力丸宗弘1,3・高橋大希・小松恵・佐藤正寛・鈴木啓一
秋田畜試、畜草研、東北大院農)

目的

比内鶏は秋田県の地鶏であり、肉用鶏である「比内地鶏の雄種鶏として利用されている。秋田県畜産試験場(秋田畜試)では、これまで成長形質を重点に比内鶏の育種改良を行ってきたが、近年の成長形質における遺伝的パラメーターは明らかになっていない。本研究では、比内鶏におけるこれまでの選抜反応を調べるとともに、さらなる発育形質の向上を探るため、選抜形質である14週齢体重における遺伝率を推定することを目的とした。

方法

秋田畜試で系統造成している20家系からなる比内鶏を試験に供した。解析には、2006年から2010年にふ化した雄728羽、雌1,676羽の14週齢体重の記録を用いた。個体間の血縁情報には、2006年よりふ化した世代より2世代さかのぼった雄40羽、雌241羽を加えた。選抜形質は14週齢体重とし、家系内個体選抜とした。分散成分の推定には制限付き最尤法によるMTDREMLプログラムを用いた。母数効果は年次、性とし、アニマルモデルREML法により遺伝率を推定した。

結果

4世代にわたる家系内選抜の結果、比内鶏の14週齢体重は世代の経過に伴って増加し、その選抜反応は雄が262g、雌が179gであった。最終世代における14週齢体重は雄が2,521g、雌が1,930gとなり、14週齢体重の世代に対する直線回帰係数はそれぞれ51.8g/年、35.8g/年となった。集団全体の育種価の世代に対する直線回帰係数は35.1g/年となり、有意に増加した(P < 0.01)。REML法による14週齢体重における遺伝率は0.45と推定された。また、体重選抜による他形質(産卵率、卵重、ふ化率)に対する影響は認められなかった。以上の結果から、比内鶏の14週齢体重における遺伝率は比較的高い値を示したため、今後も選抜による改良が可能であることが推察された。