このたび、秋田県議会令和7年9月定例会において「秋田県拉致問題等の早期解決に向けた施策の推進に関する条例」が制定され、令和7年10月10日から施行されました。

 この条例は、拉致問題等(*1)に関し、基本理念を定め、県の責務と市町村、県民、学校、その他教育機関及び警察の役割を明確にするとともに、拉致問題等に関する県民の関心と理解を深め、その解決に向けた機運を醸成し、もって拉致問題等の早期解決に資することを目的としています。

(*1)北朝鮮による拉致被害者等の問題及び北朝鮮による拉致の可能性を排除できない事案に係る問題をいいます。 

秋田県拉致問題等の早期解決に向けた施策の推進に関する条例(全文)

前文

 北朝鮮当局による拉致問題は、長期かつ累次にわたって行われた我が国の主権に対する深刻な侵害であるばかりでなく、全ての国民の生命と安全に関わる重大な人権侵害問題である。問題の顕在化以後、北朝鮮当局によって拉致された日本国民として認定された人以外にも、北朝鮮によって拉致された可能性を排除できない行方不明者が存在したまま、解決の目途が立たず、すでに長い時間が経過している。

 この問題の解決は、第一に拉致被害者等の安全確保及び早期帰国を実現し、彼らが一日も早くその家族や友人、その帰りを待つ全ての人との再会を果たすことである。この解決を先延ばしにすることは、人道上、決して許されない。

 ここに私たちは、県、市町村、学校その他教育機関及び警察の責務を明示し、県を挙げてこの問題に向き合い、早期解決に向けた取組を総合的かつ計画的に推進することを決意し、この条例を制定する。

第1条(目的)

 この条例は、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律(平成18年法律第96号)第2条第1項に規定する拉致問題及び北朝鮮当局によって日本国民が拉致されたことが疑われる問題(以下「拉致問題等」という。)の早期解決に向けた取組に関する基本理念を定め、並びに県の責務並びに市町村、県民、学校その他教育機関(以下「学校等」という。)及び警察の役割を明らかにするとともに、拉致問題等に関する県民の関心と理解を深め、その解決に向けた気運を醸成し、もって拉致問題等の早期解決に資することを目的とする。

第2条(基本理念)

 拉致問題等に関する取組は、県民、県、市町村、学校等及び警察が一体となって、その早期解決の決意の下に取り組むことを基本理念として行わなければならない。

第3条(県の責務)

 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、拉致問題等に関する理解の増進及びその解決に向けた気運の醸成を図るために、国と連携し、拉致問題等の早期解決に関する施策を策定し、及び実施するものとする。

2 県は、市町村が拉致問題等の早期解決に向けた施策を策定し、及び実施しようとするときは、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

3 知事は、拉致問題等に関する関心と理解を深め、その解決に向けた気運が醸成されるよう、職員に対し、拉致問題等に関する研修の実施その他の必要な措置を講ずるものとする。

4 県は、この条例の目的を達成するための取組が総合的かつ効果的に推進されるよう、県、市町村、学校等及び警察が意見を交換し、並びに相互に連携し、及び協力することができる体制の整備その他の必要な措置を講ずるものとする。

第4条(市町村の役割)

 市町村は、基本理念にのっとり、県と連携を図りつつ、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題に関する国民世論の啓発を図るよう努めるものとする。

第5条(県民の役割)

 県民は、基本理念にのっとり、拉致問題等に関する関心と理解を深めるよう努めるものとする。

2 県民は、北朝鮮当局によって拉致された被害者等の支援に関する法律(平成14年法律第143号)第2条第1項第1号に掲げる被害者及び北朝鮮当局によって拉致されたことが疑われる者に関する情報を得たときは、速やかに、警察本部又は警察署に当該情報を提供するよう努めるものとする。

第6条(学校等の役割)

 学校等の設置者は、基本理念にのっとり、授業その他の教育活動において、拉致問題等に関する関心と理解を深めるため、必要な取組を行うよう努めるものとする。

2 学校等の設置者は、教職員に対し、拉致問題等に関する研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第7条(警察の役割)

 警察本部長は、拉致問題等に関する関心と理解を深め、その解決に向けた気運が醸成されるよう、警察職員に対し、拉致問題等に関する研修の実施その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

第8条(財政上の措置) 

 県は、拉致問題等の早期解決に向けた施策を実現するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第9条(北朝鮮人権侵害問題啓発週間)

 県は、拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律第4条第2項に規定する北朝鮮人権侵害問題啓発週間において、その趣旨にふさわしい事業を実施するものとする。

第10条(公表)

 知事は、毎年度、拉致問題等の早期解決に向けた取組状況を取りまとめ、公表するものとする。

附則

この条例は、公布の日から施行する。