所属

力丸宗弘1)高橋大希1)小松恵1)伊藤なつき2)小野愛美2)松原和衛2)、中村隼明3)(1秋田農技セ畜試、2岩手大農、3基生研)

目的

 始原生殖細胞(PGCs)を利用した生殖系列キメラニワトリの作出法は、ニワトリ遺伝資源の保存・復元のための有効な手法である。生殖系列キメラニワトリの判別は、検定交雑によるドナーと宿主の羽色の違いを利用した方法が主流であるが、キメラの判別に長期間を要するうえ、労力を費やす。そのため、より簡便でかつ精度の高い分子学的手法を利用したキメラニワトリの判別法の開発が求められている。そこで、本研究では、以前に開発した比内鶏のDNA識別マーカー(Rikimaru and Takahashi, 2007)を用いて、生殖系列キメラニワトリの判別に応用可能かどうか検証することを目的とした。

方法

 比内鶏の初期胚生殖巣より採取した生殖隆起由来PGC(gPGCs)を白色レグホーン胚の血流中へ移植した。生成熟後、雄の操作個体より精液を採取し、比内鶏と白色レグホーンを識別可能なマイクロサテライトDNAマーカー(ABR0633)を用いてDNAを解析した。同時に雄の操作個体より採取した精液を雌の比内鶏へ人工授精し、後代検定を実施した。

結果

 DNA解析の結果、雄の操作個体(2/2)の精液中からドナーに用いた比内鶏の対立遺伝子が検出された。後代検定の結果、上記の操作個体2羽からそれぞれドナーPGCsに由来する後代が得られた。また、羽色から比内鶏であると判断された後代より血液を採取し、DNAを解析した結果、比内鶏由来の対立遺伝子のみが検出されたことから、形態学的ならびに分子学的に比内鶏であることが確認された。以上の結果から、比内鶏DNA識別マーカーは生殖系列キメラニワトリの判別に有効であることが示された。本手法を以後の実験に用いることより、後代検定に要する時間や労力を削減することができると期待される。