所属

高橋秀彰1)、力丸宗弘2,4)高橋大希2)小松恵2)、上本吉伸3)、鈴木啓一4)(1畜草研、2秋田農技セ畜試、3家畜改良セ、4東北大院農)

目的

我々は、発育形質に差がある比内鶏2系統を交配し作出したF2家系の量的形質遺伝子座(QTL)解析を行い、第1番および第4番染色体に体重と平均日増体重の有意なQTLを見出した(Rikimaruら, AJAS, 2011)。これまでに第4番染色体の候補遺伝子として、コレシストキニンA受容体遺伝子(CCKAR)を同定し、同ハプロタイプと発育形質との関連性について報告した(Rikimaruら, MBR, 2011)。今回は、第1番染色体に見出された候補遺伝子と発育形質との関連性について報告する。

方法

ADL0198 (chr 1: 171.7 Mb)-ABR0287 (chr 1: 173.4 Mb)間のQTLピーク位置と、ニワトリゲノムのドラフトシーケンスを対比し、比内鶏の発育形質に関する候補遺伝子として、モチリン受容体遺伝子(以下、MLNR)を同定した。F2家系のP世代全個体を対象として、MLNRの全2つのエクソンを含む領域の塩基配列をPCRダイレクトシーケンス法によって決定し、MLNRのハプロタイプを同定した。ミスマッチ増幅変異アッセイ(mismatch amplification mutation assay)法によって、F2個体のMLNRのディプロタイプを識別した。F2個体の発育形質(0、4、10、14週齢体重および各週齢間の平均日増体重)とディプロタイプのデータから、MLNRの各ハプロタイプが持つ発育形質に対する効果を、Qxpakソフトウェア(Aryaら, 2004)を用いて推定した。

結果

F2の雌集団において、10週齢および14週齢体重、4-10週、10-14週の平均日増体重において、3つのハプロタイプの効果に有意差が認められた。一方、F2の雄集団においては、いずれの形質でも有意差が認められなかった。以上の結果から、MLNRのハプロタイプの効果には明らかに性差があり、MLNRのハプロタイプは、比内鶏雌の発育形質改良のための選抜指標として利用可能であることが示唆された。