このたび、長年にわたりダリア育種の最前線を走り続け、日本のダリア文化の発展に多大な貢献をしてきた秋田国際ダリア園の鷲澤幸治氏が、令和7年春の黄綬褒章を受章されました。この栄誉は、鷲澤氏がダリアに注ぎ込んできた半世紀にわたる尽きせぬ情熱と、弛まぬ努力の結晶に他なりません。

鷲澤氏とダリアの運命的な出会いは、小学校に上がる前の幼少期に遡ります。親戚のおばあさんが仏壇に供えた美しいダリアに心を奪われ、幼い鷲澤少年の心に深く刻まれました。その後、高校卒業後に就職した船舶会社で世界各地を巡る日々の中、カナダのバンクーバーで庭園いっぱいに咲き誇る巨大な赤いダリアと「再会」。その圧倒的な美しさに「こんな庭園が日本にもあったら」という夢を抱き、ダリアへの想いは確固たるものとなっていきました。
   
 
 
船舶関係に勤務しながらも、鷲澤氏は昭和50年代前半からダリア愛好家として育種の世界に没頭します。当時のダリアは主に花壇で観賞され、日持ちの短さから切り花としての流通は困難でした。しかし鷲澤氏は、ただ美しいだけでなく、切り花としても長く楽しめる、経済性も兼ね備えた品種の必要性を痛感。卓越した観察力と鋭い感性を研ぎ澄まし、「見栄えのする美しさ」と「切り花としての実用性」という二つの要素を追求し、試行錯誤の末、ダリアの新たな可能性を切り開いていきました。
 
   
 
そして、その情熱の結晶として昭和62年に開園したのが「秋田国際ダリア園」です。今では県内外から年間3万人を超える来園者が訪れる、秋田を代表する人気観光スポットへと成長しました。平成17年には、秋田国際ダリア園の管理運営と球根販売を担う「秋田ダリア栽培組合」を設立。広大な6ヘクタールの育種圃場で、採種から栽培管理、球根の選別、出荷までを一貫して行い、日本のダリア界を牽引し続けています。
 
鷲澤氏が生み出すダリアは、その革新性と芸術性で国内外から高く評価されています。特に、秋田県と共同開発したオリジナル品種「NAMAHAGEダリア」は、優れた新品種を選出する「ジャパンフラワーセレクション」において最高賞の「フラワー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。その圧倒的な美しさと品種としての完成度は、世界中のダリア愛好家を魅了し続けています。

 

NAMAHAGE®マジック NAMAHAGE®チーク
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去る7月11日には、秋田市雄和観光交流館Villaフローラで褒章伝達式が厳かに執り行われました。多くの生産者や関係者が温かく見守る中、園芸振興課の石澤課長より鷲澤氏へ直接褒章が手渡されると、会場は長年の功績を称える万雷の拍手と、温かい感動に包まれました。それは、鷲澤氏がダリアに捧げてきた全てが、多くの人々に認められた感動的な瞬間でした。
 
 
 
鷲澤幸治氏のダリアへの尽きることのない探求心と、弛まぬ努力が実を結んだ今回の黄綬褒章受章は、秋田のダリア生産振興と文化の発展にとって、まさに不可欠な栄誉です。これからも鷲澤氏が、その飽くなき情熱でどのような新たなダリアの魅力を私たちに届けてくれるのか、ますます期待が高まります。