2010年9月日本家禽学会秋季大会「比内鶏の始原生殖細胞を移植した生殖系キメラのDNAによるキメラ判定法の検討」
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目的
近年、ニワトリにおいて始原生殖細胞(PGCs)を利用した種の復元研究が行われている。しかし、生殖系キメラの確認は未だ後代検定が主流であり、その間の操作鶏(仮キメラ)の飼養費や手間がかかる。早期に非キメラ個体を淘汰できれば、飼養費削減はもちろん絶滅危惧の野生鳥類を迅速に復元する必要がある場合にも時間の削減ができる。本研究では、仮キメラ個体から生殖巣を部分採取し、そのDNAでキメラ判定を行い、生殖系キメラ作出の効率化を行うことを目的とした。
方法
比内鶏(H)をドナー、白色レグホン(WL)をレシピエントとする生殖系キメラを作出した。実験1:ドナーPGCsが正常に生殖器に定着することを確かめるため、PKH-26で標識したPGCsをWLに移植し、day7に蛍光顕微鏡で観察を行った。実験2:DNAによる解析の可能性を検討するため、孵化した仮キメラをと殺し生殖器を摘出した。採取した組織からDNAを抽出し、種判別を行ってH由来DNAの検出を実施した。実験3:仮キメラは5-6週間飼育し、Rikimaru et al.(2009, JPS)の去勢技術を応用して生殖器を一部採取した。採取した組織のDNAによってH由来DNAの存在を調べた。
結果
実験1では、すべての操作胚で蛍光が確認され、H-PGCsがWL生殖巣に定着することが確認された。実験2では、と殺した仮キメラの2個体中2個体の左生殖器からH由来のDNAが検出された。これは、ドナーPGCsが選択的にレシピエントの左生殖巣に移住するというこれまでの研究に沿うものであり、DNAによってレシピエント生殖器内のドナー由来DNAの検出が可能であることが証明された。実験3では、5-6週齢に達した22個体の検査を実施したが、レシピエント生殖器からH由来のDNAは検出されなかった。引き続き、雄精子のDNA検出を行うとともに後代検定を実施している。