画像:広報紙あきたびじょん2026年1月号 特集 新春特別対談01

画像:広報紙あきたびじょん2026年1月号 特集 新春特別対談02

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(※以下、読み方が難しい語句や固有名詞の後に、読み仮名を記載している箇所があります。)

秋田の未来を切り拓く!新たな挑戦へと舵を切る2026年に

 長男の五城目小学校への教育留学をきっかけに、2023年、千葉県から五城目町へ移住した高橋さん。東京大学大学院新領域創成科学研究科研究員や世界銀行東京事務所のコンサルタントなどを務めながら、2人の子どもと一緒に秋田暮らしを楽しむ高橋さんと、鈴木 健太知事が新年に向けて対談を行いました。

そこに使命があれば 扉は開く

知事:ご出身はどちらですか?

高橋:父親の仕事で幼少期から岩手や青森に引っ越し、中高生の時は秋田で暮らしていました。秋田の思い出が一番多いので、出身を聞かれたら「秋田」と答えています。

知事:高橋さんのこれまでのキャリアを拝見すると、JICA海外協力隊、ロンドンで修士号、東大で博士号取得と、まさに挑戦の連続ですね。その原動力はどこにあるのでしょうか?

高橋:私の場合、挑戦の前には必ず失敗があって、例えば、JICA海外協力隊に参加する前はジャーナリストを志して就職活動をしていましたが不採用が続き、当時インターンでお世話になっていたテレビ局の方に「俺たちが誰も知らない国へ行って自分の価値観を覆してこい」と背中を押され、海外協力隊へ参加。東大の博士課程進学も、国際機関への就職活動が全滅し、「もう少し自分の専門分野を磨いた方がいい」という面接官のアドバイスを受けてのことでした。挑戦はしているのですが、その前にはいつも転機があって、人生を促されている感覚に近いかもしれません。知事こそ、元自衛官であり、たくさんの挑戦をされているイメージですが、いかがですか?

知事:私は大学浪人中に、最初は文学部を目指していたんですが予備校の先生の勧めで法学部に進学し、その後、国連職員を目指していた時期がありました。ただ将来性などを考えて志望を外交官に変更したのですが、勉強に苦戦していたところ、ポストに自衛隊のハガキが入っていた・・・という経緯です。成り行きに近いですよね(笑)。

高橋:私も成り行きです(笑)。

知事:挑戦をする時にいつも感じているのは、「面白そう」という好奇心ですね。父親がすごく楽観的な人で、世の中の辛いことや悲しいことも笑い飛ばせる力を持っていたので、父の影響かもしれません。ただ、年齢を重ねるうちに、挑戦を突き動かすものが好奇心から「使命感」に変わっていった気がします。自衛隊で培われた「義を見てせざるは勇無きなり」という精 神が根底にあって、「誰もやらないなら自分がやるしかない」という気持ちが染みついたのでしょう。

高橋:使命をみつけた時って、不思議と目の前の扉がパッと開くような気がします。私も秋田に来てから、その時々で自分ができることに向き合う中で、自然に「挑戦させてもらっている」感覚で、地域の皆さんに背中を押されながら前に進むことができているんですよね。ただ、一方で、使命感が強すぎると自分を犠牲にしてしまいがちなので、バランスを取るのが難しい とも感じます。

知事:たしかに、挑戦というと何かを犠牲にしなければならないという感じがしますね。私は優先順位を明確にしていて、最優先は家族で次に同僚。どんな時も大切な人たちを守るという理念を軸にしているからこそ、実際は何かを犠牲にしているという感覚はあまりないんです。

人との距離感がちょうどいいから住みやすい

高橋:秋田に来て、長男の心が前向きに変わったことが何より大きかったです。関東での生活はいじめや不審者との遭遇などで人や暮らしへの安心感を得られず、長男は学校に行きたくても行けない日々が1年以上続いていました。でも、秋田の豊かな自然と穏やかな人々に囲まれ、心が安定し子どもたちも私も前に進めるようになったんです。

知事:本当に秋田は健全な社会だと感じます。私は大阪で生まれ神戸で育ちましたが、秋田に来て、こんなに悪い人が少なく揉め事もなく、心穏やかに暮らせるものかと驚きました。都会の喧騒とは異なり、人との距離感や素朴さが心地よく、まず「人が生きるスペース」として非常に快適です。

高橋:私の専門の都市計画分野では、よりよい社会を築くために人が社会と連携する姿勢と行動を「市民性」と呼ぶのですが、秋田は非常に市民性が高いと思います。市民性は計画して作ろうと思っても作ることはできない、まさに秋田の財産です。秋田らしい豊かさとは何か、もっと掘り下げていきたいですね。

知事:特に子どもたちにとって秋田は素晴らしい環境だと思います。一方で、変革も必要。教育面では、これまでの「お利口さん」を育てる教育から、自主性や自分の考えをしっかりと表現できる力を育む教育へとアップデートしていきたいと考えています。

より豊かに持続していく可能性があふれる秋田

知事:私が掲げる「寛容・挑戦・安心」の3つの理念には、いろいろな人たちがそれぞれ自分の夢や目的を叶えていけるような、選択肢の多い社会を作っていきたいという思いがあります。秋田は経済状況や人口減少問題などネガティブな話題も多いですが、強みもちゃんとある。特に、再生可能エネルギーや食料生産といった物質的な利点を生かしながら、持続可能性と人々の多様性を重視する社会を築いていきたいです。その素地は秋田に十分にあると確信しています。

高橋:現在、県が策定を進めている「次期総合計画(県が新たに策定する2026年度から2029年度を計画年度とする【秋田県総合計画】)」では、人口減少対策の位置づけやマーケティング手法の捉え方も的確で、非常に素晴らしいと感じました。ただ私としては、その理念の順序が「安心・寛容・挑戦」ではと感じています。長男の経験がまさにそうでした。関東での暮らしで心のバランスを崩した時、一番必要だったのは「安心」できる環境でした。そして、次に必要だったのは、先生が「学校は来れる時でいいんだよ」と受け入れてくれた「寛容さ」。その結果、本人は落ち着いて自分を見つめることができ、今では自分と同じような辛さを経験している子どもを助ける医師になりたいという夢があります。町で白衣を着ずに、楽しそうに活動されている総合診療医の方との出会いが、彼の挑戦へとつながったんです。

知事:なるほど、たしかに人によってピンとくる順番は違うかもしれません。特に近年はクマの被害や水害の問題もあり、「安心」を最優先する声が多いのは事実ですね。

高橋:そして、水害やクマの問題は短期的な解決策と長期的な視点の両方が必要ですよね。

知事:おっしゃるとおりで、クマに関しては、まず喫緊の課題として住民の安全・安心を確保し、その上で中長期的にはクマとの共生を実現していかなければなりません。

高橋:住民が心豊かに安全に暮らせるまちづくりは、自分の使命だと感じています。秋田の人々が持つ優しさやほどよい距離感はこの土地の良さであり、次世代へとつないでいきたいですね。

「安心」を取り戻し、新たな「挑戦」を

知事:2026年は午年(うまどし)。旧弊を打破し、思い込みを突破するのに最適ですね。県民の皆さまの期待にしっかりと応えていくこと、特にクマの問題については、二度とクマが市街地で人を襲うなどということが起きないよう、県として全力で対策を講じていくつもりです。

高橋:秋田に帰ってきて3年になりますが、毎年新しい秋田を発見し、私自身も多くの挑戦をさせてもらっています。地域の方々が子どもたちを預かってくれたり、雪かきや草刈りを手伝ってくれたりと、多くの方に支えられて今の私の暮らしがあります。そうした人とのつながりを大切に育みながら、今年も熱く新たな挑戦をしていきたいです。

知事:県としても皆さまの安心を取り戻し、その上で、交流人口や定住人口の増加といった政策課題に関して変化の一端をお見せできると思いますので、ぜひ期待していてください。

総合計画の内容や策定過程を発信していきます!

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