保健衛生部 研究・論文等の紹介
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令和6年度に取り組む研究
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症等の病原体に関する解析手法及び共有化システム構築のための研究
実施期間:令和6年度~令和8年度
概要:
腸管出血性大腸菌感染症の広域発生を早期探知し、健康被害が拡大しないようmultiple-locus variable-number tandem-repeat analysis(MLVA法)やpulsed-field gel electrophoresis(PFGE法)による分子疫学解析を行っています。施設間で検査結果を共有するためには検査法の精度管理が重要であることから、同一の検体を用いた各施設の検査結果の比較や、北海道・東北・新潟ブロック内での腸管出血性大腸菌に関する解析事例の情報の共有化を行っています。
共同研究機関:国立感染症研究所ほか
補助金等:厚生労働科学研究費補助金
環境中における薬剤耐性菌及び抗微生物剤の調査法等の確立のための研究
実施期間:令和6年度~令和8年度
概要:
水環境中に存在する薬剤耐性菌及びそれらに由来する薬剤耐性遺伝子によるヒトや動物へのリスクを評価するため、全国各地の水再生センター(下水処理場)への流入水及び同処理場からの放流水を採水し、流入水中のバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)のモニタリングと、放流水中の薬剤耐性遺伝子の網羅的塩基配列解析(メタゲノム解析)及び残留抗菌薬(抗微生物剤)量の測定を行っています。
共同研究機関:大阪健康安全基盤研究所ほか
補助金等:厚生労働科学研究費補助金
薬剤耐性菌のサーベイランス強化および薬剤耐性菌の総合的な対策に資する研究
実施期間:令和6年度~令和8年度
概要:
日本におけるカルバペネム耐性腸内細菌目細菌(CRE)感染症は、諸外国とは菌種の分布や薬剤感受性が異なることから、日本国内の状況に即した対応が必要となっています。CRE感染症の治療及び感染対策の構築のため、症例の情報及び分離された菌株について解析し、発生動向や薬剤耐性化機構について調査しています。
共同研究機関:国立感染症研究所ほか
補助金等:日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費
レファレンスセンター業務(カンピロバクター・百日咳・薬剤耐性菌)
実施期間:カンピロバクター平成元年度~、百日咳平成15年度~、薬剤耐性菌平成27年度~
概要:
衛生微生物技術協議会のレファレンスセンター業務として、カンピロバクター、百日咳及び薬剤耐性菌について検査法の開発、地区内における検査の技術支援、研修等のレファレンスセンター業務を行っています。
共同研究機関:国立感染症研究所ほか
RSウイルス感染症サーベイランスシステムの整備・流行動態解明および病態形成・重症化因子の解明に関する研究
実施期間:令和5年度~令和7年度
概要:
急性呼吸器症状を呈するインフルエンザ様症例を対象に、CDC法によるRSV検出を図り基礎的な知見を得ることで、将来的に検査陽性率の算出を可能とするサーベイランスシステムの構築を目指しています。病原体定点に指定されている県内9医療機関に本研究への協力の可否を確認し、全機関から承諾を得ました。検体を用いての病原体検索は令和6年度から開始します。
共同研究機関:国立感染症研究所ほか
補助金等:日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費
ライフコース予防接種時代のワクチンの有効性と安全性評価に関する研究(国内ムンプスウイルスサーベイランスに関する研究)
実施期間:令和6年度
概要:
将来のおたふく風邪ワクチンの定期接種化を見越して、国内でのムンプスウイルスサーベイランス体制を構築することを目的とした研究です。県内の定点医療機関で検出されたムンプスウイルスはワクチン由来であることが確認されました。また、これまでの検査データを集積した論文が国際誌に掲載されました。
共同研究機関:国立感染症研究所ほか
補助金等:日本医療研究開発機構(AMED)委託研究費
人工知能を活用したリケッチア感染症の血清学的診断法に関する研究
実施期間:令和5年度~令和7年度
概要:
本研究は、リケッチア感染症のIFA/IP法による検査におけるスライドガラス上の発色をデジタル画像に変換し、熟練した検者の判定結果を教師データに用いて機械学習を行わせることで、AIによる再現性の高い抗体価評価法を確立することを目的としています。その一環として、当センターで実施されているつつが虫病及び紅斑熱群リケッチア感染症の検査で観察された画像をファイル化して提供しています。
共同研究機関:福島県立医科大学ほか
補助金等:科学研究費補助金
秋田県におけるA群溶血性レンサ球菌M1UK株の浸淫状況の解明
実施期間:令和6年度~令和7年度
概要:
近年、A群溶血性レンサ球菌を原因とする感染症例が増加傾向にあり、2010年代より欧州で流行しているM1UK株の日本国内への流入が原因である可能性が指摘されています。A群溶血性レンサ球菌による感染症に対する検査体制の充実や発生動向の詳細を解明するため、秋田県内におけるM1UK株の浸淫状況及びその疫学的特徴を解析しています。
補助金等:大同生命厚生事業団・地域保健福祉研究助成金
食中毒原因ウイルス等の汎用性を備えた検査法と制御を目的とした失活法の開発のための研究
実施期間:令和4年度~令和6年度
概要:
食中毒対策の一環として、検査法や失活法の検証を実施しています。これまでに、当センターで開発した食品中のウイルス検査法であるパンソルビン・トラップ法の改良の一環として、市販パンソルビンのホルマリン再固定と、ランダムプライマーによる逆転写反応の汎用化を検討し、内部標準物質を用いた精度管理への見通しが立つようになりました。また、ウイルスによる環境汚染監視のための下水モニタリングも行っており、低コストで持続可能なNGS解析の仕組みを構築しています。
共同研究機関:国立医薬品食品衛生研究所ほか
補助金等:厚生労働科学研究費補助金
新興食中毒細菌エシェリキア・アルバーティーの貝類における汚染実態の解明
実施期間:令和5年度~令和6年度
概要:
新興食中毒細菌であるエシェリキア・アルバーティーの感染経路を解明するため、県内に流通する食品の内、特に貝類に着目してエシェリキア・アルバーティーの汚染実態を調査しています。また、病原遺伝子の検出や遺伝子をもとにした系統学的な解析を行い、人から検出される菌株と比較することで、食中毒との関連を調査しています。
補助金等:大同生命厚生事業団・地域保健福祉研究助成金
投稿論文・学会発表(令和6年度)
投稿論文
- Tomoichiro Oka,Tian-Cheng Li, Kenzo Yonemitsu, Yasushi Ami, Yuriko Suzaki, Michiyo Kataoka, Yen Hai Doan, Yuko Okemoto-Nakamura, Takayuki Kobayashi, Hiroyuki Saito, Tetsuo Mita,Eisuke Tokuoka,Shinichiro Shibata, Tetsuya Yoshida, Hirotaka Takagi: Propagating and banking genetically diverse human sapovirus strains using a human duodenal cell line: investigating antigenic differences between strains. J Virol, (online),2024, doi: 10.1128/jvi.00639-24.
- Jonghyun Bae, Chika Takano, Sheikh Ariful Hoque, Hiroyuki Saito, Wakako Akino, Shuichi Nishimura, Yuko Onda, Shoko Okitsu, Satoshi Hayakawa, Shihoko Komine-Aizawa, Hiroshi Ushijima: Precautionary findings on the utilization of FilmArray® to detect human astroviruses in fecal and sewage samples. J Inf Chem, 2024 (in press).
- 斎藤博之: 食品取扱者のためのノロウイルス食中毒対策と落とし穴, 食と健康, 10, 2024, 8-18.
学会発表
- 今野貴之: 新興食中毒細菌エシェリキア・アルバーティーとその制御.第54回日本食品微生物学会学術セミナー,2024年5月, 秋田.
- 斎藤博之: 食品衛生におけるウイルスとの戦い. 第54回日本食品微生物学会学術セミナー,2024年5月, 秋田.
- 今野貴之: 新興食中毒細菌Escherichia albertiiの感染経路モデル構築と高度汚染農場の特定, 第76回日本細菌学会東北支部会学術集会, 2024年8月, 秋田.
- 斎藤博之,秋野和華子,野田衛,上間匡: 食品中のウイルスを検出するパンソルビン・トラップ法の開発と実事例への適用, 第76回日本細菌学会東北支部会学術集会, 2024年8月, 秋田.
- 今野貴之: Escherichia albertiiの疫学解析と食品等における汚染実態に関する研究,第45回日本食品微生物学会学術総会,2024年9月,青森.
- 今野貴之,佐藤由衣子: 秋田県内に流通する貝類からのEscherichia albertiiの検出,第45回日本食品微生物学会学術総会,2024年9月,青森.
- 斎藤博之,秋野和華子,野田衛,上間匡: 食品中のウイルスを検出するパンソルビン・トラップ法プロトコールのアップデートに関する検討, 第45回日本食品微生物学会学術総会,2024年9月,青森.
- 上間匡,南村幸世,遠矢真理,斎藤博之: 多様な食品からのウイルス検出のための食品処理方法の検討, 第45回日本食品微生物学会学術総会,2024年9月,青森.
- Masashi Uema, Mari Tohya, Hiroyuki Saito, Yukiyo Minamimura: Detection of norovirus from food related to food poisoning incidents in Japan. Sep 2024, Tokyo.
投稿論文・学会発表(令和5年度)
投稿論文
- 須田朋洋,今野貴之,福田有希,佐藤唱:秋田県のと畜場搬入豚におけるEscherichia albertiiの保菌状況及び飼育農場環境の汚染状況.日獣会誌, 76, 2023, e157-e163.
- Arai S, Hirose S, Yanagimoto K, Kojima Y, Yamaya S, Yamanaka T, Matsunaga N, Kobayashi A, Takahashi N, Konno T, Tokoi Y, Sakakida N, Konishi N, Hara-Kudo Y.: An interlaboratory study on the detection method for Escherichia albertii in food using real time PCR assay and selective agars, Int J Food Microbiol, 414, 2024, 110616.
- Sheikh Ariful Hoque, Hiroyuki Saito, Wakako Akino,Wakako Akino, Tomohiro Kotaki, Shoko Okitsu, Yuko Onda, Takeshi Kobayashi, Tania Hossian, Pattara, Kazushi Motomura, Niwat Maneekarn, Satoshi Hayakawa, Hiroshi Ushijima: The Emergence and Widespread Circulation of Enteric Viruses Throughout the COVID‑19 Pandemic: A Wastewater‑Based Evidence. Food Environ Virol, 15, 2023, 342-354, doi: 10.1007/s12560-023-09566-z.
- Chiaki Ikenoue, Mari Matsui, Yuba Inamine, Daisuke Yoneoka, Motoyuki Sugai, Satowa Suzuki and the Antimicrobial-Resistant Bacteria Research Group of Public Health Institutes (中略 Shiho Takahashi): The importance of meropenem resistance,rather than imipenem resistance, in defning carbapenem-resistant Enterobacterales for public health surveillance: an analysis of national population-based surveillance. BMC Infectious Diseases, 24, 2024, doi.org/10.1186/s12879-024-09107-4.
学会発表
- 斎藤博之, 秋野和華子, 野田衛, 上間匡: パンソルビン・トラップ法により給食食材からノロウイルスが検出された食中毒の一例. 第44回日本食品微生物学会学術総会, 2023年9月, 大阪.
- 上間匡, 南村幸世, 秋野和華子, 斎藤博之: 冷凍ベリーからのウイルス検出法の検討. 第44回日本食品微生物学会学術総会, 2023年9月, 大阪.
- 斎藤博之, 秋野和華子, 野田衛, 上間匡: Update of the PANtrap method protocol reflecting the supply situation of reagents in recent years. 第70回日本ウイルス学会学術集会, 2023年9月, 仙台.
- 牛島廣治, Ariful Sk Hoque, 斎藤博之, 秋野和華子, 小瀧将裕, 恩田優子, Kim Ngan Thi Pham, 沖津祥子, Kattareeya Kumthip, Pattara Khamrin, 小林剛, Niwat Maneekarn, 早坂智: Molecular epidemiology of diarrheal viruses in wastewater amid COVID19 pandemic. 第70回日本ウイルス学会学術集会, 2023年9月, 仙台.
- 遠矢真理, 南村幸世, 國吉杏子, 秋野和華子, 斎藤博之, 上間匡: NGSを活用した下水疫学調査によるノロウイルスの流行状況の把握. 第119回日本食品衛生学会学術講演会,2023年10月,東京.
- 樫尾拓子, 柴田ちひろ, 伊藤佑歩, 鈴木純恵, 藤谷陽子, 秋野和華子, 斎藤博之: 秋田県健康環境センターにおけるSARS-CoV-2の検出状況とゲノム解析結果. 第19回秋田県公衆衛生学会学術大会, 2023年10月, 秋田.
- 牛島廣治, 西村修一, 小林正明, 杉田久美子, 疋田敏之, 斎藤博之, Ariful Sk Hoque, Pham Kim, Pattara Khamrin, 秋野和華子, 恩田優子, 沖津祥子, 早川智: COVID-19パンデミック前後における下痢症ウイルスの便・下水からの検出. 第55回日本小児感染症学会学術集会, 2023年11月, 名古屋.
- 斎藤博之, 秋野和華子, 藤谷陽子, 樫尾拓子, 柴田ちひろ, 鈴木純恵: 4年間にわたる新型コロナウイルス対応の総括. 秋田応用生命科学研究会第36回講演会, 2023年12月, 秋田.
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伊藤佑歩,関谷優晟,佐藤由衣子,今野貴之,髙橋志保:令和4年度食品等収去検査結果について.秋田応用生命科学研究会第36回講演会, 2023年12月, 秋田.