため、権利の維持又は消滅についての統一基準を定めた「県有特許権等処分要領」を平成16年度に制定し、維持管理コストの低減を図っていくこととしました。

なお、上記要領でいう「処分」とは、特許料を納付しないことにより特許権を消滅させることをいいます。

通常の公有財産事務においては、譲渡も処分の一形態として取り扱いますが、ここでいう処分には譲渡は含まれません。また、あくまでも特許料不納による「消滅」であって、特許法第97条でいうところの「放棄」ではありませんのでご注意ください。

消滅の対象となる特許権

これまで何度も述べてきたとおり、県有特許とは、社会還元、すなわち本県の産業振興等に寄与して初めてその価値を発揮するものです。

裏を返せば、産業振興等に寄与できない県有特許は、それを維持していく合理性に乏しいと言わざるを得ません。

従ってしたがって、県有特許権等処分要領第3条第1号では、過去2年間又は5年間で実施許諾等の実績がない特許権は、「社会還元の可能性が低い特許権」であると推定し、各部局に維持又は消滅の検討を義務づけることとしました。

維持又は消滅の判断

冒頭で述べたとおり、特許権の維持又は消滅の判断は各部局に委ねてきたところですが、平成16年度以降は、県有特許権等処分要領第4条以下の定めにより、「秋田県職務発明審査会」の審査により維持又は消滅を決定することとしました。

消滅事務の流れ

県有特許権の消滅事務の流れをまとめると、図9のとおりです。

過去2年間又は5年間で実施許諾等の実績がない特許権を有する公設試験研究機関等は、当該特許権の維持又は消滅に関して関係者と意見交換し、その結果及び機関としての意見を付して、所管課に報告します。

なお、意見交換の相手方ですが、県単独出願特許の場合は、県内企業の情報を豊富に有する(公財)あきた企業活性化センター知財総合支援窓口などの関係機関及び発明者が考えられます。また、共同出願特許の場合は、権利の共有者である民間企業及び県側発明者と意見交換することになるでしょう。

そして、上記報告を受けた所管課では、公有財産である特許権の所管部署として維持又は消滅の方針を定めます。

方針の決定後、所管課は地域産業振興課に職務発明審査会の開催を依頼します。それを受けて、地域産業振興課では職務発明審査会を開催して維持又は消滅の審査を行います。結果については地域産業振興課から所管課に通知し、所管課は公設試験研究機関等に通知します。

そして、職務発明審査会が維持の決定をした場合は特許料を納付して権利を維持し、消滅の決定通知を受けた場合は特許料を納めず権利を消滅させることになります。

おおまかな事務の流れは以上ですが、例えば、県単独出願特許の場合と共同出願特許の場合では、意見交換すべき内容や手続き面で異なる部分があります。また、出納局長への報告が必要な場合もありますので、詳しくは、「公有財産事務の手引き」と「県有特許権等処分要領」を合わせてご覧ください。

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県有特許業務マニュアル

~県有特許の適法適正な管理を目指して~

  1. 特許制度と本県職務発明制度の概要
  2. 本県職務発明制度と県有特許の取り扱い
  3. 県有特許の実施許諾等と譲渡
    前編 実施許諾等編 譲渡編
  4. 県有特許権の消滅
  5. 関係法令