1月4日木曜日 県正庁
 
 職員の皆さん、あけましておめでとうございます。
 年末にまとまった雪が降ったものの、今年の冬は暖冬という長期予報どおり気温も高く、大変に穏やかなお正月で、今のところ心配した雪による事故も少なく、また、家の前の雪寄せも不要で、元旦(元日:以下同様)の朝に目を覚ました時にのんびりとした気持ちの方が多かったのではと思っております。
 特に、毎年、除排雪や農林業の雪害に気を使う建設部と農林水産部の皆様には、その思いが強かったのではと察します。私もしばらく玄関前の雪寄せはやらずに少し楽ができるなと思いながら、恒例になっている元旦の朝の我が家の氏神様への家族共々の少し長めの礼拝を行いましたが、一方で暖冬も極端で、例年並みの雪が降らないとスキー場は困るだろうし、農業用水も心配になると、複雑な気持ちで、昼近くに朝昼兼用のおせち料理を口にしたところです。
 その後、年賀状に目を通しながらテレビを何となく見ておりましたら、午後4時過ぎに長周期の緩い揺れに気付き、元旦早々の地震だな、どこだろうと思い、そのままテレビを見続けていたら能登半島が震源とのテロップが入り、「津波に注意、早く高いところに逃げて」と言う女性アナウンサーの叫び声に、かなりの大地震だなと緊張感が走ったところです。すぐに日本海沿岸に津波警報や注意報が発令という画面になり、同時に危機管理セクションから防災メールに、担当職員の登庁指示が入り、私も本県沿岸が津波注意報から警報になれば登庁しなければと準備を整えたところです。
 その後、県内では被害は確認されてないという報告を受け、まずはほっとしたところですが、テレビからは能登半島を中心に石川県と隣県も含め、被害の惨状が刻々と報じられ、どこの家でも元旦の団らんの最中であっただろうし、しかも真冬の大地震ということで、自然のなせるわざとはいえ、あまりにむごいことと思わずにはいられませんでした。
 私も日本海中部地震の惨状を経験しており、また、昨年の県内の大雨被害の際には多くの方々や自治体からの支援を受けており、今後、本県としても被害地域へのできる限りの支援が必要であります。
 さらに、2日には羽田空港での日航機と海上保安庁の飛行機の衝突事故、幸い日航機の乗客・乗員は全員脱出に成功しましたが、海上保安庁の職員5名が殉職されました。これも能登の大地震の救援のための任務中の事故で、何ともむごいことと思わざるを得ません。
 改めて今回の大地震が原因で亡くなられました方々のご冥福をお祈り申し上げるととともに、被害に遭われ、日本海からの寒風吹きすさぶ寒空に、家や家族をなくされた多くの方々にお見舞いを申し上げたいと存じます。
 一方で、このような災害は他人事ではございません。昨年夏の本県の大雨は、繰り返す可能性が大きく、水害対策を計画的に、かつスピーディーにしっかりと行い、県民の命と暮らしを守ることに重点を置く必要があります。
 また、大地震は別の地震を誘発するとも言われます。いつ何時、本県も大地震に襲われるかもしれず、地震は防ぎようがないものの、いざという時のために備えるべきことはしっかりと準備しておく必要があります。
 そのような中で、国会も今月末には通常国会が開会されますが、自民党の派閥による不祥事により相当に混乱を極めることが予想されます。ぜひとも国民の信頼に結びつくようなしっかりとした改革を行いながら、地方行政の推進に欠かせない予算の審議だけはおろそかにしないでもらいたいと願うものであります。
さて、本県においても、これから新年度予算の編成の佳境に入ります。私の手による当初予算編成は、今回の令和6年度が最後であります。財源に限りはあるものの、少しでも秋田の前進につながるものとし、次の代に引き継ぎたいと思うものであります。まずは当面の緊急を要するものを固めながら、息の長い取組が必要な普遍的な主要課題に方向性を見いだすものにしたいと願っております。
 そのような意味で、主要な視点を幾つかお話をいたします。
 まずはその前提として、様々な指標で本県はいろいろなワーストの項目も多いのでありますが、社会経済環境は国際的にも国内的にも大きな変化の中にあり、今はワーストでも努力次第で改善が可能という自信を持っていただきたいということであります。
 その一つは、旧来型のビジネスモデルはことごとく通じなくなり、変化を恐れなければそこに新たなチャンスが生ずるということです。
 さらに、本県の有する有形無形の資源・資産が、果たしてこれまで効率よく活用されてきたのかなということです。時代の潮流の中で、今まさに本県の持つ優位性を最大限に生かせる時代環境になってきているのではないかという思いをしております。
 いろいろ抽象的なことを言いましたが、少しかみくだいて列挙します。
 まず、全ての部局に共通のこととして、何を為すにもまずは人材です。秋田を支える人材への投資が必要です。特に女性、若者の県内定着・回帰に力を入れる必要があります。また、産業構造が激変する中で、リスキリングなどによる職種間の人材異動、確保も必要です。
 いま一つは、気候変動への対応です。防災力のハード・ソフト両面での強化、水害等災害対策の強化、農林水産資源の温暖化への適応力の強化、熊の対策も部分的にはその一環と言っても過言ではありません。
 次に、部局ごとに少しさわりをお話ししたいと思います。
 まず、総務部関係です。
 次の防災情報システムの構築、この件については、今回の私どもの大雨被害、この際に市町村の様々な発令のミスというか、まあ発令についてまずい面があったと。まずはこの防災システム、市町村が使いやすいように、今回の水害における市町村の経験、それを十分に検証しながら使いやすい、県民・市民に、市町村民に分かりやすいようなシステムの構築をお願いします。
 また、県の仕事をしっかりと伝えるということが県民にとって一番重要です。何を県が望んでいるか、何を今しているか、どのような施策があるか、県民に向けてこのような様々な情報をしっかり発信するということで、広報の強化も必要です。また、広報は様々な手法がありますので、現代のIT時代、情報化時代に合ったものにするような、そういう取組も重要であります。
 次に、人口減少は避けられない現実です。いずれ人口減少時代、これに伴ってどういうふうな県の行政サービス、これが必要か。可能な限り、人口減少にあっても県民・市民・市町村民にきめ細やかな行政サービス、これができるような仕組み。逆に新しい仕事もできます。また一方で、効率化という視点も重要です。さらに、今までのものが必要なくなる部分もあります。こういうものも整理統合しながら、人口減少の現状に合った最適の行政サービス、これをどういうふうにするか、重要な視点であります。
 次に、企画振興部であります。
 まずは賃金水準の向上、カーボンニュートラル、デジタル化など重要案件についての十分な検証、そして日常的な検証のもとに、その施策の方向性、これを柔軟に施策の方向性を考えていくという、この発想が必要です。一旦決めたことをどこまでもというよりも、十分に柔軟な発想で施策を推進するということが必要です。
 次に、デジタル化です。
 まさに今、様々な課題が、このデジタル化によって解決するという、そういうことに重点を置きながら、何が必要か、何が今重点か、まずは十分に地域の実情、県内の実情を中心に、単なる様々なモデルを真似することなく、自分方が一番必要なものを重点的にスピーディーに、デジタル化を進めることが必要です。
 また、グローバル社会で活躍できる人材。いかに国際化に対応するか。また、これから外国人の人材が増えてきます。この方々に対するどういうふうな役割分担、また、住みやすい共生社会をつくることが必要です。
 次に、あきた未来創造部です。
 まずは人口減少問題の一番のネックである県外に流出している大学生等の回帰、また県内定着、これが重要です。今このために様々な仕組みを検討中でありますが、ぜひとも何らかの、県内の産業構造に合った、しかも前向きな施策をぜひとも考えていただきたいと思います。
 また、「こどものえき」など、子ども中心社会、これをどういうふうにつくるか。若い世代の出会い、結婚意識の醸成、様々な若い方々への手当て、このようなものをどういうふうに構築するか。これまでもやってきましたが、十分に機能してない部分もありますので、ぜひとも十分に機能するような、また現場感覚、県民、単なる県庁の中の考えでなく、現場の様々な方々の実態、このようなものを捉えながら、十分に試行錯誤をしながら、ぜひとも若い方々に歓迎される県内、県の雰囲気、これをつくっていくことが必要です。
また、今、国際教養大学も大きな岐路に立ってます。今後とも国際教養大学が県内において様々な役割が果たせるような、そういう仕組みづくり、また十分に大学等との連携を取りながら、新たな教育環境の整備を行うような、この方向性をしっかりと見据えてもらいたいと思います。
 次に、観光文化スポーツ部です。
 まず懸案の本県の冬の誘客です。まずこれをどういうふうに、JR東日本等と組んで、どんなふうに、また宿泊事業者、様々に今、県内の観光地では冬の様々なコンテンツ、これを考えておりますので、十分に民間企業とも連携しながら、地元市町村とも十分に連絡を密にしながら、ぜひとも課題となっている冬の誘客、これについて十分に強化するようにお願いします。またインバウンドの環境は、随分、台湾のほかに欧米人、この方々が増えています。様々な文化、これが育まれます。台湾のチャーター便の、この後の通年運航、さらに定期便化という、こういうことを見据えながら、しっかりと相手方と十分に交渉しながら、まずは県内の年間、冬のみならず春夏秋冬の様々なコンテンツをどういうふうにピックアップして海外に広めるか。十分にインバウンド対策を行いながら、いかにこの秋田にこの方々のお金が落ちるような仕組み、これを十分に踏まえる必要があります。
 また、観光の関係は人材の不足、このような面も十分に配慮する必要があります。
 さらにミルハス周辺との連携、このミルハス、今のところ盛況ですが、この後も十分にミルハス自身が盛況の上に、さらに周辺の様々な商店街等に十分な波及効果を生むために、十分に周辺との連携を密にしながら、様々な取組を行ってほしいと思います。
 新県立体育館のPFI事業も十分に慎重に、かつ積極的に進めていただきたいと思います。
 健康福祉部です。
 まずは地域医療の構想が随分変わりました。この関係で県民の方々に誤解のないように十分丁寧に説明しながら、また、中核病院のみならず地元の様々な診療所、小規模病院、こういうところと連携をしっかり密にしながら、抜けのないような全県的な医療体制、また、医療関係の患者の輸送関係、交通体系、こういうものも含めて十分に検討する必要があります。
 また、本県の課題である自殺予防対策も引き続きしっかりとやっていくという。
 また、今回、医療費の高校生までの無料化、所得制限の撤廃という、そういうふうな方向で今やっておりますので、市町村と十分に連携しながら、この制度設計を行い、予算措置、これについてぜひともお願いします。
 また、医師の確保、この問題も大変な課題でありますが、まずは医療関係と十分に連携しながら、医師の偏在是正、これも地域医療のエリアの設定とも関係ありますが、十分な救急救命体制も含めて、これもしっかりと今やる必要があります。
 次に、生活環境部です。
 まずは脱炭素化に向けた県民運動の推進、まだまだロスがあります。十分にこの原点を県民の理解を得ながら、まずは様々な角度から進めていきたいと思います。
 また、プラスチックの関係では特に日本は遅れております。今後、秋田市においてもプラスチックの分別収集の可能性が今ありますので、十分なプラスチックの資源回収、こういうことについても具体的に市町村とともに連携しながら行っていただきたいと思います。
 また、熊対策、多分、指定管理鳥獣になる可能性がありますので、その際にどういうふうな対応をするか。十分、今から検討を事前に行っていただきたいと思います。
 あと、特に生活環境部、様々な県内の県民の暮らし、あるいは食品産業、飲食業、様々に今変化があります。この変化に対応しながら、まずは衛生管理、また、十分な衛生管理の上に立って、県民に安心感の持たれるそういうふうな環境をつくっていただきたいと思います。
 農林水産部です。
 今重要なのは、25年ぶりに農業基本法が抜本改正になります。新農業基本法になります。この新農業基本法の柱は、食料の安全保障、また、この農業の環境への対応、この2つが柱です。農業も環境問題、そして、この後、国際環境の変化によって日本の食料をしっかりと確保するという、そういうことから、ますます本県の農業県としての役割が重要になります。この原点に立って、本県の農林水産業、これをどういうふうにしっかり基礎を築くか。まだまだやることがいっぱいあります。当然にこまちRの問題、秋田牛のブランド化10周年、またサキホコレの問題、そして様々に複合経営をさらに伸ばしながら、若い方に歓迎される農業に変遷し、国の農業、食料の供給県としての役割をしっかり果たすようなそういう仕組みづくり、まだまだこれからやることがいっぱいあります。
 また、山の問題。まさに山をどういうふうに若返るのか。これは木材産業、林業の振興とともに本県のカーボンニュートラル、あるいは環境の問題、この問題も十分に包含しているものが森林産業です。ぜひとも業界と連携を取りながらしっかりとやってください。
 また、水産業も温暖化によって様々に魚種が変わってます。また、当然、養殖、あるいは放流、様々に、これまでの漁業と少し違った、そういうふうなつくり育てる漁業がこれからますます重要になります。ぜひとも本県での水産資源、魚種は多いですが、まず柱をどうするか、どういうふうな変化に対応するか、十分に考えていただきたいと思います。
 次に、産業労働部です。
 いずれどのような状況になっても少子化の問題、人口減少問題、賃金の問題、全て産業経済です。まずは地元産業の振興とそのDX化、加えて賃金水準の向上、若者・若年女性の就労の場として魅力のある企業誘致の推進、また、様々にこれから変化する産業構造にどのように対応するか。まずは、必ずこの後衰退する業種があります。逆に拡大する業種があります。当然、この間の労働力の異動、当然リスキリング、様々な職業訓練、こういうものを重点的に行いながら、人材のミスマッチを解消しながら、なるべくこの人手不足感を払拭しながら、バランスのよい産業構造をつくっていく必要があります。当然に洋上風力発電、この関係も、様々な見地から本県の振興、まちづくり、全てに生かすことが必要です。
 次に、建設部です。
 まずは抜本的な水害対策、これをスピーディーにプランニングをしっかり立てて、財源の問題もありますが、最優先として進めていきたいと思います。
 また、人口減少の観点から、人口減少時代においてどのようにして基礎インフラを維持するか。また、重点的にどのような優先順位をつけるか、こういうことも必要です。
 あとは、特に建設業の担い手。これも十分に県内の建設業の状態を、県民、特に保護者の方々に理解を求めながら、十分な担い手の確保、業界と一緒になってこれを進めてください。
 あと、港湾の整備、これはクルーズ船の誘致、また、洋上風力の更なる発展に関係がありますので、この港湾整備においても十分に配慮することが必要です。
 次に、教育庁においては、まずはデジタル教育の推進、また、特に英語力、この関係を十分に。これから英語力、そしてデジタル化のスキル、この2つが相当、これからの人材に求められる重要な観点ですので、十分にこれを配慮してください。
 また、教育において、障がいのある生徒への十分な支援も必要です。障がいのある生徒・学生においても教育環境が享受できるような、そういうふうな十分な配慮が必要です。
 また、特に心身ともに健康な子どもをいかに育てるか。これは確かに本県の場合、体力はありますが、まさにプラス精神力、また、これは十分にインクルーシブ教育とともに、このような観点もお願いいたします。
 出納局においては、公共施設の管理プランニング、これをどういうふうにしていくか。また、キャッシュレスの時代における出納局の在り方、こういう点についても、現在の環境に合った、そのような状況に県民の理解を得ながら順次進めていく必要がありますので、まずはよろしくお願いします。
 最後に特に管理監督を担う幹部の皆さんにお願いがあります。まず職場環境、この融和です。パワハラはもちろんのこと、一部の職員に仕事が偏るような時の仕事の平準化、精神的な分野を含む職員の健康状態の目配り、特に留意していただくことを望みます。
 いずれ長いコロナ禍から解放され、今年こそは日常を取り戻したいとは願いつつも、正月早々の災害、事故、さらには国際情勢の緊迫化など、国内外、何が勃発するか分からない時代です。何が起きても沈着冷静に為すべきことをしっかりと為すという気概で、今年一年、私を含め全ての職員の皆さんが県民のためにしっかりと仕事を進めることを願い、念頭の挨拶といたします。
 まずはよろしくお願い申し上げます。終わります。