目的

比内地鶏は、鍋料理に利用されることが多く、脂肪が多いほど好まれる傾向にある。雄は肉が固い、脂肪量が少ない、精巣の発達が風味を損なう等の理由で流通業者から敬遠され、素ひなを生産するふ化場では鑑別時にほとんどが淘汰されている。一方、肉用鶏では去勢することによって、腹腔内脂肪や肉中の粗脂肪含量が増加し、肉の風味が改善されることが報告されている。そこで本研究では、比内地鶏の去勢が発育および肉質に及ぼす影響ついて調査を行ったので報告する。

方法

比内地鶏のひなを28日齢に15羽ずつ体重が等しくなるように去勢区と雄区に分け、運動場が付随したパイプハウスで210日齢まで飼育した。飼料は不断給餌とし、飲水は自由とした。去勢は56日齢に行った。体重、増体、飼料摂取量、飼料要求率は70, 98, 126, 154, 182, 210日齢に調査を行った。また、210日齢に各区5羽ずつ解体を行い、解体調査および肉質分析を行った。調査項目は肉色、一般成分、脂肪酸組成、固さとした。

結果

210日齢の体重は去勢区が雄区より約200g劣った。70日齢までの増体は雄区より有意に劣ったが、その後154日齢までは去勢区の方が優れた。しかし、154日齢以降は増体が急激に低下し、雄区より有意に劣った(P<0.05)。飼料要求率は雄区がやや優れていた。解体成績は去勢区の可食内臓と腹腔内脂肪の割合が雄区より高かった。一方、もも肉と生肉量の割合は雄区が去勢区より有意に高かった(P<0.05)。去勢区の肉色は雄区と比較してL値とb値が高く、a値が低かった。一般成分は去勢区の粗脂肪含量が雄区より高かった。去勢区の脂肪酸組成は雄区より飽和脂肪酸の割合が少なく、不飽和脂肪酸の割合が有意に高かった(P<0.05)。肉の固さは去勢区が雄区より有意に柔らかかった(P<0.05)。以上の結果から去勢によって比内地鶏の雄の肉質が改善され、雄ひなの有効活用が期待される。