特集:知っておきたい、認知症のこと
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(※以下、読み方が難しい語句や固有名詞の後に、読み仮名を記載している箇所があります。)
「認知症になると何も分からなくなってしまうのでは?」というイメージをお持ちではありませんか?今、認知症になっても、仕事をしたり、趣味の活動を続けたりと、自分らしく社会に参加する人が増えています。高齢化社会において、認知症はだれもがなり得る時代。自分が、家族が、友人が認知症になっても、尊厳を保持し、希望を持って地域で暮らすことができる社会の実現に向けて、まずは認知症を正しく理解するところからはじめましょう。
認知症とは?
認知症とは記憶力や判断力が低下し、日常生活に支障をきたしている状態。年齢を重ねると、すぐに思い出せなかったり、新しいことを覚えるのが難しくなったりしますが、認知症はこのような加齢による「もの忘れ」とは異なります。高齢になるにつれ発症しやすくなり、国内の認知症有病者は令和4年の時点で高齢者の8人に1人。軽度認知障害(MCI)と合わせると3人から4人に1人。認知症に早く気付くことのメリットは大きく、早く診断を受け、症状が軽いうちに認知症への理解を深めたり、今後を話し合ったすることで、希望にかなった生活への備えができます。また40代から50代で発症するケースもあるので、少しでも不安に思うことがあれば早めに適切な診察を受けることが大切です。
認知症有病者 | 約443万人(全体の12パーセント) |
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MCIの高齢者 | 約558万人(全体の15パーセント) |
健常者 | 約2,602万人 |
出典:「認知症及び軽度認知障害の有病率調査並びに将来推計に関する研究」(令和5年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業 二宮利治)
認知症の治療
認知症の発症には、さまざまな原因があります。治療によってその原因を取り除けるケースでは、症状の改善が可能です。そうでない場合、完治の方法はまだ確立されていませんが、治療を受けることで症状の進行が緩やかになり、日常生活の支障が少なくなる可能性はあります。治療により本人は穏やかな生活を送ることができ、介護する側の負担も軽減されるのです。
また、令和5年12月からアルツハイマー病の原因物質に直接働きかける新薬「レカネマブ」が県内医療機関においても使用が始まっています。症状の進行を3割程度遅らせることが期待されていますが、対象となるのは軽度の認知症と軽度認知障害(MCI)の人に限られるため、早期診断・早期治療がカギとなります。
アルツハイマー型認知症 | 67.6パーセント |
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血管性認知症 | 19.5パーセント |
レビー小体型認知症 | 4.3パーセント |
前頭側頭型認知症 | 1.0パーセント |
アルコール性 | 0.4パーセント |
混合性 | 3.3パーセント |
その他 | 3.9パーセント |
出典:「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応 平成23年度~24年度総合研究報告書」(厚生労働科学研究費補助金 認知症対策総合研究事業 朝田隆)
軽度認知障害(MCI)を知って早期治療を!
軽度認知障害(MCI)をご存じですか?MCIとは、記憶力などの認知機能の低下があるものの、日常生活は問題なく送ることができている状態のことです。この段階で見つかった場合は回復も見込めることから、早期発見・早期治療がカギになります。
軽度認知障害(MCI)の代表的な症状
- 周りの人と比べて、物忘れが気になる
- 今日の日付や曜日がわからない
- 昨日の晩ごはんのおかずを思い出せない
気になったら、かかりつけ医もしくは認知症疾患医療センターを受診し、早期発見・早期治療につなげましょう
早期発見 チェックリスト20
年齢を重ねると"もの忘れ"が多くなるのは当たり前です。しかし認知症では記憶の欠落がそれよりも大きいため、日々の生活に支障が出てきます。「大丈夫かな?」の確認に、自分で、家族で、チェックしてみましょう。
家族がつくった「認知症」早期発見のめやす
日常の暮らしの中で、認知症の始まりではないかと思われる言動を、「家族の会」の会員の経験からまとめたものです。医学的な診断基準ではありませんが、暮らしの中での目安として参考にしてください。いくつか思い当たることがあれば、かかりつけ医などに相談してみるのがよいでしょう。
ポイント1 もの忘れがひどい
- 今切ったばかりなのに、電話の相手の名前を忘れる
- 同じことを何度も言う・問う・する
-
しまい忘れ置き忘れが増え、いつも探し物をしている
- 財布・通帳・衣類などを盗まれたと人を疑う
ポイント2 判断・理解力が衰える
- 料理・片付け・計算・運転などのミスが多くなった
- 新しいことが覚えられない
- 話のつじつまが合わない
-
テレビ番組の内容が理解できなくなった
ポイント3 時間・場所がわからない
- 約束の日時や場所を間違えるようになった
- 慣れた道でも迷うことがある
ポイント4 人柄が変わる
- 些細なことで怒りっぽくなった
- 周りへの気づかいがなくなり頑固になった
- 自分の失敗を人のせいにする
- 「このごろ様子がおかしい」と周囲から言われた
ポイント5 不安感が強い
-
ひとりになると怖がったり寂しがったりする
- 外出時、持ち物を何度も確かめる
- 「頭が変になった」と本人が訴える
ポイント6 意欲がなくなる
- 下着を替えず、身だしなみを構わなくなった
- 趣味や好きなテレビ番組に興味を示さなくなった
- ふさぎ込んで何をするのも億劫がりいやがる
出典:公益社団法人認知症の人と家族の会
脳の健康度、測ってみませんか?
秋田大学高齢者医療先端研究センターでは、脳機能の衰えを簡便かつ早期に発見するための体制を県内に構築する取り組みを行っています。スマートフォンやタブレットで脳の健康度をチェックできるテストが期間限定で公開されています。
対象期間 2024年7月1日から2025年3月31日まで
所要時間 20分から30分
テストの流れ
- 二次元コード読み取り
- 受験者情報の入力など
- テスト前半
- アンケート
- テスト後半
- 結果表示
※このテストは認知症を診断するものではありません
もしかしてと感じたときは、迷わず受診しましょう
たとえ認知症と診断されたとしても、適切な治療を受けながら地域で生活し続けることができます。認知症疾患医療センターは、地域の認知症医療の中核として秋田県が指定しており、本人や家族からの問い合わせ、かかりつけ医や地域包括支援センターを通じた相談にも対応しています。受診の際に予約や紹介状が必要となる場合があるので、まずは電話で相談してみましょう。
認知症かもと思ったら
かかりつけ医がいる場合
- かかりつけ医に相談・受診
- 専門医に相談・受診
かかりつけ医がいない場合
- 専門医に相談・受診
秋田県認知症疾患医療センター
大館市立総合病院(住所:大館市豊町3-1)
たかのす今村クリニック(住所:北秋田市栄字中綱89-5)
能代厚生医療センター(住所:能代市落合字上前田地内)
市立秋田総合病院(住所:秋田市川元松丘町4-30)
秋田緑ヶ丘病院(住所:秋田市飯島字堀川84)
菅原病院(住所:由利本荘市石脇字田尻33)
秋田県立リハビリテーション・精神医療センター(住所:大仙市協和上淀川字五百刈田352)
横手興生(こうせい)病院(住所:横手市根岸町8-21)
菅(すが)医院(住所:湯沢市小野字東堺77-1)
周りの人や家族の心構え
1 自尊心を傷つけない
失敗や間違いを指摘せず、苦手になってきていることには、さりげなく自然な気遣いでサポートしましょう。
2 できることをやってもらう
「何もできない」わけではありません。できることを生かしながら役割を担ってもらいましょう。その際、感謝の言葉も忘れずに。
3 不安や焦りを和らげる対応を
もの忘れしたときや日時がわからないときなど、不安や焦り、孤独を感じることがあります。話を聞いて、穏やかな対応を心がけましょう。
家族にも支えを
認知症カフェや家族会などに参加し、話を聞いたり、自分の気持ちを話したりしてみましょう。各市町村の地域包括支援センターでは、介護・健康・福祉の専門職に相談できますよ。
インタビュー:認知症でもより良く生きる
「例えば今日、取材を受けたことも明日は忘れているし、忘れないようにメモを取っても、メモをどこに置いたか忘れてしまうといった感じです」と語るのは、58歳で若年性認知症と診断された神原 繁行さん。診断後は認知症であることをオープンにし、より良く生きることを大事にしてきました。「診断結果には少なからずショックを受けましたが、認知症は恥ずかしいことではないし、苦手になったことは隠さずフォローしてもらおうと思いました。ケ・セラ・セラ( なんとかなるさ)の精神で、これからの自分と楽しく付き合っていこうと思っています。いい仲間にも恵まれ、診断後も地元で暮らし続けています。とは言え、世の中では、認知症の人がその人らしく暮らし続けるには、まだまだ課題が多いのも事実。世間の考えと認知症の人の思い、そのギャップを埋め、だれもが自分らしく生きられるよう、今後も当事者として声を届けていきたいと思います」(神原さん)
令和6年1月、神原さんは東北6県で初めて「あきたオレンジ大使」を委嘱されました。地域に認知症の正しい知識を広め、認知症の人が希望を持って生活できるよう、イベントや交流の場で精力的に活動しています。
神原 繁行さん(60歳)
横手市在住。2年前に若年性アルツハイマー型認知症の診断を受ける。医療機関で勤務を続け認知症カフェの運営に携わっているほか、認知症への理解を広げる取り組みを行っている。神原さんの仕事や活動をサポートする同僚である佐藤 昌子さんは、「神原さんは私を引っ張っていってくれる存在。認知症になる前と変わらず尊敬しています」と二人三脚で当事者の声を発信している。
あきたオレンジ大使(地域版希望大使)とは?
厚生労働省が任命する認知症本人大使「希望大使」の地域版で、認知症の人が、住み慣れた地域で自分らしく生きられる世の中の実現に向けた取り組みのひとつ。大使に選ばれた当事者は認知症に対する県民の理解を深めるため、自らの言葉で思い発信し、関連の活動に無理のない範囲で従事する。
予防のために
認知症発症のリスクを減らしたり、進行を緩やかにするための3つのカギは、食事、交流、運動です。これまで意識してこなかった人にとっては難しく感じるものもあるかもしれませんが、ストレスにならない範囲でできることから少しずつ取り入れて、健康的な生活と認知症の予防をめざしましょう。高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病予防の取り組みが認知症予防にも効果的です。
バランスのよい食事
1日3食、適切なエネルギー量で栄養バランスの良い食事を心掛けましょう。糖質、塩分、脂質を取りすぎないことが重要です。
社会参加
人と関わり社会の中で役割を持つことは、認知症の予防につながります。積極的に外に出て社会活動に参加するようにしましょう。
運動不足の改善
運動には脳の状態を良好に保つ効果があります。ウオーキングなど、気軽に毎日続けられるものから始めてみてください。
まとめ
令和6年1月1日に施行された「認知症基本法」では、認知症の人が尊厳と希望を持ち、認知症があっても住み慣れた地域で安心して生活できる社会の実現を目指しています。一人ひとりが「自分ごと」として考え、認知症予防に取り組むことや、認知症の人への温かい見守りで認知症の人や家族の地域での暮らしを応援しましょう。
認知症について詳しくは美の国あきたネット(長寿社会課の認知症関連ページ)をご覧ください。
お問い合わせ先
県長寿社会課 018-860-1361