特集:農家以外の人にも知ってほしい、スマート農業のこと
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(※以下、読み方が難しい語句や固有名詞の後に、読み仮名を記載している箇所があります。)
担い手の減少や高齢化に伴い、農業現場の労働力不足が深刻化するなか、ロボット、AI(人工知能)、IoT(さまざまなモノがインターネットにつながる仕組み)といった先端技術を活用する「スマート農業」に注目が集まっています。スマート農業により、省力化による生産性の向上、ベテラン農業者がもつノウハウの可視化、緻密な栽培管理などが期待されています。農業大国の秋田県における、スマート農業の普及に向けた取り組みを紹介します。
スマート農業であんなこと、こんなことができるようになるんです。
たとえばGPS(衛星利用測位システム)を活用した自動走行トラクターがあれば、一人で複数のトラクターを走らせたり、夜間に自動走行させたりすることが可能になります。またICT(情報通信技術)でベテラン農業者の技術がデータ化されると、新規就農者でも高度な作業ができるようになります。さらにセンサーで光や温度、水などの情報を数値化するセンシング技術を活用すれば、農作物の生育状況を正確に把握することができます。
無人ロボットトラクターと有人トラクターによる協調作業の実際の様子はこちら(動画タイトル:ロボットトラクター2台持ち (アグリイノベーション教育研究センター))
インターネットを介してどこからでも遠隔で操作できる草刈り機の実際の様子はこちら(動画タイトル:在宅草刈システム)
県立大学ではスマート農業を伝え広げる人材を育成しています
県立大学が社会人向け教育プログラム「スマート農業指導士育成プログラム」を令和4年度より提供開始。プログラム修了生をスマート農業指導士(県立大学独自の認定資格)として認定し、これまでに49名の指導士を輩出しています。
Q1 スマート農業指導士とは?
専門の知識や技能を有し、スマート農業を実践しようとする農業者を支援する人材。スマート農業技術をツールとした生産改善、経営改善を提案できるコンサル的なスキルも備えているのが特徴です。農業従事者、農協や県・市町村の職員、農業関連会社の社員、農業科の高校教員など多彩な顔ぶれがスマート農業指導士として輩出されています。
Q2 資格取得までに必要な期間は?
資格取得までに必要な期間は約1年(オリエンテーション期間を含む)。受講者はオンラインならびに秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センターでの授業や演習を受け、最終課題としてスマート農業普及活動計画を作成します。募集対象は農業従事者、農業関連事業従事者、農業関連団体職員または地方公務員で、毎年3月に県立大学ウェブサイトにて募集要項を公表しています(履修資格・要件あり)。
農家の経営改善に期待!
スマート農業指導士が県内各地に輩出されることで、農業生産現場におけるサポート体制が充実し、スマート農業技術が導入しやすくなります。スマート化によって農作業の効率化・省力化や、農産物の品質・収量の向上が進み、農業経営の改善が図られることが期待されています。生産現場に技術をつなぐ活動を通して、日本の食料供給を担う秋田県農業の成長産業化に貢献していきます。
スマート農業指導士育成プログラムに関する問い合わせ先
秋田県立大学 研究・地域貢献本部 地域連携・研究推進チーム
TEL 018-872-1557
FAX 018-872-1673
E-mail aic_koufukin@akita-pu.ac.jp
スマート農業指導士育成プログラムについては秋田県立大学のページをご覧ください。
県立大学が誇るスマート農業の教育研究拠点
AIC(Agri-Innovation Education and Research Center, Akita Prefectural University) 秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センター
AICとは?
秋田県立大学アグリイノベーション教育研究センター(以下AIC)は、スマート農業の教育研究拠点として令和3年4月に誕生しました。AICは県立大学生物資源科学部の組織を改編し、全学的な組織として新たにスタート。AIやビッグデータを活用して農作物を管理するシステムや、農作物の収穫を効率的に行えるロボットの開発等を進めるとともに、新しい農業の技術を指導できるスマート農業指導士などの人材育成にも取り組んでいます。秋田県の農業が労働力不足、後継者不足といった深刻な課題を抱える中で、AICは県立大学がこれまで蓄積してきた知見も惜しみなく投入。スマート農業にまつわる技術の高精度化と普及活動を通じ、秋田県の持続的発展に貢献することをめざしています。
AICではこんな研究をしています
CASE1 大玉トマト自動収穫ロボットの開発
大手自動車部品メーカーの株式会社デンソーと、県農業試験場との共同研究。ハウスの中を自走して大玉トマトを収穫し、コンテナまで運ぶロボットの開発と、ロボットによる自動収穫に適した環境や栽培方法の研究を行っています。
全労働時間に占める各作業の割合
作業 | 割合 |
---|---|
収穫・出荷 | 53パーセント |
栽培管理 | 31パーセント |
育苗・定植 | 16パーセント |
出典:秋田県の作目別技術・経営指標
収穫・出荷作業は全体の53パーセント。自動収穫ロボットの開発は、高齢化や担い手不足に悩む生産現場における負担軽減につながります。
大玉トマト収穫ロボットの実際の様子はこちら(動画タイトル:大玉トマト収穫ロボット(アグリイノベーション教育研究センター))
CASE2 ICTを活用したトマトの周年化栽培の研究
県産トマトの出荷時期は6月から11月まで。これを4月から12月までに延ばす研究が進んでいます。県沿岸部のAIC(大潟村)や県農業試験場(秋田市)、内陸部(大仙市)にある研究用ハウスにおいて、徹底した温度管理による、安定的なトマト栽培に取り組んでいます。
大仙市では、栽培技術の向上につながるよう、トマト生産者を対象とした研修会を開催するなど、研究内容の周知活動を進めています。
REPORT 能代科学技術高校がAICを体験しました!
令和6年10月、能代科学技術高校の生徒22名が、AICの体験学習会を通じてスマート農業に対する理解を深めました。この体験学習会はAICの存在意義を伝えるとともに、若者に将来の選択肢を増やしてもらう目的で行っているもの。当日は農業人口減少の実態、スマート農業がひらく未来に関する講義のあと、屋外で専用機器を使い、位置情報を正確に収集する体験授業を行いました。データ収集を体験したあとには、なぜスマート農業で高精度な位置情報が重要になるのかを皆で考え、グループごとに発表も行いました。この日をきっかけに、一人でも多くの生徒がスマート農業に興味を持ち、近い将来、秋田の新しい農業を切り開く力になってくれることを願うばかりです。
能代科学技術高校2年 鈴木 慶人さん
これから秋田がめざすべきスマート農業の姿を知ることができました
能代科学技術高校2年 長岡 心音さん
日本の食卓を守るため、私たちも農業の未来を考えていかなければと思いました
体験のお問い合わせ
AICの見学希望や体験学習の依頼を受け付けています。
AICのウェブサイトの「お問い合わせ」から事前にご相談ください。
AGRI FES IN OGATA
キャンパスが大勢の人出でにぎわうAIC夏の一大イベント、秋田県立大学アグリフェスin大潟。令和6年7月の開催ではAIC産の野菜、花卉(かき)、牛肉や、ババヘラアイスの株式会社児玉冷菓とのコラボ商品「アネヘラ」などを販売したほか、AICならではの催しを多数開催。子牛とのふれあい、ドローン操作、遠隔操作での草刈りなどを幅広い層の人々に体験してもらいました。またスマート農業の普及に向けて、農業の省力化に貢献する農業機械の体験会や、農作業を軽労化するアシストウエア、 果菜類収穫ロボットに関する講演も行いました。
AIC(秋田県立大学アグリイノベーション 教育研究センター)ウェブサイトはこちらをご覧ください。
お問い合わせ先
県高等教育支援室 018-860-1223