秋田県農水技セ

  • ○渡邊 潤
  • 佐藤 寛子
  • 加藤真姫子

秋田県立大木研

  • 山内 秀文
  • ○山内 繁
  • 桑原正章

緒言

 現在、畜産分野では、飼料自給率を向上させた地域資源や未利用資源を活用した持続性の高い地域循環型畜産が推奨されている。そんな中、未利用な状況にある木質資源を飼料として活用し、飼料自給率の向上に努めようとする試みが知られている。しかしながら、木質飼料はこれまで有効な普及には至っていない。そこで、本試験では、近年の「食の安全・安心」と「飼料自給率の向上」に対する関心の一層の高まりと共に木質飼料に今一度注目し、現在秋田県において未利用な状態にある木質資源であるスギ間伐材(スギ), 松食い虫被害木(マツ), シイタケ廃菌床(シイタケ), スギ樹皮(樹皮)の飼料化について検討した。

材料と方法

供試動物:試験には、ホルスタイン種雌牛3頭を用いた。
木質原料:スギ、松食い虫被害木、シイタケ廃菌床およびスギ樹皮を木質原料とした。
木質飼料の加工:スギ間伐材および松食い虫被害木は、乾燥後、チップ化して加圧式リファイナーを用いて170℃, 7気圧, 5分, ディスクC, Disk間隙0.3mmの蒸煮解繊条件で加工した。シイタケ廃菌床は、無処理の原材料をハンマーミル(Pallmann社製-PHM4-2,1/2)で破砕後、ミル内蔵の6mmSQメッシュを通過させた。スギ樹皮は、プレートファンが付いた閉鎖回路を用い、回転数3,550rpmで2分間循環させた。
調査項目:(1)嗜好性試験:一定時間内における一定給与量の採食に要する時間を計測した。給与飼料は、コーンサイレージ主体のTMR2.0kgに対し、木質飼料0.5kgをよく混和させたものとした。一頭当たり3回の試技の平均値をもって値とした。
(2)一般飼料成分分析:木質飼料中の水分, 粗蛋白質, 粗脂肪, 粗繊維, NDFの他、無機成分としてリン(P), カルシウム(Ca), マグネシウム(Mg)の定量分析を実施した。

成績

(1)嗜好性:スギ間伐材17.5±2.5分(平均値±標準誤差以下同様), 松食い虫被害木26.9±2.0分, シイタケ廃菌床7.1±0.7分, そして対照としてのコーンサイレージTMRのみでは3.7±0.1分であり、シイタケ廃菌床の採食性が最も優れていた。スギ樹皮については、より加工処理条件を検討しなければ、給与試験に用いるのは難しいと考えられた。
(2)一般飼料成分:各飼料の一般飼料成分(組成, 無機物)については、表1に示した。各組成で最も高い値は、粗蛋白質はシイタケ廃菌床(6.0%), 粗脂肪はスギ樹皮(1.3%), 粗繊維はスギ間伐材(65.2%), 粗灰分はスギ樹皮(5.5%), NDFはスギ間伐材(83%)であった。そして無機物では、リンはシイタケ廃菌床(1.12%), カルシウムはスギ樹皮(1.20%), マグネシウムはシイタケ廃菌床(0.41%)が最も高い値であった(表1)。 
~表1は省略致します。詳細は研究報告第21号にて掲載しております。~